2023年6月23日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
ユーロ・プログレを掘り下げていくと、非常に重要なバックボーンとして実感されるのが、地中海沿岸の音楽や文化の存在です。
地中海に面するイタリア・フランス・スペイン・ギリシャなどの国には、同じく地中海沿岸に位置するトルコやアラブ地域の文化にも影響を受けた、エキゾチズム薫り立つ芳醇なサウンドを奏でるアーティストが多く活躍しています。
その中でも特に強く地中海音楽の要素が感じられる作品をピックアップしていきたいと思います!
まずは比較的馴染み深いイタリアを見てまいりましょう☆
先日入荷したこの素晴らしい新鋭でスタート!
BANCOのトリビュート・バンドとして実績を積み、満を持してリリースされた22年デビュー作。
地中海テイストやオリエンタルな旋律も取り入れてファンタジックに聴かせるサウンドがとても素晴らしい~。
BANCOの大作「Il Giardino Del Mago」のカバーも聴き所!
ワールドツアーを成功させ絶頂期を迎えたP.F.Mを脱退した彼のソロ・キャリア出発点となった本作。
1曲目『Europe Minor』のアラビックなヴァイオリンのフレーズでいきなり持っていかれますね。
ヴァイオリンやフルートのみならず、自身が奏でるブズーキの煌びやかな音色も、地中海の水面の輝きを表現しているかのようです。
ずばりロック×民族音楽の最高峰と言うべき大傑作。
上のマウロ・パガーニ『地中海の伝説』に対し、こちらは『地中海の印象』という邦題で当時日本盤もリリースされた81年唯一作。
「静」と「動」の対比鮮やかなダイナミックな構成が見事で、いかにもプログレといえるピアノ&キーボードをフィーチャーしたシンフォニック&清涼感溢れるパートと、哀愁が滲む地中海トラッド調のパートとで紡がれるサウンドが実に素晴らしい。
まさにそのグループ名に恥じぬ地中海プログレの名品!
おっと、この作品を忘れるわけにはまいりません。
あまりに超絶的な演奏テクニックに愕然となりますが、この地中海の潮風が薫るような芳醇なメロディも大きな魅力ですよね。
とめどなく溢れ出る情感豊かさでも、間違いなくジャズロック最高峰。
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2021年に80~00年代の作品の数々が最新リマスターにて一挙に国内盤リリースされた、ARTI E MESTIERIに注目いたします☆
イタリアのキーボーディストPaolo Ricca率いるジャズ・ロック・グループ。
注目はクラリネットが奏でる地中海の風を運ぶような哀愁の旋律。これはアルティ好きとしてはたまんないなぁ~。
技巧も抜群だし、ジョン・エサリッジも参加していて、この伊ジャズ・ロック新鋭、かなり良いです。
続いてはフランスから3作品をピックアップ!
中世音楽や舞曲をベースにした個性派シンフォを聴かせるフランスのベテラン・グループ。
地中海エッセンスもたっぷり巻き込んでリズミカルに畳みかけるサウンドは、ずばり「踊れるプログレ」の急先鋒!
1stでは7人でしたが、この2ndでは10人編成となりブラス・セクションを強化。
ファンキーなノリの良さと地中海的な芳醇さを併せ持つ絶品サウンドを披露します。
猛者ぞろいのフレンチ・ジャズ・ロックにおいて、「心地よさ」では最高峰と言える逸品!
トルコ人メンバーを含む編成もあって、地中海的エキゾチズム香るキャメル憧憬シンフォを鳴らした個性派グループが彼ら。
この奇跡の3rdアルバムでも、すべてが往年のまま繰り広げられるサウンドに冒頭から早くも胸が熱くなります。
クラシカルなオルガンと悲哀を帯びたトーンのギター、妖艶なフルート、憂いを秘めたヴォーカル、何もかもが素晴らしいです。
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続々登場する新鋭バンドに負けじとハイクオリティな作品を発表している、70年代に活躍したベテラン・バンド/アーティストたちの作品に注目してまいります☆
スペインも地中海テイストを持ったグループが多いですよね。
アラブ勢力からの支配を受けた歴史を持つスペインは、特に南部アンダルシア地方にその文化的影響を強く残しています。
バンド名もジャケットもいかにもな雰囲気の、アンダルシア州コルドバ出身グループ。
エキゾチックなフレーズを圧倒的なスピードとテクニックで弾き倒す!
