2019年11月26日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ新鋭
スタッフ佐藤です。
ピンク・フロイドの『DarK Side Of The Moon』や『The Wall』、ジェネシスの『Lamb Lies Down On Broadway』、キャメルの『Snow Goose』など、数々のプログレ名盤で採用されている、コンセプト・アルバムというスタイル。
その題材は、バンドの創作以外にも、書物、文学作品、映画、歴史、偉人、文化、思想、人間心理、自然現象などなど多岐にわたります。
さて、当然ながら90年代以降に登場した新世代のプログレにも特定のコンセプトのもとで制作された作品が数多く存在しています。
注目すべき新鋭コンセプト・アルバムをご紹介してまいりましょう~☆
フランスの新鋭グループ、PENDRAGONのClive NolanやFROST*のCraig Blundellなど豪華ゲストを迎えて制作された19年作2nd。戦争で心に傷を負った兵士の物語を描いたコンセプト・アルバムで、タイトルの「SWEETHEART GRIPS」とは兵士が銃のグリップに家族や恋人の写真を貼り付けていた習慣のこと。重厚な雰囲気に包まれつつも、隅々まで美しく澄んだメロディが溢れ出るシンフォ・サウンドがひたすら感動的です。
注目バンドWALFADでも活躍するポーランドの若き才人が放った19年2nd!第一次大戦後に彼の出身地シレジア地方で起きた「シレジア蜂起」を題材にしたコンセプト作となっています。格調高く彩るヴァイオリンやピアノとエモーショナルに絡み合うギター&シンセの対比が美しい感動的な一枚で、ムーグを弾くのはなんとポーランド・プログレのレジェンド、SBBのJozef Skrzek!
【関連記事】
注目の新世代プログレ・アーティストの魅力に迫る「アーティスト・インタビュー」企画。今回は、来日公演が迫るポーランド・プログレの注目アーティストWojciech Ciuraj氏にお話を伺いました!
こちらもポーランドのグループで、「架空の映画のサウンドトラックを作る」というコンセプトのもとに活動する新鋭シンフォ・グループ。冷ややかなトーンのキーボードと熱量溢れる叙情派ギターの絶妙な「温度差」が仄暗さと温かみを帯びた独自の作品世界を作り上げていて素晴らしい!
ご存じ90年代以降のプログレ・シーンをリードするグループ、20人超の管弦楽隊を従えて制作された19年作。17~18世紀英国の貴族学生の間で行われたイタリアやフランスへの大規模旅行「グランドツアー」を題材にしていて、レオナルド・ダヴィンチ、ローマのコロッセオ、パンテオンなどイタリアの歴史的事物をモチーフにした、これまでに増してスケール大きくロマンあふれるサウンドを楽しませてくれます。スケール大きく繰り広げられるめくるめくプログレ絵巻に圧倒されるべし!
【関連記事】
90年代~00年代のイギリス屈指のプログレ新鋭バンドと言えるBIG BIG TRAINを特集。バンドのオフィシャル・サイトのヒストリーを元に、バンドのラインナップの変遷を見ていくとともに、作品を聴いてまいりましょう。
イタリア/フィンランド/アメリカという多国籍な3人を中心に結成され、毎回各国より著名プログレ・ミュージシャンがゲスト参加することで話題を集めるプロジェクト・バンド。
本作は何とスタジオ・ジブリの作品世界に触発され制作されたという作品で、日本のプログレ・ファンとしては特に要注目の一枚。
従来の壮大なシンフォニック・ロックに、息をのむような深みある「静」の表現力が加わった傑作で、各曲にジブリ作品を想起させるモチーフが散りばめられているのも聴き所♪
やはり新鋭コンセプト・アルバムの代表的傑作と言ったら、HOSTSONATENが四季をテーマに作り上げた4作品でしょう。本作は夏を題材とする11年作。夜明けのように幻想的なイントロ。ドラムを合図に、ギターがリリカルに疾走し、メロトロン、フルートが重なる。フィナーレでは、スティーヴ・ハケットが乗り移ったかのようなギター。完璧なオープニング曲!
キャメルの一員としても活躍する英マルチ奏者/コンポーザーによる待望4thアルバム!『Foxtrot』に入っていてもおかしくないジェネシス直系ナンバーから、キャメルばりの泣きの哀愁ギター炸裂ナンバーまで、今作も一人で作曲/演奏しているとは思えない凄まじいまでの充実ぶり。幼年期に彼が親しんだという童話やおとぎ話をイマジネーション豊かに音像化した傑作!
