2013年5月2日 | カテゴリー:ライヴ・レポート,世界のロック探求ナビ
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こんにちは!カケレコ・スタッフ佐藤です。
4月26日より3日間にわたって開催された「イタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァル 2013」。
11年より開催され、今年最終章を迎えた本フェスですが、その最終章を飾るにふさわしい6組のバンドが熱演を繰り広げてくれました。
本日はその最終日に登場した、MAURO PAGANIとAREAのライヴレポートをお届けいたします!
マウロ・パガーニはご存知の通り、イタリアン・プログレの代表格P.F.M.に所属したヴァイオリン/フルート奏者です。今回のステージでは、そのP.F.M.在籍時のナンバーも披露してくれるとのこと。これは本家P.F.M.とは一味も二味も違った彼ならではのP.F.M.サウンドが聴けること間違いなし!俄然期待が膨らみます。
メンバーは、パガーニと若手のドラマー、キーボーディストの3人。幕が上がると、向かって左側にパガーニの姿が!
70年代当時の彼が40年後にはこんな姿であってほしいと思うそのままの、スマートで若々しい姿に思わず感動してしまいました。その知性とカリスマ性を感じさせる佇まいにしばし釘付けとなります。
彼の周囲にはヴァイオリン、フルート、ギター、ギリシアの弦楽器ブズーキなどが置かれており、これから展開される異国の音楽に対する期待が次第に高まっていきます。
ついに演奏がスタート。1曲目は1stソロ収録のヴァイオリン独奏曲「Violer D’amores」。パガー二による、激しくも格調高いヴァイオリンの音色が会場に響き渡ります。う?ん、このCDよりも生々しくダイレクトに心の琴線を震わせる音色は、まさにライヴならでは。絶品です!
バンド演奏になると、変拍子を自在に操るドラム、キーボードともにテクニシャンぶりを発揮。
ソロ作から続けて2曲を演奏したあと、「みんな、この曲覚えてるかな?」という言葉とともに始まったのが、P.F.M.初期の代表曲の一つ「Il Banchetto」。一気に会場が沸き立ちます!爽やかなメロディーラインが魅力的なこの曲を、ギターとフルートを巧みに持ち替えて演奏するパガーニ。マルチ・プレイヤーぶりを遺憾なく発揮します。
そう言えば70年代当時には、メンバー全員がだいたい同じレベルでそれぞれの楽器を演奏できるというような発言がありましたが、それも彼の演奏をこうして間近で聴いているとなるほど十二分に実感出来ます。
そんなことを思っていると、中間部のインスト・パートへ差し掛かったところでふいにメランコリックなアコギの旋律が・・。始まったのがなんとクリムゾンの名曲「Moon Child」!思ってもみなかった展開に驚きと歓喜に包まれる会場。P.F.M.の初期作からも覗えるクリムゾンへのリスペクトが反映された選曲に、思わず嬉しくなってしまいます。切なく甘いパガーニのヴォーカルにしばし酔いしれる客席。
その後はパガーニがメインの楽器をブズーキに、キーボードはアコーディオンに、ドラムはパーカッションにそれぞれチェンジし、本格的な民族エッセンスを取り入れた演奏がスタート。
陽光が水面にきらめく地中海の情景をそのまま切り取ったようなあまりに情緒豊かなアンサンブルにもうノックアウト。P.F.M.とも縁のある故Fabrizio De Andreのナンバー「A Dumenega」も披露してくれました!これは泣ける?!
終盤にも素朴で温かみ溢れるバラード曲「Dolcissima Maria」や「ハンスの馬車」などP.F.M.ナンバーで楽しませてくれます。ヴァイオリンのあまりにセンチメンタルな音色に、ここでも思わず目頭が熱くなります。
そしてついに1stソロのオープニングを飾る「Europa Minor」が登場!あの緊張感みなぎるヴァイオリン・リフが鮮烈に響きます。ここまでほとんど座って演奏していたパガーニですが、ここでは立ち上がり激しい動きで弾きまくります!カ、カッコイイ?!
P.F.M.脱退後のある種孤高とも言える活動スタイルから、個人的には気難しい人ではないかというイメージを持っていたのですが、曲の合間合間に気さくに観客へ向かって話しかけていたのが印象的でした。そんな人柄にますます惚れ込んでしまいます!
アンコールではP.F.M.の「E’Festa」も登場。賑々しく華やかなアンサンブルに、自然と体がリズムを刻み始めます。CDではそれこそ何度も何度も聴いたこの曲ですが、ライヴならではの高揚感を纏うとその響きはやはり格別なものです。
テクニカルなジャズ・ロックと地中海音楽をはじめとする民族音楽のエッセンスを融合させた、彼独自の世界観をこれでもかと堪能させてくれました。いや?そのお姿も演奏もほんと素晴らしかった!是非また来てほしいものです。ありがとう、マウロ!
