2021年7月2日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
67年から68年にかけて米英で起こったサイケデリック・ムーヴメントを背景に、ドラッグの使用による意識の拡張がもたらした演奏の長尺化。さらに、機材が進化することで音がラウド化し、69年にレッド・ツェッペリンがデビューしたことを発火点に、一気にハード・ロック・ムーヴメントが勃発しました。
そのエネルギーは北欧にも到達し、クリームやジミ・ヘンドリックスを下地にサイケデリック・ロックを演奏していたティーンのバンド達は、レッド・ツェッペリンやユーライア・ヒープの登場に影響を受けて、一気に音をソリッド&ハードにしていきます。
こうして、北欧の各地から同時多発的に登場したハード・ロック・バンド達を国別にピックアップいたしましょう。どうぞ試聴しながら北欧のハード・ロック・バンドをお楽しみください!
69年に結成され、72年の解散までに3作のハード・ロック・クラシックをリリースしたスウェーデンのハード・ロック・シーンのオリジネーターであり、北欧屈指の名バンド。1stと2ndをカップリングしたお得な2in1CDをピックアップ。
時に引きずるように重くタイトで、時に細かい手数で疾走する表情豊かでテクニック抜群のドラマー、ビョルン・インゲ。ぶっといトーンでボトムを支えるとともに作曲にヴォーカルにバンドの要を担う、スウェーデンのジャック・ブルースと言えるベーシスト、クリステル・スタルブラント。そして、なんと言っても素晴らしいのが、クリーム時代のエリック・クラプトン直系のタメの効いたブルージーでキレのあるフレーズが魅力の若干18歳の若きギタリスト、リヒャルト・ロルフ。
不動のトリオが築くソリッド&ブルージーなハード・ロックに痺れます。
クリーム、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、ディープ・パープルなどブリティッシュ・ハードからの影響を土台にしつつ、スウェーデン語のヴォーカル&メロディやフルートをフィーチャーしたアレンジからにじみ出てくる北欧ファンタジーの柔らかでおぼろげな色彩。
ハードさの中に自然と滲み出てくる北欧ならではの幻想美こそNOVEMBERの魅力であり、北欧ハードの魅力と言えるでしょう。
彼らのラスト・アルバムである、代表作と言える3rdアルバムが72年リリースの『6:E』。
重量級リズムを土台に、鋭角かつヘヴィなギター・リフが炸裂するギュッとソリッド&ヘヴィでいて、北欧らしい幻想美もたっぷりで、さすがの完成度。
「間」が絶妙で、フッと音が止まり、音の塊となって襲いかかる部分のテンションは並みのバンドでは出せないでしょう。
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北欧スウェーデンを代表するハード・ロック・バンドNOVEMBERが70年にリリースしたデビュー作『En Ny Tid Ar Har…』をピックアップ!
スウェーデンEMIより71年にリリースされたデビュー作で、プロデューサーは、アビー・ロードで働き、なんとあの英ハードの名バンドQUATERMASSのプロデュースを手がけたAnders Henriksson。
ビートルズに北欧ファンタジーを盛り込んだようなポップ・センス溢れるパートから、一転して、引きずるようなファズ・ギターが炸裂する英ハード直系のヘヴィ・ロックへと雪崩れ込むスケールの大きなアンサンブルが絶品。
これは「ハード・ロック」や「プログレ」の枠に収まらない北欧ロック屈指の名作でしょう!
そのLIFE関連の超マイナー盤がこちら。
これ、めちゃくちゃいなたいウィッシュボーン・アッシュって感じ!?
