2018年11月22日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
00年代に入り現在に至るまで各国より次々と良質な新作が発表されている新鋭プログレ・シーンですが、その多くが70年代に活躍したアーティストたちを手本にしたサウンドを聴かせています。
そこで今回は、往年の名アーティストへの憧れを特に強く感じさせる新世代ミュージシャンの作品にフォーカスしてまいりたいと思います!
70年代のプログレに親しんだ方にこそ驚いてもらいたいラインナップでお届けいたしますよ☆
まずは、現英国プログレ・シーンを牽引するバンドMAGENTAのリーダーが贈る『チューブラーベルズ』へのオマージュ・シリーズの3作目をピックアップ。基本的な楽器はほぼ自身が演奏しており、特に本人と見紛うほどにマイクの音色とプレイを研究し尽くした瑞々しくも緊張感を帯びたギター・サウンドは目を見張る素晴らしさ。初期マイクを愛するすべての方への贈り物と言える名品に仕上がっています!
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90年代以降のプログレシーンを盛り上げる北欧スウェーデンやイタリアに負けじと、本場イギリスからも、イエスやジェネシスやクリムゾンなど往年のグループのDNAを継いだ好グループが出てきております。注目の作品をセレクトいたしましょう。
初期クイーンへの飽くなき憧憬をそのサウンドに宿した、今カケレコが最もオススメしたいグループがこのDRY RIVER!フレディ・マーキュリーへのリスペクト溢れるヴォーカリストを筆頭に、華麗なコーラスワーク、飛翔感あるメロディラインなど、いたるところでクイーン愛を感じることができて思わずニンマリ。さらにはロックンロール、メタル、フュージョン、ビッグバンドまでを取り入れる奇想天外センスとスペインらしい情熱で仕上げたサウンドは、とことんエネルギッシュで痛快。聴いていてこんな楽しくてワクワクするプログレは他にないと断言!
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初期ジェネシス愛に溢れたサウンドを繰り広げるメキシコのマルチプレイヤーで、ジャケットはあのポール・ホワイトヘッドが手がけてるって!?英国のアーティスト以上に瑞々しく繊細に紡ぐサウンドメイクの素晴らしさと来たら。この17年作、ずばりジェネシスファン必聴です。
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シンセ、メロトロン、ハケット調のギターらが柔らかく織り上げる、ジェネシス系シンフォかと思ったら、突如陰鬱に広がるシンセ&ギルモア風のブルージーなギターが登場して一気にフロイドに変貌。70年代ファンも思わずニヤリな仏シンフォ新鋭。
この1曲目、「スターレス」から「ピクチャーズ・オブ・ア・シティ」「イージー・マネー」までを持ち味のヴィンテージなヘヴィ・プログレへ絶妙に織り込んだ、クリムゾン・ファンならムフフとなるナンバー。ヒープ色濃厚なオルガン・ハードも炸裂するスウェーデン新鋭17年作!
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迫りくる凶暴なアンサンブル、そして叙情美。クリムゾンの遺伝子を受け継いだ90年代以降の新鋭グループを世界中からピックアップ!
「狂気」~「ウォール」期フロイドをポーランド特有の深い陰影とモダンな質感で蘇らせたような新鋭バンド。エフェクトを効かせ淡く幻想的なトーンを鳴らす2本のギターと、ひんやりと冷たい質感を持つシンセが浮遊感あるダークな色調の音世界を構築します。深遠かつ静謐な幻想性に溢れたサウンドは、フロイドに肉薄!
冒頭から人懐っこいトーンのギターとフルートが優しく彩る、キャラヴァン「GOLF GIRL」を想い起こさずにはいられないほのぼのカンタベリーサウンドが飛び出してきてビックリ!動画からもキャラヴァンや70年代英ロック・バンドへの憧憬が滲み出ていて素敵です☆
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70年代に欧州を中心に世界中へと拡散したカンタベリー・ロックの影響。現代のバンドにもその音楽性は引き継がれカンタベリー・タイプの新鋭を数多く誕生させています。実力派揃いでお送りいたしましょう♪
こ、これは哀愁溢れるGOBLIN!?このイタリア新鋭、GOBLIN譲りのホラー感覚を随所で発揮しつつも、哀愁たっぷりでドラマチックというイタリアン・ロック本来の魅力も備えた素晴らしいインスト・プログレを聴かせてくれます。ずばり激カケレコメンド!
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ゴブリンなどホラー系イタリアン・プログレの系譜を継ぐ新鋭グループによる13年デビュー作がリリース。
全盛期ユニヴェル・ゼロに接近した格調高くも不穏さに満ちた暗黒チェンバー・ロックは美しくも底なしに陰鬱。ベラルーシ出身チェンバー・ロック・バンドによる待望の17年作2nd!
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90年代以降プログレシーンを代表するコンポーザー、Fabio Zunffantiによるヴィンテージ指向のグループが、なんと、あのレ・オルメの傑作の続編を制作!めくるめく「静」と「動」の圧倒的な対比。す、凄い・・・。
最後はドイツ人マルチ・ミュージシャンを中心とするこのプロジェクトによる18年デビュー作。「プログレ黄金時代への敬意の具現化」をコンセプトに、EL&PやRUSH、MARILLIONからの影響を現代に昇華した愛情溢れるサウンドを鳴らしています。ゲストも豪華で、Marco MinnemannにSteve Morse、Steve Rotheryなどなどそうそうたる面子が参加!
往年の名グループたちの遺伝子を強く受け継いだ新鋭たちを厳選してお送りしてまいりましたが、いかがでしたか?
気になる作品が見つかれば嬉しく思います!
