2024年11月27日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
時に伸びやかで艶のあるクラシカルなフレーズ、時に閃光のようにテクニカルな速弾きフレーズで数多くのプログレ名作を彩ってきたヴァイオリン。
ヴァイオリンをフィーチャーしたプログレ名作は、00年代以降にも多数生まれています。
カケレコらしく世界中からヴァイオリンが彩る新鋭プログレの注目作をピックアップしてまいりましょう。
どうぞ世界周遊をお楽しみください!
まずは、最新リリース作品をピックアップ。我が国日本から興奮必至のヴァイオリン・プログレ傑作が届きましたのでトップバッターでご紹介!!
アストゥーリアスの派生ユニット、チェロ奏者を加えた新編成での24年作!
緊張感と気品高さが拮抗するヴァイオリンとチェロのコンビネーションが見事で、鮮烈でありながらズシリと重厚な聴き応えも備えたテクニカル・チェンバー・プログレを繰り広げます。
こりゃずばり傑作!
アストゥ―リアスのロック版ユニットによるこの23年作もヴァイオリン・プログレ・ファン必聴作。
ロダン「地獄の門」を題材にした1曲目から圧巻で、美しくも激情を秘めたヴァイオリンとメタリックなギターが疾走し、超絶スリリングなオルガンソロが炸裂する、プログレファン歓喜の気品高くもテンションMAXの名曲!
同じくヴァイオリンが活躍するジャパニーズ・プログレの注目株がptf。新譜の発売も控えるかれらの諸作品も取り揃えております♪
ハードSFの金字塔『星を継ぐもの』を題材にした21年作。
凛と気品溢れる表情の中にパッションを秘めた圧倒的技巧のヴァイオリンが疾走する興奮のインスト・プログレ!
これはUKやLOST WORLD BANDのファンには是非おすすめ!
「共感覚」が題材のコンセプト・アルバムとなった18年作。
鋭いタッチでスリリングに疾走するプレイで一気に緊張感を高まらせたか思うと、次の瞬間にはふっと表情が和らぎふくよかなトーンで天を駆けるように伸びやかなフレーズを奏でる、まさに緩急自在のヴァイオリンを全編で披露していて素晴らしいです。
日本的な「ワビサビ」も感じさせる詩情豊かにむせびなくフレーズから、高らかに伸び上がって行くスリリングなフレーズまで圧倒的な表現力を聴かせるヴァイオリン。
そしてヴァイオリンに負けじと叙情的なフレーズからU.K.ばりのテンションみなぎるフレーズまで炸裂するキーボードも見事。
リズム隊が生むハードなダイナミズムも魅力的だし、ずばりU.K.への現代ニッポンからの回答とも言える傑作!
「ヴァイオリン」「プログレ新鋭」というキーワードで真っ先に思いつくバンドがLOST WORLD BAND!
カケレコ・ロングセラーの3rdをピックアップ。
張りつめた旋律美を持つテクニカル・シンフォに、『太陽と戦慄』の硬質なヘヴィネスを加え、ロシアらしいエレガンスでまとめ上げたこのセンスは超一級!
現プログレ・シーン最高峰のテクニカル・シンフォ・バンド、24年作!
テクニカルながらクラシカルな気品が先立っていた従来の彼らから一転、恐ろしいまでの攻撃性でヘヴィに攻め立てるサウンドに圧倒されます。
『太陽と戦慄』好きならニンマリ必至!
LOST WORLDにはインタビューも行いました!影響を受けたバンドや日本の印象など、チェック是非!
【関連記事】
キング・クリムゾンからの影響が感じられる硬質でアグレッシヴなサウンドをベースに、クラシカルなヴァイオリンやフルートが疾走するテクニカル・アンサンブルが痛快な、現在最も注目すべき新鋭の一つですLOST WORLDの魅力に迫るインタビュー!
LOST WORLDにも負けない鮮烈なプログレを聴かせるバンドがメキシコのCAST!
まるでカナダのラッシュとイタリアのニュー・トロルスをブレンドさせ、モダンなヘヴィネスとエッジで鮮烈なシンフォニック・ロックへと仕立てたような傑作。
メキシコの雄CASTによる過去最高傑作とも言える会心の2015年作!
そしてこちらの21年作はさらに完成度が高くてビックリ!
