2013年11月15日 | カテゴリー:ユーロ・レーベル探求,世界のロック探求ナビ
タグ: プログレユーロ・レーベル探求
寄稿:ike333さん
「名門レーベルについて当時の流通事情なども・・・」とカケレコさんにご紹介いただきつつ、昨年秋から12週に渡り、カケレコブログにユーロレーベルについて寄稿させていただきました。実は、その時取り上げませんでしたが、まだまだ気になるレーベルがありました。良く分からないなどの事情があり、寄稿をつい躊躇してしまいました。が、無謀承知で、これら心残りのレーベルについて改めて寄稿させていただきます。
前衛音楽レコード会社CEZANE傘下に70年代後半に存在した前衛/ジャズロックをリリースしていたレーベルのようです。
HELDONの5作目『Un Reve Sans Consequences Speciale』(1976)と6作目『Interface』(1978)が同レーベルからリリースされています。この5作目以降、シンバル等金物を多用して無機質的な感触のドラミングを聴かせてくれるFrancois Auger (Ds)が参加したことから、Patrick Gauthierのミニマルするシンセサイザー、増々凶暴化するRichard PinhasのFripp的ギターとよくマッチした、HELDONの傑作群を作り上げています。
また、HELDONではなくソロ名義のアルバムを出したことの意図がよく分からないのですが、少し凶暴さに欠けるもののHELDONと同傾向のミニマル音楽をやっているR.Pinhasのソロ第一弾・第二弾(『Rhizosphere』(1977)、『Chronolyse』(1978))も同レーベルからです。
前衛パーカッショニストGilbert Artman率いるLARD FREEの3作目『Lard Free』(1977)も同レーベルからリリースされましたが、音がぐるぐる回る立体感たっぷりの音空間を楽しめます。
また、G.Artm anの別プロジェクトURBAN SAX初期2作(『Urban Sax』(1977)、『Urban Sax2』(1978))が同レーベルからのリリースですが、サックス奏者を何十人も集めてパイプオルガンの様にサックスのホーン音の壁を築き上げた斬新な作品です。
ジャズロックのアルバムでは、MAGMA別働隊のWEIDORJE 『S/T』(1978)が有名ですね。Paganottiのベースがうなり、Gauthierのkeyがミニマルしています。
SPHEROE は、TRANSIT EXPRESSとBRAND Xを混ぜたような感じの、メロディアスなギターとエレピ、手数多いドラムスが特徴のクロスオーバーで、2作品(『Spheroe』(1977)、『Primadonna』(1978))を同レーベルからリリースしています。どちらも心地よく素敵な作品です。
この他に、PATCHWORKの『Ouvertures』(1977)は、明るくリラックス感のあるジャズロックアルバム、CATHARSISのKey奏者Roland Bocquet (Key)のソロ唯一作『Paradia』(1977)はリリカルかつふくよかな音楽が展開される好盤です。
70年代中頃、ポールという人が始めた前衛的なレーベルで、後にTAPIOCAレーベルとなりました。当時、輸入盤屋さんでもたまに見かけはしましたが、名門というよりはBC級グルメ系レーベルだと思います。
POLE名義のアルバムでピンクフロイドの『More』辺りにも近い質感のアコギとシンセで紡いだ淡々とした実験音楽アルバム『Inside the Dream』(1975)や、独特の透明感あるジャズロックを展開するPOTEMKINEの1作目『Foetus』(1976)辺りがレーベルの代表作と言えるかもしれません。POTEMKINEはこの1作でPOLEレーベルを離れましたが、3作目の『Nicolas II』(1978)がクールでダイナミックなジャズロックを展開しており当時から気に入っているアルバムです。
VERTOの『Krig』(1976)は、A面はPOTEMKINEのメンバーが参加・協力したジャズロックでまあまあな内容ですが、B面は実験的で少しきついです。
PATAPHONIE 『S/T』(1975)に至っては、現代美術館で時々聞かれるおどろおどろしいBGMとフリーなジャズのミックスで、このレコードを買った私は「しまった感」を十分味わってしまいました。中学時代に所有していた雑誌で『3000 miles away』(1976)をリリースしていたPhilippe Grancherを褒めていましたが、聴いてみると淡々としたキーボードアルバムでした。
同じくKey奏者で、本レーベルから散漫な感じのサントラ盤『Libra』(1976)を発表しているPhilippe Besombesは、初期HELDON的楽曲と比較的聴きやすいロック音楽が交互に登場するPOLE名義の3作目『Besombes-Rizet』(1975)にも参加しています。