ポーランド産シンフォ・バンドMILLENNIUMのkey奏者による17年ソロ作。「星の王子さま」をコンセプトに展開されるのは、『狂気』フロイドへの憧憬に満ちた深遠でドラマチックなシンフォニック・ロック。フロイドファンなら必ずや目を細めるだろう逸品ですよ~!
物語に沿ったアルバムの流れについては、こちらのコラム記事で詳しく考察されていますので、合わせて是非お読みください!
技巧派ヴァイオリニストを中心とする日本のプログレ・グループによる、「共感覚」をテーマにした18年作。それにしても、エディ・ジョブソンからSAGRADOのマルクス・ヴィアナまでを想起させるこのヴァイオリン、素晴らしすぎやしないか…?先人へのリスペクトも絶妙に織り込んだヴァイオリン・プログレの新たな傑作!
お次も日本から。近年、米アヴァン・ジャズ・ロックの老舗バンドFRENCH TVの一員としても活躍しているギタリスト率いるバンドで、ヨーロッパの情景を描いたコンセプト・アルバム。変拍子満載のテクニカルなアンサンブルに華麗なフルートが舞う、70年代ユーロ・ロックを彷彿させるサウンドが素晴らしい逸品!
70年代初頭のフランスあたりのマイナー・プログレかと思うような、屈折した美的センスを発揮したミステリアスなプログレがとにかく個性的。この音がドイツ新鋭の16年作とは驚きです…。アイルランドの作家フラン・オブライエンによる67年発表の奇想小説『第三の警察』を題材にしたコンセプト・アルバム!
下記BANDCAMPページで視聴可能です!
https://toxenaris.bandcamp.com/album/the-third-policeman
ポーランドの人気バンドLOONYPARKで活躍する才能溢れるキーボーディスト/コンポーザー。19世紀ポーランドの劇作家/詩人が遺した詩の朗読を交えながら進行していく、独自の美意識を帯びたアーティスティックなコンセプト作!
現代チェンバー・ロックの最高峰グループYUGENのKey奏者による11年リーダー作は、「一日千秋」という日本語の持つ美しさと儚さを見事に描き出した叙情派チェンバー名品。13年ミラノで行われたAltrOck Festivalにおけるライヴ音源を追加収録した、18年2枚組リイシュー!
JACULAみたいなホラーチックなプログレが好き?ならこちらのイタリア新鋭もいかがでしょうか。ポーの『告げ口心臓』をテーマにした作品で、暗く凶暴なアンサンブルとモノローグ調の狂気的なヴォーカルがオカルティックな世界を演出します。
タイトルでピンと来る通り、「アーサー王物語」を題材に採ったフランスのグループによる作品。荘厳なkey、室内楽的な格調高さを持ったヴァイオリン、シアトリカルな女性Voなどが織りなすフランス然としたアート感満点の好盤です!
フィンランドのプログレ・ファンジン『COLOSSUS』の編集者であり、雑誌主催のトリビュート盤でも活躍するフィンランド在住のイタリア人Marco Bernard(B)を中心に、MIST SEASONでも活躍するフィンランド人ドラマーKimmo Porsti、プログレ・バンドRESISTORも率いるギター/ヴァイオリン/フルート/ヴォーカルの米国人Steve Unruhによる多国籍トリオ・グループ。19年作7th。本作の特徴は何と言ってもあのスタジオ・ジブリの作品世界に触発された作品であること。コロコロと愛らしく鳴るピアノや、美しい詩情を湛えたフルート、悠久を奏でるように格調高いヴァイオリンらがデリケートに紡ぎ上げる、宝石のように輝かしく温かなファンタジーが滲むアンサンブルが素晴らしい!圧倒的なスケールで聴き手に押し寄せるシンフォニック・ロックをメインとしていた従来から、作品テーマを受けてより繊細な表現に力を入れている印象を受けます。リリシズムが零れ落ちるような演奏と共にピアノスト/シンガーの富山優子氏が日本語で歌う6曲目なんて、本当にジブリ作品で流れていてもいいような完成度で驚き。他にもジブリ諸作品で印象的だったモチーフが各曲に散りばめられていて、お好きな方なら聴きながら思わずニンマリとしてしまうでしょう。最終曲ではイタリア新鋭IL TEMPIO DELLE CRESSIDREの美声女性ヴォーカルEliza Montaldoの日本語による慈しみに溢れた歌声が感動を呼びます。いつもながら豪華ゲスト陣にも注目で、LATTE E MIELE、HOSTSONATEN、KARFAGEN、GLASS HAMMER他、北欧から南米まで各国から実力派が集結。従来の壮大なシンフォニック・ロックに、息をのむような深みある「静」の表現力が加わった傑作です。
