2022年5月16日 | カテゴリー:カケレコ、先週コレ売れてます!,世界のロック探求ナビ
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前週に注目度の高かった新品タイトルをランキング形式でご紹介させていただいている、『カケレコ、先週コレ売れてます!』のお時間です。
5月9日から5月15日の一週間に耳の肥えたカケレコリスナーの皆さまから熱い視線を受けた作品達、どうぞご視聴ください!
Patrick Dufour、Fabrice Chouette、Frederic Chaputの実力派マルチ・プレイヤー3人により結成、2015年と18年に完成度の高いアヴァン・プログレ作品をリリースしたことでプログレ・ファン注目の存在となっているフランス新鋭、待望の22年作3rd!あのMINIMUM VITALのJean-Luc Payssan(g)がゲスト・プレイヤーとして、Thierry Payssanがマスターなど制作にかかわっています。1曲目から早くもかなり素晴らしいです。このサウンド、例えるなら1stアルバムをレコーディング中のPICCHIO DAL POZZOに、KING CRIMSONがメロトロンを持って飛び入り参加したかのよう!メロトロンがジョワァ~とファンタジックに高鳴る中を、フルート(おそらくメロトロン)とオルガンがリリカルに絡む美し過ぎるアンサンブル。それが突如鋭角的なリズムとともに緊張感を増し、クリムゾンが顔を出します。その間もミステリアスに浮遊するシンセのプレイがいかにもなフレンチ・プレグレっぽさを付与。不意に演奏が静まると、今度はエレピが淡く揺らめきオルガンがメロディアスに歌うPDPそのものな神秘的音空間へ。オルガンのプレイにはDave Stewartが感じられ、従来作と同じくNATIONAL HEALTHからの影響も見え隠れします。終盤はタイトでリズミカルな躍動感と共にスリリングに疾走するキーボード群が痛快。ここはまさしくMINIMUM VITALでしょう。10分余りの中で目まぐるしく変化する変幻自在すぎるサウンドにノックアウト必至です。よりカンタベリーな芳醇さを増していく以降の曲も勿論絶品。メロディアスな中にもアヴァンギャルドなタッチをまぶした演奏は、HATFIELD & THE NORTHファンなら堪らないでしょう。4曲目でのJean-Luc Payssanによる多彩なギター&マンドリンのプレイも聴き所です。さすが、見事に期待を上回ってくる傑作!
試聴は下記ページで可能です!
https://alcofrisbass.bandcamp.com/album/le-mystere-du-gue-pucelle
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70年代の楽器と見なされている節があるメロトロンですが、プログレにおいては現在も現役バリバリの楽器であることはご存知でしょうか。今回は、そのあたりが実感していただけるメロトロンが溢れまくりの新鋭プログレ作品をご紹介してまいりましょう~。
06年に結成されたフランスの新鋭シンフォ・グループによる22年作。ファンタジックに駆けるシンセとザクザクしたヘヴィなギターのコンビネーションが織りなす、シンフォニック・メタル調のスケール大きなアンサンブルがまず魅力です。そこに歌を乗せるフランス語の女性ヴォーカルは、姉御タイプの力強い歌唱でダイナミックな演奏と渡り合っていて見事。仏語voでは珍しいパワフルな歌唱も相まってどちらかと言うとスペイン語のように聴こえるのが印象的で、そのためチリあたりの南米女性voシンフォのような野性味ある聴き心地を感じさせるのが面白い所です。でも抑えた叙情的なパートでは、さすがフランス語の耽美な響きを生かしたロマンティックな表情が生きていて、この硬軟の対比の巧みさは特筆すべきでしょう。とにかく女性ヴォーカルも巻き込み圧倒的なスケールと質量感で押し寄せるサウンドが素晴らしい一枚!
