スタッフ佐藤です。
今回注目するのは、情熱の国「スペイン」のロック・シーン!
西欧諸国のプログレの中でも、その歴史的/文化的背景から各地域に根ざした多様なサウンドが鳴らされてきたのがスパニッシュ・ロックです。
東部沿岸のバルセロナが属するカタルーニャ州では70年代中期「Musica Laietana」と呼ばれるムーヴメント影響下でジャズ・ロック・グループが数多く登場しました。
他方、南部アンダルシア州では伝統芸能フラメンコの要素やイスラム文化の流入を受けた歴史を反映するアラビックなエッセンスを放つサウンドが聴かれます。
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そして北部で注目すべきなのがバスク自治州で、素朴で郷愁が滲むフォーキーなサウンドを持つグループ達が活躍しました。
このように、地域によってアプローチが大きく異なるのがスパニッシュ・プログレ・シーンの魅力の一つとなっているのは間違いないと思います。
こちらの記事では、バルセロナを中心地とするカタルーニャ地方のグループたちをメインに作品をピックアップしてまいります☆
とその前に、スパニッシュ・プログレからの新作をご紹介しておきましょう♪
クイーン愛に溢れたスペインの注目プログレ新鋭による、最高に熱いライヴ音源&映像を収録!傑作3rd『2038』の興奮が、観客の熱狂とともに再び蘇ります…!
名実ともにスペインを代表するプログレ・バンドによる、キャリアを総括した選曲で聴かせる18年ライヴを収録!往年に劣らぬこの溢れんばかりの熱気とパワフルさ、さすがです…。
それでは、スパニッシュ・ジャズ・ロックの総本山バルセロナを中心に、カタルーニャ地方のバンド達をチェック!
名実ともにバルセロナ産ジャズ・ロック・シーンで中核的な存在であったのがこのICEBERG。
のちにソロ・ミュージシャンとしても成功するMax Sunyerによる、ゴリゴリと熱く弾き倒すスタイルのギターを主役に展開するテクニカル・ジャズ・ロックは、ずばり「マハビシュヌへのスペインからの回答」!
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世界中より、シャープに引き締まったテクニカルかつ流麗なジャズ・ロック作品をセレクトしてまいりましょう。
ジャケも最高だが、音もカッコ良すぎる。変拍子をビシバシとキメながらアグレッシヴに疾走するシャープなリズム隊、時にフリーキーに暴れ、時に牧歌的に和ませる表情豊かな管楽器、精緻なタッチの格調高いピアノなど、カンタベリー/レコメン系に通ずる硬質さとユーモアが絶妙にバランスしたサウンドはすごい完成度です!
バルセロナのジャズ・ロック・バンドの中では最も知られた存在と言えるのがこのFUSIOON。こちらの2ndは、EGGあたりを思わせるオルガンメインのジャズ・ロックに、初~中期GENTLE GIANTっぽいリズミカルでユーモアあるアレンジを施したかのような、ユニークなサウンドを持ち味としています。とぼけたジャケと共に人懐っこい魅力に溢れたスペインの好グループ!
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ハットフィールドが好き?リターン・トゥ・フォーエヴァーが好き?でしたら、このスペインのグループ、是非一聴を!シャープに引き締まったドラム、流麗に動くメロディアスかつグルーヴィーなベースによる安定感抜群のリズム隊を土台に、エレピが地中海の青空へと吸い込まれていくようなリリカルにたゆたうメロディを奏でます。色彩感豊かなパーカッションやホイッスルなどによる味付けも地中海フレイヴァーたっぷりで絶品!
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スペインはバルセロナ出身のジャズ・ロック・トリオ、BARCELONA TRACTIONが75年にリリースした唯一作『BARCELONA TRACTION』をピックアップ!
ギター、サックス、ドラムのFortuny3兄弟を中心とするグループで、70年代半ばにバルセロナのライヴハウスZELESTEを中心に起こったジャズ/アヴァン・ロック・ムーヴメントの中核を担った名グループが彼ら。ジョン・マクラフリンばりのキレ味鋭いジャズ・ロック・ギターと地中海フレイヴァーたっぷりなスペインの民族木管楽器テノーラとのぶつかりあい!うむ、これぞ地中海ジャズ・ロック!
