2023年も残すところわずかとなりましたね。
ここで2023年のカケレコ年間ベストセラーを発表したいと思います!
例年に比べ、今年は新譜・リイシューともに、ジャズ・ロックに注目が集まった印象。
各国の人気新鋭のほか、廃盤リイシュー&初CD化タイトルにハイクオリティーなジャズ・ロック作品が目立ちました。
もちろん我らが日本の作品も含め、シンフォニック・ロックからも必聴盤が多数ランクインしていますよ。
年末年始のロック探求ガイドとしてお楽しみいただければ幸いです!
それではスタート!
栄えある第1位に輝いたのが、初CD化となったこの超絶マイナーな米ジャズ・ロック作品!
最近のインディー・ロックかと思う脱力ジャケから、この目の醒めるような超絶技巧ジャズ・ロックが飛び出してこようとは。
圧倒的なテンションと技巧で全編駆け抜けるピアノのパフォーマンスは驚愕モノです。
新鋭では、現ポーランド・プログレの中核をなすバンドMILLENIUMのリーダーが率いるこのバンドの23年作が最も注目を集めました。
刺激的なデジタル音響とメランコリックなシンセやオルガンが交差するオリジナリティ溢れるキーボード・サウンド、そしてもはやギルモア以上にギルモアっぽい心震わすギターソロ。
古代叙事詩のホメロス『オデュッセイア』にインスパイアされた23年作!
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ポーランドのみならず、現代のプログレ・シーン屈指と言えるグループMILLENIUM。デビュー20周年を迎え、活動を包括するボックスもリリースした彼らの、これまでの作品をピックアップしながら、その軌跡を追っていきます!
3位は、カンタベリー・ロック好きに今一番オススメしたい南米ジャズ・ロックの注目グループが放った待望5th!
美しいメロディを印象的に聴かせるパートとテクニカルに疾走するパート、その切り替わりがとにかく自然体で、リリカルな音使いのみならずこの演奏の「しなやかさ」もカンタベリー・ロックに通じる魅力です。
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数多いる現ポーランドの女性ヴォーカル・シンフォの頂点に君臨するのがLOONYPARK。
ギタリストが交代し演奏に重厚さと迫力が増しましたが、センス溢れるキーボードワークと女性ヴォーカルが担う、従来の彼ららしいスタイリッシュなシンフォ要素はもちろん健在。現ポーランド・シンフォ最高峰、23年作!
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フランスの人気アヴァン・プログレ・トリオALCO FRISBASSの2人が結成したユニット、23年作!
HF&Nらカンタベリー譲りの芳醇さと伊PICCHIO DAL POZZOのピリッと緊張感の効いた芸術的センスを合わせたような、マジカルなサウンドの連続に興奮必至!
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これは嬉しいリイシューでしたね!
モーリス・パート(BRAND X) & ピート・ロビンソン(QUATERMASS)!
涼しげかつユーモラスに音を刻むキーボード&ベースと切迫感に駆られるように叩きまくるドラムスとの強烈な対比が、唯一無二の聴き心地を生み出す英ジャズ・ロック傑作。
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世界中より、シャープに引き締まったテクニカルかつ流麗なジャズ・ロック作品をセレクトしてまいりましょう。
南米はチリから登場した、UNIVERS ZEROファン要チェックのチェンバー・ロック新鋭、23年2nd。
暗闇からゆっくりと立ち上がってくるファゴットとヴァイオリン、張り詰めたピアノの音色を合図にリズムがズシリと動き出し、狂気が薄霧のように立ち込めるチェンバー・ロックが幕を開けます。
南米らしいタンゴのつややかさも随所に織り込んでいて絶品です。
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ここ最近の新譜を見ていると、チェンバー・ロック/アヴァン系ジャズ・ロックの充実ぶりが凄い!最近リリースされた注目の作品をピックアップいたしましょう。
ポーランドの異才がフロイドへのリスペクトたっぷりに作り上げた23年作。
フロイドっぽいダークかつ浮遊感あるメロディを歌いながら、叩きつけるようなリズム&ギターでヘヴィに攻める、独自のフロイド・リスペクトはかなり完成度高し!
