2019年8月6日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: ジャズ・ロック
近年、ヘンリー・カウを中心に世界各国でレコメン系のグループが活動していた70年代末にも匹敵する勢いで好バンドが登場しているアヴァン/チェンバー・ロック・シーン。
大量生産・大量消費の資本主義に取り込まれたロック・ミュージックをもう一度、反体制の芸術の域に戻そうとしたレコメン系グループ達の意志が、グローバル化とともに行くところまで行き着いた資本主義の疲弊が渦巻く今、時代の必然としてリアルに甦っているのかもしれません。
ということで、ユーロ各国から北米、南米まで、世界中から00年代にリリースされたチェンバー・ロック/アヴァン・ロックの名作をピックアップいたしましょう。
試聴しながら、お楽しみください!
HENRY COWを生んだイギリスから、注目の新鋭が登場!
まるでKING CRIMSONにHENRY COW、SOFT MACHINEなどのカンタベリー・ロック、それからザッパをごった煮にしたみたい?緊張感みなぎる暗黒のアンサンブルに奇妙なポップさを散りばめた、恐るべき19年デビュー作。
ANGLAGARDやBRIGHTEYE BRISONで活躍するドラマーということでシンフォ系かと思いきや、ユニヴェル・ゼロをクラシック寄りにしたような緊張感みなぎる前衛暗黒チェンバーが飛び出してきて仰天!でもなるほどANGLAGARDに通じる張りつめた透明感が見え隠れしてさすがです。
試聴は下記ページで可能です!
https://erikhammarstrom.bandcamp.com/album/gl-dhet-rytmisk-sv-rta
ヨーロピアンな気品とエキゾチックな熱情を混ぜ込みながら、しなやかに疾走するチェンバー・ジャズ・ロックが素晴らしい!ザッパからの影響を公言する通りの柔軟な音楽性も特筆。こちらも注目のグループですよ~。
アルバムの1秒目からレッドゾーン吹っ切れまくり!
怒涛のビブラフォンとサックスのユニゾン。マシンガンのようなギター。高速変拍子。
クリムゾンやユニヴェル・ゼロに一歩も引けをとってません!
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アート・ベアーズやヘンリー・カウやザッパとともに、ハットフィールド&ザ・ノースやソフト・マシーン、さらにヒップホップまでぶち込んじゃった知性派アヴァン・ロック。さすがはあのYUGENのヴィブラフォン奏者率いるバンド。
ピッキオ・ダル・ポッツォやジャズ・ロック期ザッパを彷彿させる管楽器の掛け合いだなぁと思っていると、異次元世界を音像化したような強烈なアヴァンギャルド・プログレが襲いかかってきて戦慄!気品ある佇まいと尋常ならざる緊張感を両立した孤高の一枚。
レーベルからのインフォには、カンタベリー・ミュージック、ザッパ『アンクル・ミート』、ピッキオ・ダル・ポッツォ、オパス・アヴァントラ、新鋭のYUGENあたりが好きなら必聴、と記されていますが、確かにその通り。
というか、チェンバー・ロックならではの不協の音が生む緊張感とともに、一音一音に瑞々しい煌きや色彩感があって、往年のチェンバー・ロック名盤に比肩するクオリティに驚きました。
2015年作の2nd、ずばり傑作です。
キング・クリムゾンやレコメン系バンドの影響の下、03年に結成され、06年にデビュー作をリリースしたスペインのバンドで、00年代以降のチェンバー・ロックを代表するバンドの一つ。
管楽器奏者が加わってよりチェンバー・ロック色が増した2011年作『SATURNAL』を押し進め、音楽的リーダーのギタリストAngel Ontalva中心に、アルト・サックス奏者、ベース、ドラムの4人編成で制作された2013年作。
ずばり、クリムゾン『太陽と戦慄』や『ディシプリン』、ヘンリー・カウなどレコメン系、チェンバー・ロックのファンは必聴!
このアルバム制作を記録したプロモ動画がまたカッコ良い!
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OCTOBER EQUUSのギタリストによる12年作1stソロ。
カンタベリーや、ヘンリー・カウなどチェンバー・ロックを土台に、地中海や中近東音楽の香りを加えた豊潤なサウンドは、70年代スパニッシュ・チェンバー・ロックの名グループMUSICA URBANAに通じる完成度!
往年のスパニッシュ・ジャズ・ロック(ライエターナ・ミュージック)のDNAを継ぐ豊潤な傑作。
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ユニヴェル・ゼロやマグマを受け継ぐフランスの暗黒チェンバー新鋭!
グニャグニャとアヴァンギャルドなギター、どこか祭り囃子を思わせる妖しげなフルート、重厚なブロウで緊張を煽る管楽器などが絡み合う、知的にして不気味な音像が迫ってきます!
どちらかと言うと「静」の音楽なんですが、この一音一音から伝わってくる緊張感とスリルは凄いです…!