ザクザク刻むギターとヴァイオリンが変拍子ユニゾンで快走する冒頭を経て、一気に視界が開けるように両者がスケール大きく飛翔していく荘厳なオープニングにいきなり感動!
演奏の緻密さも込められたパッションもバンド史上最高レベルの21年作!
ヴァイオリンと言えばクラシカル。クラシカルなプログレということなら、西洋音楽の中心地であるイタリアですね!
HOSTSONATENで中核を担う天才キーボーディスト、待望の23年作3rdソロ!
自身による気品が溢れんばかりのキーボードのプレイは勿論、室内楽そのものと言える管弦アレンジも息をのむほどに素晴らしいです。
クラシカルなシンフォ好きなら絶対聴いて欲しい一枚!
瑞々しいアコギの調べをヴァイオリンやフルートがクラシカルに彩る美麗なアンサンブルに乗り、丹念に歌い上げる英語ヴォーカル。
木漏れ日差す欧州の森の情景が浮かび上がってきて、一曲目から早くも感動してしまいます。
これは良いシンフォニック・フォーク・グループ!
こ、これはLE ORMEファン、HOSTSONATENファンならマストリッスン!
色彩感溢れるキーボード、クラシカルに躍動するヴァイオリン、そしてイタリア語のロマンある響きを丁寧に聴かせる男性Vo。
感動的なまでに瑞々しいサウンドを紡ぐ伊新鋭の会心作!
お次はイギリスからピックアップ。
英国伝統の叙情美とチェンバー・ミュージック的静謐さとが絶妙にバランスした格調高く荘厳なシンフォニック絵巻。
艶やかなストリングスの調べにうっとり。
麗しのヴァイオリンが描く中世英国の気品溢れる世界。
イギリスならではのファンタスティックな叙情派シンフォ。
【関連記事】
90年代以降のプログレシーンを盛り上げる北欧スウェーデンやイタリアに負けじと、本場イギリスからも、イエスやジェネシスやクリムゾンなど往年のグループのDNAを継いだ好グループが出てきております。注目の作品をセレクトいたしましょう。
ドーバー海峡を渡り、フランスへ!
フランスでヴァイオリンと言えば、マグマやZAOなどヴァイオリンをフィーチャーしたジャズ・ロック/プログレ・バンドが頭に浮かびますが、そのDNAを継ぎつつ、懐古趣味的な印象はまったくなく、文字通りに「プログレッシヴ」なサウンドを聴かせる凄いバンドがこちら。
マイナーなバンドですが、カケレコ・ロングセラーの一枚。
女性ヴォーカル、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたフランスの新鋭プログレ・グループ。09年デビュー作!
こちらの人気多国籍シンフォ・グループも、ここ数作は極上のヴァイオリン・プログレを連発してるんですよね!
Roine Stoltほか豪華ゲスト参加、2枚目の24年作!
張り詰めた気品に満ちたヴァイオリン、哀愁の旋律を奏でるシンセ、畳みかける泣きのギター。
あまりに壮大な導入部でノックアウト必至です。クラシカル・シンフォとして他の追随を許さないスケールと完成度!
新旧イタリアン・ロックの実力派が大挙参加した21年リリース第2弾。
上記作をさらに荘厳且つダイナミックにしたようなサウンドで、『CONCERTO GROSSO』ファンはもちろん、QUELLA VECCHIA LOCANDA、Mauro Paganiがお好きな人も必聴のヴァイオリン・クラシカル・シンフォ傑作!
お次は南米へ。南米の往年の名グループでヴァイオリンと言えば、ブラジルのサグラドですよね。サグラドのDNAを継ぐ新鋭をピックアップいたしましょう。
重量感たっぷりの力強いアンサンブルの中をあまりにも壮麗なヴァイオリンが舞う。
サグラドをよりハード&アグレッシヴにしたかのようなハード・シンフォ傑作。
アルゼンチンからもヴァイオリンをフィーチャーした注目のバンドがいます!
スピネッタやチャーリー・ガルシアを受け継いだメロディアスなパートから、マハビシュヌ・オーケストラ的なフュージョン・ロック・パート、チェンバー・ロック的パートまで駆け巡るアンサンブルは、自主制作とは思えない完成度!
お次は東欧へ!
