セルビア人、クロアチア人、スロベニア人によって構成された旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の中で、国の中心を担っていたセルビア人とその中心都市ベオグラード。
60年代末以降、イタリアやフランスのプログレ名作にも負けない魅力的な作品が多数ベオグラードで誕生しましたので、ここに特集。
ベオグラードは西ヨーロッパとトルコとの間にあるバルカン半島のほぼ中央に位置し、紀元前6000年前から人が住んでいたというヨーロッパ最古の都市。
ヨーロッパとアジアを結ぶ戦略的な要所として、古代より争いの場となり、東ローマ帝国、オスマン帝国をはじめ、多数の帝国に支配されてきた歴史を持ちます。
第二次大戦時はナチの迫害を受けて市民大虐殺もおこり、戦後は、トルコとソヴィエトの間で折衝の場となるなど、緊張感が途切れることがありませんでした。
そんな政治的・文化的に自由を奪われた状況の中、ラジオを通してイギリスやドイツのロック・ミュージックに親しんでいた若者たち。
ナチによる文化・言論統制による文化的な暗黒時代(1930年〜60年)が終わりを迎えた後、堰を切ったように若者達はロックへと向かいました。
西ヨーロッパのキリスト教文化とトルコのビザンツ文化が混ざり合った豊かな文化的背景と抑圧されていた若者の欲求の解放とがぶつかりあって生み出されたベオグラード発のセルビアン・ロック。
スペインのバスク(ITOIZ)やフランス南東部のニース(CARPE DIEM)など、同じような歴史的背景を持った地域から生まれたグループ達と同じように、文化的な混濁と民族自決の精神が生む、独特の緊張感と悲哀を感じさせるサウンドがあります。
バルカンの歴史が生んだセルビアン・ロック。どうぞお楽しみください。
ベオグラードを代表するグループ。まるでバンコの格調高さとオザンナの土着の荒々しさとが同居したような旧ユーゴ産プログレ名作!
KORNI GRUPAはイタリアのRICORDIと契約し、KORNELYANSとして世界デビュー。旧ユーゴ最高峰、というより、ユーロ・ロック最高峰と言えるほどの一大プログレ傑作!
71年に結成されたベオグラード屈指のヘヴィ・プログレ・バンド。蘭トレースの端正さと伊レ・オルメのほの暗い叙情美やヘヴィネスを合わせつつ、奇天烈さや熱気、東欧ならではの哀感も混ぜ込んだアンサンブルはプログレ・ファンは歓喜すること間違いなし!
74年のデビュー作。抑制されたエモーショナルなギターはフォルムラ・トレに通じてるし、ハード&ジャジーに畳みかけるところは英パトゥが頭に浮かびます。ヨーロッパ的気品と土着の荒々しさとがバランスしたサウンドは、いかにもセルビアン・プログレ。
旧ユーゴ最初期のハード・ロック・グループで、現在でも活動を続ける名グループ。ブルージーかつキレのあるギターが素晴らしく、英国で言えばTEAR GASのZal Cleminsonあたりに匹敵するセンス。ウィッシュボーン・アッシュのファンも気に入るはず。
YU GRUPAやKORNI GRUPAに在籍していたメンバー達が結成したグループによる75年の唯一作。とにかく荘厳に鳴り響くオルガンとブルージーな熱情的ヴォーカルが強烈にウネリまくるオルガン・プログレ。まるでパトゥにキース・エマーソンが入ったようなエネルギッシュな傑作。
セルビアを代表するハード・ロック・トリオ。サバスのヘヴィネスと幻想性とツェッペリンのソリッドなスピード感を併せ持つ好グループ。フロイドばりのメロウなアコースティック・ナンバーも聴かせたり、恐るべし。
78年作なので、先に挙げたグループ達より少し若いバンド。テクニック抜群ながらテクニカルにはならず、全体的に霧に覆われているような悲哀に満ちたサウンドは、これぞベオグラード。
旧ユーゴはベオグラードにあったアコースティック・シーンを代表する名フォーク・トリオ。ただただ幸福感に包まれるヴォーカル&三声ハーモニー、アコギにストリングスやフルートが折り重なって神秘的かつ温かな音世界を描くアンサンブルともに絶品。
ベオグラードに、これほどまでにクラウト・ロック/サイケ〜スペース・ロックのファン悶絶必至のバンドが居たとは・・・。フロイドやホークウィンドやカンやノイ!のファンは必聴ですよ〜。
【スロヴェニア】のグループもピックアップ。こ、この1曲目、ずばり旧ユーゴからのフランスATOLLへの回答!シャープなリズム隊、壮麗なキーボード、音響センス抜群なギター、そして、スロヴェニア語のセンチメンタル&ドラマティックなヴォーカル。ジャケは残念ですが、サウンドはグレイト!