北欧の名グループLIFEの中心人物が参加したプログレ・ハード・バンド、終止にわたって哀愁が炸裂する75年唯一作。
00年代に入り再結成&来日もしたスウェーデン屈指のヘヴィ・プログレ・バンド、74年作の1st。
『太陽と戦慄』を2倍速で畳みかけちゃうようなパートと北欧の幻想美に溢れたアコースティックなパートの落差ときたら・・・。
メロトロンも溢れちゃうし、終始、唖然・・・。
スウェーデン産プログレ・ハード・バンドによる75年唯一作。こ、これは、まるでスウェーデンのユーライア・ヒープ・・・。
切れ味抜群のファズ・ギターが引っ張るハードなパートと、哀愁溢れるオルガン&クラシカルなキーボードをフィーチャーしたメロディアスなパートとによる緩急自在のダイナミックでスケールの大きなアンサンブルのドラマティックなこと!
泣きのツイン・リード、荘厳なオルガンに感動必至。
ジミ・ヘンやザッパのスウェーデン公演のサポート・アクトもつとめたスウェーデン・ロック黎明期の名サイケ・バンドが彼ら!
後にKEBNEKAISEを結成し活躍するギタリストも加入して、屈強なサイケ・ハードは英米の名作と比べても遜色なし。
たぶんストーンズやドアーズが元々好きで、ツェッペリンやサバスの影響でハード・ロック化したんだろうなぁ。
原盤は激レアでマニア垂涎の74年の唯一作。これはカッコいい!
お次はノルウェー編。2021年にリマスター再発されたこのバンドの名盤2枚からスタート!
70年から73年までの間に3枚のアルバムを残した、スウェーデンのNOVEMBERと並ぶ北欧ハードの名グループ。
フルートが妖しく彩る鬱蒼とした森の中をイメージさせるフォーキー&ブルージーなハード・ロックは、、初期JETHRO TULLから少しアクを抜いた感じにも聞こえます。
フルートのプレイはスウェーデンのNOVEMBERにも通じていますね。
ノルウェー・ロック黎明期を象徴する名盤!
こちらは72年リリースの2nd。
前作で少し漂っていたサイケ・テイストは後退し、ヘヴィなギターリフとアグレッシヴなオルガンを中心に、リリカルなピアノ、哀愁のアコギも織り交ぜたドラマティックなサウンドが魅力となっています。
1stも良かったですが、この2ndの憂いあるサウンドも最高!
天下のヴァーティゴよりリリースされた、70年代当時の最終作となる3rdアルバム。
ジャケは恐ろしげだけど、まさにヴァーティゴ作品を想わせるハード・ロック・サウンドと、後期ビートルズを想わせるポップ・ロック・サウンドが同居したナイスなメロディアス・ロック作品なんです!
続いても直近にリマスター&リイシューされた北欧屈指のハード・ロック/プログレ名バンドをピックアップ!
NWOBHMに通ずるエッジの立ったアグレッシヴなギター・リフ、強烈に哀愁を帯びた泣きのメロディ。
アメリカのWINTERHAWK辺りが好きなら是非おすすめの哀愁たっぷり北欧ハードですよ~~。
ちなみにドラマーのKnut R. Lieは、同国を代表するシンフォ・グループKERRS PINKでも活躍します。
上記1stが気に入ったら、こっちの2ndも絶対聴いて欲しい!
ソリッドに繰り出すギターリフを軸に、テクニカルなオルガン、変拍子を織り交ぜたスリリングなリズム隊が絡むテンション抜群のノルウェー産ハード・プログレ快作です!
YESタイプのシンフォニックからファンク/フュージョンまで音楽性を変えながら活動したのがRUPHUS。
このデビュー作は、アトミック・ルースター~EL&Pばりにオルガンが攻撃的に炸裂するプログレ・ハードを展開しています。
初期イエス風のアグレッシヴさや伊ヘヴィシンフォばりの畳みかけも折り込んだ北欧プログレ・ハード秘宝!
71年にノルウェーはオスロで結成されたプログレ・ハード・グループ、73年のデビュー作に続く74年作の2nd。
ツンツンとエッジが立ってるんだけど、その回りには透明感やほの暗さのある淡い幻想性が立ち込めてる・・・エレキ・ギターのこの感じ、北欧度120%!