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】紙ジャケット仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、紙ジャケットに若干スレがある場合がございます。予めご了承ください。
FINISTERREやLA MASCHERA DI CERAの中心人物Fabio Zuffantiによるプロジェクト・グループ。90年代以降のイタリアン・シンフォを語る上で最も重要なグループ。春『SPRINGSONG』、冬『WINTERTHROUGH』、秋『AUTUMNSYMPHONY』に続き、四季をテーマにした作品の『夏』編。2011年作。キーボードがまるで幻想的な夜明けの風景のように広がり、パーカッションが躍動し、煌びやかなキーボードが朝露のようにこぼれ落ちる。そんな映像喚起的なイントロから期待度120%!太陽光が広がるようにドラムがスパっと入り、風のようなSEとともに、ギターが疾走を始める。メロトロンが溢れ出すのを合図にクールな音像へと場面が切り替わり、フルートがリリカルなメロディを奏で、アコギのアルペジオが入り、グッとファンタスティックなアンサンブルへ。柔和なトーンのムーグがしなやかにメロディを奏で、フルートが入って会話するように折り重なる。混声合唱のサンプリングとともに、フツフツとエネルギーを増加。フィナーレでは、スティーヴ・ハケットが乗り移ったかのようなギターが優美なメロディを奏でる。完璧なオープニング曲。2曲目は、一転して格調高いピアノではじまり、艶やかな弦楽器が重なり・・・。文句なしに素晴らしいサウンド!HOSTOSONATENの作品にやはりハズレなし。ファンタスティックなシンフォニック・ロックのファンは必聴の名作です。
現ポーランドを代表するシンフォ・グループMILLENNIUMのキーボード奏者Ryszard Kramarskiによるソロ・プロジェクト17年作。タイトルが示すとおり『星の王子さま』をコンセプトに据えた作品となっており、そのサウンドはMILLENNIUMと同様ピンク・フロイド、特に『DARK SIDE OF THE MOON』を強く意識したメロディアスかつ劇的なシンフォニック・ロック。リック・ライトのプレイを思い出さずにはおれないセンシティヴな美しさと微かな陰鬱さが漂うシンセから、壮麗に流れゆくキーボード・ストリングスまで、音作りの要を担う自身のキーボードワークはさすがの素晴らしさ。ただ決して前には出過ぎずアンサンブルの中で有機的に音を紡いでいる姿勢がまた好印象です。一方メインでソロを取るMOONRISEのギタリストMarcin Kruczekによるギターも特筆で、ギルモアのプレイを忠実に再現したブルージーな泣きをたっぷり含んだ極上のソロを聴かせていて感動を禁じえません。女性ヴォーカルは清楚さよりは艶があってややアヴァンギャルドな表情も滲ませる実力派。フロイド憧憬のサウンドに深遠な奥深さを与えています。往年のフロイド憧憬を見せつつもそこに違和感なくエレクトロニクスを挿入してくるモダンなセンスも冴え渡ります。フロイド好きならこれはたまらないメロディアス・シンフォの好盤!
ポーランドの新鋭プログレ・バンドWALFADの中心メンバーとしても活躍中のギタリスト/ヴォーカリストによる19年2ndソロで、第一次大戦後に彼の出身地シレジア地方で起きた「シレジア蜂起」を題材にしたコンセプト・アルバム。これは傑作!ギターとムーグシンセがエモーショナルに絡み、ヴァイオリンやピアノが格調高く彩る、優雅でドラマチックなメロディアス・シンフォニック・ロックを聴かせてくれます。このムーグのプレイ、どこかで聴いたことがあると思ったら、なんとSBBのJozef Skrzek!SBBでも聴かせた太くスペイシーなトーンでスリリングに疾走するシンセプレイを数曲で披露します。ギルモア調の泣きはそのままに倍の音数にしたようなテクニカルで表現力の高いギターも、シンセに負けじと躍動。弦楽も伴ってドラマチックに高まるサウンドに感動が込み上げます。またしっとり落ち着いたピアノを基調にしたヴォーカル・パートも実に味わい深く、切なさも帯びつつ朗々と歌い上げるポーランド語ヴォーカルが素晴らしいです。ポーランド・プログレらしい静謐で陰影ある音使いを織り交ぜつつ、メロディアスで開放感あるサウンドに仕上げた名品。ズバリおすすめ!2019年10月14日「ProgTokyo 2019」に出演した彼へのインタビュー記事はこちら!
