2020年8月7日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ジャズの流れを汲むテクニカルでしなやかな演奏と、他の英国勢とは一線を画する味わい深くも洒脱なメロディ・センスで、プログレッシヴ・ロックの一カテゴリとしてとりわけ高い人気を誇るのが、カンタベリー・ロック。
70年代以降、欧州各国を中心に世界中へと拡散したカンタベリー・ロックの音楽性は、現在のプログレ・シーンにも影響を及ぼし続けています。
というわけで、世界各国の新鋭よりカンタベリー・ロックの遺伝子を受け継いだグループ達をご紹介してまいりたいと思います。
デイヴ・スチュワート・ファンは必聴!?EGGやHATFIELD、NATIONAL HEALTHの意志を受け継いだ英国新鋭による20年デビュー作!
SOFT MACHINEでおなじみTheo TravisやTANGENTのAndy Tillisonなど豪華ゲストも参加。
ファズ・オルガンやメロトロンなどキーボードを全面に置いたカンタベリー愛溢れるサウンドが素晴らしい!
CARAVAN直系の牧歌的でノスタルジックなジャズ・ロックを聴かせる英国新鋭、20年の4thアルバム。
今回はGONGや初期ソフツを思わせる怪しいサイケ感も強まり、ピリリとスパイスの効いたサウンドを展開!
イタリアはシチリア島出身、カンタベリー・フィーリングと地中海テイストが交わった個性豊かなサウンドが特色のジャズ・ロック新鋭!
ポップさの中にも変拍子や奇抜なムーグ・シンセなどの実験性が散りばめられていて良いなあ。ケヴィン・エアーズのファンにもオススメ!
GONGが好き?GENTLE GIANTやザッパも?でしたらこのシニカル&ユーモラスな英国ジャズ・ロック新鋭がオススメです。
不穏さと牧歌性が交差したスリリングなサウンドを構築する20年作!
カンタベリーの淡い色彩感+フロイドやVDGGを思わせるメランコリックなメロディにモダンな感性を溶け込ませたサウンドが素晴らしい!
英国のグループによる19年作なのですが、これはカンタベリーのDNAを現代に蘇らせた確かな名作。
ハットフィールドやナショナル・ヘルスの遺伝子を濃厚に受け継いだ、緻密にしてアヴァンギャルドなジャズ・ロックはもう驚きの完成度。なんと日本のバンドによる19年デビュー作だって!?
ずばり『現代の10cc×初期ソフト・マシーンやハットフィールド』!?
レイト60’s~70’s英国ロックへの愛情溢れるイタリアのサイケ・ポップ・プログレ新鋭、19年作も素晴らしい出来です。
我らがリチャード・シンクレアが1曲でゲスト参加!
ノルウェーのジャズ・ロック新鋭による19年作なのですが、洗練されつつもほんのりファンタジックさと仄暗さを孕んだアンサンブルが素敵だなあ。
カンタベリー・ロックはもちろん、陰影に富んだブリティッシュ・ロックのファンにもオススメ。
カンタベリー・ロックにも通ずる淡くデリケートなサウンドを聴かせる英シンフォ新鋭。
奥ゆかしいメロトロン、スッと胸に染み入る可憐な女性ヴォーカルも感動的だなあ。[視聴はこちら]
まさか00年代のエストニアに、ソフト・マシーンやハットフィールドのDNAを継ぐカンタベリーなグループが生まれるとは・・・。
硬質さとリリシズム、それを包むエストニアならではの透明感。絶品です。
カンタベリー・ロックの中ではギルガメッシュやナショナル・ヘルスが好き?でしたら、このブエノス・アイレス出身の新鋭グループ、実にオススメです。
アルゼンチンらしい甘美な陰影を持ったメロディを印象的に聴かせる、芳醇なジャズ・ロックには前2作を経てさらに磨きがかかっている印象!
次のページでもまだまだカンタベリーの遺伝子を受け継いだ作品をご紹介してまいります!
