2023年3月3日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
一般的にはクラシカルなサウンドを担う楽器として認知されるヴァイオリンですが、プログレにおいてはジャズ・ロックに用いられるケースも結構多いですよね。
最も有名なところではマハヴィシュヌ・オーケストラだと思いますが、ユーロのジャズ・ロックで言えばイタリアのアルティ・エ・メスティエリではないでしょうか。
今日は名盤『ティルト』から出発して、時にスリリングに疾走し時に優雅に美旋律を紡ぐ、ヴァイオリンが活躍するユーロ・ジャズ・ロックを見てまいりたいと思います。
まずは『ティルト』からこのナンバーをお楽しみください☆
衝撃のオープニング・ナンバー「Gravita 9.81」はもちろん圧巻ですが、よりヴァイオリン単独での活躍が際立つ2曲目をどうぞ。
気品高くも緊張感のあるテーマ演奏、そして哀愁を帯びた切ない旋律を溢れさせる後半でのプレイと、硬質なジャズ・ロックに地中海の景色が浮かび上がって来そうな情感を加えていて、彼らを特徴づける魅力となっています。
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2021年に80~00年代の作品の数々が最新リマスターにて一挙に国内盤リリースされた、ARTI E MESTIERIに注目いたします☆
スペインからはこちらの作品をセレクト。
スペインはバスク州の人気グループ。
哀愁が滴り落ちるような叙情派シンフォだった1stから、哀愁はそのままに引き締まったジャズ・ロック的スタイルで聴かせるこの2ndも、ヴァイオリンが絶品です。
ヴァイオリンが軽快ながらも言い知れない哀感を帯びた旋律を紡ぎ出し、フルートやサックスがそれを支え、バスク語のヴォーカルが情緒たっぷりに歌うこのサウンド。
涙なくしては聴けません。
フランスにも良いヴァイオリン・ジャズ・ロックがありますよー。3枚をご紹介!
マグマの傑作ライヴで最高にスリリングなプレイを聴かせていたVln奏者ディディエ・ロックウッド参加の4作目。
セファーのエネルギッシュなサックスに鋭く絡むエレキ・ヴァイオリンがカッコいい!
この強度、ブランドXやアレアにも匹敵しますね。
手数多くビシビシとタイトに刻む精緻なリズム・セクションに乗り、ハード・ロッキンに弾きまくるギター、神秘的に音を散らすエレピ、そしてEddie Jobsonばりにキレのあるエレクトリック・ヴァイオリンが三つ巴でやり合うスリリング過ぎるアンサンブルに手に汗握ります。
「太陽と戦慄」期クリムゾンやヘンリー・カウ的な攻撃性を軸に、HF&Nに通ずる繊細さと緻密さ、フランスらしい芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、素晴らしき完成度!
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迫りくる凶暴なアンサンブル、そして叙情美。クリムゾンの遺伝子を受け継いだ90年代以降の新鋭グループを世界中からピックアップ!
続いては北欧にまいりましょう。スウェーデンとノルウェーの作品をピックアップ。
北欧トラッドやブラス・ロックの要素を詰め込んだ個性派北欧ジャズ・ロックの逸品!
トラッド調の賑々しいヴァイオリンが、目まぐるしく展開するアンサンブルの中で一際鮮やかに耳へ飛び込んできます。
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ノルウェーVertigoよりリリースされた76年2nd。
空間を感じさせる深みある音作りは初期WRあたりに通じる印象ですが、マクラフリン彷彿の超絶ギター&クラシックの素養も見せながらシャープに切り込むヴァイオリンによるスリリングな掛け合いもカッコ良い!
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東欧/ロシアからはこちら!
ポーランドを代表するエネルギッシュなヴォーカリストと言えば?
ヤン・ハマーらマハヴィシュヌのメンバーが参加したアンサンブルの熱気とテンションたるや!
一方ポーランドのレジェンドMichal Urbaniakによるクールなヴァイオリンのプレイもまた注目です。
狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、偏執狂的ギター。東欧の小国ベラルーシに突如あらわれたこのグループ・・・恐るべし。
GONGを継ぐエネルギッシュで疾走感抜群のスペース・サイケ・ジャズ・ロックを聴かせた旧来とは打って変わり、女性voと中央アジアの民族エッセンスをフィーチャーした神秘的なサウンドを繰り広げます。
ヴァイオリンのオリエンタルなプレイが特に秀逸!