Arti E Mestieliあたりのファンにもオススメのテクニカル・スパニッシュ・プログレの傑作。
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地域ごとに多彩なサウンドを聴かせてくれるスペインのロック・シーン。今回はスパニッシュ・ロックを語る上で欠かせない地方、アンダルシアのロック・シーンを探求!
こちらもエキゾチックな熱気と哀愁を纏った好バンド。
キース・エマーソンになったりリック・ウェイクマンになったり忙しいキーボードがたまらない!
これぞという情熱的なスパニッシュ・プログレです!
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スペインはバルセロナが世界に誇るギタリストと言えば?
まばゆく爪弾かれるスパニッシュ・ギター、ブズーキなど民族楽器やクラリネットやフルートなど管楽器による地中海/アラブ・フレイヴァー。
うむ、これぞ地中海ロック!
ゴングのデヴィッド・アレンがプロデュースした、このマヨルカ島発サイケ・フォーク盤はご存知?
地中海風の陽気と美しさを内包したドリーミーなサウンドがもう絶品すぎる…。
ゴーキーズあたりが好きな90年代以降ロックのファンにも聴いてもらいたいです。
その他の国からも地中海テイスト漂う作品をピックアップ☆
ギリシャのみならずユーロ屈指の傑作!
クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品、『太陽と戦慄』ばりのテンションみなぎる変拍子、そしてヘンリー・カウばりの狂気の室内楽的アンサンブル。
そんな英国プログレを手本とするサウンドの中にも、隠せないエキゾチズムが滲みだしているのがまた良いんです。
そして極めつけは前面に出て主旋律を奏でるメロトロン!
現スロヴェニアの首都リュブリャナ出身の旧ユーゴ屈指のジャズ/フュージョン・ロック・バンド。
アドリア海にほど近い土地柄か、地中海フレイヴァーとエキゾチズムが香るサウンドが魅力!
ユーロ圏ではありませんが、地中海沿岸の国としてイスラエルからもご紹介。
美旋律プログレの宝庫イスラエルでも最高峰と言えるミュージシャン3人が組んだバンドがこちら。
神秘的なヘブライ語の響きとこの柔らかで芳醇なエキゾチズムをまとったサウンド。ずばりワールドクラスの大名盤。
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SHESHETやKTZAT ACHERET(NO NAMES)にも匹敵するイスラエル・ロック名品たちを厳選してご紹介してまいりましょう☆
いかがだったでしょうか。
気になる作品が見つかりましたら幸いです!
元PFMのヴァイオリン/フルート奏者。77年にPFMを脱退した後は、自身の音楽的ルーツを求め、地中海の民族音楽を探求。その成果として制作された79年作の1stソロ。イスラム文明とキリスト教文明とが幾重にも重なった地中海で育まれた地中海音楽と、ロックやジャズとを結びつけた地中海ロックの頂点に君臨する一枚。マウロは、ヴァイオリン、フルートの他、ギター、オルガン、ピアノ、ピッコロ、ブズーキ、ウード、サズを操るなど、マルチ・インストゥルメンタル奏者としての才能を見事に開花。そこに、AREAやPFMのメンバー、地中海プログレの名グループCANZONIERE DEL LAZIOのメンバーが加わり、アラビックな旋律が渦巻くエキゾチズムとロックのダイナミズムとがぶつかりあった芳醇かつ強靱なサウンドが生み出されています。特にアレアが参加したオープニング・ナンバーは、ヴァイオリンと民族弦楽器とのユニゾンによるこぶしを効かせたようにウネる旋律を軸に、強靱なジャズ・ロック・パート、CANZONIERE〜のメンバーのパーカッションが北アフリカの祝祭に紛れ込んでしまったような土着フレイヴァーを奏でるパートとを対比させながら展開するスケールの大きな名曲。PFMのメンバーが参加したクラシックとジャズと地中海音楽の豊かなフュージョンの豊かなフュージョンを聴かせる4曲目や、デメトリオ・ストラトスの超絶スキャット、マハビシュヌばりのソロの応酬が凄まじい5曲目もまた必聴。様々な時代・地域・民族が交差し溶け込んだコスモポリタン・ロックと言える傑作です!