ポーランド出身、2010年のデビュー作で完成度の高いシンフォニック・ロックを聴かせた注目グループ。17年のライヴ・アルバムを経てリリースされた通算3作目となる19年作。重々しくタイトに刻むリズム・セクションに支えられて、クリアかつ無機的なトーンのシンセやピアノ、一音一音に哀愁をほとばしらせる泣きのフレーズ満載のギターが紡ぐインスト・シンフォニック・ロック。全体にスペイシーで冷ややかな印象のキーボード、激情に駆られるようなプレイに息を呑む肉感的なギター、温度差ある両者の音色が重なり合い、仄暗さと温かみを帯びた独自の作品世界を作り上げており素晴らしいです。彼らも同国の多くのバンドが志向するピンク・フロイド的な映像喚起性を有しますが、前ライヴ作でも登場したクラリネットやフリューゲルホルン、マンドリンらが他バンドとは一線を画する繊細な叙情美を添えており聴きどころとなっています。「架空の映画のサウンドトラックを作る」という結成当初からの活動コンセプトがあるだけに、なるほどダイナミックで存在感あるアンサンブルを聴かせながらも、映像を鮮やかに浮かび上がらせるようなサントラ的な奥ゆかしい音作りセンスも随所で感じ取れます。フロイド・ファンには是非おすすめの、ドラマチックかつイマジネーションに富んだ傑作です。
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーで、現在はキャメルのキーボーディストとしても活躍するPeter Jonesによるプロジェクト。15年リリースの2ndアルバム『STORY TELLERS: PART ONE』の続編となる18年作4thがついにリリース。オルガンとアコースティックギター、彼の伸びやかな美声をメインに紡がれる比較的落ち着いた爽やかな演奏でスタートし、やや作風変わったかな?と思いきや、シームレスに突入していく2曲目から来た来た来ました…!音の粒子を繊細に散りばめたサウンドメイクの中、彼方から幻想的なギターとシンセが立ち上がってくるこの感じ。やはり並ではない才能を感じさせます。トニー・バンクスかと思うファンタジックで華やかなシンセ&オルガンとピーガブ風のユーモラスなシアトリカル・ヴォーカルが素晴らしすぎる『FOXTROT』に入っていてもおかしくない完成度の3曲目で、もうワクワクしっぱなし!そうかと思うと、アンディ・ラティマーばりの堂々たる泣きっぷりの哀愁ギターが大炸裂するナンバーも聴かせ、さすがキャメルの一員たる存在感も発揮しています。これを全て自身で作曲&演奏していることに、改めて驚きを禁じえません。さらに特筆は、TMT以前に彼が在籍した2 TO GOでデュオを組んでいた美声女性ヴォーカリストEmma Paineのゲスト参加。2曲で、2 TO GO時代を彷彿させる美しいデュエットも聴くことができ大変感動的です。ギターがこれでもかと叙情的に歌うシンフォニックで劇的なエンディングも見事だし、今回もTMTでしか味わえないファンタスティック&マジカルな音世界が堪能できる傑作に仕上がっています。初期ジェネシスやキャメルのファンには問答無用でおすすめ!