エストニアのジャズ・ロック・グループ、2010年の4thアルバム。手数多くシャープでアグレッシヴなリズム隊、流麗なフェンダー・ローズ、たおやかに飛翔するサックス!リズム隊の硬質さとエレピや管楽器のしなやかさとのバランスが絶妙。カンタベリー・ミュージックの遺伝子を受け継ぐ正統派グループ!これは素晴らしい作品です。ジャズ・ロックのファンにはかなりオススメ!痺れますよ。
2014年デビュー、アルゼンチンはブエノスアイレス出身、ピアノを中心にエレピ、オルガン、シンセを操るキーボーディストとギタリストを擁する4人組ジャズ・ロック/フュージョン・グループによる17年作3rd。南米らしい甘美な陰影を持った美しいメロディを印象的に聴かせる、ロマンチックな表情のジャズ・ロックには前2作を経てさらに磨きがかかっている印象。ピアノやギターは流麗なタッチでソロを応酬させるジャズ本来のクールな佇まいを見せるのに対して、可憐な音色が耳を引くエレピが浮遊感あるファンタジックで柔らかな聴き心地をもたらしていて、少しフィル・ミラーを思わせるギターも相まってハットフィールドやナショナル・ヘルスなどのカンタベリー・ロック・バンドに通じる得も言われぬ芳醇さを生み出しているのが素晴らしい。お約束と言えるバンドネオンの哀愁の音色も必殺です。近年のジャズ・ロック・バンドには珍しく比較的ロック寄りのノリとダイナミズムを持つドラムも特筆で、アンサンブルを力強い躍動感で牽引します。ジャズとロックを最高のバランス感覚で組み合わせた、これぞジャズ・ロック!と呼びたい快作。これは激カケレコメンド!
こ、これは素晴らしいですっ!EGGやNATIONAL HEALTH、HATFIELD & THE NORTHに強い影響を受けた英国のkey奏者とドラマーによるデュオ、20年デビュー作。1曲目から淡いキーボードと共に女性Vo.のスキャットが響くHATFIELD直系の幻想的な音世界が広がり、EGGのデイヴ・スチュワートを思わせるアグレッシヴなファズ・オルガンも躍動し、2曲目ではオルガンやシンセサイザー、ドラムにベースが激しくも色鮮やかに駆け抜けるNATIONAL HEALTH「Tenemos Roads」ばりのアンサンブルが繰り広げられる。温もりあるハモンドを中心とした、どこまでも70’sカンタベリー愛溢れる叙情的インスト・ジャズ・ロック・サウンドには胸ときめかせずにはいられません。なおかつ決して70年代の再現に収まらず、暖かみを保ちつつスペーシーでアンビエンタルなシンセサイザーがダイナミックな広がりを創り出す壮大な楽曲も。ANEKDOTEN的メロトロンの洪水を堪能できるパートもあって、これは堪りません…。カンタベリー好きは必聴の傑作!SOFT MACHINEでおなじみのセオ・トラヴィスやTANGENTのAndy Tillisonがゲスト参加。
カンタベリー・ロックやフランク・ザッパを愛する若手ミュージシャン達により2016年に結成された日本のジャズ・ロック・グループ、19年デビュー作。これはグレイトです!主にハットフィールド〜ナショナル・ヘルスからの影響を濃厚に感じさせる、緻密にしてアヴァンギャルドなジャズ・ロックはもう驚きの完成度。流麗かつ叙情に富んだフレーズを次々と繰り出すサックスに応じるように、デイヴ・スチュワートを宿したオルガンとエレピがスリリングに疾走、ギターもフィル・ミラー彷彿のシャープなトーンで性急に畳みかけます。時には『Third』〜『Fourth』期のソフツ的な熱気あるサックスのリフがダイナミックに迫ってきて、あまりにカンタベリー愛たっぷりのアンサンブルにお好きな方なら聴きながらニンマリとしてしまうはず。さらに面白いのが、随所で顔を覗かせるザッパ風のアプローチ。種々のSEや日本語の音声を用いた諧謔精神たっぷりのコラージュセンスもそうですが、サックスやギターが生々しく肉感的なタッチでゴリゴリ疾走するパートでは、『HOT RATS』などジャズ・ロック期ザッパを彷彿させる。ずばり全カンタベリー・ロック・ファン必聴と言える傑作。これはおすすめです!