アメリカのグループながら、北欧ジャズ・ロックを思わせる全編にわたり冷気を纏っているかのようなクールネスが印象的。
Furio Chiricoばりのバカテク・ドラムとスリリングかつ色彩感あるシンセワークが聴きモノ!
ご存じ、ウクライナ出身の天才コンポーザー/キーボーディストが率いる大人気プロジェクト!
従来にはなかったYES的な疾走感・飛翔感が加わり、これまで以上にメリハリの効いたシンフォニック・サウンドを完成させた23年作。
Antony Kaluginというミュージシャンの底知れぬ才覚には脱帽するしかありません。
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伊ロック史上の名グループによる22年オーケストラ共演作。
メロトロンを中心とした神秘的ながら牧歌的温かさも宿したシンフォニック・サウンドに、オーケストラが加わり一層色彩豊かに輝きを放つような演奏は、一曲目から感動がこみ上げて来ること間違いなし!
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続々登場する新鋭バンドに負けじとハイクオリティな作品を発表している、70年代に活躍したベテラン・バンド/アーティストたちの作品に注目してまいります☆
フォーク・ロックとしては異質なほどズシッとタイトなドラムが圧巻で、それに触発され力強くかき鳴らすアコギ、スリリングに躍動するflu&vlnらによる切れ味鋭い演奏が見事です。
トラッド・フォーク系は少し退屈に感じる…という方には是非聴いてみて欲しい!
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アシッド・フォークの最高峰に君臨するCOMUS『First Utterance』から出発して、英国アシッド・フォークの深い森を探索します♪
イエスで言えば、P.バンクスがいた『時間と言葉』あたりのサウンドに『海洋地形学の物語』の神秘性を加えて幻想度を大幅アップさせたような感じ!?
トランシルヴァニア地方出身の人気シンフォ・バンド、22年作♪
12月13日に発売されたばかりでありながら、年間14位に食い込んだ要注目の一枚がこちら!
プログレ・ファン注目の女性鍵盤奏者、待望の23年作。
ピアノやメロトロン、パイプオルガンも駆使しひたすら格調高く荘厳に織り上げるクラシカル・プログレで、本格派クラシック/教会音楽にクリムゾン的緊張感、PFMの叙情美を足し合わせたような音世界が圧巻!
ポスト・ロック的浮遊感やスペイシーな音響で煌びやかに装飾されたジャズ・ロックに、時折カンタベリー彷彿のしなやかで芳醇なタッチを織り込んだスタイルは、これぞ揺るぎなき彼らのサウンド。
相変わらず遊び心満載で先の読めない展開の連続にワクワクしっぱなし!
C.コリア、J.ハマー、A.モレイラ、B.コブハム、R.ブレッカーetc.って、どんだけ凄い面子なのよ…。
でもそんな演奏陣に負けないくらい本人のドラマティックなピアノも素晴らしいんですよね。
71年にしてプレAOR的と言える洗練されたソングライティングも特筆!
前作のSF的世界観から、典雅で壮麗なクラシカル・シンフォへと堂々回帰した23年作!
元LATTE E MIELEのkey奏者が全編作曲を担当、LOST WORLD+LITTLE TRAGEDIES+SOLARISと言える聴き応えのサウンドには、プログレ・ファンなら歓喜の声を上げること請け合い!
カケレコ・ロングセラーの代表的一枚が、なんと取り扱い開始から14年目にして年間18位にランクイン!
「太陽と戦慄」期クリムゾンやヘンリー・カウ的な攻撃性を軸に、HF&Nに通ずる繊細さと緻密さ、フランスらしい芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、素晴らしき完成度!
ピアノとシンセを軸に展開する、前衛色も加味した米シンフォ・ジャズ・ロック逸品。
技巧的ながら、行き当たりばったりで力技な展開が多いのが面白く、次に何が飛び出すか分からないスリルに満ちたパフォーマンスは、これぞプログレな魅力に溢れています。
72年の傑作『YS』で知られる名バンド、23年作!
暴走するオルガン、狂乱のシンセサイザー、格調高く舞うピアノ、そしてオペラ風のパフォーマンスも交えて歌うゾクゾクするようなヴォーカルと、半世紀を経てもGianni Leoneの才気は変わらず爆発していて圧巻!
