2023年4月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
昨年リイシューされたノルウェー・プログレPOPOL VUL(POPOL ACE)の74年2nd、メロトロンを伴った初期クリムゾン的叙情性が味わえるかなりの逸品でした。
プログレ・シーンに最も多大な影響を与えたグループの一つだけあって、70年代から世界中で数多くのクリムゾン・エッセンスを取り入れた作品が生まれています。
今回は、クリムゾン好きの方にはぜひ聴いておいて欲しいプログレ作品を選りすぐってご紹介したいと思います!
まずは冒頭で取り上げたこの作品から☆
JBGを思わせるソウルフルなブルース・ロックで幕を開けたと思ったら、初期KING CRIMSON的な仄暗い叙情性と哀愁を持ったサウンドが広がってきて、メロトロンもたっぷりと鳴り響きます。Greg Lakeばりの朗々とした歌唱も素晴らしい北欧プログレ逸品!
双子のGoldring兄弟の名字を逆さにしてもじったバンド名のブリティッシュ・プログレ名グループ。
クリムゾンやVDGGに通じるダークな緊張感と、古楽器がもたらす繊細さのコントラストが見事な2ndに劣らぬ名作1st!
英国のクリムゾン・フォロワーとして名の通ったバンドがJONESY。
メロトロンが作り出す儚くデリケートな幻想性と、R&B/ブルースロックの粗野なグルーヴ感が対比したサウンドはかなりの完成度。
クリムゾンからの影響を土台として独自の音を練り上げた傑作2nd!
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イタリアン・ヘヴィ・シンフォの重要作ですね。
一曲目、電気処理を施したヴォーカルが「21世紀の~」を少し思い出させます。
メロトロン以外のキーボードは使用されておらず、圧巻の速弾きギターとエレクトリック・サックスが絡み合うタイトで肉感のある演奏が印象的。退廃美と妖艶さが渦巻く傑作!
牧歌的なようでいて、初期クリムゾンの「静」のサウンドを彷彿させる神秘性、そして息をのむようなメロトロンが織りなす妖艶さも孕んだ作品。
中世ヨーロッパから神話的世界観へとどこまでもイマジナティヴに広がっていくサウンドが素晴らしすぎます。
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熱量高く濃密なサウンドのイメージが強いイタリアですが、今回はリリカルでたおやかなサウンドを奏でるグループ達をご紹介します☆
とりわけクリムゾン・フォロワーひしめくのがフランスです。
雰囲気抜群のジャケットで飾られた本作は、フレンチ・プログレ屈指の人気グループPULSARによる代表作。
メロトロンによる幻想美はKING CRIMSONの静的な部分を想起させ、ロングトーンで静謐に広がるギターとキーボードが時に狂ったように暴れ出す展開は、PINK FLOYDのような麻薬的魅力を放出。
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スタッフが様々なテーマに沿ってオススメ作品を取り上げ、世界のロックをカケハしていく「日々是ロック」。本日10/10はKING CRIMSONデビュー50周年という事で、『宮殿』を起点に凶暴性と幻想性を兼ね備えたプログレの名盤を辿ってまいりましょう!
ロバート・フリップから影響を受けたギタープレイ、そしてドゥルーズに直接学んだ哲学やSF的世界観を根底に持った独自の思想性を特徴とする鬼才リシャール・ピナス率いるグループ。
本作はクリムゾンばりの緊張感と凶暴性を備え、かつエレクトロニクスへと接近した、尖鋭性の塊のような意欲作。
クリムゾンより先に『ディシプリン』に手をかけたサウンド、というのは言い過ぎ?
こちらもフランスのクリムゾン・フォロワー筆頭格。
ロバート・フリップからの影響を感じさせるFrederick L’Epeeのギターと、Didier Lustigによるシンフォニックなストリング・シンセサイザーをフューチャーし、独自のへヴィー・シンフォニック・ロックを作り上げています。
クリムゾンの硬質さはそのままに、フランスならではの耽美さで包み込まれたサウンドが出色!
これぞずばりフレンチ・プログレ必殺の名盤!
クリムゾン譲りの緊張感とフランスらしい耽美な幻想性との見事な融合。
芸術性の高さではユーロロック屈指!