ヴィンテージ感たっぷりのサウンドが特色の英国プログレ/ジャズ・ロック新鋭、12年の2ndに続く19年作3rd。幻想的なオルガン、渋く味わい深いサックス、ちょっぴりリチャード・シンクレアを思わせるジェントルなヴォーカル…。カンタベリー・ロックの淡い色彩感に包まれつつ、PINK FLOYDやVDGGを彷彿とさせる仄暗さにも満ちたメランコリックな音像が胸を打つ逸品。また70年代英国プログレの叙情性を明確に受け継ぐ一方で、ドラムが刻む軽やかで柔軟性のあるリズム、感傷的なギターのフレーズなど、オルタナティヴ・ロックに通ずるモダンな感性もアンサンブルの中に自然に溶け込ませていて、並々ならぬ才能を感じます。カンタベリーの遺伝子を継いだ現代の名作の一つ。
イタリアはシチリア島出身、カンタベリー・フィーリング溢れるジャズ・ロック・バンドの20年作4th。CARAVANに通ずる牧歌的なポップ・センス&HATFIELDを思わせる淡い叙情性にまばゆい地中海色が交わった、愛らしく流麗なサウンドは本作も絶好調。さらに本作ではキレのある変拍子やちょっぴり奇抜なムーグ・シンセの音色を効果的に散りばめ、甘く爽やかなポップさとスパイシーな実験性が代わる代わる顔を覗かせるユーモアたっぷりの音世界を繰り広げています。この作風、Kevin Ayersのファンはかなりグッと来るはず…!本作もカケレコメンド!
BUSHMAN’S REVENGEやSHININGで知られるギタリストのEven Helte HermansenやELEPHANT9のドラマーTorstein Lofthusをはじめ、現代ノルウェー・ジャズ・ロック・シーンの名手が集ったジャズ・ロック・カルテットによる19年作1st。流麗でテクニカルなカンタベリー・ロックとKING CRIMSONやANEKDOTENといったヘヴィ・プログレが交わり合ったような、テクニカルで緊張感ほとばしるアンサンブルがすさまじく強力。カンタベリー直系のエレピが幻想的な浮遊感を漂わせたかと思いきや、そこへ重厚な圧を持って伸し掛かる強靭なギターと地を這うベースに鋭く硬質なドラム。重戦車のように突き進むリフの上でギターやキーボードの目まぐるしいインプロが火花散らす、常時テンション張り詰めた演奏にはひたすら息を呑みます。「硬派」という言葉が相応しい、怒涛のヘヴィ・ジャズ・ロック盤です。
ノルウェー出身の新鋭キーボード・トリオ、17年のデビュー作に続く19年2nd。流麗でテクニカルなジャズ・テイストに洗練されたポスト・ロック、ポップかつスペーシーなサイケデリック・ロックを混ぜ合わせた、瑞々しく洒脱なジャズ・ロック・アンサンブルは前作に引き続き見事な完成度。カンタベリー・ロックを思わせる甘いエレピ&フュージョン・タッチの煌びやかなシンセサイザーを切り替えつつ伸び伸びとメロディを紡ぐキーボード、タイトなキレ味が心地良いドラムに、硬質ながらもグルーヴィーでユーモラスに躍動するベース。柔らかく幻想的な男性ヴォーカルも相まって、非常に暖かくハートフルな音世界を展開。かと思えば時には歪んだトーンでスリリングな変拍子を繰り出したり、またポップな中にも仄かに北欧の森を思わせる翳りやちょっぴり怪しい雰囲気を含んでいたりと、カンタベリー・ファンは勿論70’sブリティッシュ・ロック・ファンの心にも訴えかけるサウンドに仕上がっています。これはオススメ!
16年にデビューしたイタリアのプログレ新鋭トリオ、スタジオ盤としては二作目となる19年作。初期SOFT MACHINEを強く意識させるサイケなカンタベリー・ロック・サウンドは本作でも健在で、ほのかに現代的な洗練味も感じさせつつ全体を通してノスタルジックな暖かみに包まれた高度なプログレ・ポップ・ナンバーを聴かせています。特に素晴らしいのがキーボードで、CARAVANを思わせるファズ・オルガンからハードなハモンド、幻想的なエレピに洒脱なピアノなど、70年代ロック&プログレ・ファンのツボを絶妙に付いてくる巧みな音色の切り替えが堪らない。英国叙情を感じさせる憂いあるヴォーカルのメロディ、甘く豊かなハーモニー、管弦楽器も取り入れコロコロと曲調を変化させるちょっぴり怪しげなアレンジ。初期SOFT MACHINEやGONG、HATFIELD & NORTHから10CCまで、カンタベリー&ブリティッシュ・ポップのファンには是非オススメしたい快作です!CARAVAN〜HATFIELD等でおなじみのリチャード・シンクレア、オーストラリアのJETで知られるNic Cester等がゲスト・ヴォーカルで参加。
06年にデビューしたロンドンのジャズ・ロック・グループ、20年作。ザッパやGENTLE GIANTを彷彿とさせる緻密な変拍子アンサンブルに初期GONGのサイケな怪しさが加わったような、テクニカルかつユーモア溢れるサウンドが特色。ギターがきめ細やかなアルペジオを刻み、タイトなリズム隊が予測不能に蠢き、サックスやトランペットがジャジーかつどこか牧歌的な雰囲気を醸し出しながら絡み合う。その中を掴み所なく浮遊するシアトリカルなヴォーカルも大変魅力的。スリリングながらも強靭さはなく、ひそひそと囁くように紡がれるジャズ・ロック・サウンドはカンタベリー・ロックにも通ずるものがあります。オススメ!