そして第2部はアレアです。メンバーは、キーボードのPatrizio Fariselli、ベースのAres Tavolazzi、ギターのPaolo Tofaniの結成時のオリジナル・メンバー3人に、故Giulio Capiozzoに匹敵する技巧派ドラマーWalter Paoliを加えた4人編成。
今年リリースされた現メンバーによる12年ライヴ作で、その切れ味鋭いテクニカル・ジャズ・ロック・アンサンブルの健在ぶりは確認しています。あれが目の前で楽しめるのかと思うと、開演前から興奮とワクワクが抑えられません。
幕が上がると、ステージ上には高さ50cmほどの台が設置されており、その上にただ一人胡坐をかきギターを抱えて鎮座する人物。まるでインドのシタール奏者のような佇まいのパオロ・トファーニです。
1曲目は「Trikanta Suite」。電子的なリズムパターンの中をまさにシタールのごとくうねる前衛的なギター・サウンドが、会場を異様な空気で包んでいきます。
電気処理を駆使した故デメトリオ・ストラトスを髣髴させるヴォイス・パフォーマンスも披露され、これが紛れもなくアレアのライヴなのだとこの時点で実感。このオープニング曲、物凄いインパクトでした!
他のメンバーが登場し、一気にパワフルなジャズ・ロック・アンサンブルへ突入します。1stのタイトル曲「Arbeit Macht Frei」からもう悶絶モノ!
グランドピアノに上にシンセを乗せたキーボード・セットで軽やかにジャジーなフレーズを紡ぐパトリツィオ、胡坐をかいたまま一心不乱に弾きまくるパオロ、切れ味抜群の変拍子リズム・セクション。とにかく70歳にも届こうかという人間たちの出せる音ではありません。
パトリツィオのピアノとパオロのギターがまるで威嚇し合うかのように、コミカルな掛け合いを聴かせるパートも見事。終止物凄い音数のアンサンブルであるにもかかわらず、随所に遊びを入れてくるこの余裕たっぷりな感じが、彼等の単にテクニカルなだけではないミュージシャンシップの高さを物語ります。
2ndの1曲目「Cometa Rossa」での、シンセを中心としたスピーディーなアンサンブルの切れも半端じゃありません!この曲もオリジナルを凌ぐほどスリリングに聴かせてくれました?。
注目は終盤で演奏された名曲「オデッサの林檎」でのパオロのヴォイス・パフォーマンス!これがもう壮絶そのもの!観客を激しくアジるような唱法に、かつてのデメトリオの姿が重なります。こんなのはアレア以外では絶対に聴けません。
「オデッサの林檎」が終わり興奮冷めやらぬ中、パトリツィオが通訳の方を呼んで話し始めます。これからある中東の国の祖国を追われた人々のことを歌った曲を演奏すること、その民族には代々親が子にかつては存在した自分の家の鍵を託す風習があるということ、そしてその曲を演奏する間自分の持っている家の鍵を鳴らしていて欲しいということ。
一斉にシャラシャラッと鍵を鳴らす音が会場中に鳴り渡ります。そんな中聴こえてくるのが、ヘブライ語による女性の朗読。「7月8月9月黒」が始まります。歓声が沸き起こり鍵の音が止まると、耳に手を当てて「聞こえないぞ?」というジェスチャーをするパトリツィオ。また鍵が鳴りはじめると、それに応えるようにあのエキゾチックなシンセフレーズが高らかに鳴り響きます。
爆発的なテンションでなだれ込むエスニック・ジャズ・ロック・アンサンブル。デメトリオのヴォーカルメロディーをなぞるピアノ。中間部の渦を巻くような混沌から次第に秩序が戻ってくるあの瞬間の素晴らしさと言ったらありません!この曲をCDで初めて聴いたときと同じく、最後まで鳥肌の連続でした!
そして最後の最後で素晴らしすぎるサプライズが!アンコールで再登場したアレアの面々とともにステージに姿を現したのが、マウロ・パガーニその人です!その日一番の大歓声が沸き起こります。これは興奮せずにはいられません!!
3rd『Crac!』に収録のアコースティカルなナンバー「Gioia e Rivoluzione」に、パガーニのフィドル調の軽快なヴァイオリンが舞い踊ります。これはもう夢の共演と言っていいひと時。この瞬間に立ち会えたことを幸せに感じずにはいられません。
3rdアルバムでこの曲を歌うデメトリオの楽しげなヴォーカルが思い起こされます。きっとデメトリオもジュリオも40年を経てこんなにも活力に満ちたステージを披露している彼等のことを喜んでいてくれることでしょう。
演奏が終了し大歓声が巻き起こる中、アレアのメンバーとパガーニが肩を組んで観客にお辞儀をする姿に、とめどなく感動がこみ上げてきます。
そんなわけで、最終日のステージも大きな感動とともに幕を閉じました。
3日間にわたって名演を繰り広げてくれた6組のバンドたち。それぞれのバンドが自分たちにしかない魅力を最大限に引き出して、最高のステージを提供してくれました!何物にも代えがたい時間を過ごさせてくれたバンドたちに改めて感謝したいと思います。皆さん、本当にありがとう!!
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