2020年7月18日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
文学や歴史など様々な題材をテーマに採ったコンセプトアルバムが数多く作られている点というのは、プログレならではの大きな魅力の一つと言えるのではないでしょうか。
テーマとなった作品や事柄を知っていればいるほど、それが音楽作品としてどんなふうに表現されているのだろうと聴く前からワクワクしてきますよね。
そんなわけで今回は、世界各国より文学作品をテーマに制作されたプログレ・コンセプト・アルバムの名作をご紹介してまいりましょう!
まずは、先日届いた『雪の女王』をテーマにしたこのアルバムから!
現ポーランド・シンフォの中核を成すMILLENIUMのリーダーによるプロジェクト。ドラマチックで哀感ある女性Voバージョンと素朴で温かみ溢れる男性Voバージョン。ヴォーカルが違うだけでここまで音の印象が変わるとは…。『雪の女王』をテーマに主人公ゲルダとカイの視点を2枚組で描くシンフォ傑作!
続いても2020年作より、『ガリヴァー旅行記』を題材にした作品をご紹介!
SAMURAI OF PROGのメンバー2人が「ガリヴァ―旅行記」をテーマに描く2020年作からご紹介!オルガン、ギター、ヴァイオリンらを中心に紡がれる艶やかで気品に溢れたシンフォ・サウンドは、本家SOPと同等の感動をもたらしてくれます。オススメ!
なんと、前作から1年を待たず届けられた11th!米詩人H.W.ロングフェローと英詩人ウィリアム・ブレイクの詩を元に作曲された「Birds of Passage」組曲のパート1(22分)とパート2(21分)が収録された力作です。THE FLOWER KINGS影響下のサウンドをベースに、幻想のカーテンをなびかせるシンセ、ハケットからロイネまでを自在に行きかうギター、語り部のように丹念な男女Voらがファンタジックに織り上げる、さすが極上の一品!
まずは多くの人が真っ先に思い浮かべるであろうこのアルバム。ポール・ギャリコ『白雁』を音像化した一大ロマン抒情詩にして、英ファンタスティック・プログレ屈指の傑作ですね。フルート、オルガン、ギターが丹念に織り上げるリリシズムいっぱいのアンサンブルは、何度聴いても涙が出そうになります。
ご存知、初期GENESISで活躍後ソロに転向、ファンタジックで味わい深い作風の作品を数多くリリースし世界中に熱心なファンを持つ名ギタリストの81年作。題材はもちろんオーウェルのSF古典『1984』。アンソニー・フィリップスと言えばアコースティック・ギターやピアノを中心とする穏やかな作風をイメージしますが、本作は全編がシンセサイザーによって演奏されていて原作を表現した近未来的なサウンドを聴かせています。ただし無機的な印象はなく、温かみやファンタジックさに溢れているのが実に彼らしいところです。シンセサイザー・ミュージックとして聴いても秀逸な名作となっています。
GONGと並ぶスペース・サイケ・プログレの大家による、最高傑作とも評される75年作。本作は、バンドと深い親交を持つ英国のSF作家マイケル・ムアコックの小説をベースにしたコンセプト・アルバムとなっています。メロトロン名盤としても知られる一枚で、分厚く荘厳に鳴らされるメロトロンのプレイはプログレ・ファンなら一聴の価値ありです。負けじとフルートやヴァイオリンも加わって、聴き手を飲み込まんばかりのスケール大きなシンフォニック・ロックを繰り広げます。傑作!
こちらもSF文学の音像化。アイザック・アシモフの同名小説からインスパイアされた傑作コンセプト・アルバムですね。小曲中心の洗練されたサウンドですが、その中に詰め込まれた壮大さ&ドラマチックさはフロイドの『原子心母』にも匹敵!
骨太なアンサンブルに英国叙情の管楽器が絡む極上ジャズ・ロックを聴かせる英国のバンド、71年発表2ndと72年発表3rdをカップリング。2ndはティモシー・リアリー著書の「POLITICS OF ECSTASY」にインスパイアされ、戦争と平和を表現したコンセプト・アルバムとなっています。テンション溢れるジャズ・ロック・サウンドの合間にポエトリー・リーディングを取り入れることで、アルバムとしての構成も見事に完成された一枚に仕上がっています!
