2021年10月31日 | カテゴリー:50周年記念連載企画「BACK TO THE 1971」,世界のロック探求ナビ
今からちょうど50年前、1971年に産み落とされた名盤を取り上げて、その魅力に改めて触れてみようというのがこの企画です。
ビートルズの活躍を中心としてロックに多様な表現が生まれた1960年代が幕を下ろし、60年代の残り香漂う1970年を経て、いよいよ新たな時代へと目を向けた作品が生まれていったのが1971年という時期。
英米ロックの名作はもちろん、欧州各国の重要作品も取り上げて、各作品の誕生日または誕生月に記事をアップしてまいります。
この機会に、ロックが最もまばゆい輝きを放っていた時代の作品達にぜひ注目していただければ幸いです。
それでは皆で、BACK TO THE 1971 !!!
まずはこの月に起きたロック関連の出来事をみてまいりましょう。
71年10月12日、「ヘアー」と並ぶロック・ミュージカルの名作「ジーザス・クライスト・スーパースター」がブロードウェイで初上映されました。
『オペラ座の怪人』『キャッツ』などを手掛けミュージカル作曲家の大御所として活躍するアンドリュー・ロイド・ウェバーの初ブロードウェイ・ミュージカルとして知られ、
イエス・キリストの最後の7日間を描いた内容を持つ本作は、73年までブロードウェイでロングラン上演される大ヒットを記録。
また前年には、イアン・ギラン(イエス)/イヴォンヌ・エリマン(マリア)/マレー・ヘッド(ユダ)という配役で展開する2枚組アルバム『Jesus Christ Superstar』がリリース、こちらも大ヒットし71年のビルボード年間アルバムチャートで1位に輝きました。
そして10月29日には悲劇が。サザン・ロックの代表格オールマン・ブラザーズ・バンドで知られるギタリスト、デュアン・オールマンの事故死です。
70年の2nd『Idlewild South』が全米38位に入り、徐々に国内で知名度を上げて来ていたオールマン・ブラザーズ。
さらに同年にはデュアンがエリック・クラプトンに誘われロック史に残る名盤『Layla and Other Assorted Love Songs』に参加、翌71年7月にはあの伝説のフィルモア・イーストにおけるライヴ・レコーディングが発売され全米13位の大ヒットを記録します。
バンドとしてもデュアン個人としてもいよいよ全盛期に入っていくという矢先に、突然の訃報が舞い込みます。
デュアンがバイクの運転中にトラックと衝突、24歳というあまりにも短い生涯に幕を下ろすことになったのです。
バンドはデュアンを欠いた5人で製作途中だった『Eat A Peach』を完成させ72年2月にリリース。本作は全米4位を獲得しました。
同年にキーボーディストのチャック・リーヴェルが加入しますが、デュアンの死からわずか1年あまり、今度はベーシストのベリー・オークリーを同じくバイク事故によって帰らぬ人となります。
メンバーを相次いで喪う悲劇が続いたものの、バンドは活動を続け、73年にはついに全米1位に輝く代表作『Brothers and Sisters』を残すことになるのです。
それでは、いよいよそんな71年10月に生まれた名盤を見てまいりましょう!
まずは、ユーロ・ロックで最も高い知名度を持つであろうこのプログレ・バンドのアルバムからスタート!
リーダーであるキーボーディスト/フルート奏者/ヴォーカリストThijs van Leerと技巧派ギタリストJan Akkermanを双頭とする、英5大プログレにも匹敵する実力・人気を誇ったのがこのオランダのフォーカス。
そんな彼らがブレイクするきっかけとなった強烈なナンバー「Hocus Pocus(悪魔の呪文)」を冒頭に収録したのが、71年10月発表の2ndアルバム『MOVING WAVES』です。
フォーカスを知っているという方の多くにとって、そのイメージは「Hocus Pocus」とイコールではないかと思われますが、本作を聴き進めてい行けばむしろそれはごく一面であることに気づかされるはず。
ジャズ、クラシック、古楽に至るまで、多彩な音楽性を取り込み完成度の高いフォーカス・ミュージックへと練り上げた驚くべき音世界を是非堪能して欲しいところです。
詳細はこちらの特集にてお楽しみください♪
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「フォーカスは「HOCUS POCUS」しか聴いたことがないなぁ」という方へ、気品に溢れた叙情的な曲の数々をご紹介!
お次は、孤高の英プログレ名バンドによる、最高傑作ともされる傑作をピックアップしましょう!