いきなりマニアックなエストニアへとやってきました。でもここにはカンタベリー・ロックのDNAを継いだ凄いバンドがいるのです…!
現代最高峰のカンタベリー系ジャズ・ロック新鋭と言うべき彼らの17年作がこちら。
エストニアから彗星のごとく登場したジャズ・ロック・バンドが彼ら!カンタベリー・ロックを受け継ぐジャズ・ロックを軸に、東欧由来のダークな緊張感、そして北欧的な気品と透明感を融合させたサウンドは唯一無二!
試聴はこちら!
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
70年代から活躍するグループなので新鋭とは言えませんが、出世作となった08年作のモダンなサウンドは新鋭にも通ずるのでこちらでピックアップ。
「ひと言でいえば壮大なロック交響詩だと思います。ボーカルがないのも効果的で民族的な味も損なわず、哀愁あるメロディにヴァイオリンが舞い、ピアノが踊り、時にはフルートやギターが泣いて、また曲により重量感ある音が洪水のように押し寄せてきて素晴らしく感動します。」
by アズマ・シローさん
ハンガリーの新鋭だと、このグループも凄いです。
管弦楽器奏者を含むハンガリーの大所帯グループ、04年作に続く2010年作2nd。
「動」と「静」の鮮やかな対比。「動」のパートで躍動する早いパッセージのヴァイオリンがカッコ良い!
クラシック、民族音楽を中心に、ロックのダイナミズムを加えた、西洋音楽史を総括したような壮大なサウンドは圧巻の一言です。
最後は辺境インドネシアのこの人気バンドをピックアップ!
ヴァイオリン奏者、フルート&サックス奏者、透明感ある女性Voを含むインドネシアの8人組。
NHK-FM「プログレ三昧」で2ndがオンエアされて話題になりましたが、このデビュー作の時点でもう凄いです。
「インドネシアのプログレと言うから、半信半疑だったが大層なシロモノである。ここまでとは思わなかった。」
by appo128さん
【関連記事】
NHK-FMの『プログレ三昧』でDISCUSが取り上げられ、プログレ・ファンにとって注目すべきエリアとなったインドネシア。DISCUSにも勝るとも劣らない硬派かつイマジネーション溢れるジャズ・ロック/プログレの名作が続々と届いておりますので、ピックアップ!
さらなるヴァイオリン・プログレ探求をご希望の方は、下記コンテンツもあわせてどうぞお楽しみください☆
165
90年代はじめのデビュー以降コンスタントに作品をリリースし続けているメキシコが誇るシンフォニック・ロック・バンド。前作から早くも1年で届けられた2015年作。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、瑞々しく艶やかなトーンのストリングスが躍動するクリアで明朗なサウンドが印象的。ソロとしても活躍している若き男性ヴォーカリストBobby VidalesによるカナダのRUSHを彷彿させるハイ・トーンの歌声もそんなサウンドに見事にマッチしています。ジェネシスのDNAが息づく多彩なキーボードによるヴィンテージな色合い、ザクザクとメタリックなリフや流麗な速弾きで硬質なダイナミズムを生むギターのアクセントも良いし、圧倒的に目の覚めるようなアンサンブル!今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さが加わっていて、そこに持ち前のテクニカルなエッジも効いていて、これはずばりシンフォニック・ロックのファンは必聴でしょう。ジャケットのデザインは、ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに若干角つぶれ・若干圧痕がある場合がございます。予めご了承ください。
90年代初めから活動するロシアのシンフォ・グループ。高い評価を得た06年作2ndに続く09年作。ヌケが良く疾走感溢れるリズム・ギターとアグレッシヴなリズム隊が築くスケールの大きなキャンバスの上を、ヴァイオリンとギターが奔放に美しいメロディを描き、そこに流麗なピアノが鮮やかな色を付ける。聴いていて思わず笑みがこぼれる躍動感いっぱいのアンサンブル。まさに「鮮烈」の一言。ただ、ゴリ押しで畳みかけることは決してなく、どんなにアグレッシヴなパートでも、静謐とも言えるような格調高さを常に感じさせるのが特筆もの。前作同様に「静」と「動」の対比鮮やかで、「静」のパートでは、フルートが柔らかに舞い、優美なメロディを描く。ファンタスティックなシンフォを軸に、「太陽と戦慄」期クリムゾンのような硬質なヘヴィネスや、ディシプリン期クリムゾンのような浮遊感とサウンドのエッジをうまく織り込み、なおかつ全体的には優美さでまとめ上げるセンスは超一級。サウンド・プロダクションも抜群で、モダンなビビッドさとビンテージな温かみとのバランスが絶妙。これは傑作です!