プログレッシブ・ロック界を代表する技巧派ドラマーFurio Chiricoといぶし銀のプレイを聴かせるキーボーディストBeppe Crovellaを擁する、イタリアを代表するジャズ・ロックグループの74年デビュー作。その内容は非常にテクニカル且つシンフォニックなジャズ・ロックであり、次作と並んで彼らの代表作となっている名盤。非常に歌心豊かなメロディーを奏でるヴァイオリン、サックスなどを取り入れたそのサウンドはシンフォニックで優美な音像を構築し、Furio Chiricoのパワフルで手数の多いドラムが乱舞。そこに時に激しくソロを弾き、時にメロトロンで雄大な叙情を語るBeppe Crovellaのキーボードが響きます。技巧で迫りつつも、メロディーの良さで聴かせる名盤です。
イスラエルではかなり名の知れたミュージシャンでありコンポーザーの3人、Shlomo Gronich(イスラエルのアラン・ソレンティとして有名!)、Shem Tov Levy(SHESHETのフルート奏者!)、Shlomo Ydov(2010年現在でも活躍を続ける名SSW)によるスーパー・トリオ。イスラエル・プログレのNo.1グループとして知られていて、75年リリースの唯一作である本作は、SHESHETの唯一作と並んで人気の傑作。軽やかな変拍子によりめくるめく展開するアンサンブルと巧みなコーラス・ワークはGENTLE GIANTばり!地中海の空気が感じられる詩情豊かなパートも魅力的で、フルート、弦楽器、エレピ、アコギ爪弾きがタペストリーのように丁寧に重なり、美しいメロディを包み込むアンサンブルは、P.F.M.に比肩しています。GENTLE GIANTやCAMELなどブリティッシュ・プログレのファンからP.F.M.などイタリアン・ロックのファンの皆さま!ずばりこの作品は聴かなきゃ損です!素晴らしすぎる逸品!
ギリシャ出身で主にフランスで活動したグループ。ピアノ/オルガン/メロトロンを操る鍵盤奏者が中心で、デビュー作からギタリストが抜け、ギターレスのキーボード・プログレ4人組となって制作された73年の2nd。ベーシストも代わり、一気にプログレ/アヴァンギャルド色が増しました。キング・クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品を漂わせるパート、鋭利に尖ったトーンのキーボードのミニマルな反復に『太陽と戦慄』ばりに狂気の変拍子が炸裂するパート、ヘンリー・カウばりのフリー・ジャズ/チャンバー・ロックなパートなど、一瞬たりとも気の抜けないテンションみなぎるアンサンブルが続きます。特筆なのがメロトロンで、持続音で荘厳にたなびく感じの使い方が一般的ですが、このグループは、全面に出てまるでピアノばりに主旋律を奏でます。アヴァンギャルドかつクラシカルな気品に満ちたギリシャ屈指・・・なのは言わずもがな、ユーロ・ロック屈指と言っても過言ではない傑作アルバム。必聴です!
81年の唯一作。『地中海の印象』という邦題で日本盤もリリースされた作品。民族楽器がテクニカルに躍動し、ギターが鋭利なフレーズでアグレッシヴに切れ込む。「静」と「動」の対比鮮やかなダイナミックな構成も聴き所で、いかにもプログレといえるピアノ&キーボードをフィーチャーしたシンフォニック&清涼感溢れるパート、哀愁が滲む地中海トラッドなパートなども素晴らしい。オール・インスト。
スペイン出身のサイケ・フォーク・グループ。78年作の唯一作。デヴィッド・アレンによるプロデュースで、ドリーミーなメロディー、美しいコーラス・ワーク、リコーダーやハーモニカによる黄昏のアンサンブルが印象的な名作。どの曲もメロディーが素晴らしく、佳曲揃いです。
トルコ系フランス人メンバー達によって結成され、79年と81年に名作を残したシンフォ・グループが、約40年を経てリリースした2020年作3rdアルバム!1曲目「Deadline of a Lifetime」からもう言葉を失います。クラシカルなオルガンをバックにベース、ギター、フルートが残響のようにフレーズを繰り返す幻想的なオープニング。そこから力強いリズムを得て、オルガンと悲哀を帯びたトーンのギターが一気に疾走を始めるアンサンブル。シンセとギターが短いソロを交換すると、満を持して歌い出すあの低く落ち着いたヴォーカル…。すべてが往年のまま繰り広げられるシンフォニック・ロックに冒頭から胸がグッと熱くなります。「妖艶」という表現がぴったりな少しエキゾチックなフルートも端正なアンサンブルを表情豊かに彩っていてとにかく素晴らしい。終始薄霧に包まれているような幻想的で浮遊感に満ちたサウンド・プロダクションも、このバンドの叙情美を引き出す効果を上げていて見事です。復活作に多い現代的に洗練された音はほぼ登場せず、まさに2ndアルバムの続きといった趣。ですので当時の2枚が愛聴盤という方なら、これは感動すること間違いなしでしょう。ずばり傑作!
