スタッフ佐藤です。
プログレにおいては、オルガン、シンセ、メロトロンあたりに注目がいきがちですが、今回は鍵盤楽器の王道ピアノに注目してみましょう。
時には可憐に気品高く、時には鋭く攻撃的に、ピアノが活躍するアルバムをピックアップしてみましたのでお楽しみください☆
最初はクラシカル・キーボード・プログレの決定盤と言っても過言ではないこちらから!
多彩なキーボード群が入り乱れる本作ですが、多くの曲で主旋律を担っているのがピアノ。目にも留まらぬ高速のタッチが、クラシカルな気品を保ちつつスリリングな疾走感を生んでいますよね。後の作品で頻繁に顔をのぞかせる手癖フレーズのバリエーションの多くを披露している一枚でもあります。
続いて、西洋音楽のメッカと言えるイタリアからピアノが活躍するプログレ3作品を厳選ピックアップ☆
IL BARICENTROも素晴らしいけど、前身バンドによる73年唯一作も実にいい作品。ダイナミックな技巧派ピアノが舞い飛び、リズムがズシズシと迫り来て、ヴォーカルが哀愁たっぷりに歌い上げる!クラシックのバックボーンを感じさせながらも、アグレッシヴに弾き倒すピアノが圧巻です。
1曲目のとめどないピアノの美旋律は多くのプログレ・ファンのハートを奪ってきたことでしょう。少しだみ声な味わい深い男性ヴォーカルと対比されてよりピアノの美しさが際立つ2曲目以降も注目です。
この音の瑞々しさと響きの深み。西洋音楽の長い歴史をバックボーンに持つイタリアだからこそ生み出せるサウンド。マイナーな作品ながら、クラシカル・ロックの最上級の調べを堪能できる傑作。酔いしれてください。
ドイツからは、同国の叙情派シンフォ筆頭格をピックアップいたしましょう。
ドイツの叙情派シンフォの筆頭格ですね。ブラインド・ガーディアンやハロウィン関連でも知られるキーボーディストのマティアス・ウルマーは、エディ・ジョブソンばりの卓越したシンセの使い手なのですが、本作ラスト曲「Tanz Und Tod」では、ため息が出るように美しく端正なピアノ独奏を聴かせてくれます。弘法筆を選ばず、ですね。
フィンランドからは、ジャケットにも象徴されるピアノのプレイが見事なこちらの作品をどうぞ♪
ジャケット通り宇宙を漂っているのような心地よい浮遊感と、リリシズム溢れるメロディに酔いしれます。フロイドのようなドラマチックさにほんのりソフト・サイケテイストを添えた北欧シンフォ、唯一作にして傑作!
クラシカルだけど堅苦しさは微塵もない洒脱ですらあるピアノワークが本当に見事です。
続いては、なんと日本人に最もなじみ深いロックスターの一人スージー・クアトロの兄弟が登場!
あのスージー・クアトロのお兄さんが、こんなにも素晴らしいキーボーディストだったとは…。この75年作は、トレース『鳥人王国』あたりと並び称されるべきクラシカルなキーボード・プログレ逸品。本職であるピアノのダイナミックな演奏も最強にカッコいいぞ!
カケレコ国内盤も大好評のこちらも、極上のピアノが聴ける一押し盤!
スペイン・ジャズ・ロックの重鎮たちが72年に産み落としたビートルズのカバー・アルバム。
全編インストながらイージーリスニングな感じは微塵もなく強烈な躍動感とキラメキ!
原動力となっているのがジャズ由来の軽やかさとロックの力強さが備わったピアノの存在なんですよね。
アルゼンチン・ロックのレジェンドによるピアノを堪能!
“アルゼンチン・ロックの父”チャーリー・ガルシア。前バンドSUI GENERISの末期よりシンセの使用が増えていきますが、その本領はピアノにある気がします。上質なロックン・ロール・ナンバーでもゴキゲンだけど品のあるプレイから、ラスト曲での「エコーズ」の世界観を思わせる美しくも孤独なプレイまで、素晴らしい表現力です。
ケベックからは、可憐にもアヴァンにも自在なピアノが素晴らしいこの一枚!
フルートが漂わす淡くクールな叙情、ピアノのクラシカルで繊細なタッチ、そしてロマンチックな響きのフランス語ヴォーカルが醸し出すノスタルジア。
ファンタジックな異郷のシンフォニック・ロックとして一級品の出来栄えですね。
アヴァンギャルドなパートでも演奏を牽引する実力派ピアノは特に注目!
イスラエル・ロックの端正且つほのかにエキゾチックなメロディラインはピアノと相性抜群なんです。
才能ひしめくイスラエル・ロック・シーンでも、一際メロディセンスに秀でているのが彼。憂いのある柔らかなメロディ、包み込むように優しいヴォーカル。そんなイスラエルらしい詩情をしっとりと流麗に彩るピアノ。80年代らしいポップさの導入も巧みだなぁ。
最後は我が国日本からとっておきの一枚をピックアップ!
ピアノのゾクゾクするようなキメフレーズや一音一音にクールさとパッションが調和する官能的なタッチはまさにチック・コリアばり。注目の国産プログレッシヴ・ジャズ・トリオ、今作も圧巻です!