女性ヴォーカル、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたフランスの新鋭プログレ・グループ。09年デビュー作。クリムゾンやカンタベリー・ミュージックを中心に70年代プログレやジャズ・ロックからの影響を強く感じますが、懐古趣味的な印象はまったくありません。往年の名グループの遺伝子を受け継いだ、文字通りに「プログレッシヴ」なサウンドがここにあります。「太陽と戦慄」期のクリムゾンやHENRY COWあたりの攻撃性を軸に、HATFIELDS & THE NORTHに通ずる繊細さと緻密さ、フランス的な芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、かなりの完成度!時にミニマルなフレーズを奏で、時にささくれだったリズムギターで牙をむくギター、シャープ&タイトな強靱なリズム隊、フリーキーに暴れ回るヴァイオリン&サックス、時に荘厳なメロトロン、時にアヴァンギャルドなシンセで楽曲を飛躍させるキーボード、フランス語で歌う存在感抜群のシアトリカルな女性ヴォーカル。各パートの演奏力、アンサンブルの強度ともに抜群です。14分を越える「ODS」など、構成も文句無し。これは強力なグループが登場しました!圧巻の名作。かなりおすすめです!
インドネシア出身のプログレ・グループ。ヴァイオリン奏者、フルート&サックス奏者、透明感ある女性Voを含む8人組。99年作の1st。ロック、ジャズ、クラシック、フォーク、現代音楽、民族音楽、ヘヴィー・メタルなどの多様な音楽を吸収し、見事な構築力でもって、1音1音が瑞々しく躍動する真のプログレッシヴ・ミュージックへと昇華させています。破壊的なパートから静謐なパートまで、そのアレンジ・センスはただものではありません。テクニカルなフレーズを流れるように聴かせるギターを筆頭に、全メンバーとも驚くほどのハイ・テクニックとハイ・センス。恐るべしインドネシア。凄いグループです。
イギリス南東部のブライトン出身で、ヴォーカル、ギター、トランペット、オルガンを操るマルチ奏者ロビー・ウィルソンを中心に07年に結成された4人組。現代イタリア・プログレ・シーンの注目のレーベルAltrockと契約し、その傘下のFADING RECORDSより2012年にリリースされたデビュー作。アルバムの幕を静かに開けるのが鉄琴の一種であるグロッケンシュピール。まるでオルゴールのように静謐でいてファンタスティックなイントロではじまり、ドラムが入ると、オルガンが幻想的にたなびき、トランペットやストリングスなど管弦楽器が艶やかな音色を奏でるなど、クラシック・ミュージック由来の格調高さと温かみとともに、ポスト・ロック的な浮遊感が絶妙にブレンドされたイマジネーション溢れる音世界が次々と描かれていきます。ささやくように歌うハイ・トーンの繊細でメランコリックな美声男性ヴォーカル、聖歌隊のように厳粛なコーラス・ワークも絶品。レーベルからのインフォには、参考バンドとして英国70sプログレの名グループFANTASYとアイスランドのポスト・ロック・バンドSIGUR ROSが挙げられていますが、なるほどその通り!ジャケットのイメージ通りのいかにも英国的な牧歌性や幻想性と、宗教的とも言える崇高さとが完璧に融合したサウンドにただただ言葉を失います。全ての楽器と声とが信じられないほどに繊細に紡がれた、凛とした音の透明感。デビュー作とは思えない孤高の逸品です。これは名作でしょう!
