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「北欧のCHICAGO」!?スウェーデンのジャズ・ロック・グループSPLASHの74年作2nd『SPLASH』 – ユーロ・ロック周遊日記

名盤からディープな作品まで、ユーロで誕生した様々なロック名作を掘り下げていく「ユーロ・ロック周遊日記」。

今回は昨年初のCD化を果たしたスウェーデン産ブラス・ロック、SPLASHの1974年作2nd『SPLASH』をピックアップいたしましょう。

SPLASHは1969年に結成され、3枚のアルバムを残して79年に解散したスウェーデンの8~9人組バンド。結成当初はメンバーが安定しなかったようですが、73年以降は同じ9人のメンバーで活動していた様子。トランぺッターのLeif Halden、トロンボーンのLennart Lofgren、ギター&ヴォーカリストのChristert Janssonの3名がパーマネント・メンバーとして結成から解散までバンドを支えました。

彼らのサウンドの特徴はズバリ、「スウェーデンのCHICAGO」と形容される華やかで洗練されたブラス・ロック×ザッパばりの雑多感。

溌剌としたサックスやトランペットが力強いメロディを奏で、ジャズの素養を伺わせる流麗なピアノやグルーヴィーなリズム隊が支える。分厚く安定感たっぷりのアンサンブルはマイナー・グループとは思えないほどハイレベルながら、決して一筋縄ではいかないユーモアや実験性も特色。英米ブラス・ロックをベースに北欧民謡/フォーク・ミュージックやラテン音楽といった要素を盛り込み、曲ごとにバラエティ豊かなサウンドを創り上げているのが彼らの個性溢れるポイントです。

そんな高度なサウンドで、当時から母国スウェーデンのみならずベルギーやノルウェーといった国々でも高い評価を得ていたSPLASH。しかし彼らは一貫して商業的な成功とは無縁の存在でした。木管楽器奏者Christer Holmのホームページによれば、その理由は彼らが「利益や知名度よりも『芸術的な野心』を優先する人々により結成されたグループ」だからだそう。

彼らは72年『Ut Pa Vischan!』で大手レコード会社Polydorからデビューを果たしていますが、その後は自分たちのレーベルPlaskを立ち上げ、残りの2作をリリースしています。録音資金を自分達のレーベルの売上からまかなっていたためほぼ利益は出ず、もちろんプロモーションやツアーを行うような費用もなかったはず。しかしそれでも「レーベルの意向や大衆的評価に惑わされることなく、自分たちの求める作品を創り出したい」という希望が彼らの活動における根幹にあったのだと推察できます。

そんな彼らの挑戦的野心が表れているのが、自主レーベルPlaskから初のリリースとなった74年作2nd『Splash』。収録楽曲は全3曲で、A面に約21分の大曲「Karottorokokrockokrokorock (Elephant Nilson)」、B面に約7分の「Tiokronorspolkan」と約14分の「Sambahmadu」という内容。前作がほぼ3~6分の小曲で構成されているところからしても、彼らが本作にかなりの気合を込めていた事が伺えます。

T1:Karottorokokrockokrokorock (Elephant Nilson)

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曲も長ければタイトルまで長いこの大曲。21分という長さに身構えてしまいますが、それに反してサウンドはエネルギッシュでキャッチー、かつ遊園地のような賑やかさでいっぱい!

クリムゾンの「Red」を思わせる様な壮大なイントロに幕を開けたかと思えば、次のヴォーカル・パートはまるでELOのような壮大さとワクワク感を演出。その後にはがらりと表情が変わって、PINK FLOYDを思わせるような神秘的で空間的なパート、ギターとピアノが洒脱に絡み合うグルーヴィーなジャズ・ロック・パート、またもやKING CRIMSONを想起させるヘヴィなパート…と次々に新しい展開に聴き手を案内していきます。

「雑多」ではありますがどのパートも聴き辛さはなく、起伏を付けながらクライマックスに向けて突き進んでいくアンサンブルはまるで冒険のような楽しさ。ほのかに覗くアヴァンギャルドな要素も効いていて、まさに「CHICAGOやBS&T×ザッパ」といえる渾身のアンサンブルを聴かせてくれる一曲です。

