2022年1月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
このたび、名実共にスイス最高峰のプログレ・バンドであるサーカスの初CD化を含む4タイトルが、奇跡の国内盤SHM-CD紙ジャケ化を果たしました!
他にもサーカスの後継バンドであるブルー・モーションや、H.R.ギーガーによるジャケットでも人気の高いアイランドなど、スイス・プログレの名作が一緒に紙ジャケリイシューされています。
そんなわけで、今回はニッチな作品もたっぷりフィーチャーして「スイス・プログレ」を大特集!
スイスはヨーロッパの中心に位置し、フランスやドイツをはじめ周辺国の様々な人や物が行き交ってきた技術・文化の交差点。
18世紀より中立主義を掲げ、世界大戦時には各国の芸術家が戦火を逃れてスイスに亡命するなど、欧州各地の優れた芸術が集い、それを盛んに吸収する地でもありました。
なお産業面ではスイスは山岳・高原地帯が多く、あまり農業に適さない土地のため、代わりに腕時計に代表される精密機械工業や傭兵(現在はバチカン衛兵のみ)、金融業などが発達したのだとか。
明媚な自然に囲まれ、他国の文化・芸術を積極的に受け入れつつも、独自の厳格な規律を重んじるスイス。
ドイツやフランスに通ずる粛々とした幻想美が溢れ出すシンフォニック・ロックはもちろん、「テクニカル・プログレ」と称されるような高度な技巧性を誇る作品が多く存在するのは、そんなスイス人たちの規律正しさが影響しているようにも思えます。
それでは、そんなスイス・プログレの名作の数々を見てまいりましょう~。
スイスのプログレと聞いて最初に思い浮かぶのがこの作品という方も多いはず。
YESやGENESISからの影響感じるファンタスティックなサウンドに、PILOTやKLAATUにも負けないキャッチーなメロディが乗っかります。
この完成度、もし英国プログレであったならば、DRUIDやFRUUPPあたりと並び称されていたかも!
あるいは最初に思い浮かぶのはコチラかも!?
上のドラゴンフライもなかなかのインパクトを誇るジャケットですが、こちらはさらに強烈!
巨匠H.R.ギーガーが手掛けたアートワークに包まれた本作ですが、内容も全然負けていません。
強靭でスリリングなチェンバー・アンサンブル&クラシカルで格調高いピアノやシンセの幻想性。
どこまでも不穏でスリリングかつクールな名盤!
2022年1月に待望の全アルバムがSHM-CD国内紙ジャケ化したこのバンドももちろん要注目☆
まるで初期クリムゾンとVDGGとジェントル・ジャイアントが融合したかのような驚愕のサウンドだって!?
しかもエレクトリック楽器はほとんど使ってないというから驚き…。
スイス最高峰プログレ・バンドによる76年作1st、名盤としてより知られる2ndに劣らずの大傑作ですっ。
スイスのみならずユーロ全体でみても人気の高い名作2nd。
ジャケットからはファンタジックなシンフォ作品をイメージしますが、中身は1st同様クリムゾンばりの強度とヘヴィネスでスリリングに突っ走るテクニカル・プログレ!
フリオ・キリコばりの超絶ドラミングも聴きモノの、スイスが生んだユーロ・ロック大傑作。
スイスが誇るテクニカル・プログレ・バンド、キーボードが加わって色彩感と荘厳さを増した80年作3rd。相変わらず非エレクトリック楽器が主体なのにズシリと重々しいアンサンブルが凄すぎる…!
そのバンド名が示す通り、歴代メンバーが集結した9人編成でのライヴを収録。キング・クリムゾンばりのヘヴィで陰鬱なサウンドから、グルーヴィなブラス・ロックまでを自在に行き来するパフォーマンスが激カッコ良い!
そんなCIRCUSのドラマーとkey奏者が結成したこのグループは聴いたかな?
Wキーボード+ドラムという変則的なメンバー構成ながら、それを感じさせないほどに技巧的かつユーロ然としたロマンチックさを感じさせるキーボード・シンフォの逸品!
2020年にSHM-CD紙ジャケでリイシューされたこちらもナイスなグループですよ!
