2023年11月8日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
今回ご紹介するのは米国のサイケ系再発レーベルGEAR FAB。1986年の設立以来、マイナー盤やコレクターの間で高値で取引される激レア盤などなど、60年後期~70年代初頭の知られざる米サイケ作品をひたすらにリイシューし続けている名レーベルです。
ニッチな作品ばかりですが、長い歴史を持っているだけあり、その審美眼は確か!米サイケ・ファンは是非是非チェックしてみて下さいね。
まずは23年リリースの2作品からまいりましょう~。
1曲目からして破壊力抜群!タイトに迫りくるリズムにヘヴィなリフを豪快に絡ませるギター、そして雄々しいヴォーカルに痺れる一曲で、ジミヘンやクリームがお好きなら早くも持っていかれるでしょう。
フロリダ出身ハード・ロック・バンドによる全シングルを収録!
エド・サリヴァン・ショーで見たビートルズの姿に衝撃を受け音楽に没頭し始めたというストーリー通り、初~中期ビートルズ的なメロディを持つサイケ・テイスト薫るフォーク・ロックを演奏。
コネチカット州の高校生トリオ、72年唯一作!
ここからはロングセラーの人気タイトルを厳選してご紹介♪
初期オールマンズや『SUPER SESSION』が好き? なら、このディープ盤はオススメ!
腰を揺らすビート、バキバキに歪んだリードギター、極めつけはグルーヴィーに炸裂するオルガン、こりゃ最高!
シカゴのリサイクルショップから救出されたという、謎に包まれた1969年録音(恐らく)ガレージ・サイケ秘宝盤。
しかしながらその内容は、BLUE CHEERやSIR LORD BALTIMOREも彷彿とさせるヘヴィ・アンサンブルにジャジーなピアノも炸裂する実にハイレベルな逸品!これは注目です。
暗いジャケに似合わず、ジャニスやグレイス・スリックを思わせるパワフルで艶っぽい姉御ヴォーカルやグルーヴィーなオルガン、キレのあるギターが炸裂するアグレッシヴなアンサンブルがいいなあ。
西海岸サイケ好きは是非チェックすべき、ワシントン出身グループによる発掘音源集!
なんと原盤25枚のみプレス!?のペンシルバニア産ガレージ・サイケ73年作。
「まさにガレージ」というアマチュアリズム満載な演奏ながら、ガレージ・パンク的初期衝動とデッドに通ずる緩い雰囲気が混ざり合ったサウンドが非常に癖になります。
USサイケのみならず、ドイツのアンダーグラウンドな逸品も。
フルート&サックスがむせぶジャジーなナンバーから、 轟音ファズ・ギター&エレキ・ヴァイオリンが暴れ狂うヘヴィ・サイケ・ジャムまで。薄暗い地下室の薫り漂うディープ盤・・・!
続いてはプログレ・ファンにも人気の名作。テキサスのサイケ・ハード・グループ70年作なんですが、一番の特徴はなんとメロトロン!
カントリー・タッチのギターのバックで溢れ出るメロトロン・・・この泣きっぷりはすごい!
こちらは陰影に富んだハモンドが堪らない「アメリカのCRESSIDA」的70年作。
叙情的なギターや哀愁たっぷりのヴォーカルといい、悪趣味のキーフって感じのジャケといい、英国ロック・ファンに刺さること間違いなしの一枚です。
オルガン好きなら、こんなオハイオ産ヘヴィ・サイケ71年作もどうぞ。
このMETERS「Sissy Strut」のカヴァー、ファンキー・ヘヴィ・サイケデリックで激カッコ良し!ジャジーで流麗なオルガンが実にいい音鳴らしてます。
怨念が渦巻いていそうなジャケに騙されてはいけません!こちらもルーツ色濃厚なグルーヴィー・オルガン・サイケ。
ソウルフルなヴォーカルに「ドゥビドゥバ~♪」なコーラス、コクたっぷりのディストーション・ギターやリズミカルなオルガン。
BS&Tの2nd、THE BANDの2ndと同じ69年にこんな作品も産み落とされていたとは・・・。いやはや、文句なしにかっちょいいです!