2000年デビューのエストニア出身ジャズ・ロック・グループ、スタジオ・アルバムとしては2010年作『TALU』から7年ぶりとなった17年作。いやはや本作も凄いっ!圧巻の手数とともに疾走するテクニカルかつ硬質なリズム・セクションに乗り、サックスとヴァイオリンが繰り広げる、クリムゾンばりのダークなテンションとカンタベリー・ジャズ・ロックを受け継ぐ滑らかでメロディアスなフレーズが共存するサウンドの何と強烈なこと。1曲目から「これぞPHLOX!」と拳を握ること間違い無しです。それを支える、ジャズ・ロック然としたクールなエレピをメインとするキーボード、クリーントーン主体で情緒豊かに旋律を紡ぐギターも非常に美しいし、哀愁を誘うアコーディオンの調べも絶品。そして何より素晴らしいのが、カンタベリー・ロックを手本としつつも、メロディやアンサンブルの端々に垣間見れるヨーロピアンな深い陰影と透明感ある音色使い。北欧と東欧に接するバルト三国エストニアならではと言っていいサウンドが芳醇に広がります。アヴァンギャルドなパートも度々登場しますが、聴きづらさはなく持ち前の気品あるメロディアスなジャズ・ロックの中に違和感なく挿入されていて、そのセンスの良さにも唸らされます。今作も期待を裏切らない痺れる傑作!
試聴はこちら!
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
フィンランド・伊・米出身のミュージシャン3人を中心に結成された人気シンフォ・グループ、2枚目の2024年作!前24年作『A QUIET TOWN』にて作詞/作曲を務めた伊マルチ・プレイヤー/コンポーザーMarco Grieco(MACROMARCO)が今回も全曲作詞/作曲を担当。そしていつも通り各国から多数のゲストを迎えていますが、本作のゲストはいつもに増して豪華。御大Roine Stolt、MAGENTAの女性シンガーChristina Booth、PENDRAGONで知られるClive Nolanというメンツに加え、AFTER CRYINGやKAYAKからもメンバーが参加しています。タイム・マシーンによって類人猿の時代から現代まで人類の歴史を辿るコンセプト・アルバムとなっており、今回もクラシカルな弦楽を全編フィーチャーしながらとんでもないスケールで展開。張り詰めた気品に満ちたヴァイオリンに導かれて、シンセが哀愁を帯びた旋律を奏で、さらに泣きのギターが畳みかける、あまりに壮大な導入部で早速ノックアウト。SOLARISやLITTLE TRAGEDIESを彷彿させつつ、彼らをも凌ぐかもしれない素晴らしさです。ロマンティックに歌う男性ヴォーカルも素晴らしい、クラシカル・シンフォとして完璧な一曲目はずばり必聴モノ。2曲目ではいよいよRoine Stoltのギターが炸裂。序盤・中盤・ラストと圧倒的表現力でエモーショナルに紡ぐ劇的なギターが堪能できて、曲のクオリティを数段跳ね上げていてさすがです。Clive Nolanは5曲目でヴォーカル参加。初期Steve Hackettの作風に通じるファンタスティックな中に少しエキセントリックな要素を持つ曲調に、味わくも力強い歌声を乗せます。そしてラスト8曲目、アコギの爪弾きをバックに物悲しい表情で歌い出すChristina。MAGENTAでの彼女とはまた異なる魅力を放つ歌唱に惹き込まれます。盛り上がる演奏に合わせてハイトーンで気高く歌い上げる中盤からラストにかけても感動的。そんなゲストの活躍を最大限に生かす、楽曲の良さと土台であるクラシカル・シンフォとして隙のない完成度に唸らされてしまう傑作!
82年にブダペストで生まれ、6歳から本格的なクラシックの教育を受けたBalazs Alparを中心に、多数の管弦楽器奏者を含む編成で結成されたハンガリーの大所帯グループ。04年作に続く2010年作2nd。ひとことで言って『鮮烈』なシンフォニック・ロック!とにかく「動」と「静」の対比が鮮やか。「動」のパートでは、シャープでダイナミックなリズム隊、早いパッセージのヴァイオリンが躍動し、「静」のパートでは、格調高くクラシカルなピアノ、リコーダーやフルートなど管楽器が舞い上がります。クラシック、民族音楽を中心に、ロックのダイナミズムを加えた、西洋音楽史を総括したような壮大な作品。エレクトリック・ギターやキーボードがないのに、これほどまでにロック的なダイナミズムを出せるんですね。傑作です。
現中南米シーンにおいて抜きんでた実力を誇るメキシカン・シンフォ・グループ、前作から4年を経てついにリリースされた21年作!キャッチーかつ疾走感抜群のアンサンブルにスケール大きなヴァイオリンのプレイが炸裂するサウンドは、さながら「ラッシュ+サグラド・コラソン・ダ・テッラ 」。もう1曲目から凄まじい。ザクザク刻むヘヴィなギターとヴァイオリンが変拍子ユニゾンで快走する冒頭を経て、一気に視界が開けるようにギターとヴァイオリンがスケール大きく飛翔していく荘厳なオープニングにいきなり感動してしまいます。パッションみなぎるアコースティックギターの超絶プレイも全開だし、終盤満を持して登場するシンセのスピーディなプレイもさすがです。曲間なくピアノのクラシカルなリフレインに繋がっていき、ヴァイオリンのキレのあるプレイが冴え渡るプログレ・ハードを聴かせる2曲目もキャッチーかつ緊張感ある名曲。とにかく全編通してとんでもないエネルギーが充満していて、聴いてる方も拳を握りっぱなしになります。何度かのメンバーチェンジは経ているものの、MARILLIONと同期の78年結成とは思えない、作品を出すごとに演奏の緻密さと込められた情熱が増していくCASTというバンドに敬服せずにはいられません。もちろん大傑作!
