2024年11月8日 | カテゴリー:ライターコラム,世界のジャケ写から 舩曳将仁
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ヤフー・ジャパンのトップ・ページにアクセスすると、ニュースのトピックスのところに「20代女性に聞いたモテオジの特徴5選」、「若者に好かれる50代男性の特徴7選」といった記事があがってくる。どうやら知らず知らずのうちにそういうのを見ているみたい。ほら、あれだ、間違ってクリックしちゃうことも多いしな。いや、変な言い訳は止めよう。ハッキリと気になって見ている。そりゃあ素材に限界はあるけれど、やっぱり好印象を持たれたいとは思うわけですよ、いくつになっても。
そんな記事を読んでいて、なんとなくわかってきたのは、人に好印象を与える秘訣は「清潔感」だということ。これが実は難しくて、「清潔」=「清潔感」ではないらしい。「清潔感とはなんぞや?」と思っている人は多いようで、それに関することを説明したサイトやYou Tubeとかも結構あったりする。みんな、ぶつかる壁なのかしら? 「清潔感」を出す秘訣は色々あるようだけど、ひとつにはヨレヨレとかシワシワの服はアカンみたい。それなら何とかなりそうな気もする。でも服選びのセンスには自信がない。これまで服のセンスで褒められたことがない。
センスって、天性のものもあるけど、やはり磨かれていくものだと思う。常に視野を広げて、様々なものを吸収して、取捨選択して、間違ってしまったなら素直な気持ちで否を認めて改めて、コツコツと磨き上げていくしかない。
そこで今回は、「どんなセンスしてるんだ?!」という失敗からリカバリーした例として(?)、ILLUSION『ILLUSION』を紹介したい。ILLUSIONといえば、ブリティッシュ・ロック・ファン、叙情メロディ愛好家には至宝といえるバンド。僕も大好きで、事あるごとに雑誌とかで紹介してきたし、再発CDのライナーも書かせてもらった。でもまだまだ啓蒙し足りない!
ILLUSIONの中心人物はジム・マッカーティ。彼の歴史を辿れば、YARDBIRDSにまでさかのぼる。言わずと知れた世界三大ギタリストを輩出したバンドだ。1962年に結成した彼らは、ギターにエリック・クラプトンが加入してから人気爆発。1965年にはクラプトンに代わってジェフ・ベックが加入。さらに人気は高まり、翌年にはジミー・ペイジが加入。ベックは抜けるが、YARDBIRDSはアメリカでも人気を獲得していく。ジミー・ペイジはやる気十分だったが、オリジナル・メンバーのキース・レルフ(vo)、クリス・ドレア(b)、ジム・マッカーティ(ds)の三人は、これまでのハード・ワークやドラッグの問題などもあり次々と脱退。残されたジミー・ペイジが、LED ZEPPELINを組んでロック史に名を刻むことになるのは、カケレコ・ユーザーならご存知の通り。
さてジム・マッカーティはというと、キース・レルフとフォーク・デュオのTOGETHERを結成。1968年にシングル「Henry’s Coming Home / Love Mum And Dad」を発表する。そこにキースの妹のジェーン・レルフ(vo)、ルイス・セナモ(b)、NASHVILLE TEENSのジョン・ホウクン(kbd)が合流し、新たなバンドとしてRENAISSANCEを結成する。ピアノを大胆に使用したクラシカルなロックという音楽性は、まさにプログレの時代ならではのオリジナリティに溢れるものだった。
1969年、彼らはデビュー作『RENAISSANCE』を発表する。ジャケットに使用されたのは、フランスのアーティスト、クロウド・ジェニソンの「The Downfall Of Icarus」という絵画作品だ。ギリシャ神話に登場するイカロスの物語をテーマに描いた作品を、ルネッサンスというバンド名のジャケットに使うという、なんという良いセンスなんでしょう! ところがアメリカ盤は別ジャケット。実にアメリカらしい、あっけらかんとした感じの明るいデザイン。音楽性とは真逆の方向性です。ちなみに裏ジャケットは、後に有名になるポール・ホワイトヘッドが手掛けた、ダークな雰囲気のイラスト。どういうセンスなんだろう? いや、このセンスはまだ問題なしです。
1971年、RENAISSANCEは2作目『ILLUSION』を発表する。ジャケットを担当したのはポール・ホワイトヘッド。SF的センスのイラストが彼らの音楽性にあっているかどうかはさておき、神秘的な雰囲気は感じられる。ジム・マッカーティの叙情メロディ・センスが冴える「Love Is All」「Face Of Yesterday」という美しい曲もあるが、同作は当初ドイツのみでのリリース。同作収録曲「Mr.Pine」は、マイケル・ダンフォードを中心とした全く異なるメンバーで録音されたものになっているなど、バンドはすでに崩壊状態にあった。