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71年結成、90年代初頭にかけて3枚のアルバムを残すジャーマン・プログレ・バンドによる77年のデビュー作。これは素晴らしい作品!変拍子を多用した硬質でテクニカルな『こわれもの』YESばりの演奏に、一聴してGENTLE GIANTからの影響と分かるマドリガル調の複雑なコーラスが乗る凝ったサウンドはかなりの完成度で驚かされます。手数多めの技巧的なドラミング、スクワイア彷彿のブンブン唸るベース、荘厳な聴き応えを持つオルガン、そしてクラシックにも通じていそうな流麗なフレージングを聴かせるギター。音数多く込み入っているものの一糸乱れぬアンサンブルは、ドイツのYES/GGタイプとして間違いなく最高峰のレベルにあると思います。傑作!
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74年に制作されながらお蔵入りとなったドイツの4人組による幻のデビュー作。オープニング・ナンバーから、こ、これは、何という素晴らしさ!まるでクレシダとジェネシスとが出会ったようなサウンドは、とても未発表作とは思えないクオリティ。溢れる叙情的なメロトロン、淡いトーンのハモンド・オルガンを中心に、スティーヴ・ハケット的なギターがドラマを描き、リズム・セクションが、時にジャジーに、時にキメのパートでのジェネシスばりにタイトかつアグレッシヴに引き締め、そして、ヴォーカルがまるでジェントルに歌う時のピーター・ハミルのような歌唱で全体に陰影をつける。英カリスマやヴァーティゴの作品のファンなら拳を握りしめること間違いなし。これはオススメです。
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87年結成、92年にデビューしたフランスのシンフォ・グループ。結成30周年を記念した17年ライヴの模様をCD&DVDで収録した21年リリース作。当時最新作だった15年作『LA DAME DE BRAISE』からのナンバーを中心とした内容で、『LA DAME…』が題材とした魔女狩りが横行した中世フランスの世界観を、GENESISやANGEを受け継ぐシアトリカルでドラマティックなサウンドでこれでもかと耽美に描くパフォーマンスに圧倒されます。メロトロンもフィーチャーし中世ロマンを湧き上がらせるキーボード群と、これでもかと泣きまくるギターの対比があまりに劇的なアンサンブル、そこにChristian Decampsばりの濃厚なフランス語ヴォーカルが乗り、これぞフレンチ・プログレ!と言いたくなるサウンドが終始繰り広げられていて素晴らしいです。MCまでもパフォーマンスじみて聴こえてくるほどに幻惑の音空間と化したステージが堪能できるオススメ作品です。
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ロニー・バロンはニューオリンズ出身のピアニスト。同郷のドクター・ジョンとの仕事で知られます。その他、ライ・クーダー、トム・ウェイツ、キャンド・ヒートといったミュージシャンの名盤に参加したり、ポール・バターフィールドのベター・デイズでも活躍。本作はベター・デイズに加入する以前、71年にリリースされたソロ1stです。1曲目からグルーヴィーで熱いサウンドが炸裂。粘っこい演奏に弾むピアノに、ドクター・ジョンほどダミ声ではないものの同じように貫禄あるヴォーカルが熱くのります。意外にもホーンがそれほど使われておらず、オルガンやギターが活躍していてロック要素が色濃いのも魅力。ドクター・ジョン好きの方はもちろん、米ルーツ・ロック好きに広く聴いて欲しい米ルーツ・ロックの名作です。