スイスのプログレッシヴ・ロック・バンドによる76年発表の1st。
オルガンとメロトロンによる重厚なアンサンブルを持ち味とするバンドで、曲展開、メロディー・ライン、コーラスワークなどはイエスからの影響が強く感じられます。
イエス・ファンは要チェック!
79年に発表された最終作2nd。
1st同様イエスからの影響をベースにした、軽やかで明朗かつ緻密なシンフォニック・ロックを展開。
B面を占める17分の大曲「The Whip」での荘厳な構築美は見事!
ドイツと隣り合っているだけあって、「クラウトロック」に分類されるようなサイケで実験的な作品もございます。
スイスと言えば、同国を拠点とした多国籍サイケ・プログレ・バンドがいましたね!
ベルギー生まれのkey奏者、ヨエル・ヴァンドローゲンブロックを中心にスイスで結成、ドイツ人やイタリア人メンバーを含む多国籍グループ。
グルーヴィーな反復ビートに乗って、ガラスが割れる音、女性の悲鳴、ベートーヴェン「運命」…などなどが渦巻くあまりに危険でディープなサイケ盤。
聴くのは1日1回まで!
フォーク、サイケ、ハード・ロック、ブルース・ロック、プログレを同じ鍋でグツグツと煮込んだみたい・・・。
混沌としつつもメロディアスでドライヴィングなサウンドが格好いい、スイスが誇るクラウトロック名盤71年作。
スイスのグループながら、ウルリッヒ・カイザー主催のクラウトロック名レーベルPilzからリリースされた71年作。
ジャケは不気味ですが、中身は奥ゆかしいフルートやスモーキーなハモンドを活かした、ジャーマンらしいオルガン・ロック。
さて、ここからはよりニッチでディープなスイスの「秘宝」的プログレ作品をご紹介して参りましょう!
74年の唯一作。ただひたすらに優美でリリカルで歌心に溢れたアンサンブルは、聴いていて涙が出そうなほど。スイスにこんな感動的なシンフォが眠っていたなんて・・・。
こちらも自主制作盤ですが、内容は「トレース meets キャメル」と言えちゃう絶品シンフォ!コロコロと愛らしいツイン・キーボードを主体に、凛とした気品を保ちつつ情熱も兼ね備えたアンサンブルを展開しています。
まるでクリムゾンの『ポセイドンのめざめ』meets ウィッシュボーン・アッシュ!?
ブルース・ロックを下地にユーロらしい奥ゆかしさを散りばめたスイス産プログレの隠れた名品。
そうそう、スイスのプログレ・ミュージシャンで忘れてはならないのが、YES『RELAYER』に参加したキーボーディスト、パトリック・モラーツですよね。彼もやはり精密的な超絶テクニックで知られているあたり、やはり「技巧性」というのはお国柄でしょうか!?
最後は近年のスイスから登場した注目作をピックアップ!
30年以上のキャリアを誇るベテランながら、現在も積極的に活動するテクニカル・シンフォ・グループ。70年代を思わせる淡いオルガンとエッジの立ったギター、手数多くパワフルなドラムがスリリングに絡み合うアンサンブル。かと思えば叙情的なメロディが溢れ出す幻想的なパートもあり、「テクニカル」と称されつつもバランスの取れた構成で魅せてくれる逸品です。
溢れんばかりのメロトロンと優美なメロディを奏でるムーグ・シンセ!ここぞでは、ギターが轟いて狂おしいハード・シンフォを聴かせるし、これはジェネシスやクリムゾンのファンは必聴のスイスの新鋭、2014年作っ!
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「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことをコンセプトに、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を幅広く紹介するコラム。担当は、MUSEAからデビューした日本のアーティストnetherland dwarf!
90年代以降のスイスを代表するグループとして活躍した実力派シンフォ・グループが、01年以来18年ぶりにリリースした19年作5th!ポンプ・ロックにも通じるGENESIS憧憬スタイルを軸に、キーボードがもたらすファンタジックさとリズム&ギターが担う重厚さを絶妙に対比させた丹念なシンフォニック・ロックを聴かせてくれます。18年のブランクを感じさせない貫禄の一作!