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世間ではあまり知られていないが、聴いたら思わず涙がホロリ、もしくは嗚咽をあげて泣きむせぶ、そんなロックの隠れた「泣ける名曲」を紹介。お相手は、叙情メロディとネコをこよなく愛する音楽ライターの舩曳将仁。
いかがでしたか?
気になる作品が見つかりましたら幸いです。
今年のこの充実ぶりを見ていると、早くも来年は一体どんな素晴らしい新譜&リイシューが登場してくるかワクワクしてきますね!
女性ヴォーカル、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたフランスの新鋭プログレ・グループ。09年デビュー作。クリムゾンやカンタベリー・ミュージックを中心に70年代プログレやジャズ・ロックからの影響を強く感じますが、懐古趣味的な印象はまったくありません。往年の名グループの遺伝子を受け継いだ、文字通りに「プログレッシヴ」なサウンドがここにあります。「太陽と戦慄」期のクリムゾンやHENRY COWあたりの攻撃性を軸に、HATFIELDS & THE NORTHに通ずる繊細さと緻密さ、フランス的な芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、かなりの完成度!時にミニマルなフレーズを奏で、時にささくれだったリズムギターで牙をむくギター、シャープ&タイトな強靱なリズム隊、フリーキーに暴れ回るヴァイオリン&サックス、時に荘厳なメロトロン、時にアヴァンギャルドなシンセで楽曲を飛躍させるキーボード、フランス語で歌う存在感抜群のシアトリカルな女性ヴォーカル。各パートの演奏力、アンサンブルの強度ともに抜群です。14分を越える「ODS」など、構成も文句無し。これは強力なグループが登場しました!圧巻の名作。かなりおすすめです!
アメリカのマイナー・ジャズ・ロック/フュージョン、79年の唯一作。最近のインディー・ロックみたいなジャケですが、冒頭の美しくも激情を内に秘めた鮮烈なピアノ独奏からいきなり持っていかれます。一聴でジャズ畑出身なのがわかる、シンバルとハイハットを多用するジャズ然としたドラミングと伸び伸びとグルーヴィーに歌うベースのリズム・セクション。その上を、エフェクターを強くかけてエキセントリックにプレイするギター&超絶技巧のスリリングなピアノが駆け抜けます。全員相当なテクニシャンですが、とにかくピアノの技巧とテンションは頭一つ抜けていて、全編にわたり存在感抜群。数曲ではギターも負けじとJohn Goodsallみたいに音数多く弾きまくっていて、アメリカ版BRAND Xみたいに聴こえるナンバーもあります。でもやはり圧巻は耳を釘付けにするようなピアノでしょう。ピアノが活躍するジャズ・ロックとしては最高レベルとも言えそうなこれほどの作品が、これまで人知れず埋もれていたとは…。傑作です。
MIZUKI DA FANTASIAのメンバーとして活躍した女性ピアニスト/キーボーディストによる23年のミニ・アルバム。「バルトークや教会音楽と70sロックの融合」と表現されたそのサウンドは、クラシックの高い素養を発揮し圧倒的表現力で駆け抜けるキーボードのプレイと、バックメンバーと紡ぐアンサンブルに強く感じられる70sプログレを受け継いだ緊張感や叙情性が見事に調和した素晴らしいもの。前作で主役を担ったピアノは勿論、ハープシコードやシンセ、メロトロンも全編で登場し彼女の音世界を格調高く彩ります。さらに本作で大きくフィーチャーされるのがパイプオルガンで、荘厳に迫りくるようなプレイがクラシカル・プログレとしての存在感・本格感を付与しており、元々パイプオルガン奏者として活動していた彼女ならではの持ち味と言えるでしょう。作品世界へといざなう本人による詩の朗読のほかフルートも演奏するなど、いち鍵盤奏者に留まらない多才ぶりにも注目です。本格派のクラシック/教会音楽に、KING CRIMSONのアグレッシヴさと緊張感、PFMの凛とした叙情美を足し合わせたようなスタイルは、クラシカル・プログレ好き、キーボード・プログレ好きには是非体験して欲しいです!