MAGMA/ZEUHLサウンド影響下のフランスのマルチ・ミュージシャン、FRANCOIS THOLLOTによるグループによる2012年作2nd。
初期ヘンリー・カウに『レッド』期クリムゾンの暗黒ヘヴィネスを注入したようなアンサンブルが素晴らしすぎる傑作。
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サックスやオーボエやクラリネットやオーボエやバスーンなど管楽器奏者を多数擁するフランスの新鋭大所帯ジャズ・ロック・バンド、2013年デビュー作。
『レッド』期のジョン・ウェットンばりに狂暴に歪んだベース、時にジャジーにシャープで時にビル・ブラッフォードばりにタイトなドラムによる重量級のリズム隊、そしてマグマやゴングやベルギーのCOSなどに通じる不気味な男女ヴォーカル&コーラス、ヘンリー・カウばりにテンションみなぎる管楽器アンサンブル!
こ、これは強烈・・・。
ユニヴェル・ゼロにも通じる狂おしい衝動を軸に、まるでプラハの壮麗なコンサートホールが目に浮かぶような艶やかさもあって、こ、これは素晴らし過ぎっ!
元ETRON FOU LELOUBLANのドラマーであるGuigou Chenevierを中心に、彼が率いるバンドVOLAPUKと、チェコのレコメン系バンドMETAMORPHOSISとが合体し、結成された多国籍レコメン系プロジェクト。
2015年のデビュー作!
ずばり、ソフト・マシーンやハットフィールドやナショナル・ヘルスなどカンタベリーのファン、『レッド』期キング・クリムゾンやマグマのファンは必聴と言えるでしょう。
復活したOFFERINGのメンバーとしても名を連ねるドラマーPhilippe Gleizes率いるグループによる、恐るべきデビュー作!
ユニヴェル・ゼロ影響下の暗黒チェンバー・ロックに、多彩な楽器群がテクニカルに躍動するGGばりの技巧、そしてX-レッグド・サリーにも迫るテンションを合わせ持つスウェーデンの鬼才マルチ・ミュージシャン、初期ベスト&未発音源集17年作!
東欧はベラルーシ出身、管弦楽器奏者を含む6人編成のチェンバー・ロック・グループによる2010年作5th。
狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、偏執狂的ギター。
アンサンブルの強度、半端なし!
東欧はベラルーシのチェンバー・ロック・バンドRATIONAL DIETのメインコンポーザーだったキーボード奏者とバスーン奏者を中心に、管弦楽器奏者など11名で結成されたグループ。2013年作。
映像喚起的な艶やかな演奏とダークでテンションみなぎる演奏との落差!さすがは、元RATIONAL DIET。
全盛期ユニヴェル・ゼロに接近した格調高くも不穏さに満ちた暗黒チェンバー・ロックは美しくも底なしに陰鬱。ベラルーシ出身チェンバー・ロック・バンドによる待望の17年作2nd!
ベルギー/ハンガリー/フィンランド/チリから凄腕メンバーが集った多国籍チェンバー・ロック・ユニット11年作。サムラ的疾走チンドン屋フレイヴァーとカンタベリー叙情が合わさったかのような強力作です!
こちらの12年作2ndも強烈。アカデミックさと奇天烈さとヨーロピアンな洗練とがゴッタ煮されてて、途方もなくテクニカルなのに温かくてしなやかだし、ザッパやゴングのファンはヤられるはず!
MAGMA、HENRY COW、そしてPICCHIO DAL POZZOが混ざり合ったみたい!?強靭なベース・ラインと重厚なギター・リフに暖かみいっぱいの管弦楽器が絡み合うスリリング&ユーモラスなチェンバー・ジャズ・ロック!
ADRIAN BELEW POWER TRIOの女性ベーシストをはじめ、世界中から集まった10人の実力派ミュージシャンが織り成すドラマチックなアヴァン・プログレ。ラフマニノフなど近現代クラシックを彷彿とさせるピアノが躍動する、強靭でいて端正な気品の漂うサウンドが実にCOOL!
米中東部はケンタッキー州出身で、Key奏者、サックス/フルート奏者、バスーン奏者、クラリネット奏者、女性ヴォーカルを含むチェンバー・ロック・グループ。2014年作。
アメリカ産とは思えないほどヨーロピアンな翳りいっぱいで、ズール系やユニヴェル・ゼロから民族音楽まで視野に入れたチェンバー・ロック傑作!
アルゼンチンはブエノス・アイレス出身で、クリムゾンやジェントル・ジャイアントやヘンリー・カウとともに、ドビュッシーやルチアーノ・ベリオやリゲティ・ジェルジュに親しんだコンポーザーのAbel Gilbert(1960年生まれ)率いるチェンバー・ロック・バンド。2014年作の3rd。
SLAPP HAPPYやCOSのファンにはたまらない女性ヴォーカルのコケティッシュ声炸裂!
