2016年4月8日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
タグ: プログレ
こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
今回取り上げるのは、ユニヴェル・ゼロの79年作2nd『HERESIE(異端)』です。
これまで連載にて、プログレ作品を中心に愛聴盤を取り上げその愛聴ポイントを語ってきたスタッフ佐藤ですが、プログレの中にもあまり得意ではないサウンドというのは存在します。
その一つがアヴァンギャルド系のプログレ。
あくまで「ロック」を立脚点とするサウンドを楽しみたいと考えているスタッフ佐藤にとって、リズムやメロディが存在しない楽曲も多いアヴァン・プログレ系は、なかなかの鬼門だったりします。
したがって、総じてアヴァンギャルドな要素を含んでいるチェンバー・ロック系の作品にも苦手なものが多いのが実際のところです。
ただ、中には音のタイプとして好きか嫌いかという基準を超越して、ただただ作品としての「凄まじさ」に打ちのめされ、屈指の愛聴盤となった作品も少なくありません。スタッフ佐藤にとってユニヴェル・ゼロの諸作はそこに当てはまります。
現在に至るまでのチェンバー・ロックの形を完成させたグループとして、世界各国のチェンバー系グループからリスペクトを集めるベルギーのユニヴェル・ゼロ。
彼らの作品中でも一般に高い評価を受けるのは、ロックのビート感が強く打ち出されチェンバー・ミュージック(室内楽)とロックの融合を完全なものにした3rd「CEUX DU DEHORS(祝祭の時)」や4th「UZED(ユーズド)」あたりでしょう。ただ、聴き手を襲う尋常ではないスリルと緊張感を味わうなら1st、そして暗闇でうごめく得体の知れない音塊に戦慄したいなら2ndが最適。むしろこの初期2作においてこそ、ユニヴェル・ゼロというグループの本質が剥き出しになっているように思うのです。
特に2nd『HERESIE』で展開される、およそ「ロック」と言うには異形に過ぎる音像は、初めて聴いた時には本当に衝撃的でした。「これもロックなのか・・・。」と、ロックと呼べるものの極北に触れた気がしたのを覚えています。
一曲目の大作「LA FAULX」は、ずばり「音で聴くゴシック・ホラー」。不安を煽るハーモニウムの音色をバックに、管弦楽器による不協和音を巧みに組み合わせ、じわじわと恐怖心を煽り立てていく演奏が見事です。途中に聞こえてくる忌まわしき呪文のような呟き。まるで邪教の儀式が執り行われているかのようなイメージが浮かび上がります。決して大げさでなく、音だけでちょっとしたホラー映画を見た後のように緊張からくる疲れが襲ってくるはず。それくらいに真に迫った恐怖の質感が本作には克明に描き出されているように感じられます。
ところで彼らの幾つかの作品は、かのH.P.ラヴクラフトの世界観からインスピレーションを得ていることが知られていますが、なるほどこの曲もラヴクラフト作品のBGMとして聴けばかなりのはまり具合だと思いませんか?暗がりからインスマス顔がのっそりと現れてきそうです。
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