2015年9月11日 | カテゴリー:そしてロックで泣け! 舩曳将仁,ライターコラム
トム・ニューマン、という名前を聞けば、熱心な音楽ファンが多いカケレコ・ユーザーならばピンとくるはず。そう、彼こそは、マイク・オールドフィールドの名作『チューブラー・ベルズ』のエンジニアを担当した人物である!
と、そんな紹介のされ方ばかりするわけだけど、『チューブラー・ベルズ』以降もエンジニア、プロデューサーという裏方稼業で活躍するほか、現在までにソロ・アルバムも10枚ほどリリースしている。音楽家としても、ちゃんとキャリアがあるのだ!
活動をさかのぼれば、トムは1966年にトムキャッツのメンバーとしてミュージシャン稼業をスタート。トムキャッツはジュライへと進化し、1968年に伝説的なヘヴィ・サイケ・ポップ作『ジュライ』を発表している。ちなみにジュライのトニー・デュイグ、ジョン・フィールドは、後にジェイド・ウォーリアーを結成している。と聞けば、トムもナカナカの個性派ミュージシャンだ、ということがわかってもらえるだろうか。
そのトム・ニューマンの記念すべきソロ・デビュー作『ファイン・オールド・トム』は、1975年にヴァージンからリリースされた。マイク・オールドフィールドのヒット作『チューブラー・ベルズ』『ハーヴェスト・リッジ』でエンジニアを務めたご褒美の意味合いもあったのかも。いやいや、トムにはアルバムにするだけのマテリアルがあったのだ。なにせ、トムは優れた音楽家だから!
『ファイン・オールド・トム』には、ポップな曲からアヴァンギャルド、ジェイド・ウォーリアーを思わせるアンビエントな曲、ビートルズのカヴァーなどなど多彩な曲が収録されている。とっちらかっている感は否めないけど、トムの幅広い音楽性をギュッと詰め込んだものになっている。
「サッド・シング」は、その中でも彼のポップ・センスが活きた曲。まずは聴いてもらいましょう。
「えっ? どこが泣ける曲?」と、そう思ったはず。弾むようなテンポは軽快だし、自分の太ももなんかを叩いて出したというリズムもホノボノしている。マイク・オールドフィールドが弾くギター・フレーズ、ジョン・フィールドが吹くフラジオレット(木管楽器)の、どこか外したようなヘタウマ・フレーズもキュートだ。何よりトム自身のヴォーカルがトボケすぎ! そう、全部ひっくるめて、「サッド・シング」は、スットボケているのだ。
では、と歌詞を見てみると、いわゆる自問自答系ラヴソングとなっている。
「君がいなくなったらどんな感じになるか考えてみる。いや、君なしなんてありえない。二人にとって、一緒にいることが習慣になっていて、一緒じゃないと不安定になってしまう。
終わりを意識し始めると悪い方向へ向かう。一緒に始めた最初の頃は幸せだったけど、途中から愛は滑り落ち、スマイルのある生活は今では寓話のようになってしまった。
人生の韻文は今は全く良くない。愛は単なる惰性となってしまった。でもサヨナラを言うのは良くないこととわかっている。だから歌を書いても悲しい歌になってしまうんだよな…」
こうしてみると、とても繊細なことが歌われていることがわかる。彼と彼女の関係は切れているわけではない。でも、いつのまにか互いに慣れてしまった。二人でいることが惰性になってしまった。彼はこれではダメだ!と思っている。でも別れてしまうのは良くないこと。彼女なしでは生きていけない。でも、このままの状態でも良くない。ああ、どうすれば…。
いってみれば、倦怠期を打開できない男の歌なんだけど、彼は「どうにかしたい」と思っている。そこが情けなくも、切ない。揺れ動く彼の気持ち。どうあったって悲しい歌い方になってしまうトホホな気持ち。それが「サッド・シング」で歌われている。
この妙にスットボケた曲調は、その情けない気持ちをグッと強調する。もちろん、それがトム・ニューマンの狙いだろう。手づくり感のあるアレンジが、ギター・フレーズやフラジオレットのトボケタ響きが、トム・ニューマンの朴訥とした歌が、「俺って、情けないよな……」って気持ちをスーッと掬いあげてくれる。
「情けない」って気持ちは、恋をしていたら何度も経験するもの。僕だって思い返すと、「あの時こうしとけば!」とか「何であの時あんなこと言うたんや!」みたいな、今思い出しても顔が恥ずかしくなるような経験は数多い。いやあ、今もあるからね。いつまでたっても未熟ですわー。
で、そういう「情けないな、俺」って気持ちに、トム・ニューマン「サッド・シング」は強く訴えかけてくる。それで、「みんな情けないもんなんだよ。笑い飛ばして何とかしようぜ!」って気にさせてくれる。
これまでに何度聴いたか、何度口ずさんだかわからない。だって、いい大人になっても、「情けない」と思わされることが多いからね、ほんとに! そんな人にはギュッと抱きしめたくなる、愛すべき曲になるはず。
「サッド・シング」はオリジナル盤だとアナログB面1曲目に収録。95年にヴォイスプリントから再発CD化された際には、アルバムの1曲目に収録されていた。トムにとっても自信作ということだろう。わかりやすいようでいて奥が深い。ホロリと泣けるイイ曲です。
それでは、来月もロックで泣け!
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