2021年6月19日 | カテゴリー:50周年記念連載企画「BACK TO THE 1971」,世界のロック探求ナビ
2021年にカケレコがお届けしている特別企画「BACK TO THE 1971」。
今からちょうど50年前、1971年に産み落とされた名盤を取り上げて、その魅力に改めて触れてみようというのがこの企画です。
ビートルズの活躍を中心としてロックに多様な表現が生まれた1960年代が幕を下ろし、60年代の残り香漂う1970年を経て、いよいよ新たな時代へと目を向けた作品が生まれていったのが1971年という時期。
英米ロックの名作はもちろん、欧州各国の重要作品も取り上げて、各作品の誕生日または誕生月に記事をアップしてまいります。
この機会に、ロックが最もまばゆい輝きを放っていた時代の作品達にぜひ注目していただければ幸いです。
それでは皆で、BACK TO THE 1971 !!!
第13回目にご紹介するのは、イタリアのバンド、ニュー・トロルスの3作目『コンチェルト・グロッソ1』。オーケストラとロックが見事に融合したクラシカル・ロックの金字塔です。
そもそもアルバムのタイトル「コンチェルト・グロッソ」ってどんな意味なんでしょうか。
「コンチェルト」はイタリア語。日本語では「協奏曲」と訳されます。ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲などよく耳にしますよね。「コンチェルト(協奏曲)」はバロック時代に成立した曲の形式で、「ひとつ、または複数の楽器による独奏とオーケストラで演奏される曲」のことを言います。
独奏楽器がひとつの場合は「ソロ・コンチェルト」、複数の場合は「コンチェルト・グロッソ」と呼ばれます。「コンチェルト・グロッソ」の方が出現が古く、だんだんと「ソロ・コンチェルト」が主流になっていったそうです。このアルバムでは独奏が複数楽器から成るので「コンチェルト・グロッソ」なんですね。
このコンチェルト(concerto)という言葉は、動詞の「concertare」からきています。「concertare」には「合わせる」という意味があり、さらに語源のラテン語「concereto」には「競う」という意味があります。両方を含めると「共に高めあっていく」という意味でしょうか。
ハードな音のロック・バンドと荘厳で優美な音のオーケストラが、それぞれの持ち味を発揮しつつ、共に情感豊かに曲をつくり上げていく様は、まさしく「concertare」という言葉がぴったりです。
曲を紹介する前に構成を見てみましょう。
LPでいうA面にはオーケストラとバンドの演奏が、B面にはバンドのみの即興演奏が収録されています。
元々映画のサントラとして企画されたこのアルバムは、A面の作曲とオーケストラ・アレンジを、映画音楽界で著名なルイス・エンリケ・バカロフ(Luis Enriquesz Bacalov)が担当しています。
それではまずA面から。
荘厳で優美なオーケストラとハードなバンド・サウンドが入れ替わりながら重なりながら曲を織りなす「Allegro」、泣きのギターと切なく美しいヴォーカル&コーラス、ゆったりとしたストリングスが哀愁たっぷりに胸に迫る「Adagio (Shadows)」、ストリングスを中心にロマンティックにドラマティックに盛り上げる「Cadenza – Andante Con Moto」。最後のバンドのみの「Shadows (Per Jimi Hendrix)」は、吹きすさぶフルート、ジミヘンばりに弾きまくるギターとけっこうハードな音が入りながらも哀愁たっぷりに仕上げます。
1° Tempo: Allegro
2°Tempo: Adagio (Shadows)
3° Tempo: Cadenza – Andante Con Moto
4° Tempo: Shadows (Per Jimi Hendrix)
続いてB面。バンドの即興演奏です。叙情的なA面に対しかなりエキサイティング。クラシカル・ロックという言葉で敬遠をしているロック・ファンにはぜひこちらを聴いて欲しい!
Nella Sala Vuota
いかがでしたか。ロック・バンドとオーケストラとの素晴らしい共作であり、ニュー・トロルスのロック・バンドとしての魅力も味わえる不朽の名盤。これを機に聴いていただければ幸いです。
さらにイタリアン・ロックを探求するならこちらの特集から!
バカロフが関わったニュー・トロルス以外のイタリアン・ロック名作も紹介しています。
ニュー・トロルスから他の作品を探求するならこちらの記事!
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イタリアを代表するプログレッシブ・ロックバンドの71年の作品。Luis Enriquesz Bacalovのアレンジにより、彼らがオーケストラを従えてクラシックとロックの融合を成し遂げた不朽の名作である本作は、イタリアン・シンフォニック・ロックを代表する名盤であり、彼らの代表作の1枚。ストリングスによるバロック・アンサンブルとバンドサウンドが華麗に重なり合い、表情を変えながらクラシカルに、ハードに盛り上げます。バンド、またオーケストラ共に叙情的な旋律の応酬であり、非常にイタリア然とした凛々しさに溢れています。LP。
紙ジャケット仕様、04年版デジタル・マスター採用、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
側面部に軽微な色褪せあり、軽微なスレあり
イタリアを代表するプログレッシブ・ロックバンドの72年の作品。Nico Di Paloのハードな音楽性の色濃い作品となっており、純ハードロック然とした楽曲から哀愁のバラード、キーボーディストMaurizio Salviが大活躍のシンフォニック・ロックまでを放り込んだイタリアン・ロックを代表する1枚。もともと雑多な音楽性を持ちながら咀嚼能力に優れたNEW TROLLSらしい作品となっています。本作を発表後にバンドは分裂、Nico De Paloは新バンドIBISを結成、一方Vittrio De ScaltiはN.T. ATOMIC SYSTEM名義でクラシカルな音楽性を追求した名盤「ATOMIC SYSTEM」をリリースします。
イタリアを代表するプログレッシブロックバンドの74年の作品、ライブ盤。「ATOMIC SYSTEM」を作り上げたN.T. ATOMIC SYSTEMのメンバーによる演奏が収録されているのですが、ここで聴けるのは大曲2曲のジャズロック。NEW TROLLSとジャズロックというのは意外な組み合わせであり、事実このアルバムが彼らの作品群の中で特異な位置にあるのは昔から語られてきたことですが、本作はNEW TROLLSのテクニカルな演奏が存分に堪能できる素晴らしい内容となっています。途中でConcerto Grossoのフレーズが飛び出すなど聴き所が多い作品となっており、やはり名盤「ATOMIC SYSTEM」を生み出したメンバー達の基礎体力は並大抵のものではないのだと認めざるを得ません。4分の7拍子、8分の13拍子という変拍子をそのまま楽曲タイトルに採用し、Soft MachineやNucleusにも劣らない超絶なサウンドで畳み掛けつつ、サックスが登場すればKing Crimsonのようなへヴィープログレにも表情を変える、白熱のライブ作となっています。
映画音楽界を代表する作曲家ルイス・エンリケ・バカロフとの共作である71年作「N.1」と76年作「N.2」とをカップリングした2in1。どちらの作品もクラシックとロックがこれ以上無いほど自然な形で融合した傑作。映像音楽家という、映像が放つメッセージを音により増幅させることに長けたバカロフだからこそ、クラシックの優雅さを保ちつつ、ロックのダイナミズムをさらに高めることに成功したのでしょう。必聴作。
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