68年にブルース・ロック・バンドとして結成され、のちにはプログレとも呼応した荘厳なサウンドを生み出した名バンドによる70年発表の3rd。ファンタジー文学の金字塔「指輪物語」にインスパイアされたという本作は、ブルース・ロックにプログレッシヴ・ロックの構築性を持ち込んだ、ブリティッシュ・ロックの歴史においても重要な一枚。骨太なブルースギターを核としつつもハードロックのスリリングで鋭角的なフレーズセンスも備えたギタリスト、マーティン・ピューの好演が光ります。
イタリアにもコンセプト・アルバムの名作は数多く存在しますが、その最高峰と言えばやはり本作になるのではないでしょうか。ドイツの哲学者/思想家フリードリヒ・ニーチェが超人思想について著した『ツァラトゥストラはかく語りき』をモチーフとする作品ですね。ハード・ロック的な凶暴さを持つ演奏をベースに静と動をダイナミックに対比させた曲構成、そこに押し寄せる轟々たるメロトロン…。圧倒的なまでのドラマティックさで迫ってくるヘヴィ・シンフォ大傑作。
イタリアからは、同国の現シンフォ・シーンをリードするこのバンドも取り上げておくべきでしょう。帝政ローマ時代の作家アプレイウスの代表作『変容』の一遍「クピドとプシュケ」を主題とした16年作で、ヴァイオリンやチェロを始めとする管弦楽器群が躍動感いっぱいに駆け巡るサウンドは一言、圧巻。メロトロンやハモンドなども贅沢に使用されており、四季シリーズで最高潮を迎えたかに思えたこのバンドのさらなる進化に唸らずにはいられない会心の一枚。
79年というプログレ全盛期が過ぎ去って久しい時期にデビューしながらも、CAMELからの影響を昇華しクオリティの高いシンフォニック・ロックを作り上げたジャーマン・シンフォ・バンドによる81年のライヴ作。母国の文豪ヘッセによる短編『ピクトルの変身』を題材に朗読を交えながら綴られるサウンドは、とにかく息をのむほどにロマンティックで幻想的。本作を紹介する際には、終演後の拍手がなければライヴであることに気付かないほど、という文句が必ず付けられるくらいに驚異的なまでの精緻なパフォーマンスを披露しています。
ドイツのマルチ・ミュージシャンによる、アイルランドの作家フラン・オブライエンによる67年の奇想小説『第三の警察』を題材とするコンセプト・アルバム。内容は70年代初頭のフランスあたりのマイナー・プログレかと思うような、屈折した美的センスを発揮したミステリアスなプログレ。この音がドイツ新鋭の16年作だって!?
【BANDCAMPページ】
https://toxenaris.bandcamp.com/album/the-third-policeman
ジェネシスやキャメルの影響下にあるサウンドを持ち味とするフランスの隠れた名バンドの79年作2nd。母国フランスの作家ボリス・ヴィアンによるSF青春小説『日々の泡』をモチーフにしたコンセプト・アルバムで、全盛期のCAMELと『TRICK OF THE TAIL』期のGENESISを合わせたようなアンサンブルに、哀愁にじむフランス語ヴォーカルが乗ります。あまり洗練された感じはなく少し「いなたさ」の残るサウンドが良い味わいです。
80年代以降のスウェーデン・シンフォ・シーンを代表するグループによる、『指輪物語』に着想を得た88年作。まるでCAMELやGENESISのファンタスティックな部分だけを抽出したみたいな溢れんばかりのリリシズムが素晴らしく、これは後輩バンドに当たるMOON SAFARIにもきっと大きな影響を与えてるはず。
ハンガリー国内のみならず、東欧プログレという視点で見ても間違いなく最高峰と呼べる一大シンフォ傑作が本作。レイ・ブラッドベリの代表作の一つ『火星年代記』をテーマに据えた、シンセサイザーとギターとフルートがスリリングに絡み合うエネルギッシュなシンフォニック・ロックはただただ迫力満点。叙情性と緊張感が見事に調和した圧倒的な構築美を堪能できる金字塔です。
名実ともに現ロシアのトップ・バンドと言えるシンフォ・グループ、中国の古詞をテーマとしたコンセプトアルバムの第2部にあたる07年作。「第1部」はこれまでの作品にないリリカルなパートが印象的でしたが、本作では、ダイナミックなパートとともに「静」と「動」が鮮烈に対比された、「壮麗」という言葉がぴったりのドラマティックなシンフォニック・ロックが味わえる逸品となっています。
映画でも有名な、世紀の脱獄劇を描いた小説『パピヨン』をテーマにした14年作『Beyond The Seventh Wave』。その完全再現を収めた17年ライヴ作がこちら。現オランダ屈指の人気を裏付ける艷やかでドラマティックな起伏に満ちたシンフォニック・ロックがとても感動的!