99年より活動する、英国シンフォニック・ロックの代表的グループによる19年作7thアルバム。2013年作『One For Sorrow Two For Joy』以降、北欧シンフォの雄ANGLAGARD人脈が関わってきた本バンドですが、今作でもANGLAGARDの元キーボーディストThomas Johnson、現ANGLAGARDの女性フルート奏者Anna HolmgrenとベーシストJohan Brandが全面参加しています。開始から、カンタベリー・ロックを北欧的透明感と共に鳴らしたような、あまりにも淡くデリケートなサウンドに息をのみます。スッと染み入ってくる癖のない美声の女性ヴォーカルと密やかに幻想美を広げるオルガン&エレピ、美しくさえずるフルート、そして奥ゆかしいメロトロンの響き…。比較的ゆったりしたテンポで丹念に織り上げられていく美麗かつ浮遊感もたっぷりのシンフォニック・ロックが感動ものです。後半に収められた20分の大作では、ドラム、ギター、オルガンをメインにして躍動感あるダイナミックな演奏が繰り広げられ聴き所ですが、それでも持ち前の気品ある佇まいは崩さずに華麗に走り切る演奏が見事。ハンガリーのYESTERDAYSあたりがお好きなら是非聴いてみて欲しいです。オススメ!
試聴は下記ページで可能です!
https://thieveskitchen.bandcamp.com/album/genius-loci
イギリス南端に近いデヴォン州出身の新鋭プログレ・グループ、17年作に続く20年作4th。温かみあるオルガンやジェントルな男性Vo.をフィーチャーした、CARAVAN彷彿のサウンドは本作でも健在。なおかつ今回はGONGや初期ソフツを思わせる怪しげなサイケ感、そしてモダンなスタイリッシュさもちょっぴり増した印象。クリーントーンのギターやフォーキーなアコギ、メロトロン等の楽器が朗らかに英国田園風景を描き出す牧歌的なナンバーもあれば、シタールやスペーシーなムーグが鳴り響き、GONGばりのエキセントリックなメロディが炸裂するスリリングなナンバーも。ノスタルジックな中にもピリリとスパイスの効いた作風は、ブリティッシュ・ロックやカンタベリー・ファンなら堪らないはず!CARAVANやGONGや初期ソフツやケヴィン・エアーズのファンには是非オススメの名作です!
ブラジルの新鋭ジャズ・ロック/フュージョン・グループMAHTRAKのキーボーディストPaulo Vianaによるプロジェクトの19年作。MAHTRAKのギタリストがゲスト参加しているほか、UNIVERS ZEROのバスーン奏者Michel Berckmansも1曲で参加しています。カンタベリー・ロックやフュージョンを取り込んだ涼やかな作風はMAHTRAKと同系統ながら、アグレッシヴなギターをフィーチャーしたMAHTRAKに比べるとキーボード中心の叙情的なサウンドに仕上がっているのが印象的。とりわけ顕著なのがCARAVANからの影響で、時にコミカルに跳ね、時に鋭く駆け抜けるデイヴ・シンクレア直系のファズ・オルガンは勿論、繊細なメロディをジェントルに歌い上げるヴォーカルもパイ・ヘイスティングを意識していそうでニンマリしてしまいます。またもう一つの特徴が、ジャケットからも伺える通りのスペーシーでSFチックな雰囲気。22分を超える最終曲ではCARAVAN由来の流麗なジャズ・ロック・パートと、荘厳なメロトロンや鋭くうねるシンセをフィーチャーした古き良きジャーマン・シンフォ彷彿のパートが同居し、壮大かつ内容盛り沢山な”シンフォニック・ジャズ・ロック”と言えるサウンドを創り上げていて圧巻です。往年のカンタベリー・ロックやシンフォ・プログレに通ずるファンタジックさに溢れた南米ジャズ・ロックの好盤!
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