『太陽と戦慄』を2倍速で畳みかけちゃうようなパートと北欧の幻想美に溢れたアコースティックなパートの落差ときたら・・・。メロトロンも溢れちゃうし、終始、唖然・・・。
まるで初期クリムゾンとVDGGとジェントル・ジャイアントが融合したかのような驚愕のサウンドだって!?スイス最高峰プログレ・バンドによる76年作1st、名盤2ndに劣らずの大傑作ですっ。
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スペインのキング・クリムゾン!? オザンナ『パレポリ』ばりの狂おしいフルートと重厚なメロトロンが炸裂!ずばりユーロ屈指のヘヴィ・シンフォと言える名作。
70sクリムゾン、はたまたマグマの吹き荒れる嵐のようなヘヴィ・アンサンブルに、南米の涼風が混じりあうと・・・?
日本のキング・クリムゾン・フォロワー代表としてその名を刻むグループ。
『太陽と戦慄』~『レッド』期クリムゾンを彷彿させる緊張感MAXの変拍子アンサンブルが全編で炸裂する名盤!
いかがだったでしょうか?
いずれもコピーのようなサウンドではなく、キング・クリムゾンからの影響を取り込みつつ独自のスタイルとしてアウトプットしている名盤ばかりですよね。
「これならクリムゾン聴けばいいじゃん」とはならないサウンドだからこそ、半世紀を経ても聴かれ続けているのでしょうね~。
90年代以降のクリムゾン・フォロワー探求はコチラから!!
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単発ながら素晴らしい作品を残したイタリアのプログレッシブ・ロックグループの76年唯一作。ゲスト・プレイヤーにPICCHIO DAL POZZO のAldo De Scalziを迎えて製作され、メロトロンの名盤としても知られるその内容は、ファンタジックなフォーク・ロック風の牧歌性が素晴らしい優美なサウンド。フルートやヴァイオリン、ギターが彩るフォーキーな音楽性を基本にメロトロンやアナログ・シンセサイザーが神秘的な広がりを加味しています。ほとんどリズム・セクションを廃した作風とシンセサイザー・サウンドの効果もあって、ジャーマン・ロックなどにも通じる浮世離れした浮遊感を持っていることが個性的ですが、やはり優美なメロディーには確かなイタリア叙情を感じます。
アルゼンチンのグループ。78年作。KING CRIMSONからの影響を強く感じるヘヴィネスと叙情性との融合をベースに、時にジャジー、時にクラシカル、時にアヴァンギャルドなフルート、サックス、ヴァイオリンが絡んだサウンドは圧倒的なテンションとスケール。PFM+MAGMAと言ったら誉めすぎでしょうか。とにかく、演奏力、アレンジ、楽曲の質ともに、南米最高水準。南米プログレを代表する傑作。
73年発表の2ndアルバム。メロトロンを全編に配した重厚な音作りと叙情的なメロディーがたいへん美しくドラマティックな名盤。サビ部分での洪水のようなメロトロンが印象的な一曲目「Masquerade」、優しく繊細なメロディーを持つ二曲目「Sunset And Evening Star」、叙情的なメロディーと後半部分のウィッシュボーン・アッシュ顔負けのツイン・ギターが胸を締め付ける「Song」、静と動の対比による曲展開がドラマティックな大曲「Children」など、どの曲も良く練り上げられた名曲揃い。
メロトロンなどの積極的な利用で、フレンチ・プログレッシブ・ロックの名盤を作り上げた代表的グループの77年3rd。彼らの最高傑作といわれる本作は2部構成から成る大曲のみで構成された作品であり、非常に映像的なドラマチックさを持った傑作となっています。メロトロンの幻想はKING CRIMSONの静的な部分を想起させ、ロングトーンで静かに広がるキーボードや流れるような無理の無い展開はPINK FLOYDのような麻薬的魅力を放ちます。全編にフレンチ・ロックの冷ややかな質感と芸術性が表われており、夢想の中に落ちていくような傑作です。
Robert Frippからの影響を感じさせるFrederick L’Epeeのギターと、Didier Lustigによるシンフォニックなストリング・シンセサイザーをフューチャーし、独自のへヴィー・シンフォニック・ロックを作り上げたフランスのグループの78年2nd。前作と比べて特にキーボード・サウンドが充実しており、KING CRIMSONのような硬質なサウンドはそのままに、よりシンフォニックな幻想色とメロディアスさに磨きがかかった、色彩豊かな1枚です。硬質なサウンドと叙情美が交錯するフレンチ・シンフォニック・ロックの名盤と言えるでしょう。
78年作の1stアルバム。荒れ狂うフルート、スリリングなヴァイオリン、重厚なメロトロン、圧倒的にヘヴィなギターが休むことなくバトルを繰り広げるアグレッシヴなプログレッシヴ・ロック。混沌とした中にヴァイオリン&フルートの叙情的なフレーズが立ち上がる瞬間など、押し一辺倒ではない構成力も抜群。スペイン・ロックを代表する傑作。オザンナ「パレポリ」が好みの方は必聴!
