2023年4月20日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
英国アンダーグラウンド・シーンを代表する名レーベルと言えばVertigo。
ジャズやブルースを土台にした骨太で叙情的な音楽性に、隆盛を見せつつあったプログレと呼応した実験精神を盛り込んだ作品の数々は、来たる70年代に向けた野心を感じさせるものばかりです。
今回はそんなVertigoレーベルの作品群を彷彿させる内容を持った世界のロック作品を探求していきたいと思います☆
まずは実際にVertigoと関連を持つ4枚をご紹介!
ドイツVERTIGOよりリリースされたジャーマン・サイケの逸品。
ドアーズと同じく『知覚の扉』にインスピレーションを得た作品で、サイケデリックかつ前衛的なのに全体の印象は大変にポップでマジカル。こりゃセンス抜群!
【関連記事】
ビートルズの最高傑作と言えば? 一番好きなアルバムは?となると、なかなか一つに絞れませんが、ロックの進化において最も影響を与えた作品と言えば『サージェント・ペパーズ~』でオーケーではないでしょうか。『サージェント・ペパーズ~』影響下に生まれたユーロ産サイケ・ポップをご紹介!
こちらはギリシャVertigo発のプログレ!
AMON DUUL IIを彷彿させるジャーマン・エクスペリメンタル影響下のサウンドに、クリムゾン等のヘヴィ・プログレ要素、ギリシア的なエキゾチズムを加えた荘厳なサウンドを展開。
それにしてもこのジャケ、怖すぎ・・・。
こちらもVertigo発、ノルウェーのバンド。
ジャケは恐ろしげだけど、英ヴァーティゴ作品を想わせるハード・ロック・サウンドと、後期ビートルズを想わせるポップ・ロック・サウンドが同居したナイスなメロディアス・ロック作品なんです!
キューバ出身カリフォルニア育ちというSSWが、オランダの地で残した唯一作。
本作はVertigo傘下のNepenthaより発表されています。
後のフォーカスの面々をバックに従えている点にも注目ですが、ギター一本を抱え明日をも知れず放浪する姿を捉えたキーフジャケの素晴らしさにもグッときますよね。
いかにも英国的な叙情性と起伏に富んだプログレッシヴなアンサンブルが素晴らしい70年の名作に加え、近年再始動して発表された15年作&18年作も収録した全作入りアンソロジー!
70年作は1人の男性の人生をテーマにしたコンセプト・アルバムで、Vertigoサウンドを思わせるジャジーで重厚な楽曲が印象的です。
【関連記事】
自主制作された作品やマイナーなレーベルからひっそりとリリースされた作品。そんな作品たちの中にもメジャー・クオリティな作品がゴロゴロ眠っているのが我らが英国ロックの深い森。VertigoやHarvestの人気作を聴き終えた後には、ドワーフでも出てきそうな森の奥の奥の方へと進んでみてはいかが?
冒頭のBRAVE NEW WOLRDだけでなく、ドイツはVERTIGOライクな作品が結構多いんです!
たっぷりとご紹介しちゃいましょう~。
VERTIGOオルガン・ロックのファン?
ならこのファンキーなジャーマン・ロック盤、オススメですよ~。
ジャケは奇天烈だけど、中身は叙情的なオルガンとギターの格好良いバトルが堪能できる名作!
まるでクレシダ meets ジェネシス!
溢れるメロトロンはたまらないし、ジェントルに歌う時のピーター・ハミルばりのヴォーカルもかなり良い。
お蔵入りになってたのが信じられないハイクオリティなジャーマン・プログレです。
クレシダやスティル・ライフなどヴァーティゴ系のオルガン・ロックをベースに、ソフツやカーンあたりのカンタベリーのエッセンスをまぶした感じ。
辺境プログレにありそうな垢ぬけないジャケも堪らない~。
FRUMPYは知っていても、そのkey奏者が放ったこのアルバムを知っているかな?
9分を越える1曲目から素晴らしいのなんの。ブルースやソウル・テイストの巧みな導入はさすがFRUMPYの一員。
これはずばりVERTIGOの名盤群にも匹敵するジャーマン・オルガン・ハードの逸品!
派手な見せ場こそないものの職人気質を感じる堅実でタイトなドラミング、そしてリードを取る雄弁なフルート、最高だな~。
ジャズ、ファンク、サイケを混ぜ合わせたようなスタイルは、Vertigoレーベル作品がお好きな方にも響きそう!
アルバムを残さずに消えた幻のジャーマン・オルガン・ロック・バンドのライヴ音源発掘盤。
これがクラシカルでジャジーでブルージーで、奥ゆかしくも叙情と哀愁たっぷりで、CRESSIDAやGRACIOUSを引き合いに出したくなる素晴らしさ。
当時アルバムを出せていたらきっと名盤になり得ただろうと確信!
