9月9日に六本木Billboard live東京で行われた、ネクターの初来日公演を見てまいりました。オリジナル楽曲の動画を交えつつ、その模様をお伝えしてまいります!
来日メンバーはこちら。
ネクターはドイツのハンブルクで結成され、以来ドイツを拠点に活動を続けてきたグループなのですが、結成当時のメンバーは全員が英国人。その実態は生粋のブリティッシュ・プログレ・グループだったんですよね。サウンド的にもイエスにハードロック由来の泣きを加えたようなスタイルを基本に持っており、作品ごとに様々な要素を取り込んでいくプログレッシヴな姿勢と同時に、英国的な端正な叙情性もしっかりと堪能させてくれるグループなのです。
今回の来日メンバーは、RoyeとRonが結成当時より在籍する英国人メンバーで、KlausとLuxは00年の再結成以降加入したドイツ人メンバーとなります。
本公演の目玉は、やはり何と言っても日本でも最も人気の高い75年の代表作『Recycled』のA面に当たる傑作組曲の再現!誰もが最も生で聴きたいナンバーであろうこの曲が再現されるとあっては、ネクターファンにはたまらないでしょう。他にも新旧の名曲が披露される予定となっていました。
この日はあいにくの大雨となりましたが、ビショビショになりながら会場に到着すると、すでに足を運んでいた観客で会場はほぼ満員。欧米でいまだ高い人気を誇るこのビッグネームの初来日公演への期待の高さが伺えます。
開演の19時を回り、メンバー達が登場!花柄のシャツにハットを被りヒゲをたくわえた、いかにも陽気そうなKlausを先頭に、各メンバーがステージに上がります。
1曲目は2nd収録のタイトルナンバー「A Tab in the Ocean」です。オリジナル通りのオルガンによるクラシカルな反復フレーズを経て、満を持して一斉に各楽器がダイナミックなアンサンブルへと突入します。その瞬間の音圧のすさまじいこと!メンバーの温厚そうな容姿に若干油断していただけに、一瞬にして彼らが今も現役で精力的に活動するプログレ・グループであることを思い出します。会場上段の比較的離れた場所から見ていたにも関わらず、思わずのけぞりそうになるこの迫力。真ん前に座っていた人の衝撃と来たらそれはもの凄かったはず!
その原動力となっているのが、オリジナルメンバーであるRon Howdenのドラミング。一打一打に確かな重みがこもった、年齢をまるで無視するかのようなパワフルなプレイでダイナミズム溢れる演奏の土台をしっかりと支えます。複雑にリズムが変化する展開が多い彼らの楽曲ですが、一貫して安定したプレイを披露していて、さすがは60年代からキャリアを積んできたミュージシャンだと感じさせる雄姿が感動的です。
ダイナミックな冒頭のインストパートを終え、Royeが歌い始めます。少し粘り気のある声質で叙情的に歌い上げるヴォーカルはまさに当時のまま!ここに来てあのネクターを観ている、という感覚が一気に高まってきます。ギタープレイはさらに素晴らしいもので、冒頭でのいかにもなハードエッジで切れこむようなプレイから、英国叙情をたっぷりと湛えたメロウなタッチのアルペジオまで、一曲の中で次々と表情を変えていく演奏はオリジナル録音に肉薄する見事さ。音色の端々からジェントルな叙情が滲み出していて、思わず胸が熱くなります。この一曲目を聴いただけで、彼らが紛れもなく英国のプログレ・バンドなんだということを強く実感できました。
同アルバムからの「Crying In The Dark」では、持ち前のハード・ロック・テイストが強く出たエネルギッシュなアンサンブルが炸裂!
Royeのギターはバリバリとハードな表情で弾きまくり、会場を一気に熱気で包み込みます。ここではキーボードのKlausも大活躍!時にジョン・ロードばりの手さばきでオルガンを弾きこなす姿がカッコ良かった~。演奏に熱が入ってくると独特の鍵盤を手のひらで叩くようなプレイを見せるのも印象的でしたね。
複雑なリズム変化が印象的なプログレッシヴなハード・ロック・ナンバー「King Of Twilight」。ここではRonのスリリングながらも確かな安定感を持ったリズムワークとLuxのメロディアスかつドライヴ感のあるベースプレイに注目でした。往年のバンドのライヴに付き物と言えるある種の危なっかしさというものが彼らの場合は皆無で、結成以来ライヴ演奏でたたき上げてきたそのキャリアを証明するような貫録溢れるパフォーマンスに、ネクターが生粋のライヴ・バンドであることを改めて感じさせます。
2nd『A Tab in the Ocean』からのナンバーを中心に4~5曲演奏した後、後半はいよいよ「Recycled」組曲が披露されます。ハイテンポでリズムが刻まれ、スペイシーなシンセがトーンをウネウネと変幻自在に変化させていくなかを、ギターがスピーディーに駆け抜ける冒頭のスリリングな展開には、わかっていながらも大興奮!先程までとはスケール感がまるで違う圧巻の音空間に、会場全体が飲み込まれます。Royeがあの印象的なメロディを目一杯歌い上げるのを聴いていて、思いがけず感動でいっぱいになっていまいました。若干キーを下げてはいるものの、オリジナルメンバーの演奏によって名曲を生で聴ける体験というのはやはり格別です。
無機的なシンセのパターンが空間を支配すると、ギター&シンセの激しいぶつかり合いが展開されます。サイケ・ハード調の歪んだギターと凶暴にうねるシンセが火花を散らすここのパートのカッコよさは全くオリジナル通りでした!ラストの大団円へ向けて各楽器が一つとなって走り抜けていく展開も素晴らしかったな~。
生で聴いていて、改めて非常に構成がよく練られた、70年代のプログレ・シーンにおいて屈指と言える名組曲であることがひしひしと感じ取れました。
圧倒的な世界観を見せつけた組曲の演奏が終わると、会場は割れんばかりの拍手で包まれます。正直ここまでオリジナルに近い形で演奏されるとは思わなかったので、感動もひとしおでした~。
英国のバンドなのかドイツのバンドなのかという立ち位置が微妙な彼らですが、生で体験したそのサウンドは、俺たちゃ生粋のブリティッシュ・プログレ・バンドなんだぜ!と言わんばかりの英国らしい叙情性に溢れているように感じられました。
これまで見た「往年の名バンド」の中でも、最高峰といえるクオリティの高いプレイを披露してくれたネクター。さすが00年以降第一線で活躍を続けている現役バリバリのグループです。約80分のステージの中で、ネクターの持ち味を存分に発揮した素晴らしいパフォーマンスを楽しませてくれたと思います。
素晴らしいひと時をありがとうネクター!またの来日を心待ちにしています!
all photos by jun2
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盤質:無傷/小傷
状態:良好
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