2018年6月29日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
70年代の全盛期には、ジョン・アンダーソン、ジョン・ウェットン、グレッグ・レイク、ピーター・ハミル、ピーター・ガブリエル…といった名ヴォーカリストが活躍していたプログレッシヴ・ロック・シーン。
00年代以降、再び全世界的な隆盛を続けているプログレッシヴ・ロック・シーンですが、ヴォーカリストがかつてのようにスポットを浴びる機会は決して多くないのが現状です。
そこで、現在のプログレ・シーンにはどんな魅力的なヴォーカリストがいるのか探ってみよう、というのが本記事の趣旨になります。
実力派を厳選して取り上げてまいりますよ☆
現在の英国プログレ・シーンの牽引するバンドと言えばBIG BIG TRAIN。2021年11月、突然の訃報が届けられまだショックがありますが、09年よりヴォーカリストを務めてきたのでDavid Longdonです。ヴォーカルの他にもフルート、キーボード、ギターを操るマルチプレイヤーでもあります。その歌声は、ピーター・ガブリエルからあの「アク」を取り除き美声にしたような感じ。GENESISの英国叙情を正統に受け継いだバンドにとっては、彼以上のヴォーカリストはいなかったでしょう…。
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そのBIG BIG TRAINからも強い影響を受けたという、盲目の天才マルチ奏者&コンポーザーPete Jones。彼のソロプロジェクトTIGER MOTH TALESでは、ほぼすべての楽器を自身で演奏している点からもう凄いのですが、その真価はヴォーカルにこそ現れていると言っていいかも知れません。まるでピーター・ガブリエルを艶のある美声にしたようなクリアかつ繊細なヴォーカルは、TIGER MOTH TALESのロマンティックなサウンドに抜群に映えるんですよね~。うっとりとしてしまいます。
2015年に英国はレディングにて結成された新鋭プログレ・バンドI AM THE MANIC WHALEでベース/ヴォーカルを務めるのが彼。エモーショナルに歌い上げるちょっぴり粘りあるハイトーンが特徴で、リリカルで爽やかなバンド・サウンドとは相性抜群。音作りの面では、フラワー・キングス、ビッグ・ビッグ・トレイン、スポックス・ビアード等からの影響を、英国らしい端正さ瑞々しさで料理したサウンドが感動的で、このメロディアスさと音の瑞々しさはあのMOON SAFARIにも匹敵するものではないでしょうか。
オザンナやムゼオ・ローゼンバッハなど往年のイタリアン・ヘヴィ・シンフォを受け継ぐグループはイタリアに多く存在しますが、その頂点と言えばFabio Zunffanti率いるこのLA MASCHERA DI CERAでしょう。ヴォーカリストAlessandro Corvagliaは、強烈なダミ声で邪悪さをたっぷり滲ませながら歌うスタイルが特徴的。まるで魔術師のような(?)風貌からして雰囲気満点ですよね。
初期にはムゼオ・ローゼンバッハの名ヴォーカリストStefano LUPO Galifiが在籍していた新鋭ヘヴィ・シンフォ・バンドで、彼の後任という重責を任されたのがFrancesco Ciapica。そのパフォーマンスは驚くべきもので、前任者に匹敵するどころか上回ってさえいる素晴らしい声量と熱量のヴォーカルを披露しバンドのさらなる躍進の原動力となりました。
90年代イタリアきってのモンスター・バンドと言える「現代のAREA」DEUS EX MACHINAのヴォーカリスト。まるでDemetrio StratosとRobert Plantを融合させたかのような強靭かつ艶のあるヴォーカル・パフォーマンスには唖然とさせられます。始動から四半世紀を超えたこの16年作でも、円熟味は感じさせながらもギラギラしたエネルギーを放つヴォーカルは健在です!
今注目度急上昇中のスペイン新鋭DRY RIVERで、フレディ・マーキュリー愛溢れる力強いヴォーカルを聴かせているのがAngel Belinchon。スペイン語ヴォーカル特有の熱くまくしたてるようなスタイルから、多声コーラスと共にパワフルに舞い上がる歌唱、そして美しいバラードでの伸びのあるハイトーンまで、全編で素晴らしいパフォーマンスを披露します。けっしてフレディと声質や声域が近いわけではないのですが、歌い方やニュアンスは本当によく研究されている印象を受けます。
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現在は北欧の名バンドKAIPAでその素晴らしいヴォーカルを聴かせるPatrick Lundstromも、フレディ・マーキュリーの面影を感じさせるヴォーカリストの一人と言えるでしょう。フレディばりの声量でワイルドに歌い上げる強靭なヴォーカル・スタイルは、元バンドRITUALの時から少しも変わっていません。北欧プログレ最高峰のヴォーカリストと言っていいでしょう!
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ご存知ザ・フラワー・キングス不動のリード・ヴォーカルですね。TFKでは落ち着いた声質でクールに歌うロイネ・ストルトと対比するように、独特のハスキーヴォイスで熱く歌うハッセ。そんな彼の別働バンドがまた素晴らしくって、TFKにクイーンや10cc風のポップ・エッセンスを取り入れたようなユニークなサウンドを展開。ハッセのヴォーカルもポップさ満載の新境地を見せていて必聴です!
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1月11日(金)、12日(土)にクラブチッタ川崎にて開催された『ヨーロピアン・ロック・フェス 2013』に行ってまいりました。本日はその1日目の様子をレポートいたします!