ポーランドの人気シンフォ・バンドMILLENIUMのkey奏者による17年作で、題材となっているのは不朽の名作「星の王子さま」。『狂気』フロイドへの憧憬に満ちた深遠かつドラマチックなサウンドによって、原作のストーリーを見事に描ききった感動の一枚となっています。詳細はnetherland dwarfによる下記コラムもご覧ください!
同じくMILLENIUMのリーダーによる19年のソロ第3弾!今回は文豪チャールズ・ディケンズの代表作「クリスマス・キャロル」を題材にしており、これまでの深遠な作風から一変、テーマ通りのメロディアスで心温まるシンフォ名品に仕上げています。
一気に南米チリに飛んでこちらの名作をご紹介。ノーベル文学賞も受賞したチリの詩人パブロ・ネルーダによる詩作品『マチュピチュの頂』をテーマに81年に発表された南米プログレ屈指の名盤が本作ですね。アンデスの山々に木霊するようなあまりに雄大なサウンドには胸が熱くなりますね~。ロックという範疇を越えて南米音楽史にも残るべき圧倒的な気高さに満ちた作品と言えるでしょう。
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プログレッシブ・ロックが衰退し死滅しかけていた79年に彗星のごとくデビューを果たし、甘く深みを持ったファンタジックなサウンドとジェントルな歌声、そしてジャーマン・シンフォニック・ロックらしいロマンを兼ね備えたドイツを代表するシンフォニック・ロックバンド。81年作の3rd。ヘルマン・ヘッセの小説「ピクトルの変身」をコンセプトに製作された本作は、演奏終了後に聴衆の歓声が聴こえるまでライブ盤とは気付かないほどのクオリティーを持った名演であり、甘いキーボードをバックにヘルマン・ヘッセの作品が朗読され、耳によく馴染むフレーズ、シンフォニックな楽曲群で叙情的に盛り上げていきます。同じく小説をコンセプトにしたという意味においてはCAMELの「Snow Goose」に勝るとも劣らない名盤と言えるでしょう。
直輸入盤(帯・解説付仕様)、帯のサイズが合っておりませんが仕様になります、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価2857+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
帯に切りキズ(破れ)あり
直輸入盤(帯・解説付仕様)、帯のサイズが合っておりませんが仕様になります、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価2857+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干スレあり
直輸入盤(帯・解説付仕様)、帯のサイズが合っておりませんが仕様になります、スリップケース付仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価2857+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
スリップケースに小さい圧痕あり、帯に折れあり
ハンガリーを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ。84年作の1st。クラシカルで荘厳なシンセ、格調高いピアノ、たおやかなフルート、スリリングな泣きのギターを中心に、1音1音が有機的に結びついたダイナミックなアンサンブルは雰囲気抜群。叙情性と緊張感が見事に調和した圧倒的な構築美。シンフォニック・ロックの一大傑作。
現ポーランドを代表するシンフォ・グループMILLENIUMを率いるキーボード奏者によるソロ・プロジェクト、19年作3rd。ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』を題材にしたコンセプト・アルバム。MILLENIUMで共に活動するベーシストKrzysztof Wyrwa、度々MILLENIUM作品に参加している女性ヴォーカルKarolina Leszko、MOONRISEのギタリストMarcin Kruczek、人気バンドLOONYPARKのドラマーGrzegorz Fieberという、現ポーランド・シーン屈指の腕利きミュージシャン達を従えたバンドスタイルで制作されています。