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
ポストカード2枚付き
後にブランドXに加入する打楽器奏者Morris Pert、元クオーターマスの鍵盤奏者Peter Robinson、Stomu Yamash’taのバンドRED BUDDHA THEATREのベーシストAlyn Rossによるトリオ・バンド、73年唯一作。サウンド的にはクールかつほんのりユーモラスなタッチのエレピをフィーチャーしたラテン・テイストのジャズ・ロックなのですが、特筆すべきはMorris Pertによるドラム&パーカッションの異様なまでのテンションの高さ。時にはFurio Chiricoばりに叩きまくっていながら理知的な佇まいを崩さないのが特徴で、この打楽器のプレイがRETURN TO FOREVERに近接しつつも決して大らかにはならない、ただならぬ緊張感を作り出しています。全編で伸びやか且つ涼しげに音を刻むキーボード&ベースと、切迫感に駆られるように叩きまくるドラムスとの強烈な対比が、唯一無二の音世界を生み出す傑作です。
アメリカのジャズ・ロック・バンドが78年に残した唯一作。エレピのひんやりしたソロを聴いていると、Furio Chiricoに肉薄する恐ろしいほどに正確無比なバカテク・ドラムがなだれ込み、ARTI E MESTIERIばりのテクニカル・ジャズ・ロックが幕を開けます。スリリングかつ色彩感あるシンセのプレイも見事だし、淡いコーラスを伴った透明感あるヴォーカルも印象的。ダイナミックで緊張感たっぷりな中でもクールな佇まいを崩さない1曲目は北米ジャズ・ロック屈指の名曲でしょう。サックスが加わる以降も1曲目に迫る完成度のジャズ・ロックが並びますが、この全編にわたって冷気を纏っているかのようなクールネスはかなり独特です。アメリカのグループながら北欧あたりのユーロ・ジャズ・ロックのような聴き心地を感じさせるユニークな逸品。かなりの名作です。
現ポーランドを代表するシンフォ・グループMILLENIUMを率いるキーボード奏者によるプロジェクト、23年作6th。いつも文学作品を題材に作品をリリースする彼らですが、本作はホメロスによる叙事詩『オデュッセイア』にインスパイアされたという一枚。ただ歴史ロマン的要素よりはアートワークにも表現された宇宙的壮大さを追求したサウンドメイクで聴かせます。変わらぬPINK FLOYDへの憧憬を抱いたエモーショナルかつ深遠な演奏と、スタイリッシュでキャッチーな歌が見事に組み合わさった、非常に完成度の高いメロディアス・ロックをプレイ。ギタリストMarcin Kruczekによるもはやギルモア以上にギルモアっぽい心震わせるギターソロはいつもながら素晴らしく聴き所です。それでも特筆とするなら、刺激的なデジタル音響とメランコリックなシンセやオルガンを重ねてオリジナリティ溢れるキーボード・サウンドを生み出すリーダーの手腕でしょう。キーボードが中心に織り上げるサウンドのスケールにおいては、MILLENIUMの新作と言われても納得のレベルに達しています。数曲でヴォーカルを取る女性シンガーも魅力的で、どこか民族調のエキゾチズムを放つ独特の歌唱には惹きこまれること必至。もはやMILLENIUMのサイド・プロジェクトという位置づけに収まらない存在感を示す傑作です。
天才コンポーザー/key奏者Krzysztof Lepiarczyk率いる、現ポーランド屈指の人気を誇る女性voシンフォ・バンド、23年作7th!前作にて初代ヴォーカルが復帰、今作ではギタリストが交代しています。前21年作『7TH DEW』で聴かせたプログレ・ハード的な疾走感あるサウンドを更に押し進めており、新ギタリストによるメタリックなギターワークも相まって、LOONYPARK史上最高の迫力で押し寄せるアンサンブルに冒頭から圧倒されます。もちろん従来の彼らが持つスタイリッシュなシンフォ要素も健在。トーンを巧みに変化しながら生き物のように躍動するシンセ、ここぞで劇的に鳴らされるピアノ、未来的な世界観を演出するプログラミングと、ハイセンスの一言に尽きるキーボードワーク、そしてしなやかさと厳かさが絶妙な塩梅の女性ヴォーカルの魅力は、ハードさを強めたサウンドにおいても変わらぬ輝きを放ちます。一聴ヘヴィなプレイが印象的に思えたギターも、アルバム中〜終盤では前任者に匹敵するメロディアスなソロを連発していてこれまた見事。さらにラスト・ナンバーは、叙情的なピアノをバックに切々と歌うヴォーカル、やがて神秘的な音響が散りばめられ幻想のベールに包まれて幕を閉じる、初期を思い出させる名曲となっており感動的です。やはり現ポーランド・シンフォ最高峰、今回も文句なしの傑作!