名実ともに北欧を代表するシンフォニック・ロック・グループ、5年ぶりに届けられた22年14thアルバム。19分、15分という2つの大作を収録した気合いの入った内容となっています。冒頭の19分のナンバーから早くも感動。Hans Lundinの幽玄なるシンセをバックに、Patrick Lundstromがフレディ・マーキュリーを思わせる力強くも厳かなヴォーカルを響かせるオープニング。次第にシンセが艶やかな色彩を帯び躍動し始めると、それにPer Nilssonが優美で滑らかなギタープレイで応じ、一転リズムを得てダイナミックに演奏が動き出します。この開始3分でKAIPAの揺らぐことのないイマジネーション溢れ出す音世界に惹きこまれること必至。TFKでも活躍するJonas Reingold&新加入でMartin BarreやFROST*の作品に参加するドラマーDarby Toddによる重量感あるタイトなリズム・セクションが、キーボードやギターの天上に浮遊するような幻想的な演奏をしっかり地上に繋ぎとめているのも特筆です。Patrickとの熱いデュエットを中心としつつ、時には持ち前の美声を生かしソロでも歌うAleena Gibsonのパフォーマンスにも注目。そして前作でも感じましたが、Roine Stoltという偉大なる前任者とは全く異なるアプローチで北欧プログレ然としたギターサウンドを確立したPer Nilssonのプレイは特に圧巻の一言で、随所にメタル出自を感じるテクニカルな速弾きを交えつつも決してヘヴィにならず一貫して幻想感たっぷりのデリケートなタッチを保ち続ける演奏は必聴です。もう一つの大作である15分の最終曲はTFKファンに聴いて欲しいスケールいっぱいでエッジも効いた快作。アルバムを出すたびに再結成後の最高作かと思ってしまうクオリティを誇っている2010年代以降のKAIPAですが、今作もそう言ってしまいたい出来栄えの傑作です!
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2019年結成、フランスのキーボード・トリオ編成のシンフォ・グループ、7パートからなる43分の組曲を収録した22年デビュー作。EL&Pタイプのアグレッシヴなキーボード・プログレに、PINK FLOYDのメランコリックでミステリアスに広がる奥行き感を加えたようなスタイルが魅力的です。シンセが陰鬱に広がる空間的な音作りをバックにして、カッチリとタイトで硬質なリズムが刻まれ、多彩なキーボードがダイナミックに躍動。ジャズの洒脱さとクラシックの気品を合わせた流麗なピアノ、時に『TARKUS』も彷彿させるダイナミックにうねるシンセ、そしてヴィンテージな味わいたっぷりに鳴らすオルガンなど、荘厳にもリズミカルにも自在に変化する華麗なプレイで耳を奪うキーボーディストは、Keith Emmersonの遺伝子を確かに感じる逸材です。ベーシストが兼任するトランペットの哀愁を帯びた響き、プログレらしい厳粛な聴き応えを持つヴォーカル&コーラス・ワークも素晴らしい。往年の英プログレを下敷きにしつつ、モダンで洗練された聴き心地の良さも備えたかなり完成度の高い一枚!
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ジャズ・ドラマーとして10年以上のキャリアがあり、アメリカのジャズ・メンのヨーロッパ・ツアーを数多くサポートしていたというドラマーKlaus Weiss(NIAGARAでも活躍)を中心に、71年に結成されたジャーマン・ジャズ・ロック・バンド。73年作2nd。ラテン・フレイヴァーあるドラムやパーカッション、2人の奏者によるフレーズが柔らかに交差したゆたうフルート、同年『6th』をリリースしたソフト・マシーンを彷彿させるミニマルなオルガンやエレピ。ポップでオシャレなモンド・ジャズを軸に、ここぞでは、カンタベリーにラテン・フレイヴァーを加えたようなジャズ・ロックを聴かせます。スペインはバルセロナのジャズ・ロック・バンドにも通じるセンスの良さ。ジャズ/ジャズ・ロック/フュージョンのファンはもちろん、全編でフルートがフィーチャーされてるので、フルート好きにもオススメです。
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CHICKEN SHACKのスタン・ウェッブ、KEEF HARTLEY BANDのミラー・アンダーソンを中心としたグループ。75年作。重く粘っこいグルーヴがなんとも心地よい激渋スワンプ・ロック。レゲエやファンクのリズムも導入しつつも軽さは皆無で、終始アクの強いアンサンブルが印象的。
「カケレコ、先週コレ売れてます」は毎週ほぼ月曜日の夕方更新、今週の注目作は来週の月曜日にご紹介させていただきます!
それではまた来週~!
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