ブラスとツイン・ギターを擁するベルギーのマイナー・グループ。
流麗なフルートや淡いオルガンのプレイがVertigo作品っぽくて堪らないなぁ。
さながら初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような感じ!?
【関連記事】
欧米各国の「ど」がつくマイナープログレを発掘リリースしている注目の新興レーベルPAISLEY PRESS。リリース作品を一挙ご紹介!
ベルギーのマイナー・グループによる72年2nd。
痛快に弾き倒すキーボード・ロックと、摩訶不思議なエクスペリメンタル要素が融合した、これぞ「アート・ロック」と呼びたい傑作。
ELPに実験精神を加えた感じ、またクラシカルなオルガン・ロックという部分ではGRACIOUSやBEGGARS OPERAなどのVERTIGO作品も彷彿させます。
いやはやこんな凄いアート・ロックが70年代初頭のベルギーに存在した事に驚き!
豪快に鳴りまくるメロトロン、Greg LakeにPeter Gabrielのシアトリカルさを加えたようなヴォーカルを特徴とするスケール大きなサウンドが圧巻!
でも洗練とは無縁の、この演奏のバタバタした感じはVertigoレーベル所属と言われても不思議に思いません。
愛すべきB級感にニンマリしちゃうノルウェーの秘宝。
旧ユーゴにVertigoの名作にも比肩する、陰影に富んだオルガン・プログレがあったとは。
トラフィックに通じるR&BフィーリングにVertigo直系のくすんだヘヴィネスを加えたサウンドは本格感ぷんぷん。
【関連記事】
あるときはクラシカルに格調高く、あるときはジャジーかつ芳醇に、あるときはグルーヴィーで熱量たっぷりに…。辺境地で鳴らされた個性豊かなオルガン・ロックの数々をピックアップしてまいりたいと思います。
こちらも旧ユーゴはクロアチアのグループ、75年作。
幻想的にたなびくオルガンやフルート、ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマティックなツイン・リード、そして、デヴィッド・バイロンを彷彿させるハイトーンのシャウト・ヴォーカル。
叙情的で陰影に富んだサウンドは、Vertigoレーベルの叙情的な英プログレのファンにはたまらないでしょう!
フルートをフィーチャーしたオーストラリアのグループが残した71年の唯一作。
こ、これは、ずばりオーストラリア版インディアン・サマー!?はたまたグレイヴィ・トレイン!?
オープニング・ナンバーなんて、まるでインディアン・サマーにヴァン・モリソンが参加したみたい!
【関連記事】
オセアニアン・ロック特集、今回はプログレ編。オーストラリアが世界に誇るグループ、セバスチャン・ハーディーを起点に、オーストラリア&ニュージーランドの様々なプログレ作品をご紹介いたします。
いかがだったでしょうか。
気になる作品が見つかりましたら幸いです!
FRUMPYのキーボード奏者Jean-Jacques Kravetzが72年にリリースしたソロ。9分を越える1曲目から、ブルージーなハード・ロックのファンはノックアウトでしょう。ゆったりとタイトなリズム隊、豊かなトーンのタメの効いたエモーショナルなフレーズが素晴らしいブルージー&ハードなギター、淡いトーンのメロディアスなオルガン&ピアノ。そして、スケールの大きなソウルフルなヴォーカル。この曲の芳醇な香りは絶品の一言。その他の曲も、アグレッシヴなキーボードをフィーチャーしたよりプログレッシヴな楽曲、荘厳なオルガンが炸裂するオルガン・ハード、クラシカルなピアノが美しいバラードなど、佳曲揃い。これは名作です。おすすめ
旧ユーゴ・クロアチアはザグレブ出身のプログレ・グループ、PGP-RTBレーベルから75年にリリースされたデビュー作。幻想的にたなびくオルガンやフルート、ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマティックなツイン・リード、そして、デヴィッド・バイロンを彷彿させるハイ・トーンのシャウト・ヴォーカル。叙情的で陰影に富んだサウンドは、ハーヴェストやヴァーティゴ・レーベルの叙情的な英プログレのファンにはたまらないでしょう。エッジの立ったトーンのエネルギッシュなリズム・ギターが冴えるハード・ロックもまた魅力的。旧ユーゴ屈指の名作です。
ドイツのグループ、72年2nd。いかにも“クラウト・ロック”という雰囲気のサイケデリックで前衛的なサウンドですが、優美なフルートやパーカッションをフィーチャーしているためか、無機的な感じはなく音やアンサンブルに温かみがあるのが印象的。シンセもまた有機的な響きで、背後にクラシック音楽が霞むなど、豊かな音楽的素養を感じさせます。気難しさもなく、全体の印象はマジカルでポップ。素晴らしい作品です。音響エンジニアはThomas Kukuck。ちなみにタイトルにあるAldous Huxleyとは、DOORSの名前の由来となった「Doors of Perception」(邦題: 知覚の扉)の著者のこと。
70年代前半に活動したノルウェーのハード・ロック・グループ、ヴァーティゴよりリリースされた73年リリース3rd。オルガン、シンセの淡い音色が印象的な英ヴァーティゴ作品を想わせるハード・ロック・サウンドと、後期ビートルズを想わせるポップ・ロック・サウンドが同居したメロディアス・ロック作品。メロディ、アレンジ、演奏ともかなりのレベルに達しています。名作!