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ゴングが残した名盤『YOU』のサウンドにヒントを得たであろう、コズミックかつサイケデリックなプログレを探求してまいりましょう~☆
最後は、NIEMENのところで紹介したMichal Urbaniakも参加したヴァイオリン・ジャズ・ロック好きには堪らない作品をどうぞ~!
ザッパのバンドでもプレイした2人Jean Luc PontyとDon Sugarcane Harris、そしてポーランドの名手Michal Urbaniakら凄腕ヴァイオリニストたちが共演したベルリン・ジャズ・フェスでの音源。
ロバート・ワイアットやテリエ・リピダルをバックに畳みかける演奏は、もの凄い熱気とテンション!
いかがだったでしょうか。
気になる作品が見つかりましたら幸いです!
プログレッシブ・ロック界を代表する技巧派ドラマーFurio Chiricoといぶし銀のプレイを聴かせるキーボーディストBeppe Crovellaを擁する、イタリアを代表するジャズ・ロックグループの74年デビュー作。その内容は非常にテクニカル且つシンフォニックなジャズ・ロックであり、次作と並んで彼らの代表作となっている名盤。非常に歌心豊かなメロディーを奏でるヴァイオリン、サックスなどを取り入れたそのサウンドはシンフォニックで優美な音像を構築し、Furio Chiricoのパワフルで手数の多いドラムが乱舞。そこに時に激しくソロを弾き、時にメロトロンで雄大な叙情を語るBeppe Crovellaのキーボードが響きます。技巧で迫りつつも、メロディーの良さで聴かせる名盤です。
女性ヴォーカル、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたフランスの新鋭プログレ・グループ。09年デビュー作。クリムゾンやカンタベリー・ミュージックを中心に70年代プログレやジャズ・ロックからの影響を強く感じますが、懐古趣味的な印象はまったくありません。往年の名グループの遺伝子を受け継いだ、文字通りに「プログレッシヴ」なサウンドがここにあります。「太陽と戦慄」期のクリムゾンやHENRY COWあたりの攻撃性を軸に、HATFIELDS & THE NORTHに通ずる繊細さと緻密さ、フランス的な芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、かなりの完成度!時にミニマルなフレーズを奏で、時にささくれだったリズムギターで牙をむくギター、シャープ&タイトな強靱なリズム隊、フリーキーに暴れ回るヴァイオリン&サックス、時に荘厳なメロトロン、時にアヴァンギャルドなシンセで楽曲を飛躍させるキーボード、フランス語で歌う存在感抜群のシアトリカルな女性ヴォーカル。各パートの演奏力、アンサンブルの強度ともに抜群です。14分を越える「ODS」など、構成も文句無し。これは強力なグループが登場しました!圧巻の名作。かなりおすすめです!