たゆたうフルートもまた北欧度120%。
VertigoやHarvest産の英ロックのファンは、間違いなく熱いものがこみ上げてくるはずです。
まさかムーミンの国に、こんなサイケでジャジーなハード・ロック・バンドが居たとは!!
70年作の2ndアルバムで、クリームやジミ・ヘンあたりからの影響が感じられるパワフルなブルース・ロックを土台に、フルートやサックスがジャジーな味付けを加えるサウンドは圧倒的な完成度。
初期ジェスロ・タルも彷彿させて、英国ヘヴィ・ブルース・ロック好きは必聴です。
原盤はフィンランド産プログレ/ハードの中でも特にレアで高額で知られる逸品。
エッジの立ったトーンのキレのあるギターを中心に、前のめりに疾走するスリリングなハード・ロックが持ち味で、変拍子によるスピーディーな切り返しが痛快!
フルートによる幻想性もあって、うーむ、これは痺れます。
フィンランド産ハード・ロック・バンド、75年の唯一作。
ずばり、ジミ・ヘンが天国でディープ・パープルを2倍速でカバーした感じ!?
こ、これは、ものすごいテンション。
WIGWAMと並ぶフィンランド・ロックの代表格である彼らもハード・ロック的要素を懐に隠し持ちます。
音楽性の根っこにあるのは英国ブルース・ロックへの憧れなのですが、時折ハード・ロック的なキレとドライヴ感も纏って疾走するJukka Tolonenのギターがひたすらカッコいい!
初期イエスとユーライア・ヒープが出会ったようなサウンドは、当時わずか500枚プレスだったとは信じられないクオリティ。
デンマーク産プログレ・ハードの傑作!
プログレ&ハード・ロック黎明の70年に、デンマークの地でこれほどのサウンドを聴かせるグループが居たとは・・・。
まるでフリー+VDGGじゃないか!
70年の唯一作で、わずか1000枚しかプレスされなかった激レア盤。
デンマークのビート・シーンで活躍し、北欧のLennon/McCartneyと呼ばれた(ライナーより)オルガン奏者を中心とするキーボード・トリオ。
ぶっとい音色のオルガンも強烈だけど、ジム・モリスンを暑苦しくしたような男らしいヴォーカルもカッコイイじゃないですか!
グルーヴィーな熱気に満ちたR&B風味なサイケ・プログレ好盤!
アイスランド出身なのに、なんだこの場末の地下スタジオみたいなカビ臭さはっ!
北欧なのに透明感ゼロの伝説のハード・ロック・グループがこちら!
いかがでしたか?
みなさまにとってぴったりの一枚が見つかれば幸いです。
またお会いいたしましょう。
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ハード・ロックは中古CDも豊富。
「ユーロ・ハード・ロック」というジャンルで、ユーロのハード・ロックに絞って中古CDリストを見られますので、是非、チェックください。
聴かなくなったハード・ロックのCDがございましたら、カケレコを是非ご検討ください。
1枚1枚、専任スタッフが丁寧に査定させていただきます。
北欧を代表するギタリストJUKKA TOLONENを中心に結成されたフィンランドのジャズ・ロック・グループ。71年リリースの2ndアルバム。終始エネルギッシュに駆け抜ける一曲目から名曲!小気味よいパーカッションを絡めたリズムと賑やかにかき鳴らすアコギ、テンションMAXで吹き鳴らすサックスらがひた走るイタリアン・ロックにも通じる祝祭感に満ちたアンサンブルに、JUKKA TOLONENのサイケとブルースを折衷した奔放なフレージングのギターワークが乗るこのスリリングさと言ったらありません。他の曲では、フルートの響きが北欧の神秘的な森をイメージさせるトラッド・ロックや、芳醇な鳴りのオルガンとブルージーな深みを帯びたギターのコンビが堪らないTRAFFICタイプのブルース・ロックなど多彩に聴かせます。ソロ・ミュージシャンとしても成功するJUKKA TOLONENの才覚が炸裂している名盤です。