ハード・ロック・ファンにはこんな米東海岸はボルチモア出身グループもおすすめ。
リフにリードに鋭角なフレーズをぶつけあうツイン・ギターのテンションときたら!「なぜ売れなかったのか?」と首を傾げたくなる71年のサイケ・ハード逸品。
ただならぬ作品をお探しの方にオススメなのが、68年に録音されながらお蔵入りとなったこちらのカリフォルニア産サイケ。
繊細なヴォーカル&コーラスはビート色のある初期ゾンビーズみたいなのに、そこに絡むヒステリックなオルガンやノイジーなギター、はちゃめちゃなベースが危ない香りプンプン・・・。この狂気と緊張感を孕んだアンサンブル、鳥肌ものです。
そんな彼らが後にS&Gを手掛ける名アレンジャーJimmie Haskellの自宅で67年に録音したライヴ・セッション発掘盤がこちら。
カラフルなヴォーカル&コーラスのハーモニーにドライヴィングかつスリリングなバンド・アンサンブル、そしてやはりどことなく漂う危ういサイケデリック感。
ちゃんと作品を残さなかったのが惜しまれる、レベルの高いバンドです。
十代の頃から活動を始めた奇才ギタリスト、Merrell Fankhause率いるサイケ・フォーク・バンド、68年作。
青空へ抜けるような爽やかなナンバーからシタールを取り入れたオリエンタルな楽曲まで、Merrellの気品漂うヴォーカルと歌心のある巧みなギター・ワークが冴え渡りまくり。
マイナーながら高いクオリティを誇る一枚です。
最後は74年にリリースされたレアなオハイオ産サイケ。
メロウで気だるい雰囲気漂うアシッド・ロックにファンキーでグルーヴィーなナンバー、50年代的な雰囲気醸し出すR&Rナンバーなどなど・・・。
力の抜けた洒脱なアンサンブルとヴァラエティ豊かな楽曲にセンスの良さが光る、70年代サイケの隠れ名作!
いかがでしたか?GEAR FABレーベルの作品、まだまだございますよ〜。リストはこちら!
テキサス出身のサイケ・ハード・グループ。哀愁ほとばしるカントリー・タッチのスティール・ギター、ドラマティックと言えるほどに叙情溢れるメロディ、憂いを帯びたヴォーカル、心揺さぶるハーモニーが印象的。そして、このグループの一番の特徴は、なんとメロトロン!カントリー・タッチのサイケ・ハードのバックに、メロトロンが溢れ出します。カントリー・タッチのギターに絡むメロトロンは、聴いた記憶がありません。しっかし、メロディも歌い回しもアンサンブルも、この泣きっぷりはすごいです。カントリー・タッチの様式美サイケ・ハード?強烈にメロディアスです。1曲目「Circles In The North」なんてドラマティック過ぎて涙出ます。
オハイオ州デイトン出身、ファンクテイストの濃い4人組サイケ・ロック/ヘヴィ・サイケ・バンドが71年に発表した唯一作。スモーキーなワウ〜ファンキーなカッティング〜ハードなリフまでこなすギター、跳ねたキーボード、黒っぽいドラム&ベースが絡み合うヘヴィ・サイケ・ファンクの傑作です!特筆すべきはM3のMETERS「Sissy Strut」必殺カヴァー!ハイトーン&伸びやかなソウルフル・ヴォーカルが泣きのツボを突いたアーシーなミッドナンバーM6も素晴らしい!なお、前身はいくつものガレージコンピに収録されていることでサイケ・ファンにはお馴染みのJERRY & THE OTHERSです。
米ブルース・ロック/ハード・バンド、72年に録音されながらお蔵入りとなった幻の作品。腰を揺らすエネルギッシュなビート、バキバキに歪んだブルージーかつアグレッシヴなリード・ギター、そして極めつけは、グルーヴィーに炸裂するオルガン!まるでライヴのように、ギター、オルガン、ドラムが交互にソロを取りながら前のめりに畳みかける4曲目「Blister」は悶絶のカッコ良さ!初期オールマンや『SUPER SESSION』あたりが好みであれば、もうヤられるはずです。おすすめ!
フロリダ出身のサイケ・プログレ・バンドが69年に発表した唯一作。「アメリカのCRESSIDA」とも称されるようにジャズ・ロック調の気品あるオルガン/キーボード・ワークと、プログレ調のめまぐるしい展開とシリアスな雰囲気を湛えたサウンドが特徴。メロディアスなオルガンを軸に展開されるドラマティックな楽曲群はかなりの完成度。若干シアトリカルなヴォーカル、ファズ・ギターの引きずるようなリードも堪りません!米国産ながら、70年代英国のオルガン・ロック好きにも是非聴いていただきたい一枚。この気味の悪いジャケットにピンと反応してしまった方も、その感性を裏切らない雰囲気を内包した一枚です。
メリーランド州ボルチモア出身の5人組サイケ・ロック・バンドが71年に発表した唯一作。ツインギターを軸にしたハードな楽曲のなかに、ポップで非凡なソング・ライティングとコーラス・ワーク、遊び心のあるSEが光る傑作。そのツインギターのバランスが秀逸で、ハードリフから西海岸スタイルの掛け合いまで見事な表現力。楽曲の完成度が高いのでそれだけでラストまで飽くことなく聴けるのですが、さらに要所要所で待ち受けるドラマティックでほんのり哀愁すら感じさせる展開に、完全にもっていかれます!マネジメントに恵まれず商業的には成功しなかったバンドですが、確かな才能を持った名バンドです。