比較的シリアスと言えた前作までに比べ、題材を反映してか、心温まるようなファンタジックなタッチをメインにした、メロディアスなシンフォニック・ロックが絶品すぎる。派手さはなくとも心地よい躍動感を備えるリズム隊を土台に、まるで歌うように叙情フレーズを次々と紡ぎ出すギター、リック・ライトに似るほの暗く広がるシンセサイザー、そして清涼感の中に円熟味を感じさせる美声の女性ヴォーカルがドラマチックに調和するサウンドは実に感動的。1曲目のインスト・パートを始め、これまでは感じなかったキャメルに近い音作りも新鮮です。演奏はここぞで泣きのプレイを炸裂させるギターが大きくフィーチャーされていて、シンセ、ピアノ、オルガンが淡く繊細なタッチで幻想性を付与します。いつもながら、ソロ作品でもあくまでバンド・アンサンブルの一員に徹してプレイするポジショニングに、いい作品を作ろうというひたむきな姿勢が感じられて素晴らしい。従来作を楽しまれたフロイド・ファンは勿論、ジェネシスやキャメルがお好みの方にもオススメしたい名品です。
イタリアン・シンフォニック・プログレッシブ・ロックの頂点に君臨する名盤であり、イタリア然とした叙情とへヴィネスで迫る傑作73年作。その内容はロマンに溢れるメロディーと、キーボード・サウンドをメインに据えた爆発的な熱気を感じるへヴィー・シンフォニック・ロックであり、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」テーマに掲げた壮大なコンセプト・アルバムです。儚げなフルートや溢れ出る洪水のようなストリングスなど、メロトロンの長所を生かしきった名盤としても別格の出来であり、へヴィーなギターやせわしない手数を誇るドラムが彩るパワフルな音像に、深みのあるシンフォニック性とイタリアン・ロックの風格を加味することに成功しています。入門編にも最適な必聴名盤。
ジェネシスやイエスやジェントル・ジャイアントなど英国プログレのファンだったメンバーにより76年に結成されたスウェーデンのグループ。84年のデビュー作と、デビュー前に制作してカセット販売し完売していた初期音源を元にリメイクした88年作3rdとをカップリングした2in1CD。幻想的に広がるキーボード、流麗なタッチのメロディアスなギター、優しい音色のリリカルなフルート。どちらの作品もジェネシスやキャメルなど英プログレのエッセンスとJ・R・R・トールキンの『指輪物語』などから影響を受けたコンセプトとがブレンドしたファンタスティックなサウンドが印象的です。北欧らしい透明感いっぱいのリリシズムが溢れるサウンドは、まるでキャメルやジェネシスのファンタスティックな要素のみを抽出したようです。アルバムのどこを切り取っても零れ落ちる美しいメロディ。本当に素晴らしい出来映え。傑作です。
現ポーランドを代表するシンフォ・グループMILLENNIUMのキーボード奏者Ryszard Kramarskiによるソロ・プロジェクト17年作。タイトルが示すとおり『星の王子さま』をコンセプトに据えた作品となっており、そのサウンドはMILLENNIUMと同様ピンク・フロイド、特に『DARK SIDE OF THE MOON』を強く意識したメロディアスかつ劇的なシンフォニック・ロック。リック・ライトのプレイを思い出さずにはおれないセンシティヴな美しさと微かな陰鬱さが漂うシンセから、壮麗に流れゆくキーボード・ストリングスまで、音作りの要を担う自身のキーボードワークはさすがの素晴らしさ。ただ決して前には出過ぎずアンサンブルの中で有機的に音を紡いでいる姿勢がまた好印象です。一方メインでソロを取るMOONRISEのギタリストMarcin Kruczekによるギターも特筆で、ギルモアのプレイを忠実に再現したブルージーな泣きをたっぷり含んだ極上のソロを聴かせていて感動を禁じえません。女性ヴォーカルは清楚さよりは艶があってややアヴァンギャルドな表情も滲ませる実力派。フロイド憧憬のサウンドに深遠な奥深さを与えています。往年のフロイド憧憬を見せつつもそこに違和感なくエレクトロニクスを挿入してくるモダンなセンスも冴え渡ります。フロイド好きならこれはたまらないメロディアス・シンフォの好盤!