南米チリ出身のチェンバー・ロック新鋭による23年作2nd。UNIVERS ZEROからの影響が濃厚な、底知れぬ暗鬱さに包まれたチェンバー・ロックは驚くべき完成度。暗闇からゆっくりと立ち上がってくるファゴットとヴァイオリン、張り詰めたピアノの音色を合図にリズムがズシリと動き出し、狂気が薄霧のように立ち込めるチェンバー・ロックが幕を開けます。前半は聴き手に絶えず緊張を強いるようなスリリングな展開が続き、その質感はUNIVERS ZEROの3rd『CEUX DU DEHORS』に近い印象です。後半になるとそんな緊張感みなぎるアンサンブルにタンゴを思わせるような艶やかな美しさが出てくるのが特徴で、南米のグループらしい色合いを上手く取り入れています。これは新鋭の中でもUNIVERS ZERO好きの方には一番オススメしたいチェンバー・ロック作品です!
メロトロン溢れる76年の名作で知られ、2019年にリリースされた2ndアルバム以降、精力的に活動を続けるイタリアン・ロックの人気グループ、初となるオーケストラとの共演で制作された22年作!オーケストラは本作のため編成された、ヴァイオリン/ヴィオラ/チェロ/オーボエ/クラリネット/ファゴット/トロンボーンなど総勢10名以上からなるCELESTIAL SYMPHONY ORCHESTRAです。デビュー時から変わらぬメロトロンを中心とした神秘的ながら牧歌的温かさも感じさせるシンフォニック・サウンドに、オーケストラが加わって一層色彩豊かに輝きを放つような演奏は、CELESTEファンなら一曲目から感動がこみ上げて来ること間違いなし。オケとの共演作と言えばとかくスケールが大きくなりがちですが、本作ではあくまでバンド・アンサンブルの一員としてCELESTE本来のリリカルなサウンドをメロトロンやピアノと一緒に作り上げていっており、そのバンドとオケの一体感がとにかく素晴らしい。もちろん最大の聴きモノはメロトロンで、1stそのままの繊細で浮遊感溢れるあまりに優美なメロトロンのプレイは、やはり唯一無二の魅力を感じさせてくれます。零れ落ちるような情緒を宿すアコースティック・ギター、気品あるクラシカルな佇まいのピアノ、数曲で歌う男女のイタリア語ヴォーカルもいつもながら絶品です。CELESTEがオーケストラと一緒にやる、という事の魅力が最大限に引き出された傑作と言っていいでしょう!カケレコメンド!
2014年デビュー、アルゼンチンはブエノスアイレス出身の4人組ジャズ・ロック/フュージョン・グループ、23年作5thアルバム。カンタベリー・ロック憧憬のサウンドにタンゴやボサノヴァなどの南米らしいエッセンスを溶け込ませた芳醇なジャズ・ロック/フュージョン・スタイルは、本作でも一切の揺らぎなし。ボサノヴァ・テイストで洒脱に刻むリズム・セクションに乗って、歌うようにメロディを紡ぐギター、淡く滲むエレピや柔らかいタッチのシンセを駆使してファンタジックな彩りを加えるキーボード。美しいメロディを印象的に聴かせる展開でうっとりさせたかと思うと、気づけば白熱したテクニカルなアンサンブルで疾走していたりと、変幻自在な演奏はいつもながら見事の一言です。その切り替わりがとにかく自然体で、音使いのみならずそうした演奏の「しなやかさ」もカンタベリー・ロックに通じる魅力と言えるでしょう。文句のつけどころのない南米ジャズ・ロックの傑作。カケレコメンド!