スウェーデンのプログレ・トリオ、スウェーデンEMIより71年にリリースされたアルバム。プロデューサーは、アビー・ロードで働き、QUATERMASSのプロデュースを手がけたり、同国のTAGESも手がけたAnders Henriksson。ギターにピアノにシンセにヴォーカルにベースに作曲にとマルチな才能で引っ張るAnders Nordinを中心に、リズム隊を加えたトリオ編成。コロコロとリリカルなピアノにキラキラと映える北欧語の柔和なタッチのヴォーカルと美しいメロディ。泣きに流されず、全体を引き締めるクリムゾンのマイケル・ジャイルスを彷彿させるドラムと中域寄りのマイルドな歪みのギター。オープニングから、これぞ北欧プログレ!といえる透明感ある幻想美が広がります。続いては、ゴリゴリとアグレッシヴなベースが引っ張るトレッティオアリガ・クリゲットばりのハード・ロック。これもカッコ良し。アルバム最後まで、ビートルズに北欧ファンタジーを盛り込んだようなポップ・センス、英ハード直系のメランコリックなヘヴィネスとの間を自在に往き来するスケールの大きなアンサンブルが詰まっています。北欧プログレ屈指と言える完成度を誇る名作!
デジタル・リマスター、CD化に際しての追加音源3曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
ケースツメ跡あり、ケースにスレあり
アイスランド出身、伝説のハード・ロック・グループ。73年に自主制作され、アイスランドのみで発売された激レア盤。地下のカビ臭いスタジオが頭に浮かぶ、NWOBHMにつながるようなダークで疾走感溢れるハード・ロック。手数多くアグレッシヴに畳み掛けるドラム、エッジの立ったギター、搾り出すようなシャウト・ヴォーカルが炸裂!
ノルウェーのグループ、73年作の1st。ブリティッシュ・ロックからの影響が強い陰影に富んだハード・ロックを軸に、変拍子の中をオルガンやギターがウネリを上げるプログレッシヴなパートを織りまぜたダイナミックな展開が聴き所。ハード・ロックやプログレなど、同時代のブリティッシュ・ロックを飲み込んだアーティスティックなサウンドが魅力的な好盤。
ノルウェーのグループ、74年作1st。NWOBHMに通ずるエッジの立ったアグレッシヴなギターリフ、強烈に哀愁を帯びた泣きのメロディ、線は細めながらエモーショナルで胸を打つヴォーカル、後ノリの沈み込むようにタメの効いたリズム隊。そして、時折アクセントとして挿入されるクールなトーンのキーボードやピアノ。マイナー調のハード・ロックが好きな方は間違いなく気に入るでしょう。聴いていて、アメリカの名グループWINTERHAWKを想い出しました。
スウェーデンのグループ、76年作。ソリッドかつ切れのあるギター・リフを中心に、テクニカルなオルガン、変拍子を織り交ぜたスリリングなリズム隊が絡むテンション溢れるハード・プログレ。全曲スウェーデン語。
70年代前半に活動したノルウェーのハード・ロック・グループ、ヴァーティゴよりリリースされた73年リリース3rd。オルガン、シンセの淡い音色が印象的な英ヴァーティゴ作品を想わせるハード・ロック・サウンドと、後期ビートルズを想わせるポップ・ロック・サウンドが同居したメロディアス・ロック作品。メロディ、アレンジ、演奏ともかなりのレベルに達しています。名作!
ノルウェーのハード・ロック・グループ、70年作1st。叙情性溢れるオルガン&フルートをフィーチャーした、同時期の英国ロックに通じる陰影に富んだサウンドが特徴です。フルートが妖しく彩る鬱蒼とした森の中をイメージさせるフォーキー&ブルージーなハード・ロックは、初期ジェスロ・タルから少しアクを抜いた感じ。メロディー、アレンジ、演奏ともにハイレベルな好グループ。派手さはないものの、聴くほどに味わいが増す逸品です。
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