初期ニュークリアスに比肩するジャズ・ロックを繰り広げる、60年代より活動の名グループによるデビュー作!R&Bやジャズが根っこにあるグルーヴィーかつふくよかなリズム隊をバックに、淡いトーンのオルガンがたなびき、ピアノが静謐に鳴り、ファズ・ギターがサイケデリックかつヒリヒリとテンションあるフレーズを紡ぐオープニング・ナンバーからもう抜群のカッコよさ。ちなみにクロワッサンに懐中時計がはまったジャケデザインは、当時のフランコ独裁体制への批判を込めたもの。
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BLAY TRITONOに参加するkey奏者を擁するバンドの74年デビュー作。BLAY TRITONOに通じるジャズ・ロックを土台に、初期リターン・トゥ・フォーエヴァー彷彿のフュージョン・タッチ、そしてサルサのエッセンスを取り入れた意欲的なサウンドが持ち味。管楽器、マンドリン、パーカッション、ホイッスルなど雑多な音が溢れますが、賑やかさよりはチェンバー・ロックに通じる緊張感が勝っていて聴き応えたっぷり。
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後にスペインを代表する音楽家となるJoan Albert Amargosが若い日に結成したジャズ・ロック/アヴァン・ロック・グループ。アレアやSHESHETとも呼応した地中海プログレの傑作!
企画もの的な異色作ではありますが、これは痺れますよ!BARCELONA TRACTION、MUSICA URBANA、MAQUINA!、ICEBERGなどに在籍/参加するメンバーが集結したオールスターによる、全曲ビートルズのカバー・アルバム。イージーリスニングな感じは微塵もなく強烈な躍動感とキラメキ!ジャズ・ロック・ファンやカンタベリー・ファンはもちろんの事、ビートルズ・ファン、サイケ・ポップ・ファン、ニッチ・ポップ・ファンにもお楽しみいただきたい一枚♪
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70年代にスペインでおこったロック・ムーヴメント「Musica Laietana ライエターナ・ミュージック」を特集!
スパニッシュ・プログレの中心地と言えるバルセロナだけに、勿論シンフォ系バンドも実力派揃いです。
昔から「スペインのキャメル」としてユーロ・ロック・ファンに愛されてきた名作ですね。抜群のテクニックで躍動するパートと、叙情的なメロディーと繊細なフルートの音色が心を打つロマンティックなパートが鮮やかに対比される、バルセロナが生んだ極上シンフォ。
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一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。本日は、スパニッシュ・シンフォの至宝と言うべき名グループGOTICが残した78年デビュー作『ESCENES(夢の情景)』をピックアップいたしましょう。
カタルーニャ州の中でもフランス国境に近いジローナを出身地とするグループ。キース・エマーソンになったりリック・ウェイクマンになったりと忙しなく躍動するキーボードのプレイがとにかく痛快なスパニッシュ・シンフォ・ハードを展開します。スパニッシュ・プログレの名作と誉れ高い2ndと、よりシンフォニック色を強めた3rdを収録!
こちらはカタルーニャ出身のインスト・グループによる82年リリースの作品。発表時期もあってほぼ無名の作品ですが、聴いてみると初期P.F.M.みたいな素晴らしさビックリ!スペインらしいエキゾチックなジャズ・ロックとメロディアスな叙情派シンフォの要素を合わせ持った芳醇でイマジネーションに富んだサウンドが感動的。もしこれが75年作だったとしたら、ユーロ・ロック屈指の傑作として評価されていたかも!
次のページではカタルーニャ以外の主要地域のバンドをピックアップ!
後にBARCELONA TRACTION〜MUSICA URBANAとスパニッシュ・ジャズ・ロックを代表するグループで活躍する名Key奏者Lucky Guriと70年代初期のスパニッシュ・ジャズ・ロック・シーンを代表するグループMAQUINA!のサックス奏者Peter Roarを中心に、言わずとしれたICEBERGの名ギタリストMax Sunyerや、MAQUINA!のリズム隊が参加したスーパー・グループ。72年作の全曲ビートルズ・カバー・アルバム。もう、このレビュー書きながら、興奮しています!2曲目の「Strawberry Fields Forever」で泣きそうです。イージーリスニングな感じは微塵もなく、サイケ・ポップのカラフル感を残しつつ、ロック的シャープさとオシャレな洗練とが同居した最高にカッコ良くワクワク感溢れるサウンドを聴かせています。シャープでタイトな音色と手数多いフレージングがカッコ良すぎるドラムを中心に、ピアノとサックスが時にどっしりと時に軽やかに躍動し、NUCLEUS時代のChris Speddingを彷彿とさせるセンス溢れるMax Sunyerが脇を固めます。このキラメキが伝わるでしょうか。カケレコが自信を持ってオススメする大傑作!ビートルズ・ファンもサイケ・ポップ・ファンもニッチ・ポップ・ファンもジャズ・ロック・ファンもカンタベリー・ファンも全員必聴!
