2020年9月24日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スイスはヨーロッパの中心に位置し、フランスやドイツをはじめ様々な人や物が行き交ってきた技術・文化の交差点。
18世紀より中立主義を掲げ、世界大戦時には各国の芸術家が戦火を逃れてスイスに亡命するなど、欧州各地の優れた芸術が集い、それを盛んに吸収する地でもありました。
なお産業面ではスイスは山岳・高原地帯が多く、あまり農業に適さない土地のため、代わりに時計などの精密機械工業や傭兵(現在はバチカン衛兵のみ)、金融業が発達したのだとか。
明媚な自然に囲まれ、他国の文化・芸術を積極的に受け入れつつも、独自の厳格な規律を重んじるスイス。
ドイツやフランスに通ずる粛々とした幻想美が溢れ出すシンフォニック・ロックはもちろん、「テクニカル・プログレ」と称されるような高度な技巧性を誇る作品が多く存在するのは、そんなスイス人たちの規律正しさが影響しているのかもしれませんね。
そんなスイス・プログレの傑作&怪作がMARQUEEレーベルより紙ジャケでリリースされましたので、まずはそちらをご紹介。
スイスのプログレッシヴ・ロック・バンドによる76年発表の1st。オルガンとメロトロンによる重厚なアンサンブルを持ち味とするバンドで、曲展開、メロディー・ライン、コーラスワークなどはイエスからの影響が強く感じられます。イエス・ファンは要チェック!
79年に発表された最終作2nd。1st同様イエスからの影響をベースにした、軽やかで明朗かつ緻密なシンフォニック・ロックを展開。B面を占める17分の大曲「The Whip」での荘厳な構築美は見事!
ベルギー生まれのkey奏者、ヨエル・ヴァンドローゲンブロックを中心にスイスで結成、ドイツ人やイタリア人メンバーを含む多国籍グループ。グルーヴィーな反復ビートに乗って、ガラスが割れる音、女性の悲鳴、ベートーヴェン「運命」…などなどが渦巻くあまりに危険でディープなサイケ盤。聴くのは1日1回まで!
それではここから、スイス・プログレの名盤をご紹介してまいりましょう~。
スイスが誇るプログレ・グループによる77年作2nd。ジャケットからはファンタジックなシンフォ作品をイメージしますが、中身はクリムゾンばりの強度とヘヴィネスでスリリングに突っ走るテクニカル・プログレ!フリオ・キリコばりの超絶ドラミングも聴きものです。
こちらもスイスが誇る名盤、同郷の画家ギーガーの絵をジャケットにあしらった77年の唯一作。ジャケのインパクトに劣らぬ強靭でスリリングなチェンバー・プログレを展開しつつ、クラシカルで格調高いピアノやシンセが柔らかな幻想性も添えていて絶品。
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コラム「そしてロックで泣け!」が好評だった音楽ライター舩曳将仁氏による、新連載コラム「世界のジャケ写から」。世界のプログレ作品より魅力的なジャケットを取り上げ、アーティストと作品、楽曲の魅力に迫ってまいります。
こちらのグループはYESやGENESISからの影響を感じさせるファンタスティックなシンフォ・サウンドが特徴的。哀愁のあるキャッチーなメロディはPILOTやKLAATUも彷彿とさせるし、スイスながらブリティッシュの香り漂う作品です。
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CIRCUSのドラマーとkey奏者が結成したグループの80年唯一作。Wキーボード+ドラムという変則構成ながら、技巧的かつユーロ然としたロマンチックさを感じさせるキーボード・シンフォの傑作!
ドイツと隣り合っているだけあって、「クラウトロック」に分類されるようなサイケで実験的な作品も。
フォーク、サイケ、ハード・ロック、ブルース・ロック、プログレを同じ鍋でグツグツと煮込んだみたい・・・。混沌としつつもメロディアスでドライヴィングなサウンドが格好いい、スイスが誇るクラウトロック名盤71年作。
スイスのグループながら、ウルリッヒ・カイザー主催のクラウトロック名レーベルPilzからリリースされた71年作。ジャケは不気味ですが、中身は奥ゆかしいフルートやスモーキーなハモンドを活かした、ジャーマンらしいオルガン・ロック。
さて、ここからはよりニッチでディープなスイスの「秘宝」的プログレ作品をご紹介して参りましょう!