シカゴのリサイクルショップから発掘されたという未知のヘヴィ・サイケ盤が初の公式リリース!1969年頃に録音されたと思われるものの、バンド名やアルバム名以外の情報が全く謎に包まれたこの一枚。しかしながらその内容は、BLUE CHEERやSIR LORD BALTIMOREも彷彿とさせる実に重厚でドライヴィングなヘヴィ・ブルース・サイケ!粗くザクザクと鳴らされるギターにドッシリと力強いベース、スピーディーながらも安定感のあるドラム。けだるげ且つ哀愁漂うヴォーカリストの歌声も良いし、曲によってはkey奏者も参加してジャジーな雰囲気のある達者なピアノを奏でていたりと、決してアマチュアのデモ音源に留まらない本格派の香りがプンプン!オリジナル盤を救出した発見者の驚きが伺える、奥深き米サイケ・シーンの秘宝盤です。
米国ワシントン州のサイケ・グループ、69〜70年に録音されつつ96年までお蔵入りとなっていた発掘音源集。薄暗いジャケに反して内容はソウルフルで艶のある紅一点ヴォーカルをフィーチャーしたウェストコースト風男女混声サイケで、グルーヴィーに転がる明るいオルガンやガレージ・テイストたっぷりの生々しいギターもイイ感じ。エネルギッシュでノリ良いナンバーから気だるくアシッド臭に包まれたナンバーまで、「姉御」な女性ヴォーカルを中心とした色気漂うサウンドはかなり聴き応えアリです。JEFFERSON AIRPLANEやBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYのファンは是非。
ギタリスト/ヴォーカリストDennisとドラムGregのChaplick兄弟、同じくギター/ヴォーカルのJack Sarvisと後にJackの義理の兄弟となるベーシストKen Turikによって結成された米ペンシルバニア州の「親戚」ガレージ・サイケ・バンド。73年に地元のスタジオにて録音され、25枚限定でプレスされたという幻のアルバム。気張らないヴォーカル、マイルドなエレキ・ギターと爽やかなアコギ、モコモコボンボンとしたベースにバタつくドラム。これぞガレージ・サイケ!というアマチュアリズム溢れる演奏ですが、意外にも曲は良い。ファズの効いたギターとスピード感のあるリズム隊が程よい躍動感と脱力感を醸し出すキャッチーなタイトル曲「Backbone Of The Nation」をはじめ、瑞々しいガレージ・ロック/プロト・パンクと自然体のフォーク・ロックが交わったような「和み」のサウンドが非常に癖になります。原盤が$1000超えで取引されているというのも納得の、愛すべき一枚です。
フロリダ出身のガレージ・サイケ・バンドTROPICSのメンバーによって結成されたハード・ロック・バンド。当時4枚のシングル・リリースのみにとどまった彼らの、全シングル音源をまとめた23年リリース盤。1曲目「Carry My Load」からして破壊力抜群!タイトに迫りくるリズムにヘヴィなリフを豪快に絡ませるギター、そして雄々しいヴォーカルに痺れる一曲で、ジミヘンやクリームがお好きなら早くも持っていかれるでしょう。ハーモニカをフィーチャーしたブルース的アーシーさを土台にしたハード・ロック・ナンバーもカッコ良く、米バンドらしい泥臭さはありつつもリズム隊がグイグイと演奏を引っ張っており、常にスピード感たっぷりなのが最高です。カントリー・タッチの爽やかなナンバーも良い出来栄え。比較的コンパクトなシングル8曲ということで収録時間の短さが惜しいところですが、アルバムを残せていれば名盤になっただろう事を予感させるハイレベルな内容です!
70年初頭にジミヘンのトリビュート・アルバム等を制作していたドイツのバジェット・レーベルKenが71年に残したアシッド・ブルース・プロジェクト盤。ミュージシャンのクレジットはありませんが、セッションにはGREENLIGHT、SPHINX TUSHといったハンブルグのバンドが参加していたようです。「Hey Joe」のカヴァーが収録されているなどジミヘン・ライクなヘヴィ・サイケが基本かと思いきや、リリカルなフルートとむせぶサックスがジャジーに絡み合う楽曲があったり、ハモンド&ヴァイオリンを加えたノリノリなロックン・ロール・ナンバーがあったりと、意外にも多彩でプログレッシヴなアプローチを取り入れた内容に驚き。単なるブルース・ロック・アルバムに留まらぬごった煮感と偏屈さは流石ドイツと讃えざるを得ません。さらに最終曲ではレッドゲージ振り切りまくりの轟音ファズ・ギター&並のギターを凌駕するほど凶悪に歪んだエレクトリック・ヴァイオリン(!?)がパワフルなリズム隊と共に暴れ回る狂気の沙汰のようなヘヴィ・サイケ・ジャムが飛び出してきてもう唖然。アングラ・サイケ・マニアはもちろん、コアなジャーマン・ロック好きも是非!
米コネチカット州出身のサイケ・フォーク・トリオ、72年の唯一作。エド・サリヴァン・ショーで見たビートルズの姿に衝撃を受け音楽に没頭し始めたというストーリーの通り、初〜中期ビートルズ的なメロディを持つサイケ・テイスト薫るフォーク・ロックが中心となります。哀愁あるメロディ、線の細いジェントルなヴォーカルのほか、時折サイケデリックに弾きまくるギターにもどこか品があって、全体に英国のバンドのような陰影に彩られたサウンドが印象的です。一方で72年と言うリリース年を考慮してもなかなか懐かしい音となっており、リリースがあと5年早ければもっと注目されていただろうと思わせる一枚です。
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