2021年5月11日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
名盤からディープな作品まで、ユーロ諸国で誕生した様々なロック名作を掘り下げていく「ユーロ・ロック周遊日記」。
今回は、2020年末に届けられたまさしく奇跡の一枚、フランスのアジア・ミノールによる3rd『POINTS OF LIBRATION』をご紹介したいと思います!
まずは、このグループのバックボーンを紐解いてみたいと思います。
79年に『Crossing the Line』と80年に『Between Flesh and Divine』という2枚のアルバムを残し、83年に解散したアジア・ミノール。
メロディアスで儚く幻想的な音作りやフルートが全編で活躍するアンサンブルから、フランスにおけるキャメル系プログレの筆頭グループとして語られてきました。
バンド自身も認めるそうしたキャメルら英国プログレからの影響のほかにも彼らの特徴と言えるのが、メロディやフルートのプレイに息づく東洋的エキゾチズムですよね。
そのサウンドの秘訣は、メンバーのルーツにあります。
バンドを立ち上げたSetrak BakirelとEril Tekeliの2人は、実は学生の時にフランスへと移住してきたトルコ人。
詳細は不明ながら他の2人に関しても、一般的にBeltramiはイタリア姓、Kemplerはドイツ姓であることから、フランス以外にルーツを持つミュージシャンであるのは間違いなさそうです。アジア・ミノールには外国人学生/ミュージシャンによるバンドという側面があったのかもしれません。
多くのフレンチ・プログレ・バンドの持つ独特の薄暗さを感じさせる幻想的な音作りや耽美的な表現とは異なる、あの素朴かつ粛々としたメランコリーと東洋エッセンス匂い立つサウンドは、非フランス人によるバンドならではのものと考えられます。
またバンド名のアジア・ミノールは「小アジア」を意味し、北に黒海、南に地中海を臨む、ずばり現トルコの大部分を成すアナトリア半島を指す言葉。
異国の地で自身のルーツに向き合いながら作り上げられた彼らのサウンドは、バンドHPにも記述があるように「西洋と東洋の影響をミックス」した唯一無二のものだったのです。
今回のアルバム・リリースによって活動の再開がプログレ・ファンの知る所となったアジア・ミノールですが、解散より30年を経た2013年に再結成し、ライヴや新曲の制作を行なっていました。
バンドを創設したトルコ人メンバーの2人に新たなメンバーを加えた5人によって、満を持して送り出されたのが40年越しの3rdアルバム『Point of Libration』です。
ずばり、このアルバムは往年の2作品が愛聴盤という方にこそ是非聴いてほしいです。
往年の名バンドの復活作と言うと、なかなか当時のままというわけにはいかず、多かれ少なかれ現代的なスタイルを取り入れていることが多いですよね。
サウンドのクオリティとは関係なく、好きだったあのバンドを聴いている!という感覚を得づらいことがあると思います。
その点で本作は、まさしく「2ndアルバムの続き」。
音楽性の核を担っていたトルコ人の2人がいるので、あの匂い立つような東洋的エキゾチズムも健在の、往年のファンにも安心してお聴きいただきたい新たな名作に仕上がっているのです。
いくつかのナンバーを聴いてまいりましょう。
クラシカルなオルガンをバックにベース、ギター、フルートが残響のようにフレーズを繰り返す幻想的なオープニング。
そこから力強いリズムを得て、オルガンと悲哀を帯びたトーンのギターが一気に疾走を始めるアンサンブル。
シンセとギターが短いソロを交換すると、満を持して歌い出す低く落ち着いたヴォーカル…。
何もかもが往年のまま繰り広げられるシンフォニック・ロックに冒頭から胸がグッと熱くなりませんか?
力強いアコースティック・ギターのストロークと妖艶に舞うフルートの対比が見事な2曲目も素晴らしい~。
再編メンバーによるダイナミックなドラミングが、違和感なくアジア・ミノールのサウンドとして溶け込んでいるのにも注目です。
最後の曲はトルコ語ヴォーカルによって一層エキゾチック度が上がっています。
歌にデリケートなタッチで寄り添う演奏に息をのむ前半と、フルートとギターがユニゾンを交えながら軽やかの疾走する後半の鮮やかな切り替えが見事!
トルコ系フランス人メンバー達によって結成され、79年と81年に名作を残したシンフォ・グループが、約40年を経てリリースした2020年作3rdアルバム!1曲目「Deadline of a Lifetime」からもう言葉を失います。クラシカルなオルガンをバックにベース、ギター、フルートが残響のようにフレーズを繰り返す幻想的なオープニング。そこから力強いリズムを得て、オルガンと悲哀を帯びたトーンのギターが一気に疾走を始めるアンサンブル。シンセとギターが短いソロを交換すると、満を持して歌い出すあの低く落ち着いたヴォーカル…。すべてが往年のまま繰り広げられるシンフォニック・ロックに冒頭から胸がグッと熱くなります。「妖艶」という表現がぴったりな少しエキゾチックなフルートも端正なアンサンブルを表情豊かに彩っていてとにかく素晴らしい。終始薄霧に包まれているような幻想的で浮遊感に満ちたサウンド・プロダクションも、このバンドの叙情美を引き出す効果を上げていて見事です。復活作に多い現代的に洗練された音はほぼ登場せず、まさに2ndアルバムの続きといった趣。ですので当時の2枚が愛聴盤という方なら、これは感動すること間違いなしでしょう。ずばり傑作!
非常にフランスらしい冷ややかな質感を持ち、流麗なメロディーとフルート奏者によるリリカルな調べでCAMEL系の名グループとして知られるバンドの79年デビュー作。ロマンチック且つファンタジックなシンフォニック・ロックを構築しており、専任フルート奏者の存在に加えて変拍子を織り交ぜながらジャジーなアプローチを聴かせるあたりはCAMELフォロワーらしい側面が伺えます。全体的に演奏はテクニカルで硬質なものですが、冷ややかながらも肌触りの良いキーボードのロングトーンが効いており、マイルドな雰囲気を演出しています。
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