米国人女性ボーカルをフロントにするMELODYは、MARTIN CIRCUSなどをリリースしていたレコード会社DISQUES VOGUEからファンタジックなアルバム『Yesterlife』(1977)をリリースする前に、その素材となる『Come Fly With Me』(1976)を本レーベルからリリースしていいますが、片面はシンフォな趣がある楽曲、反対面はパンクの出来損ないのようなアバンギャルドな内容です。
なお、GONGの『Gong est Mort』(1977)は、VIRGINレーベルが勝手に発表したライブアルバムに対抗してアレンGONGが発表したライブとのことですが、TAPIOCAからリリースされたものです。
19世紀から存在する会社で、70年代にはEMIのフランス支部の様なレーベルとなっていました。ジルベール・ベコー、ジャック・イジュランなど錚々たるシャンソン歌手のレコードを出していますが、プログレ系のアルバムもあります。
DELIRED CAMELEON FAMILY『S/T』(1975)は、Gilbert Artmanプロデュース、CLEARLIGHTのCyrille Verdeaux、TriangleのFrancois Jeaneau等参加のサイケなスペース・ロック。
また、オーケストラを大々的に導入して迫力ある歌声を聴かせてくれるGerard Manset の『La mort d’Orion』(1970)は、この時代にしてはとてもプログレッシブ、奇跡的傑作アルバムです。
JUPITER SUNSETの『Back In the Sun』(1970)は、オーケストラ、オルガン、ピアノなどを伴奏に英語でロック・バラードを歌うアルバムで、プロコル・ハルムの様な感じがあります。
後にHELDONに参加することとなるFrancois Auger (Ds)らが参加していたROCHEは、透明感ある溌剌とした歌声を聴かせるPatrick Rocheの仏語の歌が素晴らしく、グループとして唯一作(?)『La Valise De Reve』(1974)は、短いながらも、メロトロンを導入しポップでドラマチックな楽曲で構成された名作(楽曲の良さなどはPOOHみたい)です。
TRIANGLE は、ジャズミュージシャンのFrancois Jeaneau (Sax,key) らによるグループで、1作目『Triangle』(1970)は英語と仏語のブリティッシュロック的作品、2作目『Viens Avec Nous』(1971)は、仏語歌になりますがポップ化しました。3作目『Homonymie』(1972)は、仏語歌の素敵な楽曲が多く、B面3曲目はStephane Grappelliのバイオリンが効果的でスリリングな魅力を持つ好盤です。
この他、Jean-Pierre Alarcenが参加してエモーショナルなギターを炸裂させているMichel Zachaの『Le Vol D’Icare』(1974)などは、かなりシンフォニックで、単なる歌ものアルバムとは言えない要チェックアルバムだと思います。
ARIOLA関連のレーベルの様で、多数のクラシックのカタログがあります。同レーベルからリリースされたフレンチロックは、私が認識している範囲で、ATOLL、MEMORIANCE、MAGMAとなります。
さて、私がATOLLを最初に聴いたのは、中学時代、NHK-FMで「Le Voleur D’extase」が放送されたときです。Andreの少しキャンキャンとした声質ではありますが、しなやかで、シャウトまで美しく聞こえる仏語ボーカルは絶品でした。また、Richard Aubertのバイオリン、Christian Beyaのギターのインタープレイ、凄いバトルでした。同曲を含む『L’araignee-mal』(1975)はフレンチロックの金字塔ですね。なお、同アルバムは2つのバージョンがあり、通常聴けるのはビシッと決まったラストの後にシャンといった木霊の様な音が入るものです。でも初回プレスのものは、木霊が入りません。ATOLLは同レーベルに4作品を残していますが、タイトさが増した3作目の『Tertio』(1977)を始め、どれも傑作だと思います。
MEMORIANCEは、デビュー盤『Et apres…』(1976)が同レーベルから。シャンソンの様なメロディーのボーカル、シンフォニックなキーボードととろけるようなトーンのギターが素敵で、テク的には甘いものの、とても魅力的なアルバムです。なお、2作目『L’ecume des jours d’apres Boris Vian』(1979)は、フィリップスからです。
MAGMAは、ファンキーに吹っ切れた曲で始まる『Attahk』(1978)が同レーベルからリリースされています。コバイア語は殆ど使われていませんが、大傑作ライブアルバムの『Live』(1975)あたりから聴かれる、明るい電気的なダイナミックさあり、聴きやすいアルバムです。
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