2018年5月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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本記事は、netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』第44回 KOTEBEL / Concerto For Piano And Electric Ensemble (Spain / 2012)に連動しています
ドイツの女性キーボーディストInes Fuchsによるプロジェクト・グループINESは、スウェーデンのANEKDOTENやANGLAGARDによるプログレッシブ・ロック復興から間もない時期に登場しました。94年のデビュー・アルバム『Hunting The Fox』は、ドイツを代表するシンフォニック・ロック・グループANYONE’S DAUGHTERのヴォーカリストHarald Barethが参加したことで話題となりましたが、その後もINESはリリースを重ね、2002年作『Slipping Into The Unknown』ではワールド・ミュージックに通じるスケールを持ったシンフォニック・ロックを作り上げました。
プログレッシブ・ロック・ファンからも高い評価を獲得しているオランダのゴシック・ロック・グループTHE GATHERINGには、2004年から女性ベーシストMarjolein Kooijmanが在籍し、リズム・セクションを支えています。2012年作『Disclosure』では、前2009年作『The West Pole』から加入したノルウェー出身女性ヴォーカリストSilje Wergelandの存在がグループに定着。プログレッシブ・ロックで例えるならば、PAATOSやWHITE WILLOWといった北欧グループたちに通じる幽玄なサウンドを聴かせています。
女性ヴァイオリン奏者Ewa Jablonskaを擁するのが、ポーランドのプログレッシブ・ロック・グループINDUKTIです。同郷RIVERSIDEのヴォーカリストMarius Dudaを迎え製作されたデビュー・アルバムである2004年作『S.U.S.A.R.』は、イギリスのKING CRIMSONからスウェーデンのANEKDOTENへと受け継がれていったへヴィー・プログレッシブ・ロックを、東欧グループならではの硬質な音作りで再提示した内容。グループは、アメリカのNearfestやメキシコのBaja Progといった有名プログレッシブ・ロック・フェスティバルのステージも経験しています。
ベラルーシのチェンバー・ロック・グループRATIONAL DIETは、2010年作『On Phenomena And Existences』をリリース後に音楽性の違いを理由に分裂。ヴァイオリニストKirill Krystiaを中心とするTHE ARCHESTRA、そして女性キーボーディストOlga Podgaiskajaを中心とするFIVE-STOREY ENSEMBLEが結成されました。THE ARCHESTRAがダイナミックなチェンバー・ロックを継続させRATIONAL DIET直系のアプローチを聴かせる一方で、FIVE-STOREY ENSEMBLEには女性ミュージシャンが舵を取るグループならではの聡明さや品格が感じられます。
女性キーボード奏者Elisa Wiermannを中心に結成され、90年にアルバム・デビューを果たしたのがブラジルのクラシカル・ロック・グループQUATERNA REQUIEMです。ヴァイオリン奏者Kleber Vogel とのユニットWIERMANN & VOGEL 名義を除くと18年ぶりのスタジオ・アルバムとなる2012年作『O Arquiteto』は、「建築家」をコンセプトに製作されたトータル・アルバムであり、収録楽曲のタイトルにはそれぞれドナト・ブラマンテ、フランソワ・マンサール、フランク・ロイド・ライト、アントニ・ガウディ、オスカー・ニーマイヤーといった名だたる建築家たちの名前が並びます。
2002年に登場し、南米を代表するプログレッシブ・ロック・グループへと成長を遂げたのが、女性キーボーディストVirginia Perazaを擁するキューバのANIMA MUNDIです。彼らが生み出すサウンドは突き抜けるようなシンフォニック・ロックであり、アメリカのSPOCK’S BEARDやスウェーデンのTHE FLOWER KINGSといった、現行シーンを代表するグループたちとの比較も納得の普遍性を持っています。ロック後進国で活動するプログレッシブ・ロック・グループでありながら、そのハンディキャップを一切感じさせないシンフォニック・サウンドは、Virginia Perazaによる卓越したキーボード・オーケストレーションによって作り上げられているのです。
缶ケースによる特殊パッケージの演出が目を引くのが、アルゼンチンの女性キーボーディストAndrea Gonzalezによる2017年作『Progresivo Instrumental』です。本作は、そのタイトルの通りギタリスト、ベーシスト、ドラマーのサポート・ミュージシャンを従えインストゥルメンタル構成のプログレッシブ・ロックに挑んだ意欲作となりました。Andrea Gonzalezはエレクトリック・ピアノ、ロック・オルガン、アナログ・ライクなシンセサイザー・リード、そしてメロトロン・サウンドなどヴィンテージな音色を操り、リーダーシップを発揮しています。
「netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』連動 新世代プログレッシブ・ロックと女性ミュージシャン Volume 1」を読む
ブラジル産新鋭シンフォ・バンドによる12年作。タイトかつテクニカルに走るリズム・セクションの上を、へヴィーに唸るギターと力強いオルガン、シンセが駆け抜ける骨太なシンフォニック・ロック。そして何より素晴らしいのが天空を舞うかのように鳴らされるヴァイオリンで、ギター、キーボードと絡み合いながら高みへと登りつめていくアンサンブルは、もう見事と言うほかありません。まるで同郷のシンフォ・バンドであるSAGRADOをよりアグレッシヴに仕立て上げたかのようなハイクオリティの楽曲の数々にノックアウト間違いなしの傑作に仕上がっています。これはシンフォ・ファンには是非ともおすすめな一枚です。
90年代末にデビューしたスペインのシンフォニック・ロック・バンド、2012年作の6th。アコースティック・ピアノ奏者とエレクトリック・キーボードとのダブル鍵盤奏者編成が特徴で、次々とスリリングに切り返す変拍子の中を、ピアノが硬質なタッチのフレーズを繰り返し、シンセがシンフォニックに広がります。クラシックの確かな素養を感じさせるテンションみなぎる演奏は、イタリアのバンコにも比肩。ドラムも特筆で、手数多くシャープなスティックさばきは、初期クリムゾンでのマイケル・ジャイルスや往年のイタリアン・プログレを彷彿させます。テクニカルかつドラマティックなプログレのファンは必聴の傑作。特にバンコのファンは是非!
盤質:全面に多数傷
状態:良好
1枚は傷あり、1枚は傷多め、側面部に折れ・若干スレ・軽微な圧痕あり
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