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00年代に入ってジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの充実ぶりが凄い!ということで、ユーロ各国から北米、南米まで、世界中から届くジャズ・ロック/チェンバー・ロック/アヴァン・ロックの2014年新譜をピックアップ!
静謐かつノイジーとでも言える音空間・・・これ本当にライヴ録音なの!?アルゼンチン注目のレコメン系新鋭バンドによる、芸術性や実験性に満ちた2016年作。
温もりのあるチェンバー・ジャズ・サウンドにデジタルな音響を混ぜ合わせながら、スリリングに変拍子を刻んでいくアンサンブルが格好いい!HENRY COW、PICCHIO DAL POZZO好きに是非オススメしたいアルゼンチン産新鋭アヴァン・ジャズ・ロック!
『太陽と戦慄』直系のアヴァン・プログレからジャズ・ロック、チェンバー、神秘的フォークまでめくるめく展開するアンサンブルはすさまじいテクニックと強度。
ベース/ギター/ヴァイオリンをこなすマルチ・ミュージシャン2人を中心に、キーボード奏者、女性リード・ヴォーカル、ドラムという編成の5人組。
このグループ、凄いです・・・。
重厚なサックスに痺れるブラス・ジャズ・ロックから、初期アレアばりのフリーキーで無国籍なアヴァン・ロック、地中海エッセンスまでも飲み込みつつ、リズムは80sクリムゾン影響下だったりと、全く一筋縄ではいかないメキシコ新鋭による快作!
仏在住のアメリカ人作曲家/ピアニスト、Tim Rootを中心とするアヴァン/ジャズ・ロック・プロジェクト18年作。ADRIAN BELEW POWER TRIOやクリムゾン・プロジェクトへの参加で知られる気鋭の女性ベーシストJulie Slickをはじめ、米国・イタリア・アルゼンチンなど各国から選りすぐりの実力派ミュージシャン10名により制作された作品とのことですが、なるほどこれは驚愕の完成度!R・フリップを思わせる切れ味鋭くヘヴィなギター、シャープ&タイトなリズム隊、チェンバー風味のクラリネットにこれでもかとむせぶサックス…『太陽と戦慄』や『RED』期クリムゾンからの影響を感じさせる、スリリングで強靭なアンサンブル。そこへリーダーのTimによるキメ細かく端正なピアノがクラシカルな色合いを加え、はち切れんばかりにハイテンションながらもどこか洗練された気品の漂うスタイリッシュなサウンドを聴かせています。ラフマニノフなど近現代クラシックを思わせるアヴァンギャルドなパートも披露しつつ、そこから天に抜けるように華麗なヴァイオリンがメロディアスな旋律を奏でるパートへと移り変わっていったりなど、ドラマチックな曲展開も特筆。精緻かつダイナミズムに富んだ演奏で聴き手を惹き込ませる、ハイレベルな傑作です。これは激・カケレコメンド!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに角つぶれ・圧痕がある場合がございます。予めご了承ください。
00年代以降のチェンバー・ロック〜アヴァン・ロックの筆頭格と言えるイタリアのバンド、2016年作のスタジオ盤としては4枚目となるアルバム。アルバムの1秒目からレッドゾーン吹っ切れまくり!いきなりビブラフォンとサックスがユニゾンで切れ込み、ギターがまるでマシンガンのようにザクザクとしたフレーズを叩きつけ、リズム隊が高速変拍子で荒れ狂う。脈絡なくフレーズをぶつけあっているようでいて一糸乱れぬようでもあり、アブストラクトのようでいて緻密に計算されているようで、何という凄まじさ。クリムゾン『太陽と戦慄』やヘンリー・カウやユニヴェル・ゼロなどに一歩も引けを取らない、というか、硬質さとテンションでは凌駕しているといっても過言ではないでしょう。一転して、静謐なパートでの透明感もまた見事だし、カンタベリーに通じる叙情的な「歌」も心に響くし、何という表現力。チェンバー・ロックの大本命バンドによる、リスナーの期待をはるかに凌駕した大傑作!
現在の暗黒チェンバー〜レコメン系の最先端を行くアーティストと言っても過言ではないスウェーデン出身のマルチ・ミュージシャン。入手困難な初期作品の楽曲より選曲された14曲を収録したベスト盤CD1と、未発表音源20曲を収録したCD2の2枚組17年作。ユニヴェル・ゼロからの影響を強く受けた不穏なチェンバー・ロック・サウンドに、木琴をはじめとする多彩な楽器群がテクニカルに躍動するジェントル・ジャイアントばりのプレイ、そして時にX-レッグド・サリーにも迫るレッドゾーンを振り切れるようなテンションを加えた音楽性はまさしく孤高。マッツ/モルガン〜カイパのMorgan Agrenによる超絶ドラミングも随所で炸裂しています。チェンバー〜レコメン・シーン随一の圧倒的な才能を凝縮した音源集です。
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