旧ユーゴで、現クロアチアはザグレブ出身のオルガン・ロック・グループ、72年のデビュー作。トラフィックに通じるR&Bフィーリングに、VERTIGO勢に通じる陰影やハードさを加えたサウンドが持ち味。手数多くタイト&グルーヴィーなドラムと地を這うようにヘヴィなベースによる屈強なリズム隊、くすんだトーンのオルガン、ここぞでファズ・ギターを炸裂させるブルージー&ソリッドなギター、ちょっぴりアクの強い声のソウルフルなヴォーカル。各楽器ともテクニック抜群で、一体感もあり、本格感ぷんぷん。ズシリと重いアンサンブルを軸に、変拍子による細かなキメも織り交ぜた展開も見事。フルートがむせび泣くジャジーでアコースティックなパートなど、表現力も特筆です。これは、素晴らしいグループ!英ロックのファンは必聴と言える名作!
サックス&フルート奏者在籍のジャーマン・ロック・バンド、71年の唯一作。手数多く走るドラムとよく動くベースによる安定感あるリズム隊を土台に、ブルージー&ハードで引きずるようなギター・リフ、淡くむせぶハモンド・オルガンを中心として、時に叙情的に、時に熱気ムンムンに畳み掛けるアンサンブルは、クレシダやスティル・ライフなどヴァーティゴ系のオルガン・ロックに通じる質感が印象的です。フルートやサックスがリード楽器としてフィーチャーされているのも特筆で、ジャズのエッセンスが感じられ、初期ソフト・マシーンやカーンのようなカンタベリーな味わいすら感じます。4曲の大曲主義で駆け抜ける構成も実に巧み。これはブリティッシュ・ロック・ファンにもたまらない名作です。
70年代に西ドイツで活動し、ELOYやGURU GURUともツアーを行った幻のバンド、当時のライヴ音源を収録した18年発掘盤。そのサウンドはくすんだトーンのクラシカルなハモンドを中心に、ブルージーなギターやうねりのあるベースを交えて哀愁たっぷりに展開する王道のオルガン・ロック。CRESSIDAを思わせるジャジーで叙情的な曲調がメインかと思いきや、聴いていくとピアノ、オルガン、シンセを切り替えながらスピーディーにフレーズを弾き倒すリック・ウェイクマンばりのパートがあったり、『神秘』〜『原子心母』頃のフロイドを彷彿とさせるサイケデリックなナンバーが飛び出したりと、多彩でクオリティの高い内容にビックリ!長尺曲が多いものの、アグレッシヴなソロ・パートに粛々とした叙情パート、味のあるヴォーカル&コーラスパートが交差する起伏のついた構成、そしてどこまでもリリシズムに溢れたメロディとハーモニーでじっくりと聴かせます。決して録音状態は良くないものの、単なるアーカイブに留めておくには惜しい好内容。オルガン・ロックやジャーマン・ロック・ファンは要チェックです。
74年に制作されながらお蔵入りとなったドイツの4人組による幻のデビュー作。オープニング・ナンバーから、こ、これは、何という素晴らしさ!まるでクレシダとジェネシスとが出会ったようなサウンドは、とても未発表作とは思えないクオリティ。溢れる叙情的なメロトロン、淡いトーンのハモンド・オルガンを中心に、スティーヴ・ハケット的なギターがドラマを描き、リズム・セクションが、時にジャジーに、時にキメのパートでのジェネシスばりにタイトかつアグレッシヴに引き締め、そして、ヴォーカルがまるでジェントルに歌う時のピーター・ハミルのような歌唱で全体に陰影をつける。英カリスマやヴァーティゴの作品のファンなら拳を握りしめること間違いなし。これはオススメです。
ベルギー出身、ツイン・ギターに加え、ブラス&フルート奏者、キーボード奏者を含む7人組グループ、EMIより75年にリリースされた唯一作。ブラス・ロックを彷彿させる逞しくもシャープなリズム・セクション、クラシックな気品もあるドラマティックに盛り上がるツイン・リード・ギター、英VERTIGOの作品群を彷彿させる流麗なフルートや淡いオルガン、そして、多声コーラスを交えて荘厳に盛り上がっていくヴォーカル&ハーモニー。まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような何とも魅惑的なサウンドが全編で繰り広げられていてビックリ。演奏は安定感抜群だし、変拍子のキメを織り交ぜながら忙しなく畳み掛ける展開もプログレッシヴだし、メロディもフックたっぷりだし、これは素晴らしい作品。ユーロ・ロック名作!