RENAISSANCEは、そのマイケル・ダンフォードが中心となり、新しいメンバーを迎えて再スタート。ジム・マッカーティはメンバーにならなかったが、新生RENAISSANCEの再デビュー作となった『PROLOGUE』(1972年)に「Kiev」「Bound For Infinity」を提供するなど外部から関わっている。続けて2作目『ASHES ARE BURNING』(1973年)に「On The Frontier」、3作目『TURN OF THE CARD』(1974年)に「Things I Don’t Understand」を提供しているが、いずれも愁いに満ちたメロディの良曲だ。
人気を高めていくRENAISSANCEに刺激されたか、自らも表舞台での活動を目指したジム・マッカーティは、RAW MATERIALのデヴィッド・グリーンらとSHOOTを結成。1973年に『ON THE FRONTIER』を発表する。RENAISSANCEに提供した曲をセルフ・カヴァー、しかもアルバム・タイトルにするなど便乗感が半端ない。いや、ジムもそれだけ表舞台への復帰に本気だったということなのかもしれないが、このジャケットは何だ?! なぜか時計だけは外さない、上半身が裸の小太りヒゲ男。その男がヒゲを整えながらピストルを構えている。わけわからんセンス?! 手掛けたのはファビオ・二コリ。STRAWBSやSUPERTRAMPなどのジャケットも手掛けることになるデザイナーだ。ジャケットがとにかくヒドイ同作、カントリー調にアレンジした「On The Frontier」をはじめ、全体的にカラッとしたサウンドの方向性という内容もピントがずれているような気がする。ジム作の「Sepia Sister」「Old Time Religion」は後のILLUSIONにも通じる良曲で、一度は聴いてほしいと思うけれど。ちょっと、このジャケットのセンスはダメでしょう。
SHOOTがヒットしなかったジム・マッカーティは、再びキース・レルフとタッグを組み、ジェーン・レルフら初期RENAISSANCEメンバーも参集してILLUSIONを結成する。さあこれからというところで、キース・レルフが感電死するという悲劇に見舞われるが、彼の遺志をついで、1977年にILLUSIONとしてのデビュー作『OUT OF THE MIST』を発表する。とんでもないセンスのジャケットで失敗したSHOOTを反省した……かどうかはわからないが、ジェーン・レルフのポートレート写真を中央に据えたデザインがいいじゃないですか! 叙情的で適度にポップなメロディを、フォーク、クラシックの要素強めの上品なアレンジで聴かせるという、内容的にも文句なしの一作となった。
そして翌1978年に発表したのが『ILLUSION』だ。ジャケットを手掛けたのはラリー・リアーマンスというアーティスト。リアルな動物や風景画の一方で、シュールな絵画も得意としている。『ILLUSION』のジャケットを飾ったのは、眼下に広がる大地と海の上を、高く飛翔している鳥(カモメ?)。そこで思い出されるのが『RENAISSANCE』のジャケットで落下していたイカロス。高みを目指した初期RENAISSANCEの活動は、望まぬ形でイカロスのように落ちてしまった。再起をかけたSHOOTのジャケットのセンスは酷かった。まあ、SHOOTはいいか。ともかく彼らはILLUSIONというユニットで、新たな飛翔を目指していくという、そんな彼らの熱い想いを感じさせるジャケットだ。
楽曲のクオリティも前作と肩を並べるもので、叙情的メロディを愛する人ならば聴いて損はない。いや、聴かないともったいない! ところが当時はヒットといかず、3作目の製作に入るがお蔵入りに(後に『ENCHANTED CARESS』というタイトルでCD化)。そのままILLUSIONは活動を停止する。ジム・マッカーティは、ソロやRENAISSANCE ILLUSION名義でアルバムを発表するなど活動を継続していくが、まずはILLUSIONを聴いてみることをおススメします。ジャケットの美しさも含めて、もっと評価されても良い、聴かれるべきだと思います。ここでは『ILLUSION』から、グングンと空のかなたへ舞い上がっていくような雰囲気もある「Madonna Blue」をおススメしておきたい。
それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。
Madonna Blue
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それ以前の「世界のジャケ写から」記事一覧はコチラ!