Thierry Payssan(Key)とJean-Luc Payssan(ギター)、双子のPayssan兄弟を中心に、80年代初頭より活動するフレンチ・シンフォニック・ロックの代表的バンド、19年作10th。同郷MALICORNEや英国のGRYPHONの流れを汲む、中世音楽、トラッド、舞曲をベースにした”踊れるプログレ”を本作でも追及しており、デビュー時より変わらぬアプローチをさらに推し進めたサウンドが魅力です。前のめり気味に畳みかける躍動感いっぱいのリズムに乗って、民族音楽のように賑々しく奏でられるシンセ&オルガンと、Mike Oldfieldばりにシャープで流麗にフレーズを弾くギター&緻密なアコギらが絡み合い、思わず体が動いてしまうようなリズミカルで華やかなシンフォニック・ロックを紡ぎます。アコギがジャカジャカとかき鳴らされシンセが高らかに舞う、地中海エッセンスも香る祝祭感に満ちた演奏は「CELEBRATION」のP.F.Mにも通じていてエキゾチズムたっぷり。一方、合間では技巧が炸裂するスリリングなテクニカル・シンフォも飛び出し、トラッド調ナンバーとの間に鮮やかなコントラストを作り上げていて素晴らしい。今回も期待を裏切らないサウンドを届けてくれる一枚!
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsaレーベルより76年にリリースされた3rdソロ。BARCELONA TRACTIONのベーシスト、ORQUESTRA MIRASOLのブズーキ/マリンバ奏者、前作から引き続いてのギタリストRicard Sabatesなどサポート。傑作となった前作『Ocells Del Mes Enlla』と比べ、フルート、ブズーキ、ウッドベース、フラメンコ・ギターが入り、地中海フレイヴァーが増した印象。リリカルなピアノをバックにフルートがエキゾチックかつたおやかに流れる部分はイスラエルのSHESHETに通じる味わい。時にチェンバー・ロック的な緊張感もあり、同じバルセロナのMUSICA URBANAに通じるテイストもあります。ジャズ/フュージョンを軸に、カタルーニャ音楽やその他地中海音楽のエッセンスを加えたイマジネーション豊かな逸品。OMをはじめソロも含め、Jordi Sabates周辺作にハズレなし!ジャズ・ロック・ファンは是非一聴を。
旧ユーゴのイタリアにほど近いリュブリャナ(現スロヴェニアの首都)で75年に結成されたプログレ・グループ。サックス奏者、Key奏者を含む5人組。77年のデビュー作。ZOMBIESを思い出すメロウなR&BフレイヴァーからRETURN TO FOREVER的たおやかなフュージョン・フレイヴァーまで彩り豊かなエレピ、ロック的なエッジとフュージョン・タッチの流麗さとが同居したスリリングなギター、バタバタとファンキーなノリのリズム隊。アドリア海に近く、東西文化が混濁したリュブリャナという土地柄か、地中海フレイヴァーやエキゾチズムが香るサウンドが印象的です。旧ユーゴ屈指のジャズ/フュージョン・ロック名作!
05年に始動、BANCOのトリビュート・バンドとして長年活動してきた彼らが、満を持してリリースした22年デビュー・アルバム。男性リード・ヴォーカルと女性フルート奏者兼ヴォーカルを擁した6人編成で、スケール大きな王道的イタリアン・シンフォに、ジャケットからもイメージされる瑞々しい地中海フレイヴァーやオリエンタルな旋律を取り入れてドラマティックに展開するサウンドは、素晴らしい完成度と聴き応えを誇っています。タイトかつ安定感あるリズム・セクションを土台にして、煌めくようなピアノ、色彩溢れるシンセ、エキゾチックなフレーズも織り交ぜるフルート、エッジの立ったギター、地中海の風を運ぶアコギらが、歴史的ロマンも香り立つファンタジックで芳醇な音世界を描きます。濃厚さのないカンタゥトーレ的とも言える素朴さを持つ男性ヴォ―カルと、時にデュエットで彩りを添える女性ヴォーカルのコンビも絶品。注目はライヴ録音されたBANCO1st収録の大作「Il Giardino Del Mago」のカバー。他曲のファンタジックな世界観とは打って変わって、原曲の霧がかったようなミステリアスさを見事に表現しつつ、ギターを押し出したヘヴィなアレンジで聴かせていてこれがまたカッコいい。Giacomoのヴォーカル・パートを男女で巧みに受け持っているのも特徴で、長年BANCOを演奏してきたその実力を遺憾なく発揮しています。これはBANCO好きのみならず、全イタリアン・ロック・ファンにオススメできるクオリティ!
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