スイス最高峰のプログレ・バンドである彼らが76年にリリースした1stアルバム!ユーロ・プログレ屈指の人気作である2nd『MOVIN’ ON』がよく知られますが、このデビュー作も驚異の出来栄え。重くタイトに刻むジャジーなリズム・セクションに乗って、重厚に吹き荒れるサックスやフルート、ヒリヒリと緊張感のあるトーンのギターが初期キング・クリムゾンばりに強度の高いアンサンブルで突き進む「動」のパート。そしてVDGGやGNIDROLOGあたりを思わせる暗黒が立ち込める中を憂いの滲むヴォーカルが歌う「静」のパート。両者がダイナミックに対比され、アーティスティックで構築的なプログレッシヴ・ロックを作り上げています。ヴォーカルはピーター・ハミル影響下の独特の抑揚を付けたスタイルで、サウンドの緊張感を更に高めていて見事です。随所で挿入されるアコースティック・パートでは、アコギやフルートやヴィブラフォンらがGENTLE GIANTに迫る緻密なアンサンブルを編み上げていてここでも驚愕。いやはやとんでもないテクニックです。洗練されたテクニカル・プログレとしての完成度の高さこそ次作に譲りますが、溢れ出んばかりのアーティスティックな感性の放出は本作が圧倒的。5大バンドの名作クラスにも匹敵する、文句なしのユーロ・ロック傑作!
スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・バンド、74年作の1st。伊ロックばりに手数多いドラム、YESを彷彿とさせるゴリゴリとアグレッシヴなベースを中心に変拍子バリバリで疾走する「動」のパート。北欧の詩情豊かなメロディが彩る「静」のパート。アンサンブルのテンションと、「動」と「静」が鮮やかに対比された構築美はキング・クリムゾンを彷彿とさせます。ここぞで溢れ出すメロトロンもまたプログレ・ファン号泣。北欧プログレを代表する名作です。
ANGEのマネージャーが設立したCryptoレーベルよりデビューし、フランスらしい耽美な幻想色を持ち、緊張感を持たせながら浮世離れしたファンタジックなサウンドを作り出したグループの76年2nd。前作からさらにその冷たいファンタジアに磨きをかけ、サックスがリードするジャズ・ロックを聴かせています。その耽美で広がりのある世界観はGONGなどのスペース・サイケデリック・ロックにも通じるものですが、澄み切った音像は彼らならではの個性であり、今にも消え入りそうな儚げな世界を構築しています。
Colin GoldringとStewart Goldringの兄弟によって結成され、フルートやサックスを取り入れたジャズ・ロックを基本にKING CRIMSON、VAN DER GRAAF GENERATORのような音楽性を放つイギリスのプログレッシブ・ロックグループの71年作1st。その内容はサイケデリックな質感を有したダークな質感が個性的なサウンドであり、呪術的とすら言える様なヘヴィーなアート・ロックを奏でています。加えて、バロック、古楽風のアンサンブルや繊細なフォークタッチも顔を見せており、ナイーブさとアグレッシブさのコントラストが際立った1枚と言えるでしょう。
後にPOPOL ACEと改名するノルウェーのプログレ・グループ、POPOL VUH名義では最終作となった74年作2nd。JEFF BECK GROUPあたりを思わせるソウルフルなブルース・ロック・ナンバーで幕を開けますが、その後は1曲目を受け継ぐファンキーなノリの良さを随所で見せつつ、全体として初期KING CRIMSONに接近した仄暗い叙情性と哀愁を持ったサウンドを聴かせます。ズッシリ刻むタイトなリズム・セクション、泣きを含んだエモーショナルなギター、そして叙情的なナンバーで存在感を見せるメロトロンらがドラマティックに織り上げるサウンドはかなりの完成度です。1曲目を筆頭にソウルフルに歌い上げるタイプと思ったら、Greg Lakeばりの朗々とした歌唱もまた素晴らしい、歌唱力と表現力に秀でたヴォーカルも特筆。北欧プログレとしてのファンタスティックさでは1stに譲りますが、英プログレ・ファンによりオススメできるのは本作だと思います。名作!
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