いかがだったでしょうか?
スイス・プログレの奥深さを実感していただければ幸いです。
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フランスとドイツに接する美しき小国ベルギーが生んだ個性みなぎるプログレ作品の数々をレコメンド!
スイスを代表するプログレ・グループ。77年作の2nd。フリオ・キリコばりのスリリングなドラム、クリムゾンを想わせるサックス&フルートを中心に絶えず畳み掛けるスリリングな展開は、これぞプログレ。リリカルなパートも交えた緩急の構成も見事。アナログのB面すべてを使った大曲「Movin’ On」は彼らの魅力がすべて詰まった名曲。必聴盤。
スイス本国盤、ライナーに歌詞&メンバー写真掲載、プラケース仕様
盤質:無傷/小傷
状態:良好
若干スレあり
スイスのプログレ・グループ。P.F.MやAQUA FRAGILEで知られるプロデューサーの元、77年にイタリアで録音された唯一作。変拍子を多用したテンション溢れる展開とクールな質感の管楽器が印象的なHENRY COW的なサウンドに、クラシカルで格調高いシンセ&ピアノが絡むサウンドはオリジナリティに溢れ、センス抜群。圧倒的な完成度を誇る傑作。
直輸入盤(帯・解説付仕様)、ボーナス・トラック1曲、定価2800+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
ケースツメ跡あり、若干カビあり、帯ミシン目に沿って切れ目あり
スイスのグループ、81年の唯一作。YESやGENESISからの影響が感じられるシンフォ・プログレ。柔らかい音色のリリカルなキーボード、歌心溢れるメロディアスなギターを中心とするファンタスティックなアンサンブルが聴き所。PILOTやKLAATUなどブリティッシュ・ポップに通ずる哀愁溢れるキャッチーなメロディも魅力的です。歌詞も英語で、言われなければスイス産とは全く思わない、ブリティッシュの薫り漂う作品。ジャケのイメージとは違い、ENGLAND「GARDEN SHED」あたりと同スタイルの愛すべき名作。
直輸入盤(帯・解説付仕様)、ボーナス・トラック2曲、定価2500+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
ケースツメ跡あり、若干黄ばみあり
スイスのテクニカル・シンフォ・バンドCIRCUSのドラマー、フリッツ・ハウザー等によって結成され’80年にリリースされたブルー・モーションの唯一作。2人のキーボーディストとドラムスという変則的なトリオ編成で、技巧的でエモーショナルな演奏を繰り広げる名盤。(レーベルインフォより)
直輸入盤(帯・解説付仕様)、定価2500+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯ミシン目に沿って若干切れ目あり、帯に若干折れあり、若干汚れあり
81年に自主制作リリースされた、スイス産シンフォニック・ロックの逸品。TRACEとCAMELを合わせたような、クラシックの引用も多用し凛とした気品を保ちつつも情熱的に展開される、ツイン・キーボードを主体とするアンサンブルが絶品です。スイスと言えばISLANDやDRAGONFLY、CIRCUS当たりが知られますが、こんな素晴らしいバンドが存在したとはっ!
17年初CD化、デジタル・リマスター。最終曲終了後約10秒にわたって雑音が入りますが、CD化の際のミスと思われます
フルート、サックス、リコーダー、ヴァイオリン(ヴィオラ)、チェロなどをフィーチャーしたスイスはクール出身のグループによる74年リリースの唯一作。これは絶品です!ゆったりと刻まれるリズムに乗って、クラシカルで柔らかなタッチのエレピとオルガン、切ない泣きのフレーズを主とするギター、ひたすら気品高く優美に鳴らされるフルートやリコーダー、奥ゆかしくも伸びやかなフレーズを紡ぐヴァイオリンやチェロ、それらが美しく交わり合いながらデリケートに織り上げていくシンフォニック・ロックは、とにかく息を呑むほどに感動的。テクニカルではないのですが、どの楽器のプレイにも「歌心」が溢れんばかりで、アルプスの雄大な山々を臨むスイスの自然情景をそのまま音に置き換えたような映像喚起力に満ちた演奏を聴かせてくれます。英語とドイツ語で歌う厳かでロマンチックな表情の低音男性ヴォーカルも見事にサウンドとマッチ。CAMELやケベックのシンフォ・バンドOPUS 5あたりがお好きならきっと間違いない、まさしくユーロ・シンフォの隠れ傑作です!