【スロヴェニア】旧ユーゴ屈指と言われるジャズ/フュージョン・ロック・バンド!アドリア海にほど近い土地柄か、地中海フレイヴァーとエキゾチズムが香るサウンドが魅力!
【クロアチア】のグループもピックアップ!ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマティックなツイン・リード、幻想的にたなびくオルガンやフルート、そして、炸裂するデヴィッド・バイロンばりのハイ・トーン・シャウト!
【クロアチア】DRUGI NACINの後継バンド。リッチー・ブラックモア直系のギター、イアン・アンダーソンばりのフルートが活躍しますが、陰影を帯びたドラマティック&ヘヴィなアンサンブルは、東欧のユーライア・ヒープと呼べる素晴らしさ!
【クロアチア】旧ユーゴにVertigoの名作にも比肩する、陰影に富んだオルガン・プログレがあったとは。トラフィックに通じるR&BフィーリングにVertigo直系のくすんだヘヴィネスを加えたサウンドは本格感ぷんぷん。
旧ユーゴ・クロアチアはザグレブ出身のプログレ・グループ、PGP-RTBレーベルから75年にリリースされたデビュー作。幻想的にたなびくオルガンやフルート、ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマティックなツイン・リード、そして、デヴィッド・バイロンを彷彿させるハイ・トーンのシャウト・ヴォーカル。叙情的で陰影に富んだサウンドは、ハーヴェストやヴァーティゴ・レーベルの叙情的な英プログレのファンにはたまらないでしょう。エッジの立ったトーンのエネルギッシュなリズム・ギターが冴えるハード・ロックもまた魅力的。旧ユーゴ屈指の名作です。
旧ユーゴはセルビアのベオグラードで76年に結成されたグループ。80年作2nd。ピンク・フロイド、ホークウィンド、タンジェリン・ドリーム、カンなどに影響を受けた破天荒かつ瞑想的なサイケ/スペース・プログレだった1stを土台に、ノイ!〜ハルモニアを彷彿させる明るいトーンのキーボードをフィーチャーし、サウンドは開放的になった印象。かと思うと、ギターは1st同様にうつむき加減で鋭角なリズムを切り刻んでいて、これが相変わらずの格好良さ。旧ユーゴに、これほどまでにクラウト・ロック/サイケ〜スペース・ロックのファン悶絶必至のバンドが居たとは。このバンドはグレイトですよ〜。
SECONDHARVEST415(SECOND HARVEST)
デジパック仕様、ボーナス・トラックとして、78年のライヴ盤「Soft Explosion Live」全曲(7曲)収録
レーベル管理上、ジャケットの表面に若干コーティング不良がある場合がございます。ご了承いただければ幸いです。
旧ユーゴのイタリアにほど近いリュブリャナ(現スロヴェニアの首都)出身のプログレ・グループ。78年の唯一作。ジャケの印象では、どんなに恐ろしいハード・ロックやヘヴィ・サイケが聴こえてくるかと思いますが、実際のサウンドは、シンフォニック&ジャジーなプログレ・ハード!明るいトーンで広がる壮麗なキーボード、音響的なセンス抜群のアルペジオからファンキーなカッティング、ブルージー&メロディアスなソロまで表現力豊かなギター。リズム隊も特筆で、シャープに引き締まったトーンで小気味良くドライヴするドラム、ハイポジションでよく動くベースはキレ味抜群。そして、魅力的なのが、辺境プログレの哀愁がつまった霧に包まれたようなセンチメンタルでドラマティックなセルビア語のヴォーカル。ジェネシスやイエスなど英プログレからの影響とともに、マハビシュヌ・オーケストラなどジャズ/フュージョン・ロックやファンクなどのエッセンスを加えた色彩豊かなサウンドは、テクニック、アレンジセンスともに抜群。個人的には、1曲目を聴いて、「旧ユーゴのアトール!」というキーワードが頭に浮かびました。