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成され2枚のアルバムを残したRENAISSANCEが解散、RENAISSANCEはAnnie Haslamを擁した新体制で成功を収めていきますが、オリジナルRENAISSANCEは2ndアルバムのタイトルをバンド名に再結成。Keith Relfの死を乗り越えてのリリースとなる本77年デビュー作は、Jane RelfとJim McCartyのボーカルが切なく響く作品であり、ブリティッシュ・フォーク・ロックの名盤と言えるでしょう。時代がパンク・ロックへと足並みを揃える時期であり、商業的には成功とは言えなかったものの、英国然とした叙情を感じさせる作品です。
2001年3月16日、東京厚生年金会館でのライヴ。残念ながらフル収録ではないようですが、往年の名曲、アニーのソロ名曲、トスカーナ収録の名曲と、さすがの名曲づくし。心配されていたアニーの声も全く衰えが感じられず、一曲目の「Carpet Of The Sun」から、あの伸びやかで透き通ったハイトーンに感動しきりです。サウンドの方も文句無しで、特にキーボードワークが素晴らしく、往年のオーケストラとの共演ライヴにも劣らない重厚なサウンドを聴かせています。ライヴ盤の「傑作」と言って差し支えないでしょう。
元YARDBIRDSのKeith RelfとJim McCartyを中心に結成されたオリジナル・ルネッサンス。69年のデビュー作。ビート・ポップがベースにありますが、クラシカルで躍動感に溢れたピアノ、荘厳なコーラス・ワークをフィーチャーしたサウンドはたいへん幻想的。変拍子の中をピアノがコロコロと転がるキメのパートから、一転して「月光」のピアノ・ソロへと移行するなど、鮮やかなアレンジも素晴らしい。Keith Relfのヴォーカル、紅一点Jane Relfのヴォーカル、どちらも気品に満ちているのも特筆ものです。レイト60sの英国シーンに華麗に咲いた逸品。
元YARDBIRDSのKeith RelfとJim McCartyを中心に結成されたオリジナル・ルネッサンス。71年2nd。前作の延長線上にある、リリカルなピアノが彩るクラシカルなフォーク・ロックが基本ですが、14分を越える最終曲など、ジャジーなエッセンスも取り入れた、よりスリリングでプログレッシヴなアンサンブルも特筆もの。ジャケットからも伝わる通り、クラシカルでファンタスティックなサウンドをベースに、より宇宙的な壮大さをも目指していたのが伝わってきます。レイト60sからプログレへと移行する過渡期のエネルギーに溢れた秀作。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は72年にリリースされたデビューアルバム。「革命のエチュード」からの引用によるオープニングからクラシカルな味わいと英国ロックの気品、アコースティックな感性を全面に、Annie Haslamの伸びやかなスキャットが映えます。楽曲のふくよかさ、トータルプロダクションの上手さは後の作品に譲るも、彼らにしか作りえない素朴な叙情の片鱗を既に窺うことが出来る好盤です。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は73年にリリースされた2nd。クラシカルな中に多少のサイケデリック感覚を残したデビュー作から方向性が定まり、牧歌的なのどかさと英国叙情、オーケストラを従えたシンフォニック・ロックの世界を作り上げています。以降ライブでも取り上げられる機会の多い名曲となった「カーペット・オブ・ザ・サン」「燃ゆる灰」などを収録。
YARDBIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は74年にリリースされた3rd。前作「燃ゆる灰」で作り上げた優美なシンフォニック・サウンドにさらに磨きをかけ、また、バンドのプロダクションに大いに貢献してきたMichael Dunfordがついに正式加入。「アルビノーニのアダージョ」を取り上げた「冷たい世界」や前作には無かったスケール感を持つ「母なるロシア」などを収録し、バンドは一気にその人気を不動のものとします。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は75年にリリースされた4thであり、彼らの代表作の呼び声も多い名盤。特にリムスキー・コルサコフの同名交響曲に端を発した「シェエラザード夜話」は、「アラビアン・ナイト」の世界をコンセプトに据えた20分を超える超大作であり、オーケストラ・サウンドとロックの融合を目指した英国ロックの1つの結論と呼ぶべき傑作。米国での成功で勢いに乗った彼らの生み出したシンフォニック・ロックの世界は他の追随を許しません。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は76年にリリースされたライブ作であり、アメリカのカーネギー・ホールにてオーケストラを率いて録音(75年6月)された名盤です。デビューアルバムから、アメリカへの足がかりとなった名盤「Scheherazade And Other Stories」までの代表作が余すことなく並んでおり、Annie HaslamのソプラノボーカルとNYフィルのオーケストラが絶妙に溶け合い、孤高のシンフォニック・ロックを作り上げています。
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は77年にリリースされた6thであり、彼らの代表作の呼び声も多い名盤。「Scheherazade And Other Stories」の評価とアメリカでのコンサートの成功によってWEAとワールドワイド・リリースを契約、まさに絶頂を迎えた彼らの自信に溢れた作品となっています。ロック・フォーク・クラシックという彼らの3大要素が惜しみなく発揮されており、女性ボーカル系シンフォニック・ロックの金字塔的な作品といえるでしょう。
19年リイシュー、77年10月ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴを加えた3枚組ボックス、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック2曲、ブックレット・ミニポスター付き仕様
YARD BIRDSのKeith Relf、Jim McCartyを中心に結成されるも、2枚のアルバムを残し解散したイギリスのグループ。72年にソプラノ・ボーカルAnnie Haslamを擁し新体制で活動を再開、ロック・フォーク・クラシックが交差する幻想的な楽曲は今なお色褪せることはありません。本作は78年にリリースされた7thであり、前作同様にオーケストラを取り入れたシンフォニック・ロックを披露。アコースティックな味わいとAnnie Haslamのソプラノボーカルが彩るトラッディーな味わいは相変わらず心地良く響いており、明るくきらびやかな作風となっています。音楽的にはやや意図的なポップ・センスが感じられており、バンドで重要な位置を占めるキーボードはシンセサイザーなどエレクトリックな方向性が見え始めるなど、時代の流れと共に変化する彼らの姿が見受けられます。
79年作。クラシカルなテイストはそのままに、ポップ色が増し、クラシカル・ポップというべき洗練された心踊るサウンドが素晴らしい逸品。
PECLEC32820(ESOTERIC RECORDINGS)
2CD+ブルーレイディスクの3枚組ボックス、ボーナス・トラック10曲、ブルーレイには本編の5.1chサラウンド/ステレオ・ミックス音源 & 79年ライヴ映像を収録
盤質:未開封
状態:良好
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