ブラジル産新鋭シンフォ・バンドによる12年作。タイトかつテクニカルに走るリズム・セクションの上を、へヴィーに唸るギターと力強いオルガン、シンセが駆け抜ける骨太なシンフォニック・ロック。そして何より素晴らしいのが天空を舞うかのように鳴らされるヴァイオリンで、ギター、キーボードと絡み合いながら高みへと登りつめていくアンサンブルは、もう見事と言うほかありません。まるで同郷のシンフォ・バンドであるSAGRADOをよりアグレッシヴに仕立て上げたかのようなハイクオリティの楽曲の数々にノックアウト間違いなしの傑作に仕上がっています。これはシンフォ・ファンには是非ともおすすめな一枚です。
英国はヨークシャー在住のマルチ・インストゥルメンタル奏者Andrew Marshallによるプロジェクト。2013年作3rd。きらびやかなアコギやどこまでもクリアに広がっていくようなシンセの音色がひたすら美しいシンフォニック・ロックが印象的。そうかと思うと、タイトなリズムセクションに乗って艶のあるシンセとレトロな音色のオルガンがダイナミック疾走する「動」のパート、哀愁を湛えたフルートや気品高くもどこか陰鬱に響くヴァイオリンが彩る「静」のパートなど、英国らしい端正な音使いのアンサンブルが繰り広げられます。そして、ここぞというところで溢れ出すメロトロンに、わかっていても悶絶。中世英国の気品溢れる世界観を想起させる絶品シンフォニック・ロック。これは傑作です。
09年に結成されたヴァイオリン奏者の高島圭介を中心とする日本のプログレ・バンド。高く評価された13年のデビュー作と同じく、フランスMUSEAレーベルから世界配給される15年の2ndアルバム。日本的な「ワビサビ」も感じさせる詩情豊かにむせびなくフレーズから、高らかに伸び上がって行くスリリングなフレーズまで圧倒的な表現力を聴かせるヴァイオリン、そして、ヴァイオリンに負けじと叙情的なフレーズからU.K.ばりのテンションみなぎるフレーズまで炸裂するキーボード。リズム隊が生むハードなダイナミズムも魅力で、まるでジョン・ウェットンばりのズシリと重いトーンのアグレッシヴなベースによるリズム隊によるライヴ感もまた特筆です。「ワビサビ」なパートでのクラシカルで流麗なピアノも絶品。10分を超える大曲での「静」と「動」がダイナミックに対比した構成も見事だし、ワールドワイドなクオリティを持つヴァイオリン・プログレの傑作!
HOSTSONATE、LA COSCIENZA DI ZENOなど現イタリアン・シンフォの有力グループで手腕を振るうキーボーディストによる23年3rdソロ作。クラシカルなシンフォがお好きなら本作は絶対聴いて欲しいです。冒頭、リリカルな気品に満ちたピアノ、七色に輝くシンセ、淡く湧き上がるオルガンらキーボード群と美麗な管弦楽器が絡み合い描くクラシカル・シンフォで、早速聴き手を途方もなくロマンティックで格式高い音世界へと惹き込みます。細やかで流麗な音運びのピアノ、ピッチとトーンを自在に操るセンスみなぎるシンセのプレイが特に素晴らしい。管弦をメインに本格派の室内楽を聴かせる楽曲の美麗さも特筆だし、重厚なリズム・セクション&管楽器をフィーチャーしパワフルで少しジャジーに展開するナンバーもまたカッコいいです。インスト中心ですが、数曲でドラマチックに歌い上げる男女の伊語ヴォーカル、最終曲の本格的なオペラ・ヴォーカルとイタリアン・プログレらしい歌もちゃんと楽しめるのも嬉しいところ。さすがはHOSTSONATENのキーボーディストと唸らずにはいられない、一キーボーディストの才能に留まらぬ完成度で作り上げられた傑作!