74年の唯一作。ただひたすらに優美でリリカルで歌心に溢れたアンサンブルは、聴いていて涙が出そうなほど。スイスにこんな感動的なシンフォが眠っていたなんて・・・。
こちらも自主制作盤ですが、内容は「トレース meets キャメル」と言えちゃう絶品シンフォ!コロコロと愛らしいツイン・キーボードを主体に、凛とした気品を保ちつつ情熱も兼ね備えたアンサンブルを展開しています。
まるでクリムゾンの『ポセイドンのめざめ』meets ウィッシュボーン・アッシュ!?ブルース・ロックを下地にユーロらしい奥ゆかしさを散りばめたスイス産プログレの隠れた名品。
そうそう、スイスのプログレ・ミュージシャンで忘れてはならないのが、YES『RELAYER』に参加したキーボーディスト、パトリック・モラーツですよね。彼もやはり精密的な超絶テクニックで知られているあたり、やはり「技巧性」というのはお国柄でしょうか!?
最後は近年のスイスから登場した注目作をピックアップ!
30年以上のキャリアを誇るベテランながら、現在も積極的に活動するテクニカル・シンフォ・グループ。70年代を思わせる淡いオルガンとエッジの立ったギター、手数多くパワフルなドラムがスリリングに絡み合うアンサンブル。かと思えば叙情的なメロディが溢れ出す幻想的なパートもあり、「テクニカル」と称されつつもバランスの取れた構成で魅せてくれる逸品です。
溢れんばかりのメロトロンと優美なメロディを奏でるムーグ・シンセ!ここぞでは、ギターが轟いて狂おしいハード・シンフォを聴かせるし、これはジェネシスやクリムゾンのファンは必聴のスイスの新鋭、2014年作っ!
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「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことをコンセプトに、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を幅広く紹介するコラム。担当は、MUSEAからデビューした日本のアーティストnetherland dwarf!
90年代以降のスイスを代表するグループとして活躍した実力派シンフォ・グループが、01年以来18年ぶりにリリースした19年作5th!ポンプ・ロックにも通じるGENESIS憧憬スタイルを軸に、キーボードがもたらすファンタジックさとリズム&ギターが担う重厚さを絶妙に対比させた丹念なシンフォニック・ロックを聴かせてくれます。18年のブランクを感じさせない貫禄の一作!
スイスを代表するプログレ・グループ。77年作の2nd。フリオ・キリコばりのスリリングなドラム、クリムゾンを想わせるサックス&フルートを中心に絶えず畳み掛けるスリリングな展開は、これぞプログレ。リリカルなパートも交えた緩急の構成も見事。アナログのB面すべてを使った大曲「Movin’ On」は彼らの魅力がすべて詰まった名曲。必聴盤。
スイスのグループ、81年の唯一作。YESやGENESISからの影響が感じられるシンフォ・プログレ。柔らかい音色のリリカルなキーボード、歌心溢れるメロディアスなギターを中心とするファンタスティックなアンサンブルが聴き所。PILOTやKLAATUなどブリティッシュ・ポップに通ずる哀愁溢れるキャッチーなメロディも魅力的です。歌詞も英語で、言われなければスイス産とは全く思わない、ブリティッシュの薫り漂う作品。ジャケのイメージとは違い、ENGLAND「GARDEN SHED」あたりと同スタイルの愛すべき名作。
直輸入盤(帯・解説付仕様)、ボーナス・トラック2曲、定価2625
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
ケースツメ跡あり、帯中央部分に色褪せあり
スイスのプログレッシヴ・ロック・バンドによる76年発表の1stアルバム。オルガンとメロトロンによる重厚なアンサンブルを持ち味とするバンドで、曲展開、メロディー・ライン、コーラスワークなどはイエスからの影響が強く感じられます。シンフォニック・ロックの名作。
81年に自主制作リリースされた、スイス産シンフォニック・ロックの逸品。TRACEとCAMELを合わせたような、クラシックの引用も多用し凛とした気品を保ちつつも情熱的に展開される、ツイン・キーボードを主体とするアンサンブルが絶品です。スイスと言えばISLANDやDRAGONFLY、CIRCUS当たりが知られますが、こんな素晴らしいバンドが存在したとはっ!
17年初CD化、デジタル・リマスター。最終曲終了後約10秒にわたって雑音が入っておりますが、CD化の過程でのミスと思われます。ご了承ください
フルート、サックス、リコーダー、ヴァイオリン(ヴィオラ)、チェロなどをフィーチャーしたスイスはクール出身のグループによる74年リリースの唯一作。これは絶品です!ゆったりと刻まれるリズムに乗って、クラシカルで柔らかなタッチのエレピとオルガン、切ない泣きのフレーズを主とするギター、ひたすら気品高く優美に鳴らされるフルートやリコーダー、奥ゆかしくも伸びやかなフレーズを紡ぐヴァイオリンやチェロ、それらが美しく交わり合いながらデリケートに織り上げていくシンフォニック・ロックは、とにかく息を呑むほどに感動的。テクニカルではないのですが、どの楽器のプレイにも「歌心」が溢れんばかりで、アルプスの雄大な山々を臨むスイスの自然情景をそのまま音に置き換えたような映像喚起力に満ちた演奏を聴かせてくれます。英語とドイツ語で歌う厳かでロマンチックな表情の低音男性ヴォーカルも見事にサウンドとマッチ。CAMELやケベックのシンフォ・バンドOPUS SANKあたりがお好きならきっと間違いない、まさしくユーロ・シンフォの隠れ傑作です!