ビートルズやピンク・フロイドの作品を手掛けたアビイ・ロード・スタジオの名エンジニア、アラン・パーソンズ率いるプロジェクト。アリスタ移籍第一弾となった77年作の2nd。アイザック・アシモフの小説「われはロボット」からインスパイアされ、SFをテーマに創りあげたコンセプト・アルバム。アートワークはヒプノシス。
ジェネシスやキャメル影響下のメロディアスなサウンドが人気のフランスのシンフォニック・ロック・バンド。76年のデビュー作と甲乙つけがたく人気の79年作2ndで、フランスの作家ボリス・ヴィアンによるSF青春小説『日々の泡』をモチーフにしたコンセプト・アルバム。前作から、ドラムが代わり、キーボーディストが加わってツイン・キーボード編成となって録音されています。ラインナップの変化はプラスとなった印象で、シャープに引き締まったドラム、左右チャンネルから鳴らされてシンフォニックに広がりドラマ性を高めるキーボード・アンサンブルは特筆。スティーヴ・ハケットやアンディ・ラティマーを彷彿させる繊細なタッチのリリシズム溢れるギターは相変わらず絶品だし、奥ゆかしさがフランスらしいヴォーカルもまた魅力的だし、ジェネシスやキャメルのファンにはたまらない「詩情」と「ドラマ」に満ちています。マイナーながら叙情的なシンフォニック・ロックの名作です。
現ポーランドを代表するシンフォ・バンドMILLENNIUMのkey奏者によるソロ・プロジェクト、20年4th。本作のテーマはアンデルセンによる「雪の女王」。特筆は、同一の演奏に対し女性ヴォーカルが歌うバージョンと、男性ヴォーカルが歌うバージョンを収めた2枚組である事。DISC1は、艶やかかつ哀感を帯びた女性ヴォーカルがシリアスなドラマ性を引き立てていて、雪景色が浮かび上がるような荘厳さが広がります。一方、素朴な声質で丹念に歌う男性ヴォーカルのDISC2は、同じ演奏とは思えないほど暖かくハートフルな聴き心地をもたらします。物語の主人公ゲルダとカイ、それぞれの視点を表現する見事な演出です。演奏もさすがで、美麗なオーケストレーションをバックに、硬質なリズムとひんやりしたシンセ、静謐なタッチのピアノ、フロイド彷彿の浮遊感あるギターのリフレインらが折り重なり、原作のストーリーをイマジネーション豊かに紐解いていきます。物語の展開とシンクロするSEも効果的。荘厳さの中に淡い叙情を秘めたサウンドが、静かな感動を呼び起こす名作です。
FINISTERREやLA MASCHERA DI CERAを率いて90年代以降のイタリアン・ロック・シーンを牽引したFabio Zuffantiによるソロ・プロジェクトであり、00年代イタリア屈指といえるグループ。帝政ローマ時代の作家アプレイウスの代表作『変容』の一遍「キューピッドとプシュケ」を主題とした2016年作のコンセプト・アルバム。何より印象的なのが管弦楽器で、クラシカル&シンフォニックなサウンドに心躍ります。ヴァイオリンやチェロをはじめ、木管楽器、金管楽器が左右チャンネルを駆け巡り、メロトロンをはじめとするヴィンテージなキーボードが鳴り響くサウンドは、ただ一言「壮麗」。ここぞではハモンド・オルガンやエレキ・ギターが重厚に鳴り、レ・オルメ『フェローナとソローナ』あたりを彷彿させる荘厳な音世界を描きます。これぞイタリアでしか生まれ得ない、壮麗かつ荘厳なクラシカル・プログレ。傑作です。
多国籍シンフォ・プロジェクトSAMURAI OF PROGのサイド・プロジェクトによる2020年作。イタリア人ベーシストMarco Bernardとフィンランド人ドラマーKimmo Porstiのユニット体制となっており、SOPのもう一人Steve Unruhは一曲にゲスト参加、他にも多数のゲスト・プレイヤーをフィーチャーし制作されています。そんな本作がテーマとするのはあの「ガリヴァー旅行記」。SOPの19年作『Toki No Kaze』で獲得した繊細な「静」の表現力を生かした、オルガン、ギター、ヴァイオリンらで紡がれる艶やかで気品に溢れたサウンドを中心に聴かせます。クラシカルな深みある表現を織り交ぜた奥ゆかしいタッチで物語を描き出す演奏が見事です。ラストでは従来のSOPを想起させるシンセが高らかに響くファンタジックなシンフォニック・ロックが登場し一気に盛り上がるドラマチックなアルバム構成も特筆すべき点。サイド・プロジェクトという位置づけながら、SOPの進化の延長線上にある作品というべき完成度の高いサウンドを閉じ込めた傑作です!