イタリアの新鋭シンフォニック・フォーク・グループによる22年作。瑞々しいアコースティック・ギターの調べをヴァイオリンやフルートがクラシカルに彩る美麗なアコースティック・アンサンブルに乗り、丹念に歌い上げる英語ヴォーカル。木漏れ日差す欧州の森の情景が浮かび上がってきて、一曲目から早くも感動してしまいます。ため息が出るほどメロディアスな旋律の美しさも特筆です。北欧トラッドあたりがお好きな方にもおすすめできる、柔らかな神秘性が心地よい名品!
マルチ・プレイヤー大山曜によるソロ・プロジェクトASTURIASから派生する形で03年に結成されたアコースティック編成によるプログレ・ユニット、24年作。チェロ奏者を加えた新編成での第1作目となっており、メンバーは大山曜(ガットギター)、星野沙織(ヴァイオリン)、佐野まゆみ(チェロ)、北川とわ(ピアノ)、関口太偲(ピアノ)の5人です。1曲目から圧倒的にスリリング!切れ味鋭く躍動するヴァイオリンと緊張感ある低音を響かせるチェロ、激しくも気品あるタッチでジャズ・エッセンスを注入するピアノ、それらをしっかりと繋ぎとめるガットギター。鮮烈でありながらズシリと重厚な聴き応えも備えたサウンドは、チェロ入りのアコースティック編成ならではのものでしょう。大山曜がゲーム「新夜廻」のメインテーマとして提供した楽曲をアレンジしたナンバー、北欧ケルトの世界観を表現した勇壮さと祝祭感が調和したナンバー、ピアソラをイメージしたというアグレッシヴなタンゴ曲など自在な曲想に、各メンバー作曲の楽曲も交えて繰り広げられる、気品高くもテンションみなぎるサウンドに終始耳を釘づけにされます。ワールドワイドに見てもチェンバー・プログレ/アコースティック・プログレの最高峰に位置付けるべき傑作!
ロシア出身、ヴァイオリン/ギターetc.のAndrey Didorenkoを中心に90年代初頭に結成され、2017年以降はアメリカを拠点に活動するテクニカル・シンフォ・バンド、24年作!今作ではAndriiがギター/ベース/ヴァイオリン/パーカッション/キーボードを兼任するソロ・プロジェクト的形態となり、フルート奏者/ヴォーカリスト/ドラマーらをゲスト・ミュージシャンに迎えての制作となっています。最長でも3分台というコンパクトな全16の楽曲群で構成される本作ですが、注目すべきはその恐ろしいまでの攻撃性。テクニカルでエッジの効いた音ではありつつも、あくまでクラシカルな気品高さが先立っていた従来の彼らを払拭するかのように、リズム・セクションとギターを中心にこれでもかとヘヴィかつタイトに攻め立てるサウンドに驚かされること必至。デビュー時より内包していたKING CRIMSONの影響が、むき出しの狂暴性となって襲い掛かってきます。バンドを特徴づけてきたヴァイオリンも狂気を露わにしながらスリリングに弾きまくっていて圧巻。荒れ狂うようなヘヴィ・プログレ・チューンが数曲続くと、かつての彼らを思わせる優美なクラシカル・シンフォニック・ロックが悠然と立ち上がって来る構成も見事で、その振れ幅が素晴らしい対比を生み出しています。クラシカル・サイドではゲストの女性ヴォーカルによる麗しくも憂いを帯びた歌声が絶品。KING CRIMSONファン、特に『太陽と戦慄』が好きな方はきっとニンマリとしてしまうでしょう!