バスク地方出身の好グループ。シンフォニック・ロックの大傑作「ITOIZ」に続いてリリースされた2ndアルバム。80年作。ジャケットのイメージ通りのノスタルジックな雰囲気はそのままに、サックス、ヴァイオリン、シンセサイザーの導入により前作以上にバラエティに富んだプログレッシヴなサウンドが印象的。女性ヴォーカルITZIARが一曲ゲスト参加。1stと並ぶスペイン・シンフォニック・ロックの傑作。
Jean Luc Ponty、Michal Urbaniak、Don”Sugarcane”Harris、Nipso Brantnerの4人のヴァイオリン奏者が共演したベルリン・ジャズ・フェスティバルでのライヴを収録した作品。バックがまた強力で、Robert Wyatt(Dr)、Terje Rypdal(G)、Neville Whitehead(Keith Tippett Groupで活躍したB)など錚々たるメンバー。ワイアットの手数多くスリリングなドラムを土台に、その上をヴァイオリンやギターが火花を散らし、終始アグレッシヴに畳みかけます。もの凄い熱気とテンション。ジャズ・ロック・ファン必聴
ポーランド出身のKey兼Vo。74年作の10thアルバム。前作までバックを務めたSBBに代わり、Jan Hammer、Rick LairdといったMAHAVISHNUのメンバー、名エレクトリック・ヴァイオリン奏者Michal Urbaniakなどが参加。バックの精緻なアンサンブルと、NIEMENの熱いヴォーカル&荘厳なオルガン/メロトロンが絡んだサウンドは、これぞ「NIEMEN」印のオリジナリティに溢れています。最高傑作。
ギターのCharles、キーボードのMichel、ドラムのPhilippe、Goubin3兄弟を中心とするフレンチ・ジャズ・ロック・グループの76年デビュー作。手数多くビシビシとタイトに刻む精緻なリズム・セクションに乗り、ハード・ロッキンに弾きまくるワイルドなギター、神秘的に音を散らすエレピ、Eddie Jobsonばりにキレのあるエレクトリック・ヴァイオリンが三つ巴でやり合うスリリング過ぎるアンサンブルに手に汗握ります。そこに美声ながらどこか不穏な女声スキャットが入ってくると、一気にMAGMA的な暗黒が垂れ込め始め、ZEUHL系バンドとしての本領を見せ始め思わず戦慄。そうかと思うと、不意に即興風の淡い幻想が滲むパートを挟み込んでくるフランスらしいアーティスティックなセンスにも唸らされます。MAGMA譲りの暗黒、MAHAVISHNU ORCHESTRAにも向こうを張れる演奏の強度、そして繊細に音を描く芸術的な感性を兼ね備えたユーロ・ジャズ・ロックの傑作。これは凄いです。
69年〜79年にかけて活動したスウェーデンのジャズ・ロック・バンド、74年作2nd。CHICAGOをはじめとする英米ブラス・ロックからの影響と北欧フォーク/トラッド・ミュージックをミックスさせた作風が特色で、特に本作は彼らの創造性がこれでもかと堪能できる傑作!収録内容は21分・7分・14分の大曲3曲。21分の「Carrot Rock Rock (Elephant Nilson)」はクリムゾンの同年の「RED」を思わせるような強靭なオープニングに始まり、まるでELOみたいに壮大でワクワクするヴォーカル・パート、PINK FLOYDをジャジーにしたような深遠なパートなど様々な展開に目まぐるしく移り変わっていく、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさいっぱいのナンバー。中間の「Ten Kronors Polskan」はチェンバー風味の不穏なバスーン・ソロに始まったかと思えば、中盤からはアイリッシュ・ミュージックを思わせる祝祭的なヴァイオリン合奏とCHICAGO風ブラス・ロックが交差してしまう、彼らにしか作り得ないようなヘンテコな一曲。14分の「Collective」ではなんとアフロやラテンの要素を取り入れ、情熱的なパーカッションを交えながらスピーディーかつスリリングなジャズ・ロック・アンサンブルを繰り広げます。これだけ色々詰め込むと収拾がつかなくなりそうなものですが、キワモノ臭はせず洗練された聴き心地なのは彼らの高い技術力によるものでしょう。これまで再発されず眠っていたのが信じられないくらいの北欧ロック名作です。
SLIP&SLIDELTD159(SLIP & SLIDE)
デジタル・リマスター
レーベル管理上の問題により、CDやジャケットの状態が良くありません。また盤面にキズがある場合がございます。ご了承ください。
ノルウェーのジャズ・ロック/フュージョン・グループによる、ノルウェーVertigoよりリリースされた76年2nd。新たにヴァイオリニストが加わっていますが、音楽性は前作のMAHAVISHNU ORCHESTRAからはやや離れ、フュージョンらしい滑らかなタッチが強まっています。とは言え変わらずマクラフリンを意識した随所で速弾きを交える超絶ギターは健在だし、クラシックの素養も見せながらシャープに切り込むヴァイオリンのカッコ良さも特筆もの。その合間を縫うように躍動するエレピのクールな音運びにも注目です。空間を感じさせる深みある音作りは初期WEATHER REPORTあたりに通じる印象ですが、ソロパートにおける各楽器の切れ味の良さは前作以上かもしれません。北欧ジャズ・ロック/フュージョン屈指の一枚でしょう。
05年デビュー、ロシア出身のサイケ・プログレ/ジャズ・ロック・バンドによる21年作。
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