12年デビュー、メンバーほぼ全員がクイーンとドリーム・シアターをフェイバリットに挙げるスペインの新鋭プログレ・バンド、前作より3年ぶりとなった18年作3rd。前2作も素晴らしいアルバムでしたが、この3rd、もうとことんエネルギッシュで痛快。聴いていてこんなに楽しくってワクワクするプログレって他にないかもしれませんっ!ベースとなるのは最も影響を受けているクイーンとドリーム・シアターの合わせ技。そこにシンフォ、ロックン・ロール、様式美ハード・ロック、ビッグ・バンド・ジャズ、フュージョンなどを自在に結合させて、スペイン産らしい情熱的かつダイナミックなプログレに仕立て上げた、エネルギーがぎっちり詰まったサウンドを構築しています。歌い回しにフレディ・マーキュリー愛を感じさせる声量みなぎるスペイン語ヴォーカルとオペラチックな分厚いコーラスがドラマチックに舞い上がるクイーン風のヴォーカル・パートから、ド派手に鳴らすヴィンテージ・トーンのオルガン&クラシカルで可憐なタッチのピアノを操るキーボードが溢れ出し、ギターがテクニカルかつハードエッジに疾走。ギターはメタリックにゴリゴリしてはいるのですが、同時にコシの強いグルーヴ感があり、ロックンロールのノリの良さが先立っているのが特徴。硬質ながら人間味たっぷりに熱く弾き飛ばすプレイ・スタイルがカッコいい!ギターが牽引する強度あるヘヴィ・プログレに突如ゴージャスなビッグ・バンドが絡んできたり、クラシカルな速弾きが炸裂する様式美系ハード・ロックがごく自然に南国風フュージョンに発展したりと、あまりに先の読めない奇想天外なサウンドには軽く目眩が起きそうなほど。その後には一転して美しいメロディが冴え渡る叙情バラードを持ってくるセンスも憎い限りです。前作が彼らの完成形かと思いきや、まだまだ進化するDRY RIVERサウンドを見せつける大傑作!おすすめです!
往年のプログレ/ハード・ロックから影響を受けたヴィンテージなヘヴィ・プログレを聴かせてきたノルウェー新鋭バンドによる17年作。1曲目から強烈!メロトロンがジワリジワリと湧き上がり、タイトなリズムが鋭く切り込む「STARLESS」の変奏曲のようなイントロ、そしてメロトロンが最高潮に達すると、今度は「PICTURES OF A CITY」を彷彿させる重いリフで畳み掛けます。この冒頭4分間は圧巻です。憂いあるオルガンとギター、メロトロンを伴った哀愁たっぷりのヴォーカルパートを経ると、またもやクリムゾン憧憬の嵐のような轟音アンサンブルが吹き荒れます。2曲目ではユーライア・ヒープ風のオルガンをフィーチャーした邪悪な構築美も発揮。カッコイイです。3曲目は20分の大曲で、まさにクリムゾンとヒープがぶつかったかのようなヘヴィでダークで荘厳で哀愁も漂わせたスケールの大きなヘヴィ・プログレを聴かせます。ゴリゴリとヘヴィな中でも、メロトロンが鳴り響くと、ノルウェーの深い森の情景をイメージさせるような神秘性が溢れてきて素晴らしい。クリムゾンを始めとする70年代ロックへの限りない憧れを強靭なヘヴィ・プログレに乗せて聴かせる強力作!
現在の英プログレ・シーンを牽引するバンドMAGENTAのギタリスト/コンポーザーである彼が、敬愛するマイク・オールドフィールドの名作『TUBULAR BELLS』へのオマージュを込めて制作する一人多重録音アルバム・シリーズ「SANCTUARY」の第3作目となる2018年作。本人と見紛うほどにマイクの音色とプレイを研究し尽くした瑞々しくも緊張感を帯びたギター・サウンドを軸に、緻密かつクリアに織り上げられていく音のタペストリーは、前2作を楽しんだ方はもちろん、初期マイクのファンなら必ずや感動がこみ上げてくるはず。「OMMADAWN」で演奏したリコーダー奏者Les Pennings、名手Simon Phillips、そしてプロデュースには前作に引き続き『TUBULAR BELLS』を手がけたTom Newmanを起用しており、脇を固めるメンツからも本気度が伝わってきます。草原を吹き抜ける風のように凛とした美声を提供する女性ヴォーカリストAngharad Brinnも相変わらず素晴らしい。前2作同様、初期マイクを愛するすべての方への贈り物と言える名品に仕上がっています。
ドイツはハンブルクを拠点に活動するマルチ・ミュージシャンFrank Usによるプロジェクト、18年デビュー作。何と言ってもゲストが大変豪華で、UKやSteven Wilson作品で知られるMarco Minnemann(Dr)、現DEEP PURPLEのSteve Morse(Gt)、現STYXのTodd Sucherman(Dr)にMARILLIONのSteve Rothery(Gt)&Mark Kelly(Key)、ARENAやKINOのJohn Mitchell(Gt)…と現代プログレを象徴する名だたる面子が顔を揃えています。「プログレ黄金時代への敬意と憧憬」をコンセプトに据えたプロジェクトなだけあって、そのサウンドにも往年のプログレッシヴ・ロックやシンフォニック・ロックへの愛情がいっぱい。壮大でファンタスティックなキーボードをフィーチャーした、タイトルからしてそのものずばりな「Emeron Empire」をはじめ、ちょっぴりメロウながらも70年代直系の叙情性に満ち溢れた楽曲群が実に胸を打ちます。かといって70年代プログレの模倣というわけではなく、それぞれの音の感触は洗練されていて非常にモダン。それでいて耳馴染みよく暖かみのあるアンサンブルに仕上がっているのは、実力派ミュージシャン達の確かなテクニックの為せる業と言えるでしょう。派手さはありませんが、じんわりと心に染み入る作品です。
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