90年代以降の英国プログレ・シーンをリードしてきた正真正銘の名グループ、オリジナル・アルバムとしては2年ぶりに届けられた19年作。17〜18世紀英国の貴族学生の間で行われたイタリアやフランスへの大規模旅行「グランドツアー」を題材にしたコンセプト・アルバム。レオナルド・ダヴィンチ、ローマのコロッセオ、パンテオンなどイタリアの歴史的事物をモチーフにした、これまでに増してスケール大きくロマンあふれるサウンドを楽しませてくれます。ピアノと鉄琴による密やかな演奏をバックにヴォーカルがデリケートに歌う1曲目に早くもジ〜ンと来ていると、メロトロンの高鳴りと同時に躍動感いっぱいのバンド・アンサンブルが滑り込んでくる2曲目!この冒頭ですでに作品世界にグッと引き込まれます。いつもながら見事なオープニング演出です。手数多く演奏を引っ張るテクニカルなリズム隊、シャープなキレの良さを持つエレキギター、ファンタジックに舞うシンセらが作り上げる「動」のアンサンブル。芳醇な鳴りのアコースティックギター、悠久を奏でるように格調あるヴァイオリン、繊細なタッチのオルガンやピアノらが織りなす「静」のアンサンブル。両者が一曲の中でもしなやかに切り替わる演奏の素晴らしさは必聴で、そこに総勢20人以上に及ぶ管弦楽器隊がBBTサウンドにふくよかな厚みを加えているのも特筆。癖のないピーター・ガブリエルと言えるヴォーカルの胸に迫る説得力を持った歌声も相変わらず絶品です。それにしても始動より30年を迎えるバンドがこの瑞々しいまでの音色を奏でている事に改めて驚きを禁じえません。むしろ作品をリリースするたびにサウンドが若返るような感覚さえ覚えます。現英国プログレを背負って立つ存在としての風格を持ちつつも、ファンタジックで鮮度の高いサウンドメイクで迫る傑作。
イタリアン・チェンバー・ロックの新鋭グループ=YUGENのキーボーディストによる初リーダー作。11年発表。YUGENと同様、高速変拍子をビシバシ展開するスリリングなアンサンブルを主体としながらも、本作は、ジャケットに刻まれた「一日千秋」という日本語の持つ美しさと儚さを見事に内包したような、抒情的な美学が随所に滲み出た作風が特徴。不穏さとシュールさを併せ持った室内楽器の響き、心を揺さぶる幻想的なキーボード、ヘヴィなロック・ダイナミズム、淡き幼少期を思い起こさせるような子供の声のSE…。柔らかさ/儚さ=「静」と、スリリングでダイナミックな展開=「動」による圧倒的なコントラストから、イタリアン・ロックの確かなDNAが感じられる傑作です。
フランス南部出身の新鋭シンフォ・グループ、19年作2nd。PENDRAGONやARENAで活躍するClive NolanやFROST*のCraig Blundell、PANIC ROOMのギタリストDave Foster、DRIFTING SUNのPat Sanders、Steve Rotheryのバンドで活躍するkey奏者Riccardo Romano(本作ではヴォーカルを担当)など英モダン・プログレ・シーンの名だたる面子がゲスト参加。戦争で心に傷を負った兵士の物語を描くコンセプト・アルバムで、シリアスなSEを多用し重厚な雰囲気に包まれつつも、隅々まで美しく澄み切ったメロディで満ち溢れたシンフォ・サウンドはただひたすらに感動的。軸となるのはアンディ・ラティマーを思わせるエモーショナルなギターと透明感あるキーボード、エネルギッシュなリズム隊による深遠でメロディアスなアンサンブル。そこへ歪んだギターが変拍子リフを刻むスリリングなパート、水平線の彼方まで広がっていくようなシンセや粛々としたアコギが優美な音世界を描くパート、管弦楽器が格調高くも憂いを帯びた旋律を奏でるクラシカル・パートなど多彩な作風を交え、物語のように起伏あるドラマティックな音世界を描き出します。力強く芯のある女性ヴォーカルや柔らかな男性ヴォーカルの歌声も魅力的。まるで一本の映画を観終えたかのような聴後感が味わえる、圧巻の大作にして傑作です。
ポーランド・シンフォ・シーンの人気バンドLOONYPARKで活躍するキーボーディスト/コンポーザー、16年のソロデビュー作に続く17年作2nd。19世紀ポーランドの劇作家/詩人/画家Stanislaw Wyspianskiへと捧げられた作品で、彼の遺した詩の朗読を交えながら進行していくコンセプト作となっています。落ち着いた幻想的なトーンを基調に劇的な泣きのプレイも聴かせる表現力の高いギター、そして自身によるひんやりとした透明度の高いシンセ&凛としたタッチのピアノらが紡ぐ、いかにもポーランドと言える翳りのあるメランコリックなシンフォニック・ロックを鳴らします。下地としてあるのはピンク・フロイドなのですが、格調あるシンセのプレイを筆頭に独自の美意識を感じさせるアーティスティックなサウンドメイクが光っていて、容易に何々系とは言えない深みある音像に惹き込まれるような魅力を宿しています。MILLENIUMのヴォーカリストとドラマー、ALBIONのギタリストら実力派の参加も切なくも重量感あるサウンドの構築に大きく貢献。期待を裏切らない素晴らしいメロディアス・シンフォの逸品です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!