単発ながらイタリアン・シンフォニック・プログレッシブ・ロックの頂点に君臨する名盤を生み出したグループによる77年作。テクニカルでタイトなリズム・セクションをボトムに、アコースティック・ピアノやアナログ・シンセサイザー、チェンバロ、ギター、フルートといった楽器がふくよかなサウンドを彩る作風であり、ツイン・キーボード、ツイン・ギター編成で聴かせるその叙情性とファンタジアはイタリアン・シンフォニック・ロックの中でも飛びぬけたクオリティーを誇ります。PREMIATA FORNERIA MARCONIやMAXOPHONEといった叙情性と牧歌的な雰囲気を持ったグループにも全く引けを取らない奇跡の1枚であり、且つスリリングな技巧に裏打ちされた名盤となっています。
紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック2曲、内袋付仕様、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯中央部分に色褪せあり、紙ジャケに若干汚れあり
後にBARCELONA TRACTION〜MUSICA URBANAとスパニッシュ・ジャズ・ロックを代表するグループで活躍する名Key奏者Lucky Guriと70年代初期のスパニッシュ・ジャズ・ロック・シーンを代表するグループMAQUINA!のサックス奏者Peter Roarを中心に、言わずとしれたICEBERGの名ギタリストMax Sunyerや、MAQUINA!のリズム隊が参加したスーパー・グループ。72年作の全曲ビートルズ・カバー・アルバム。もう、このレビュー書きながら、興奮しています!2曲目の「Strawberry Fields Forever」で泣きそうです。イージーリスニングな感じは微塵もなく、サイケ・ポップのカラフル感を残しつつ、ロック的シャープさとオシャレな洗練とが同居した最高にカッコ良くワクワク感溢れるサウンドを聴かせています。シャープでタイトな音色と手数多いフレージングがカッコ良すぎるドラムを中心に、ピアノとサックスが時にどっしりと時に軽やかに躍動し、NUCLEUS時代のChris Speddingを彷彿とさせるセンス溢れるMax Sunyerが脇を固めます。このキラメキが伝わるでしょうか。カケレコが自信を持ってオススメする大傑作!ビートルズ・ファンもサイケ・ポップ・ファンもニッチ・ポップ・ファンもジャズ・ロック・ファンもカンタベリー・ファンも全員必聴!
イギリスを代表するプログレッシブ・ロックバンドYESの全盛期を支えたキーボーディストであり、そのクラシカルで大仰なキーボードワークで「こわれもの」や「危機」の多難な楽曲を彩ってきたアーティストの73年ソロデビューアルバム。時期的にはYESの「海洋地形学の物語」がリリースされ初めての脱退を宣言した時期ですが、その内容は、「ヘンリー8世の6人の妻」の名前をタイトルにした6曲で構成されたコンセプト作品であり、ピアノやオルガンをはじめ、メロトロンやRMIキーボード、モーグ・シンセサイザーをふんだんに使用。YES以上に彼のクラシカルなキーボードワークを堪能できる名盤です。
イタリア出身のキーボード奏者。76年作。溢れんばかりの叙情性が胸を打つクラシカルなパートと、テクニカルかつ荘厳なキーボードをフィーチャーしたプログレッシヴなパートとを巧みに織り交ぜた構成が見事。生々しい響きの暖かみ溢れる弦楽器、流れるようにリリカルなピアノ、持続音を多用して丁寧に音を紡ぐギター、シャープかつふくよかなドラムなど、どの楽器も魅力的な響きに溢れています。テクニック、センスともに抜群で、豊潤なアンサンブルからはオーラすら感じます。全編インストですが、テーマのメロディがしっかりとしていて、たいへんフックがあります。これは素晴らしい作品です。
カナダのシンフォニック・プログレッシブ・ロックグループの76年作。POLLENらと並んで名盤とされてきた本作は淡いフルートによるクールな叙情で幕を開けるシンフォニック・ロックであり、ピアノを中心とした性格からか繊細でアコースティックな質感を持っています。非常に肌触りの良いフランス語で歌われるボーカルが醸し出すノスタルジアとフルートによる幻想的な音像も心地良く響いており、ファンタジックなシンフォニック・ロックとして一級品。一方ドラムは緻密なリズムを作るタイプであり、ジャズ・ロック的なスリリングさも持ち合わせているためタイトに楽曲を引き締める役割を担い、サウンドに適度な緊張感を加えます。
スリップケース付仕様(画像はジャケットです)
盤質:傷あり
状態:良好
ケースツメ跡あり、スリップケース無し
イスラエルを代表するロック・グループKAVERATで活躍し、ソロでも成功したイスラエルを代表するSSWのYoni Rechterを中心とするデュオ・ユニット。86年作。憂いのある柔らかなメロディ、包み込むように優しいヴォーカル。そんなイスラエルらしい詩情をしっとりと流麗に彩るキーボード。そして、時にジャジーに時にクラシカルに引き締める、いかにもイスラエル・ロック!と言えるセンス溢れるピアノ。イスラエル・ロックを牽引してきた鬼才Yoni Rechterの魅力が凝縮されたセンチメンタルな歌モノが満載。じんわり染みる好作品です。
2013年より活動する女性ピアニスト、北川とわ率いるプログレッシヴ・ジャズ・トリオ。通算5作目となる21年5曲収録EP。冒頭から、変拍子の複雑なリズムに乗ってしなやかで陰影に富んだピアノが躍動するアンサンブルに息をのみます。凄まじい音数でテクニカルに躍動するベースとドラムの超絶ソロも盛り込んで、プログレッシヴに構築されたオープニング・ナンバーから圧巻です。叙情的でメロディアスかつ少しミステリアスさが漂う美しい3曲を経たラスト・ナンバーもまた特筆。ロックのダイナミズムとほんのりラテンなノリを持つパワフルなリズム・セクションと、繊細にも大胆にも自在なピアノが舞い踊ります。ピアノのゾクゾクするようなキメフレーズや一音一音にクールさとパッションが調和する官能的なタッチはまさにチック・コリアばり。前作『Echoes Forever』が気に入った方なら間違いなく本作でも感動が待っているはずです。傑作!
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