スペインはバルセロナ出身のジャズ・ロック・グループ。76年作の2nd。1stよりヴォーカリストが脱退。本作以降はすべてインストゥルメンタル作品になります。Voが居なくなったせいか、サウンドは1stのテクニカルな部分を更に押し進めた硬派なテクニカル・ジャズ・ロック。スペインを代表する天才ギタリストMax Sunyerのギターは相変わらず冴え渡っていて、フラメンコや北アフリカ音楽のエッセンスを感じさせるアラビックでエキゾチックな旋律をゴリゴリとアグレッシヴに、なおかつ地中海フレイヴァーいっぱいに爽やかで流れるように弾き倒すフレージングはテクニック、センスともに抜群。そんなMaxのギターにユニゾンであわせるKey奏者、Josep Mas “Kitflus”も特筆で、彼らの高速ユニゾンと白熱したソロの応酬がバンドの最大の持ち味です。そんなマハビシュヌばりのキレ味抜群のテクニックに加え、シンフォニック&スペーシーなシンセによるプログレ・フレイヴァーや、たおやかさや清涼感やエキゾチズムなどの地中海フレイヴァーもあって、色彩豊かなサウンドは世界的にみても屈指のクオリティ。70年代半ばにバルセロナで興ったジャズ・ロック/アヴァン・ロックのムーヴメント『ライエターナ・ミュージック』を代表する作品で、スペインが世界に誇るジャズ/フュージョン・ロック傑作です。
スペインはバルセロナ出身のジャズ・ロック・トリオ、75年作。バンドのリーダーは、Key奏者のLucky Guriで、バルセロナ・ジャズ・ロック・シーンの名手達が集まったビートルズのカヴァー作品(傑作!)に参加したり、後には地中海ジャズ・ロックの名バンドMUSICA URBANAに参加するなど、バルセロナ・シーンを代表するKey奏者。シャープに引き締まったドラム、流麗に動くメロディアスかつグルーヴィーなベースによる安定感抜群のリズム隊を土台に、エレピが地中海の青空へと吸い込まれていくようなリリカルにたゆたうメロディを奏でます。色彩感豊かなパーカッションやホイッスルなどによる味付けも地中海フレイヴァーたっぷり。バンドは、スペインはカタルーニャ地方のウッドストック・フェスと言える75年に行われた伝説の「Festival Canet Rock」に参加し、高い評価を得ます。バルセロナ産ジャズ・ロック「MUSICA LAIETANA」シーンを代表する一枚として名高い傑作です。
スペインはカタルーニャ出身のインスト・グループ。82年の唯一作。イマジネーション豊かなスパニッシュ・ジャズ・ロックと、叙情派シンフォのエッセンスが入ったジャジーかつメロディアスなプログレとの二つのスタイルにより、アルバムを彩り豊かに構成。手数多くシャープなドラム、アグレッシヴなベースによるいかにもジャズ・ロックなリズム隊を土台に、ギターが時にジャジーかつスリリング、時にヴァイオリン奏法などを駆使して切々と胸に響くフレーズで引っ張り、柔らかなエレピやリリカルなピアノが全体を包む。かなりマイナーなグループですが、実力は驚愕のレベル。必聴盤です。
スペインはバルセロナで興った「ライエターナ・ミュージック」屈指の傑作と言われる76年唯一作。メンバーの中心は、現在までプレイヤー/コンポーザーとして活躍するサックス/テノーラ奏者のJoan Josep Blay。他、ジャズ・ピアノの名手でORQUESTRA MIRASOLでも活躍するKey奏者Victor Ammannと、トランペット奏者、トロンボーン奏者、リズム隊による6人編成。Joan Josep Blayによるテノーラ(スペインの民族木管楽器)のチャルメラ風フレーズを軸に、トランペットとトロンボーンがたおやかにむせぶ地中海フレイヴァーたっぷりのサウンドを聴かせます。ビシバシと切れ味鋭いドラムとメロディアスに動きまくるベースによるリズム隊も鉄壁。Key奏者のVictor Ammannもさすがで、ギルガメッシュのAlan Gowenにも比肩する緻密で煌びやかなピアノ&エレピが印象的です。ハットフィールドやギルガメッシュなどカンタベリーの名作と比べても何ら遜色ないクオリティ。これはユーロ・ジャズ/アヴァン・ロック屈指の傑作です。