下記ページで全曲試聴可能です!
https://lostworldband.bandcamp.com/album/a-moment-of-peace
マルチ・プレイヤー大山曜によるソロ・プロジェクトASTURIASから派生する形で09年に結成された、ロック・バンド編成によるプログレ・ユニット、23年作。メンバーは大山曜(ベース)、平田聡(ギター)、テイセナ(ヴァイオリン)、田辺清貴(ドラムス)、中村エイジ(キーボード)の5人。曲名通り彫刻家ロダンの「地獄の門」を題材にしたOPナンバーから圧巻で、強靭なリズム・セクションに支えられ美しくも激情を秘めたヴァイオリンとメタリックなギターが疾走。そんなただでさえプログレファン歓喜のテクニカル・アンサンブルに、ダメ押しのごとく超絶スリリングなオルガンソロが炸裂します。気品高くも終始アグレッシヴに攻め立てるテンションみなぎる名曲です。4部構成の20分超におよぶ組曲も聴きモノで、クラシカルなヴァイオリンが時に天を駆けるようにスケール大きくファンタスティックに、時に切れ味鋭く攻撃的に、時に慈愛に満ちた表情でエレガントに、自在なプレイでドラマティックに躍動します。そんなヴァイオリンと縺れ合いながらテクニカルなユニゾンも決めるギター、空気を一瞬で変える荘厳さに圧倒される(チャーチ)オルガン、ダイナミックなプレイで演奏を牽引するリズム隊ら各楽器の活躍にも注目です。そして英語ヴォーカルをフィーチャーした浮遊感と切ない哀感が入り混じるラストナンバーがまたアルバムを締めくくるのにこれ以上ない美しさを湛えていて素晴らしい。あらゆるプログレ・ファンに必聴と言いたい最高のヴァイオリン・プログレ!
09年に結成されたヴァイオリン奏者の高島圭介を中心とする日本のプログレ・バンド、18年作3rdアルバム。共感覚を題材にしたコンセプト・アルバムで約80分の大作となっています。何と言ってもこのヴァイオリン!鋭いタッチでスリリングに疾走するプレイで一気に緊張感を高まらせたか思うと、次の瞬間にはふっと表情が和らぎふくよかなトーンで天を駆けるように伸びやかなフレーズを奏でる、まさに緩急自在の名手ぶりを全編で披露していて素晴らしいです。音数多く攻撃的なパートではエディ・ジョブソンやダリル・ウェイ、スケール大きく聴かせるクラシカルなパートではSAGRADOのマルクス・ヴィアナあたりを想起させます。そのヴァイオリンと鮮やかなユニゾンを決めるキーボードも見事な技巧の持ち主で、芳醇に溢れ出すオルガン、凛と格調高いピアノ、シンセも駆使して豊かな色彩を描き出すプレイが圧巻。またそんな両者の躍動を支える、ヘヴィで野太いうねりを伴ったベースとタイトで力強いドラミングも特筆です。U.K.にも迫る技巧とテンションで駆け抜けるアグレッシヴなナンバーから、クラシックの高い素養を活かした清廉なシンフォまで、振れ幅自在に展開するサウンドに圧倒されること必至です。これぞヴァイオリン・プログレの新たな傑作!
09年に結成された日本のヴァイオリン・プログレ・バンド、ハードSFの金字塔『星を継ぐもの』をコンセプトにした21年作4thアルバム。凛とした気品溢れる表情の中にパッションを秘めた圧倒的技巧のヴァイオリンを軸に駆け抜ける、美しく壮大なインスト・プログレを紡ぎます。注目はやはり過去作に増して冴え渡るヴァイオリンのプレイ。クラシックの素養を生かした湖面を舞うように美麗なプレイに息をのむと、一転激しいリズム・セクションがタイトになだれ込み、それを合図にヴァイオリンも速弾きを交えてハードに疾走する、その切り替わりがとにかく見事。緩急自在なパフォーマンスはEddie Jobsonやロシア新鋭LOST WORLD BANDのAndrii Didorenkoにも比肩します。ヴァイオリンに負けじと力強く鳴るオルガン、クリアな響きのピアノを自在に操るキーボードワークも特筆。さらに印象的なのがアナログ・シンセの活躍で、独特のうねりと広がりを持つサウンドが壮大な宇宙空間のイメージを聴き手に想起させます。これはU.K.ファンやLOST WORLD BANDのファンに一押ししたいヴァイオリン・プログレ傑作!(バンドのセルフライナーノーツ動画あります)
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!