2013年11月5日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介していく「ユーロロック周遊日記」。
本日は、イタリアが誇るジャズ・ロック・グループAREAの73年の名デビュー作『Arbeit Macht Frei』をピックアップいたしましょう。
アレアは、エジプト出身のギリシャ人でミラノ工科大学で学んでいたヴォーカリストのデメトリオ・ストラトス、Keyのパトリツィオ・ファリセッリ、ドラムのジュリオ・カピオッツォを中心に72年に結成されました。バンド名の由来となったのは、アメリカの詩人アレン・ギンスバーグの「The original task was to widen the area of consciousness」。
『Arbeit Macht Frei』録音時のメンバーは、中心メンバーの3人の他に、ギター/Keyのパオロ・トファーニ、ベースのパトリック・ジヴァス、Saxのヴィクター・エドゥアルド・ブスネッロで、もう一人のメンバーとして、Crampsレーベルのデザイナーでもあるジャンニ・サッシが詩を担当しています。
『Arbeit Macht Frei』というタイトルは、アウシュツヴィッツ強制収容所の門に掲げられていた銘で、硬派な政治思想と、東洋と西洋が入り乱れたサウンドの無国籍感とを見事に「アレア」というイメージに結んでいるのが、ジャンニ・サッシの詩世界といえるでしょう。
早速、注目の曲をピックアップして聴いてまいります。
まずは、何と言ってもオープニング・ナンバーですね!
キーボードとギターがユニゾンでウネるリフが何と言っても強烈。これぞバルカン音楽のエキゾチズム。
そして、さらに凄いのがデメトリオのヴォーカル。喉を開閉するような唱法は唯一無比。
アレアでしか味わえないサウンドで、恐るべしなオリジナリティですね。
ベースのジヴァスとSaxのブスネッロは、本作のみで脱退するのですが、ジヴァスのロック的ダイナミズムあるベースと、ブスネッロのサックスが、2nd以降にはない、硬派なアヴァン・ロック/プログレ感を出しているのも特筆。
2曲目以降は、クリムゾンやソフト・マシーンなどにも通じる、英プログレ・ファン必聴と言えるサウンドも聴かせています。
クリムゾンのジェイミー・ミューアの感覚にも通じる異空間なインプロからはじまり、怒濤のジャズ・ロックへスイッチする瞬間のカッコ良さ!
反復するクールなKeyと淡くむせぶサックスはソフト・マシーンに通じていますし、一定のリフを刻んでいる陰影あるベースはニュークリアスを思い出します。
後半は「21世紀の精神異常者」ばりのサックスも飛び出て、クリムゾン『太陽と戦慄』、ソフト・マシーン『3rd』『4th』のファンにはたまらない展開が続きます。
キレのある変拍子も凄い!
アレア的暗黒キーボード・プログレと言える3曲目、アレア的スペース・ジャズ・ロックと言える4曲目、マイルス的なエキゾチックなフリー・ジャズを聴かせる5曲目と、次々に「おおっ」と唸る展開が続き、いよいよ最終曲。
パブで観客からツェッペリンの「Whole Lotta Love」を演ってくれ、と要求され、曲を知らなかったメンバーが、インプロでこの曲をやり、即刻演奏から降ろされた、という逸話どおりに好き放題に暴れまわってます。
宇宙の交信音のようなスペーシーなKeyと室内楽的なSaxによるイントロからはじまり、ミニマルなKeyが入ってきて、ソフト・マシーン『4th』的フリー・ジャズに。構わず左右chで狂ったように暴れるギターがまた凄い。
デメトリオのヴォーカルは、相変わらず奔放でもはや楽器で、「歌」というより「インプロヴィゼーション」。
ここぞではバンド全体が一体となって硬質に畳みかけ、クリムゾン『太陽と戦慄』の沸点に匹敵しています。言葉が出ない凄まじさ。
—–
久々にじっくりと聴きましたが、あらためて破格のデビュー作ですね。
アヴァン・ロック/ジャズ・ロック/プログレとしてもデビューの時点でクリムゾンやソフト・マシーンのレベルに到達していて、さらに地中海音楽やバルカン音楽の要素を取り込んで強烈すぎるオリジナリティも獲得。そして、さらに唯一無比のデメトリオの存在。
ジャケや詩の世界観も圧倒的だし、ユーロ・ロックのみならず70年代ロックが生んだ文句なしの金字塔!