プログレ界きっての吟遊詩人Peter Hammillを擁する、孤高の名プログレ・グループといえば、ご存じヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターですね。
ダークさと英国然とした淡さをあわせ持つオルガン、音も割れんばかりの生々しいブロウが特徴のサックス、そして深遠な詩世界を緩急激しい演劇的なパフォーマンスで表現するフロントマンによる荘厳かつどこか物悲しいサウンドが魅力。
ジャズを基調に持つタイトで存在感あるリズム隊のカッコよさも特筆です。
そんな彼らの活動前期における集大成的一枚と言っていいのが、71年10月にリリースされた4thアルバム『PAWNHEARTS』になります。
20分超の組曲を含む全3曲という、彼らの作品中でも最もプログレッシヴな構成をもつ作品です。
聴き所は下記特集記事をご覧ください♪
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時に激しく奮い立たすように、時に切なく語り掛けるように、ピーター・ハミルのヴォーカルは、常に琴線にうったえかけてきます。
他にもこんなプログレ作品が71年10月リリースです。
ソフト・マシーンがフランス公演から帰国する際、イギリスへの入国が許可されなかったギタリストのDaevid Allenが、パートナーのGilli Smythともにフランスで結成したバンドGONG。
GONGと言ったら何といっても「Radio Gnome3部作」が有名ですが、その前夜と言えるこの2ndアルバムも実に素晴らしい一枚なんですよね。
GONGらしいストレンジさや脱力感が満載でありつつも、ロックとしてのストレートなカッコよさも際立っていて、その塩梅がとにかく絶妙。
3部作でのぶっ飛びテクニカル・ジャズ・ロックとは一味違うGONGらしさを堪能できる傑作です。
3部作以降しか聞いていないという方は是非こちらも!
Robert Frippがプロデュースを務めたこの一大ジャズ・ロックもピックアップしないわけにはいきません!
ネオンレーベルから発表された英ジャズ・ロックの大名盤がこの作品!
Robert Frippによるプロデュース、Keith & JulieのTippett夫妻が作曲、そして演奏陣としてTIPPETT夫妻、Ian McDonald、Ian Carr、Karl Jenkins、Elton Dean、Robert Wyatt、Alan Skidmore、John Marshallなど、なんと総勢50名が参加!
錚々たる顔ぶれが集結した、まさにジャズ・ロック英傑たちによる祭宴と言える内容となってます。
これだけのメンツが揃えば名盤が生まれないはずがありませんよね!
英フォーク・ロックの愛すべき名バンドは、71年にこのアルバムをリリース!
名SSW、Allan Hullを中心にして結成された英フォーク・ロック・グループ、地元ニューキャッスルを流れるタイン川をタイトルに冠した71年2nd。
草花から零れる朝露のように輝かしいアコースティックギターの響きをいつまでも聴いていたくなる、これぞ珠玉のフォーク・ロック集。
牧歌的でどこまでもハートウォーミングな「Meet Me On The Corner」、素朴なのにどうしようもなく胸を打つメロディがすばらしい「January Song」などが堪りません。
いかがだったでしょうか。
今からちょうど半世紀前にあたる71年10月もブリティッシュ・ロック/プログレを中心に名盤群が多数生まれていましたね。
1971年11月はいったいどんな名盤が誕生していたのか、来月もどうぞお楽しみに!
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非凡なる才能を持ったボーカリストPeter Hammillを擁し、難解な哲学詩と前衛的なアプローチ、初期のKING CRIMSONに負けず劣らずのへヴィネスと神秘性を兼ね備えたイギリスのプログレッシブ・ロックバンドの71年4th。前期VAN DER GRAAF GENERATORの総括的作品として名盤の誉れ高い本作は、20分を超える大作を中心にした3曲で構成され、Peter Hammillはもちろんのこと、Hugh Bantonの痛ましいほどに強烈なオルガンさばき、David Jacksonの荒々しいダブル・ホーンが刺激的な1枚。ゲスト参加したKING CRIMSONのRobert Frippでさえ霞みかけるほどに、一節一節強烈なインパクトを残しています。
オランダのプログレッシヴ・ロックバンドFocusの2作目です。キーボーディスト兼ヴォーカリストのThijs Van LeerとギタリストのJan Akkermanがバンドの顔なわけですが、ヨーデルを取り込んだ一種形容できないLeerのスタイルと、カミソリの様に硬質でありながら最高にキャッチーなAkkermanのギタープレイが絡み合って不思議な高揚感が独自のハード・ジャズ・ロックでありながらそれ一辺倒にはならずに、優雅でメロウな曲も創作でき る何とも稀有な存在!一度嵌ったら、抜け出せない魔的な魅力を放った作品です。1曲目の「Hocus Pocus」は、ハードでキャッチーなギターリフと変てこなヨーデル風スキャットが炸裂しています。2曲目以降は打って変わって叙情的な作品が続きます。ヨーロッパの香り漂う佳品ぞろいです。 そして最後に23分の組曲「Eruption」で締めくくりとなりますが、これはもう鳥肌ものの名曲。まだフュージョンというジャンルが世に出る前からロック、ジャズ、クラシックを融合したクロスオーヴァー・サウンドを作り出していたのは特筆に価します。
デヴィッド・アレン率いるGONGが71年にリリースした2ndアルバム。Pip Pyleの悶絶ドラミング、サックス&オルガンのアグレッシヴかつジャジーな演奏、Gilli Smythのスペース・ウィスパー、David Allenのユーモア溢れる弛緩ヴォーカルなど、すべてが聴き所。(ジャズ+サイケ+ロック)÷David Allen=Gongという公式が見事に確立したジャンル不問の大傑作。
愛すべき英フォーク・ロック・グループ、リンディスファーンが71年にリリースした2ndアルバム。1stでのいなたさ全開、英国片田舎な雰囲気はそのままに、楽曲の完成度が数段増した彼らを代表する作品。アラン・ハル作の楽曲の素晴らしさはもとより。他メンバーによる楽曲もかなりの出来栄えで、アルバム全体を通して一定したテンションが保たれています。英国フォーク・ロックを代表する作品と言っても過言ではない傑作。
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