今や現プログレシーンの顔とも言える北欧の名バンドMOON SAFARIでフロントマンを務めるのが、ハンチング帽がトレードマークのPetter Sandstrom。あまりにも清涼感に溢れた爽やかさ100%の歌声は、まさに北欧のヴォーカリスト像そのもの。そこに透明度の高い多声コーラスが寄り添うスタイルで、瞬く間にリスナーを虜にしてしまいます。繊細なパートではよりクリアな美声の持ち主Simon Akessonがヴォーカルを取ることも。2人のヴォーカルの対比もまた聴きどころです。
3rdが出世作となりましたが、2ndの時点でもう凄かった!美しく流麗なメロディと雄大なスケールのシンフォ然とした演奏が理想的に合わさっていて、プログレアルバムとしての完成度は一番かも!
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2014年まで、現ポーランドの中核的シンフォ・グループMILLENIUMのヴォーカルを努めていたLukasz Gall。その歌声は、現代的なスタイリッシュさと東欧らしい翳りのあるメランコリックさがバランスしたとても魅力的なもの。ジェネシスの叙情美とフロイドの内省感を合わせたようなアンサンブルに、切々と訴えかけるようにエモーショナルなヴォーカルが乗るサウンドは、途方もない音のドラマを味わわせてくれます!今のヴォーカリストも素敵ですが、個人的には彼のヴォーカルあってのMILLENIUMという感じがします。
12年デビュー、メンバーほぼ全員がクイーンとドリーム・シアターをフェイバリットに挙げるスペインの新鋭プログレ・バンド、前作より3年ぶりとなった18年作3rd。前2作も素晴らしいアルバムでしたが、この3rd、もうとことんエネルギッシュで痛快。聴いていてこんなに楽しくってワクワクするプログレって他にないかもしれませんっ!ベースとなるのは最も影響を受けているクイーンとドリーム・シアターの合わせ技。そこにシンフォ、ロックン・ロール、様式美ハード・ロック、ビッグ・バンド・ジャズ、フュージョンなどを自在に結合させて、スペイン産らしい情熱的かつダイナミックなプログレに仕立て上げた、エネルギーがぎっちり詰まったサウンドを構築しています。歌い回しにフレディ・マーキュリー愛を感じさせる声量みなぎるスペイン語ヴォーカルとオペラチックな分厚いコーラスがドラマチックに舞い上がるクイーン風のヴォーカル・パートから、ド派手に鳴らすヴィンテージ・トーンのオルガン&クラシカルで可憐なタッチのピアノを操るキーボードが溢れ出し、ギターがテクニカルかつハードエッジに疾走。ギターはメタリックにゴリゴリしてはいるのですが、同時にコシの強いグルーヴ感があり、ロックンロールのノリの良さが先立っているのが特徴。硬質ながら人間味たっぷりに熱く弾き飛ばすプレイ・スタイルがカッコいい!ギターが牽引する強度あるヘヴィ・プログレに突如ゴージャスなビッグ・バンドが絡んできたり、クラシカルな速弾きが炸裂する様式美系ハード・ロックがごく自然に南国風フュージョンに発展したりと、あまりに先の読めない奇想天外なサウンドには軽く目眩が起きそうなほど。その後には一転して美しいメロディが冴え渡る叙情バラードを持ってくるセンスも憎い限りです。前作が彼らの完成形かと思いきや、まだまだ進化するDRY RIVERサウンドを見せつける大傑作!おすすめです!
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーPeter Jonesによるプロジェクト、待望の3rdアルバムとなる17年作!16年よりCAMELのメンバーとしてツアーにも参加する彼。前2作で聴かせたコンポーザー&プレイヤーとしてのレベルの高さはもはや揺るぎないものでしたが、いやはや今作も凄い完成度です。まるで80年代以降のシリアスなテーマ性を持ったキャメルを、ゴージャスなサウンドプロダクションで再現したかのような、モダンかつロマンティックで雄大なシンフォニック・ロックが眼前に広がるこの感じ…何というイマジネーション。BIG BIG TRAINあたりに通じるモダンでスタイリッシュな音像も活きていて、往年のプログレと現代のバンドらしいモダンなセンスがこれほど不可分に結びついたサウンドはそうそうないでしょう。これでもかとファンタジックなフレーズを紡ぎ出すキーボード、アンディ・ラティマーばりにドラマチックに泣くギター、芳醇に響くクラリネット&リコーダー、そして端正に歌い上げる美声のヴォーカル。彼一人で各楽器をこれだけ自在に操る才能にはただただ脱帽。各パートが次々と展開していく、映画を観ているような情報量の多い音像は前作からの持ち味ですが、それを複雑に感じさせない淀みなく流れるような緻密な構築性にも舌を巻きます。改めてとんでもない才能を見せつけられる思いのシンフォ傑作です。
99年結成のポーランド屈指のプログレ新鋭バンド。ネオ・プログレとピンク・フロイドの影響の元に、メランコリックで映像喚起的なサウンドでデビューし、徐々に洗練させながら、前々作、前作で到達した、「プログレ」の枠を超えた、ピンク・フロイド『ウォール』ばりのスタイリッシュな「ロック」サウンド。2013年作9thである本作では、スタイリッシュさはそのままに、叙情性を増し、シンフォニック・ロックとして孤高のサウンドを聴かせています。映像喚起的なSEから入り、中欧の森を思わせるアコギのリードが静かに鳴るイントロ。その静寂を打ち破って轟くヘヴィなギターとキーボードによる音の壁とギルモアばりに伸びやかに泣くリード・ギター。そして、何より素晴らしいのがメロディーとヴォーカル。ピンク・フロイドの内省感とネオ・プログレの叙情美とが出会ったような美旋律、そして伸びやかさの中に翳りを感じさせるハイトーンが魅力のヴォーカルは、もう絶品の一言。99年のデビュー作での「空間的な音響センスに溢れたシンフォニック・ロック」を、これまでの作品で培ったテクニックとサウンド・メイキングのセンスにより圧倒的な強度で聴かせた一大傑作。熱くも透徹としたロマンティシズム。これはずばり最高傑作!
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