【関連記事】
クラブチッタ川崎で9月21日、22日の日程で開催されている、イタリアン・ロックが誇る2組の名バンド、ニュートロルス&アレアの来日公演に行ってまいりました。
【関連記事】
いよいよ今週の土曜、日曜に迫ってきたアレアとニュー・トロルスの来日公演。というわけで、本日は1日目にメインで演奏するイタリアが誇るテクニカル・ジャズ・ロック・バンドAREAを特集してまいります!
強靭な声帯の持ち主であるDemetrio Stratosを中心に結成され、超絶的なテクニカルさとバルカン独特の叙情香る、イタリアのプログレッシブ・ロックシーンを代表するジャズ・ロックグループの75年4th。彼らの技巧的な演奏の熱気を収めた素晴らしいライブ作品となっており、デビュー作から3rdまでから選ばれた楽曲はスタジオ作以上のダイナミズムで聴かせ、表題曲は15分から成る壮絶なインプロヴィゼーションの応酬。ピアノ中心のテクニカルなジャズ・ロックからドラムソロ、そしてDemetrio Stratosのスキャットが襲う壮絶なエンディングへと雪崩れ込みます。
紙ジャケット仕様、Blu-spec CD2、19年デジタル・リマスター、内袋付仕様、定価2100+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
ステッカー付
世界のニッチなロックにフォーカスした膨大なディスク・レビュー、マニアック過ぎる特集、濃密なコラム。質・量ともに過去最大の読み応えとなった「不思議音楽館 ORANGE POWER」第6弾!!
不思議音楽館/不思議音楽館 ORANGE POWER VOL.6
ORANGEPOWER6(–)
2700円 (税込2970円)
在庫あり
イタリアン・ロックはやっぱりイタリア語で聴くのがいいですよね。西洋音楽のメッカ、イタリアから生まれた最高のバンドによる芸術性みなぎる傑作デビュー作!
88985365611(SONY)
5200円 (税込5720円)
在庫あり
世界のニッチなロックにフォーカスした膨大なディスク・レビュー、マニアック過ぎる特集、濃密なコラム。質・量ともに過去最大の読み応えとなった「不思議音楽館 ORANGE POWER」第6弾!!
不思議音楽館/不思議音楽館 ORANGE POWER VOL.6
ORANGEPOWER6(–)
2700円 (税込2970円)
在庫あり
「なに?ジョン・マクラフリン?スペインにオレがいることを忘れてもらっちゃ困るぜ。」レビュワー5人が満点評価のスパニッシュ・ジャズ・ロック最高峰!
802024(PICAP)
2290円 (税込2519円)
売り切れ
UICY9058
1000円 (税込1100円)
UICY9058
1000円 (税込1100円)
まるで邪教の儀式を覗き見てしまったかのような戦慄が走る、これぞ怪作。狂気と暴力性と崇高さが渦巻く音像には思わず鳥肌が立ってきます。それでもまた、夜な夜な聴きたくなるのは何故なのか…。
ARC7061
1290円
1032円 (税込1135)
284円お得!
R273790(ELEKTRA/RHINO)
500円 (税込550円)
イタリアン・ロックはやっぱりイタリア語で聴くのがいいですよね。西洋音楽のメッカ、イタリアから生まれた最高のバンドによる芸術性みなぎる傑作デビュー作!
88985365611(SONY)
5200円 (税込5720円)
在庫あり
イタリアン・ロックの大きな魅力が、バロック音楽の遺伝子を継ぐ構築美と叙情美。そんなイタリアン・ロックの金字塔として君臨するのがこの作品ですね。格調高さの中に息づく芳醇なポップ・センスにも唸らされます。
MAXOPHONE/MAXOPHONE (ITALIAN LYRICS VERSION)
AMS138CD(AMS)
2420円
2220円 (税込2442)
220円お得!
在庫あり
あまりに流麗かつ艶やかなクラシカル・ロックに感涙する前半、バンドのエネルギーがむき出しになったパワフルなハード・ロックに圧倒される後半。イタリアン・ロックの醍醐味が凝縮された大名盤!
NEW TROLLS/CONCERTO GROSSO N.1 AND N.2
3984266022(WARNER)
2390円 (税込2629円)
在庫あり
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!