T2:Tiokronorspolkan

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チェンバー風味のファゴットに始まって何事かと思えば、2本のヴァイオリンが絡み合ってヨーロピアンなフレーズを紡ぐ……。2曲目は「CHICAGO×ヨーロピアンorケルティックな舞踏曲!?」といえるこれまた個性的なナンバー。

CHICAGOやBS&Tを思わせるエネルギッシュなブラス隊に分厚く叙情的なオルガン、軽やかに飛翔するヴァイオリン。ジャジーに紡がれるアンサンブルは英米のロックとも遜色ない完成度ながら、「普通のジャズ・ロックはやらないぞ」という彼らならではの野心がなんとも好ましい1曲です。

T3:Sambahmadu

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最終曲はまた打って変わって、アフロ/ラテン・テイストを大胆に取り入れたナンバー。流麗に駆け抜けるピアノと賑やかなパーカッションをバックにブラスが情熱的にむせぶアンサンブルは、「CHICAGO×サンタナ」という感じ!?多種多様な要素を取り入れつつ、それらを軽やかに「自分達のサウンド」として昇華させているのは彼らの驚くべき所です。

表舞台での成功に目移りすることなく、自分たちの求める作品を作り続けた「隠れ名グループ」SPLASH。おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかでユーモアいっぱいの彼らのサウンドを、ぜひこの機会に味わってみて下さい。

SPLASHの在庫

  • SPLASH / SPLASH

    CHICAGOからの影響に北欧フォーク/トラッドの要素を加えたスウェーデンの実力派ジャズ・ロック・バンド、21分・7分・14分の大曲で構成された74年傑作2nd!

    69年〜79年にかけて活動したスウェーデンのジャズ・ロック・バンド、74年作2nd。CHICAGOをはじめとする英米ブラス・ロックからの影響と北欧フォーク/トラッド・ミュージックをミックスさせた作風が特色で、特に本作は彼らの創造性がこれでもかと堪能できる傑作!収録内容は21分・7分・14分の大曲3曲。21分の「Carrot Rock Rock (Elephant Nilson)」はクリムゾンの同年の「RED」を思わせるような強靭なオープニングに始まり、まるでELOみたいに壮大でワクワクするヴォーカル・パート、PINK FLOYDをジャジーにしたような深遠なパートなど様々な展開に目まぐるしく移り変わっていく、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさいっぱいのナンバー。中間の「Ten Kronors Polskan」はチェンバー風味の不穏なバスーン・ソロに始まったかと思えば、中盤からはアイリッシュ・ミュージックを思わせる祝祭的なヴァイオリン合奏とCHICAGO風ブラス・ロックが交差してしまう、彼らにしか作り得ないようなヘンテコな一曲。14分の「Collective」ではなんとアフロやラテンの要素を取り入れ、情熱的なパーカッションを交えながらスピーディーかつスリリングなジャズ・ロック・アンサンブルを繰り広げます。これだけ色々詰め込むと収拾がつかなくなりそうなものですが、キワモノ臭はせず洗練された聴き心地なのは彼らの高い技術力によるものでしょう。これまで再発されず眠っていたのが信じられないくらいの北欧ロック名作です。

  • SPLASH / UT PA VISCHAN!

    CHICAGOからの影響濃厚なスウェーデンの実力派ジャズ・ロック・バンド、72年作1st

    69年〜79年にかけて活動したスウェーデンのジャズ・ロック・バンド、72年デビュー作。商業的な成功は収めなかったものの、母国や海外の専門家から高い評価を受けたグループとのことで、そのサウンドはかなりハイレベル。CHICAGOやBS&Tなどの米国ブラス・ロック、そしてPINK FLOYD、CARAVAN、CRESSIDAといった英国ロックからの影響をベースにしつつ、それらを確かなジャズの素養と北欧らしい「温もり感」で調理した高水準のアンサンブル。溌剌としたブラス・セクション、丸みを帯びたトーンでジャジーに転がっていくオルガン、毛羽立ちつつも素朴なトーンのエレキ・ギター。力強いシャウトを炸裂させつつ、どこか哀愁漂う母国語ヴォーカルも絶品。明るくメロディアスな中にも独特の「郷愁」が滲むサウンドにたまらなくグッと来ます。ブラス・ロックや哀愁の英国&北欧ロックが好きな方は気に入る事間違いなしの一枚です。

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