DANDO SHAFTで活動した古楽器/弦楽器奏者Martin Jenkinsを中心とする英エレクトリック・トラッド・グループ、Tony Capstick With Hedgehog Pie名義での71年作を含めると通算3作目となる75年作。前74作ではアグレッシヴで疾走感あるトラッド・フォーク・ロックが特徴的でしたが、本作では前作不在だったドラマーが加入し一層躍動感あふれるフォーク・ロックが楽しめます。フォーク・ロックとしては異質なほどにズシリとタイトに叩くドラムスがアンサンブルを牽引、それに触発されるように力強くかき鳴らすアコギ、スリリングに躍動するフルート&ヴァイオリンによる切れ味鋭い演奏が展開されます。これぞ英フォークというジェントルな男性vo/麗しい女性voも良いし、要所でソロを取るややサイケがかった哀愁のエレキギターも絶品。「The Burning Of Auchendoon」をはじめ半数を占めるトラッド・ナンバーも、長閑さなどどこへやらのパワフルに突き進む痛快なアレンジで駆け抜けていて聴き応え抜群です。トラッド・フォーク系は少し退屈に感じるかも…という方には是非聴いてみて欲しい一枚!
ニューヨーク州ロングアイランド出身のSSW/ピアニスト、Chick Corea/Jan Hammer/Rnady Brecker/Billy Cobham/Airto Moreira/Eddie Gomez/David Spinozza/John Tropea/John Hallなど、超の付く豪華ミュージシャンが参加した71年の2ndアルバム。そんな脇を固める演奏陣のプレイは言うに及ばず鉄壁ですが、もっとも際立つ魅力が本人によるピアノと繊細な歌声。全編を洒脱に彩るジャズの素養を感じるドラマティックなピアノ演奏、そしてAOR的と言える甘い声質の中にナイーヴさを秘めた歌声がとにかく素晴らしいです。一聴で想起するのがやはり同じピアノマンとしてビッグネームであるBilly Joelで、AORを先取りしたような洗練されたソングライティングも引けを取っていません。彼特有の美学すら感じられるようなそのサウンドは、とても20歳とは思えないほどの才能。名盤です。
22年作『LE MYSTERE DU GUE PUCELLE』がCDでは年間カケレコ・ベストセラー第1位に輝いた、フランスのアヴァン・プログレ・トリオALCO FRISBASS。そのメンバー3人のうちの2人、共にマルチ・プレイヤーのPatrick DufourとFrederic Chaputが結成したユニット、23年デビュー作!ずばり、ALCO FRISBASSが気に入られたなら必聴の内容です。プログラミングとは思えない「技巧」を感じる緻密なドラミングと、リッケンバッカーと思われるブンブンと唸るベースが刻む起伏に富んだリズムからしてワクワクしますが、そこにメロディアスながらちょっぴりひねたフレージングが楽しいエレキ・ギター、フワフワと浮遊するスティール・ギター、輝かしく響くメロトロン風シンセらが次々と飛び込んできます。1曲目にはALCO FRISBASSのもう一人Fabrice Chouetteがゲスト参加、デイヴ・スチュワートばりのオルガンを聴かせていて、ALCO FRISBASSそのものな一曲に仕上がっており堪りません。以降もNATIONAL HEALTHやHATFIELD & THE NORTHの芳醇さと伊PICCHIO DAL POZZOのピリッと緊張感の効いた芸術的センスを合わせたような、マジカルなサウンドの連続に興奮必至です。ALCO FRISBASSファンは勿論ですが、イタリアのFONDERIA、アメリカのINNER EAR BRIGADEあたりがお好きな方にも是非是非オススメ♪