ベルリンで結成されたジャーマン・ロック・グループ、72年作1st。奇天烈なジャケのイメージに反して、中身は流麗なラテン・テイストも取り入れたファンキーで叙情溢れるハード・ロック/ジャズ・ロック。英国VERTIGO勢を思わせるくぐもったオルガンと、ささくれ立ったワウ・ギターがドライヴ感たっぷりにせめぎ合うパートはブリティッシュ・ロック・ファンならイチコロでしょう。ソウルフルで哀愁たっぷりの英詩ヴォーカルも良い感じ。キワモノ感はまったくなく、かなりレベルの高いサウンドを繰り広げる名作です。
60年代末に結成され70年にデビューしたベルギーのアート・ロック/プログレ・グループ、72年リリースの2ndにして最終作。ワイルドに唸るオルガン、クラシカルなピアノ、ファズが効いたサイケなギターらが縦横無尽に乱れ飛ぶアンサンブルと、実験的なミュージック・コンクレートが混ぜ合わさり全15曲を曲間なく疾走していく、これぞ「アート・ロック」と呼びたい傑作。クラシックの格式みなぎるピアノ独奏が突如ノイジーなサイケ・ギターソロに取って代わる衝撃のオープニング、ファンキーなリズムをバックにピアノがスリリングに舞うテンションみなぎるジャズ・ファンク、ボサノヴァっぽいアコギが10秒ほど鳴らされると、次にはBEGGARS OPERAのようにダイナミックなオルガン・ロックが炸裂!シンセによる不穏な浮遊音や爆発音やガラスの割れるSEなどが散りばめられるのも特徴的で、まるで夢と現を行き来しているかのような摩訶不思議な感覚を聴き手にもたらします。何と言っても素晴らしいのが、これだけ音数多く忙しなくかつ実験性も盛り込んで展開するにもかかわらず、難解どころかキャッチーですらある点。アヴァンギャルドな場面でも常にリズムが生き生きとしていて躍動感たっぷりなのがポイントに感じられます。ELPに実験精神を加えた感じ、またクラシカルなオルガン・ロックという部分ではGRACIOUSや前述のBEGGARS OPERAも彷彿させます。いやはやこんな凄いアート・ロックが70年代初頭のベルギーに存在した事に驚き!
ギリシアのグループ、81年作。ジャーマン・エクスペリメンタルをベースに、クリムゾンなどのヘヴィ・プログレ要素、ギリシア的なエキゾチズムを加えた荘厳なサウンドが印象的。
ジャズ・ドラマーとして10年以上のキャリアがあり、アメリカのジャズ・メンのヨーロッパ・ツアーを数多くサポートしていたという腕利きドラマーKlaus Weiss(NIAGARAでも活躍)を中心に結成されたジャーマン・ジャズ・ロック・バンド、71年デビュー作。派手な見せ場こそ少ないものの職人気質を感じる堅実でタイトなプレイがカッコいいドラムを土台にして、リード楽器として縦横無尽に吹きまくるフルート、その合間を洒脱に舞うエレピ、ファンキーなカッティングでフルートを支えながら時にサイケデリックな濃厚プレイで絡みつくギターらが繰り広げるアンサンブルは、クールにしてエネルギッシュ。どこか飄々とした音運びのベースも味があって魅力的です。ジャズ、ファンク、サイケなどを混ぜ合わせつつも、ごった煮っぽくならず洗練されているのが素晴らしい。同時期の英ジャズ・ロック好きやVertigoレーベル作品がお好きな方にも響きそうな好盤です!
イギリスのプログレ・グループ、70年作+15年作+18年作の全アルバム3枚に、未発表音源を多数ボーナストラック収録した決定版アンソロジー!70年作は、1人の男性の人生をテーマにしたコンセプト・アルバムで、優美なアコギやピアノを基本にメロトロンや管弦楽器が絡むこれぞブリティッシュ・ロックな楽曲、フルートやサックスをフィーチャーしたプログレッシヴな楽曲、フォーク・タッチのリリカルな楽曲、VERTIGOのバンドを彷彿とさせるヘヴィ&ジャジーな楽曲などを織り交ぜた起伏に富んだ名盤。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!