72年に結成された旧ユーゴは現セルビアのベオグラード出身のハード・ロック・トリオ。旧ユーゴ最初期のハード・ロック作品と言われる73年に国営レコード会社のPGP-RTSよりリリースされたデビュー作。左CHでエネルギッシュにかきむしられるリズムギター、右CHで爆音を轟かせてアグレッシヴに疾走するベース、中央でシャープなリズムを刻むドラム、そして気だるいヴォーカル。ソリッド&ハード・エッジなパートから一転、エコーに包まれサイケデリックなコーラスパートへと切り替わったと思うと、またもや突如ギターがキレのある早弾きで突っ走る!オープニング・ナンバーからこれは痺れます。ハードなナンバーだけでなく、アコギアルペジオに夢想的なヴォーカルが乗るピンク・フロイドばりに幻想的なナンバーも魅力的。サバスやツェッペリンのファンはもちろん、サイケ・ハードのファンにもオススメの好グループです。
旧ユーゴのイタリアにほど近いリュブリャナ(現スロヴェニアの首都)で75年に結成されたプログレ・グループ。サックス奏者、Key奏者を含む5人組。77年のデビュー作。ZOMBIESを思い出すメロウなR&BフレイヴァーからRETURN TO FOREVER的たおやかなフュージョン・フレイヴァーまで彩り豊かなエレピ、ロック的なエッジとフュージョン・タッチの流麗さとが同居したスリリングなギター、バタバタとファンキーなノリのリズム隊。アドリア海に近く、東西文化が混濁したリュブリャナという土地柄か、地中海フレイヴァーやエキゾチズムが香るサウンドが印象的です。旧ユーゴ屈指のジャズ/フュージョン・ロック名作!
旧ユーゴで、現クロアチアはザグレブ出身のオルガン・ロック・グループ、72年のデビュー作。トラフィックに通じるR&Bフィーリングに、VERTIGO勢に通じる陰影やハードさを加えたサウンドが持ち味。手数多くタイト&グルーヴィーなドラムと地を這うようにヘヴィなベースによる屈強なリズム隊、くすんだトーンのオルガン、ここぞでファズ・ギターを炸裂させるブルージー&ソリッドなギター、ちょっぴりアクの強い声のソウルフルなヴォーカル。各楽器ともテクニック抜群で、一体感もあり、本格感ぷんぷん。ズシリと重いアンサンブルを軸に、変拍子による細かなキメも織り交ぜた展開も見事。フルートがむせび泣くジャジーでアコースティックなパートなど、表現力も特筆です。これは、素晴らしいグループ!英ロックのファンは必聴と言える名作!
72年に旧ユーゴのベオグラードにて結成されたフォーク・トリオが74年にリリースした唯一作。凛としたアルペジオが幾重にも折り重なりファンタスティックな音世界を描くアコースティック・ギター、そこに気品を添える艶やかなストリングスや麗しのフルート。曲によってドラムがビートを刻み、オルガンがメロウネスを加え、フォルムラ・トレのアルベルト・ラディウスを彷彿させる抑制されたトーンのギターがエモーショナルなフレーズを添えます。3人が歌うヴォーカル&ハーモニーがとにかく絶品の美しさで、神々しさすら感じさせる透明感ある歌声、ただただ幸福感に包まれる三声ハーモニーに終始うっとり。煌びやかな神秘性とともに、陽光のような温かさもあるユーロ・フォークの逸品。これは傑作です。メロウ・キャンドルやチューダー・ロッジなど英フォークのファン、ITHACAなどサイケ・フォークのファンをはじめ、ピンク・フロイドの叙情的なフォーク・ナンバーが好きな方にも是非聴いてほしい!
Jelic兄弟を中心に現セルビアのベオグラードで1970年に結成された、旧ユーゴのグループ。東欧最初期のロック・グループであり、現在でも活動を続ける旧ユーゴを代表する名グループ。71年デビュー作に続く、74年に国営レコード会社のPGP-RTSよりリリースされた2nd。兄弟によるギター/Vo、ベース/Voに加え、ギター/オルガン奏者、ドラムの4人編成で、ツイン・ギターにハモンドがからむブリティッシュ・ロックにも通じるサウンドが特徴。特に左右に配された2本のギターが魅力的で、リズム・ギターではコシのある歪みのタメの効いたフレーズを応酬し、ソロでは、ブルージーかつキレのあるリードを炸裂させます。淡くたなびくオルガン、節回しにエキゾチズムが香るヴォーカルも魅力的。それにしても、ギターソロが良いです。TEAR GASのZal Cleminsonあたりに匹敵するセンス。ウィッシュボーン・アッシュやテア・ガスあたりの骨太&メロウ&哀愁溢れるハード・ロックのファンは気に入るでしょう。
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