歴史的にはトランシルヴァニアとしても知られる、ルーマニアのハンガリー人居住地域出身の人気シンフォ・グループ、4年ぶりのスタジオ・アルバムとなった22年作4th!ギターとキーボード類をメインに十数種類の楽器を演奏するリーダーBogati-Bokor Akosを中心に、2人の女性ヴォーカル、フルート奏者、パーカッション奏者らを含む7人編成での制作です。バンドが憧れの存在に挙げるYESを彷彿させるテクニカルかつアコースティックな牧歌性も織り込んだアンサンブルを、女声voとフルートが作り上げるドリーミーな幻想世界が包み込むシンフォニック・ロックは、ただただ至上の完成度。タイトに変拍子を叩き出すドラムと存在感あるリッケンバッカー・ベースによるYESを思わせるリズム・セクション、Peter Banksに近いセンスでジャジーかつスリリングなフレーズを決めるギター、躍動感いっぱいに疾走するシンセ、柔らかく広がるメロトロンのヴェール…。それだけでも素晴らしいところに、リリシズム溢れるフルート&淡い美声を重ね合わせるW女性voが加わると、もうそれは天上の音楽と言っても過言ではありません。特に2人の女性ヴォーカルはハンガリー語という事を忘れてしまうくらいにスッと耳に馴染む感じが本当に素晴らしい。YESで言えば、Peter Banksが在籍した『TIME AND A WORD』期のサウンドに、『TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEANS』の神秘性を加えて幻想度を大幅アップさせたような印象でしょうか。いやはやさすが今作も圧巻の傑作です!
ウクライナ出身の鬼才コンポーザー/key奏者Antony Kalugin率いる人気シンフォ・グループ、14作目となる23年作がリリース!別働プロジェクトSUNCHILDやソロとしても並行して活動するKaluginですが、そんな中で制作された本作も、分かってはいましたが現行シンフォニック・ロック・シーンの最高峰に位置する素晴らしい出来栄え。ここ最近はCAMELとTHE FLOWER KINGSを融合させたようなスケール大きくメロディアスな作風を追求していましたが、本作ではかつてなくテクニックを駆使したスリリングなバンド・アンサンブルが随所で聴けるのが印象的で、旧来のデリケートなCAMEL的ファンタジーとの間に絶妙な緩急を生み出しています。そのスタイルはさながら「CAMEL+YES」と言うべきもの。温かい響きのアコギが彩るAnthony Phillips彷彿の序曲を経て、どこかYES「Awaken」を思わせる浮遊感と緊張感が拮抗する2-3曲目の組曲へ。天上へ誘なうかのように高らかに鳴るシンセととめどなく美旋律を紡ぐギターのコンビに感動していると、急転直下、リズム隊が疾走し始め、ギターはヘヴィさを増し、シンセは荘厳に鳴り響く、KARFAGEN史上最もスリリングなサウンドに突入!この落差にはきっと旧来のKARFAGENファンも驚かされることでしょう。合間に挟まるA.Phillips的なアコギメインの小曲も、途方もないスケールを誇る大曲との間に良い流れを作り出しています。これまでの作品ではさほど感じられなかったYES的な疾走感・飛翔感が加わり、これまで以上にメリハリの効いたシンフォニック・サウンドを完成させた一枚となっています!