78年から80年までの活動期間に3枚のアルバムを残したスイスのグループ、80年作の最終作。ALLMAN BROTHERSの曲から拝借したであろうグループ名の通り、ギターにはブルース・ロックの残り香を感じますが、このバンドが面白いのは、ユーロ・ロックらしい幻想性や寂寥感に満ち溢れているところ。ひっそりとたなびくように鳴るキーボード(メロトロン?)、初期クリムゾンを彷彿させるアヴァンギャルドなサックスやフルート、マイケル・ジャイルスからの影響を強く感じるタイト&メロウなドラム、そして、物悲しいヴォーカルとリリカルなメロディ。まるでクリムゾンの『ポセイドンのめざめ』『リザード』 meets ウィッシュボーン・アッシュって感じ!?辺境プログレらしい奥ゆかしさもたっぷりなユーロ・ロック&プログレの隠れた名品です。
ギタリストSandro Chiesaを中心に結成、個性的なグループを多く排出した独Pilzよりリリースされた、スイス出身オルガン・ロック・グループによる71年唯一作。スモーキーな渋みを帯びたサウンドに仕上がっており、ジャジーなオルガン、ブルース・ロック的なアンサンブルはかなり聴かせるもので、フルートがリードを取るパートではゲルマンのロマンティシズムと深み、翳りも醸し出されます。ブルージー且つハードな楽曲が並んでいるものの、Pilzレーベルらしいサイケデリアをところどころに漂わせているのも印象的。隣国スイス産ながら、クラウト・ロック・ファンなら是非押さえておきたい好作品と言えるでしょう。
70年代の英プログレへの憧憬に満ちた07年のデビュー作『Loneliness』が高く評価され、カンサスのオープニング・アクトにも起用されたスイスの実力派新鋭グループによる14年作2nd。溢れ出るメロトロンをバックに柔らかなメロディを奏でるムーグ・シンセ、そして、北欧に通じる透明感や哀感に満ちた中性的なハイ・トーンのヴォーカルと幻想的なメロディ。ジェネシスやキャメル由来のファンタスティックなアンサンブルを軸に、ここぞでは、ギターがエッジの立ったリズムで畳み掛け、リズム隊も力強く疾走し、キング・クリムゾン『レッド』や初期アネクドテンを彷彿させるような狂おしいハード・シンフォを聴かせます。パルサーやカルプ・ディアンなどフレンチ・シンフォに通じる浮遊感やクールな叙情美もまた印象的。デビュー作に続いて、往年のプログレ/シンフォニック・ロックのファンは必聴と言える名作です!
高水準のグループが多かった70年代のスイスのプログレッシヴ・ロック・シーンの中でも最高位に位置するバンド、サーカスの1980年リリースの3作目のスタジオ作。専任のキーボーディストを加えたことにより、前2作よりシンフォニック色を強め、音に色彩感が加味されている。緊張感はやや後退したが、叙情性は全作品中一番といえる。本作を最後にバンドは解散する。(レーベルインフォより)
紙ジャケット仕様、SHM-CD、バンドによる21年リマスター、ボーナス・トラック2曲収録、定価3143+税
【購入特典:カケレコオリジナル特典ペーパーをプレゼント!】
スイスのプログレッシヴ・ロック・バンド、サーカスの1978年リリースのライヴ・アルバム。バンド結成時にあった大編成バンドとしてのコンセプトを再現しようと、前2作のメンバー4人に加え、総勢9名のゲストを加えての演奏で、うちステファン・アマン(k.b)はサードで正式メンバーとなる。全曲スタジオ作とは異なる楽曲で、演奏力の高いバンドだけに、あえて新作をライヴ盤としてリリースしたのであろう。(レーベルインフォより)
紙ジャケット仕様、SHM-CD、バンドによる21年リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価3143+税
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