スペインはバルセロナ出身、チェンバー/ジャズ・ロックの名グループ。76年にZELESTEレーベルよりリリースされた1st。後にクラシックから映画/演劇音楽でも名を残し現代スペインを代表する音楽家となるJoan Albert Amargosを中心に、60年代末から活躍するブラス・ロック・バンドMAQUINA!のメンバー、BARCELONA TRACTIONのKey奏者により結成。英米ロックから解放されたスパニッシュ・ロックの確立を目指していたようで、地中海音楽やアンダルシア音楽をはじめ、スペインのオペラであるサルスエラ(Zarzuela)も取り込んだチェンバー・ロックが特徴です。緻密かつ地中海の香り漂う芳醇なサウンドは、HATFIELD & THE NORTHのファンをはじめ、イスラエルのSHESHETやイタリアのAREAやPICCHIO DAL POZZOのファンにはたまらないはず。若きJoan Albert Amargosの才気ほとばしるイマジネーション豊かな名品です。
12年デビュー、メンバーほぼ全員がクイーンとドリーム・シアターをフェイバリットに挙げるスペインの新鋭プログレ・バンド、2019年1月マドリッドでの熱いライヴを収録した2CD+DVD!注目は何と言っても、18年にリリースされた傑作3rd『2038』のナンバーを中心にしたセットリストである点。冒頭、力の入ったMCがDRY RIVERを紹介すると、3rdアルバム1曲目「Perder El Norte」でスタート!スタジオ盤での演奏の精度はそのままに、観客も巻き込んだ最高にエネルギッシュで痛快なステージが幕を開けます。観客は1曲通して大合唱で、ライヴならではの臨場感がみなぎっており雰囲気が素晴らしい。もちろんお約束のクイーン「BOHEMIAN RHAPSODY」の完全再現も披露しています。1曲では、リッチー・ブラックモア率いるレインボーで現ヴォーカルを務めるチリ出身シンガーRonnie Romeroをゲストに迎えていて、フレディ愛たっぷりな2人のヴォーカルが会場を最高潮に盛り上がていて感動的です。1stと2ndの曲を披露した17年ライヴ作『ROCK & ROLLO… !Y CANA!』とともに、彼らの情熱みなぎるサウンドに胸打たれた方なら必聴と言える傑作ライヴ盤!
スペインはバルセロナ出身、ギター、サックス、ドラムのFortuny3兄弟を中心とするグループで、70年代半ばにバルセロナのライヴハウスZELESTEを中心に起こったジャズ/アヴァン・ロック・ムーヴメントの代表格。77年にZelesteよりリリースされた3rd。ジャズ/フュージョン・ロックの傑作デビュー作から、一転して2ndでは地中海フレイヴァーが香るサウンドでオリジナリティを確立。その延長線上で、一気に洗練を増したのが本作。細かいリズムを軽快に切り刻むキレ味抜群のドラム、よく動くベース、淡い陰影と浮遊感を加えるエレピ、そしてサムラを彷彿させるツブ立ちの良さとジョン・マクラフリン的ジャズ・ロック・フィーリングが織り成すテクニック&センス抜群のエレキ・ギター。そこに地中海フレイヴァーを加えるスペインの民族木管楽器テノーラによるエキゾチックな旋律がシャープな演奏に違和感なく溶け込んでいて恐るべし。それにしてもこのクオリティでこの知名度の低さときたら!サムラに比肩する名グループ。ギタリストのEsteve Fortunyは、ICEBERGのMax Sunyerと並び称されるべき名手!
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