ウクライナ出身、英国を拠点に活動する1981年生まれのコンポーザー/キーボーディストAntony Kaluginによるプロジェクト。なんと前作『ECHOES FROM WITHIN DRAGON ISLAND』から1年を待たずしてリリースされた19年作11th!米詩人H.W.ロングフェローと英詩人ウィリアム・ブレイクの詩をテーマにした「Birds of Passage」組曲のパート1(22分)とパート2(21分)という大作2曲で構成されています。そのサウンドは、最も影響を受けるTHE FLOWER KINGSにニューエイジ系ミュージシャンだった経歴を反映したクリアで透明感ある音色を散りばめたかのような、スケール大きくも宝石のような輝きを放つ愛すべきシンフォニック・ロック。フェードインして勇壮に立ち上がるシンセサイザーが物語の幕開けを告げると、ハケットばりに繊細なギターとつややかなトーンのシンセがユニゾンで走り出す、これでもかファンタスティックな導入からもうシンフォ・ファンはハートを奪われること必至です。歌声を重ねながら語り部のように丹念に歌い上げる男女ヴォーカルもグッとくるし、ハケット調のデリケートなギターはソロでは一転エモーショナルで伸びやかに飛翔するロイネ・ストルトばりの入魂プレイで魅了します。A.Kaluginのキーボードも負けじと幻想のカーテンをなびかせるように雄大なシンセで包み込んだかと思うと、妖精の浮遊音のごとき美麗なシンセSEを散りばめて個性を発揮。パート1終盤は、優雅なストリングスも一体となってドラマチックに上り詰めていく演奏があまりに感動的です。パート2は、初期のA.フィリップスを思わせるリリシズム滴るアコースティック・パートから、一気に躍動感溢れるスピーディーな展開に切り替わる「静」と「動」の構成が見事です。従来に増して、TFKファンには是非聴いてほしい一枚となっています。おすすめ!
本格的な音楽教育を受け、交響曲も書けるほどにクラシックに精通したKey奏者&コンポーザーのGennady Ilyinを中心に、ロシア南西部のウクライナ国境に近い町クルスクで結成された新鋭プログレ・グループ。『RETURN』(05年作)『NEW FAUST』(06年作)『SIXTH SENSE』(06年作)と続々と壮大かつダイナミックな名作を生み出すなど、完全に覚醒して00年代プログレシーンの最前線へと躍り出たバンドによる07年作。中国の古詞をテーマとしたコンセプトアルバムで、2部構成でリリースされたうちの「第二部」にあたるのが本作。「第一部」はこれまでの作品にないリリカルなパートが印象的でしたが、本「第二部」では、ダイナミックなパートとともに「静」と「動」が「鮮烈」と言えるまでに対比したドラマティックなシンフォニック・ロックを聴かせています。「壮麗」という言葉がぴったりのクラシカルな旋律からキース・エマーソンばりのけたたましい旋律までスケールの大きなキーボード、速弾きを織り交ぜながらメロディを伸びやかに紡ぐギター、ロシア語の早口で畳み掛けるようなヴォーカル、シャープに疾走するリズム隊。圧倒的な演奏力と構築力で聴き手を飲み込む傑作です。
現オランダ屈指の人気シンフォ・バンド、16年のライヴの模様を収録した17年作。14年作『Beyond The Seventh Wave』をアルバム丸ごと曲順通りにプレイした完全再現公演。オランダ伝統と言えるキャメル・タイプのサウンドを下敷きに、IQなどネオプログレ的なメロディアスな爽快感を加えた、艷やかでドラマティックな起伏に満ちたシンフォニック・ロックは、ライヴでも変わらぬ感動をもたらしてくれます。うーんやっぱりいいバンドです!
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