デジパック仕様、2枚組、Disc2には19年作「BIRDS OF PASSAGE」の新アレンジ・インストVer.を収録、ボーナス・トラック3曲
レーベル管理上、デジパックに小さい角つぶれがある場合がございます。ご了承ください。
米カリフォルニア出身のジャズ・ロック・グループが残した77年録音の81年リリース作。緩急自在のリズム・セクションと、緊張感あるピアノ&多彩に鳴り響くシンセが繰り広げる、やや前衛色も感じさせるシンフォニックなジャズ・ロック。どの楽器も音数多くテクニカルで、パート毎には流麗で端正なアンサンブルが展開されていますが、曲構成的にはどこか行き当たりばったりで力技で持っていく場面が多いように思え、それが他の緻密な構成で聴かせるジャズ・ロック・バンドにはない、何が飛び出すか分からないワクワク感に繋がっており、なかなかに良いんです。演奏で耳を惹くのは、絶えず音色の変化させながら一貫してド派手に鳴らし続けるシンセサイザーで、かなり個性的なスタイルです。さすが広大なるアメリカの土壌、凄いグループが眠ってます。これぞプログレ。
Neuoberschlesien、Oberschlesienなどのハード・ロック/インダストリアル系バンドでの活動歴を持つポーランドのギタリスト/マルチ・プレイヤー、23年作。タイトル通りピンク・フロイドへのリスペクトをテーマに制作された作品で、あのメランコリックで深遠な音響空間を再現しつつ、持ち味の重く硬質なギター・サウンドも遠慮なく鳴らされるヘヴィ・プログレは、フロイド・タイプのバンドがひしめくポーランドにあってもかなりの完成度。水の滴るSEをバックにうつむき加減のピアノ&ギルモア・ライクなタッチのギターが繊細かつドラマティックに交差する1曲目は、『ECHOES』の一部を切り取ったようで雰囲気抜群。かなりフロイドに忠実なスタイルで行くのかと思いきや、2曲目ではフロイドで歌われそうなダークかつ浮遊感あるヴォーカル・メロディをフィーチャーしながら、叩きつけるようなリズム&ギターでヘヴィに攻める、彼ならではのフロイド・リスペクトが聴けて「おお!」となります。随所で聴けるリック・ライト彷彿の物悲しいトーンで広がるシンセの海も素晴らしい出来栄えだし、硬質なギターリフの波状攻撃を浴びせたと思うとギルモア・リスペクトのエモーションたっぷりのブルージーで劇的なソロを聴かせたりと、フロイドをヘヴィ・プログレに仕立て上げたようなスタイルで全編を見事に聴かせきります。フロイド好きにはきっと響くだろう力作です。
プログレ・ファンにはお馴染みの存在となった、フィンランド/イタリア/アメリカ出身のミュージシャン3人を中心とする多国籍シンフォ・グループ、23年作!従来作にも参加していた元LATTE E MIELEのキーボーディストOliviero Lacagninaとのコラボレーションとして制作されており、全作曲を彼が担当。今回は17世紀フランスに実在した正体不明の囚人「鉄仮面」およびそれを題材にした文学作品に着想を得たコンセプト・アルバムとなります。前作は異色のSF的世界観を持つ作品でしたが、本作では従来のSOPスタイルを踏襲した典雅で壮麗なクラシカル・シンフォニック・ロックを展開。息をのむほどに表現力豊かなヴァイオリンがリードするクラシカルなパートはロシアのLOST WORLD BANDやLITTLE TRAGEDIESを、ギターとシンセ&オルガンが劇的に交差するスケール大きくも物悲しい哀愁を帯びたパートはハンガリーのSOLARISを彷彿。やがて両者が交わり一体となって迫りくるサウンドは、プログレ・ファンなら歓喜がこみ上げてくることでしょう。物語をシアトリカルな歌唱で表現するヴォーカル陣の好演も、聴き手を作品世界に引き込む役割を担います。プログレ名曲のカバー企画からスタートして、それらの名曲にも肩を並べるほどのクオリティを持つサウンドを作り上げた彼らを称賛せずにはいられません。上記したグループのファンのみならず、あらゆるプログレ・ファンに体験して欲しい音世界です!
72年の傑作『YS』で知られる鬼才Gianni Leone率いるイタリアン・プログレ・グループ、23年スタジオ・アルバム!スペイシーで壮大でありながら不穏に揺らめくキーボード群が不安を掻き立てる冒頭のインストからして雰囲気抜群。やがて力強いリズムと共にキーボードの音塊が押し寄せ、伸びやかさの中に狂気を秘めた歌声が響くと、唯一無二のIBDBワールドが繰り広げられます。重くタイトなリズムの存在感もあって『YS』に比べどっしりとしたロック的聴き応えがありますが、暴走するオルガン、狂乱のシンセサイザー、格調高く舞うピアノ、そしてオペラ風のヴォイス・パフォーマンスも交えて歌うゾクゾクするようなヴォーカルと、半世紀を経てもGianni Leoneの才気は変わらず爆発していて圧巻です。この並ぶ者のいないクラシカルかつオカルティックな世界観は、まぎれもなく『YS』を創り上げた才能によるものだと実感する内容となっています。歪な芸術性に戦慄させられる、これぞIBDBな力作!
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