90年代以降のスイスを代表するグループとして活躍した実力派シンフォ・グループが、01年以来18年ぶりにリリースした19年作5th!従来通りGENESISへの憧れを抱いたポンプ・ロックに通じるスタイルを軸に、キーボードがもたらすファンタジックさとリズム&ギターが担う重厚さを絶妙に対比させた丹念かつ実直なシンフォニック・ロックを聴かせます。華やかなトーンで疾走するシンセに、エッジの立ったキレのあるギターが絡み、伸びやかで声量豊かなハイトーン・ヴォーカルがキャッチ―なメロディを歌い上げる。場面ごとに表情を変えながらまるで物語を紐解くように進行していくドラマチックな演奏と曲構成は、彼らがGENESISの遺伝子を確かに受け継ぐバンドであることを感じさせます。ピアノやストリング・シンセが静謐に流れゆく、抑えたパートでのリリカルな表現力も圧巻。18年というブランクを経ながらも、変わらず一級のシンフォニック・ロックを堂々と提示する傑作です。
スイスのテクニカル・シンフォ・バンドCIRCUSのドラマー、フリッツ・ハウザー等によって結成され’80年にリリースされたブルー・モーションの唯一作。2人のキーボーディストとドラムスという変則的なトリオ編成で、技巧的でエモーショナルな演奏を繰り広げる名盤。(国内盤帯より)
Sandro Chiesaを中心に結成され、個性的なグループを多く排出したPilzからリリースされたジャーマン・クラウトロックグループの71年作。ジャーマン・ロックらしいスモーキーな作品となっており、ジャジーなオルガン、ブルース・ロック的なアンサンブルが素晴らしく、フルートがリードを取るパートではゲルマンのロマンティシズムと深み、翳りが襲います。全編にブルージー且つハードな楽曲が並んでいるものの、Pilzレーベルらしいサイケデリアをところどころに漂わせており、非常に個性的なジャーマン・へヴィー・ロックの好作と言えるでしょう。
ドイツ/イタリア/スイス人で構成されるジャーマン・サイケ・グループ、71年作。ささくれ立ったオルガン、凄まじい熱量のサイケ・ギター、電気処理を施したヴォーカルなど、あまりにディープで凶暴なサイケ・サウンドが渦巻くアンサンブルは圧巻の一言!熱っぽく舞うフルートも印象的です。強烈なジャケのインパクトそのままというべき怪作!
78年から80年までの活動期間に3枚のアルバムを残したスイスのグループ、80年作の最終作。ALLMAN BROTHERSの曲から拝借したであろうグループ名の通り、ギターにはブルース・ロックの残り香を感じますが、このバンドが面白いのは、ユーロ・ロックらしい幻想性や寂寥感に満ち溢れているところ。ひっそりとたなびくように鳴るキーボード(メロトロン?)、初期クリムゾンを彷彿させるアヴァンギャルドなサックスやフルート、マイケル・ジャイルスからの影響を強く感じるタイト&メロウなドラム、そして、物悲しいヴォーカルとリリカルなメロディ。まるでクリムゾンの『ポセイドンのめざめ』『リザード』 meets ウィッシュボーン・アッシュって感じ!?辺境プログレらしい奥ゆかしさもたっぷりなユーロ・ロック&プログレの隠れた名品です。
共にYESで活躍したビル・ブルーフォード&パトリック・モラーツが80年代に結成したジャズ・ロック・デュオ。1985年東京赤坂での来日公演を収録した09年発掘ライヴ盤。インプロビゼーション主体の演奏ながら、アコースティック・ドラムやエレクトロニック・パーカッションなどを駆使したブルーフォードの楽しげなドラミング、モラーツの流麗なピアノにふくよかなシンセサイザーが織り成すアンサンブルは単に超絶技巧的なだけでなく非常に有機的でドラマチック。プログレ・ファン、ジャズ・ロック・ファン両方にお楽しみいただける逸品です。
1979年に発表されたウェルカムのセカンドにて最終作。当時、ピクチャー・ディスク・ヴァージョンもリリースされた。メンバーは前作と同じ3人。全5曲中、3曲はポップな小品だが、注目すべきは「ELF」と「THE WHIP」の2曲の大曲。それぞれ7分、17分を越え、前作の作風を更に洗練、荘厳化したシンフォニック・ロックで、ファンの度肝を抜く完成度。(帯解説文より)
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