2022年6月13日 | カテゴリー:カケレコ、先週コレ売れてます!,世界のロック探求ナビ
タグ:
前週に注目度の高かった新品タイトルをランキング形式でご紹介させていただいている、『カケレコ、先週コレ売れてます!』のお時間です。
6月6日から6月12日の一週間に耳の肥えたカケレコリスナーの皆さまから熱い視線を受けた作品達、どうぞご視聴ください!
スウェーデンを代表するKey/管弦楽器奏者Bjorn J:son LindhやQUATERMASS~HARD STUFFのJohn Gustavsonらによるプロジェクトで73年に唯一作を残したBALTIK。そのメンバーだったB.J.Lindh、John Gustafson、Jan Schaffer(g)らに、Gustafsonの盟友Peter Robinsonが合流して結成されたジャズ・ロック/フュージョン・グループ、74年唯一作。全楽器が圧倒的なテンションと音数でスリリングに疾走するド派手なジャズ・ロックは、かなり明白にMAHAVISHNU ORCHESTRAへの対抗心を感じさせるもの。ガンビア出身ドラマーMalando Gassamaがパーカションも多用し猛烈な手数で捲し立てると、Gustafsonも負けじとキレのあるベースで応じ、その上でSchafferの熱量高いテクニカル・ギターとRobinsonの目にもとまらぬエレピが火花を散らします。凄いのがそこに割って入るLindhのフルート。ギターの速弾きと難なくユニゾンするスーパープレイはさすがの一言です。Ian Andersonばりの唾吐きフルートも決まってます。数あるMAHAVISHNU ORCHESTRA直系ジャズ・ロックの中でも、このテンションMAXの畳みかけは屈指の凄まじさでしょう。英国とスウェーデンの凄腕たちが持ち前のテクニックを存分に披露したジャズ・ロック痛快作!
【関連記事】
マハヴィシュヌ・オーケストラの1st『内に秘めた炎』を起点に、マクラフリンばりの知的で狂暴なギターが聴けるアルバムを探求♪
サックス/フルート奏者やメロトロンを操るドラマーら5人編成のオーストラリア産ジャズ・ロック/ジャズ・ファンク・バンドによる78年唯一作。緻密に刻みまくるドラミング、スティーヴ・ハウばりに前のめりで疾走するギター、流麗に舞うエレピ、オリエンタルなフレーズをギターとユニゾンするサックスらが一斉に飛び出す1曲目から、来た来た来たー!という感じです。ひたすらテクニカルに畳みかける前半はもちろん、浮遊感あるシンセを得て爽やかでファンタジックな演奏へと色合いを変えていく後半も素晴らしく、ARTI E MESTIERIを明るくしたようなサウンドは全ジャズ・ロック・ファン必聴レベルでしょう。1曲目後半のファンタジックさを引き継ぐ美しいフュージョンを聴かせる2曲目も最高で、クラシカルなピアノとソリーナに切なく歌うヴァイオリン奏法のギターによるリリカルな演奏が感動的。サックスが添える哀愁味もいい味です。この冒頭2曲だけでもジャズ・ロック・ファンならガッツポーズ必至ですが、後半にはヴォーカルをフィーチャーしたお洒落なフュージョン曲、ラストには芳醇なクラシック・ギター独奏曲も収録されており、多彩さでは数あるジャズ・ロック・バンドでも有数ではないでしょうか。こんな素敵すぎるジャズ・ロックがオーストラリアの地に眠っていたとは。文句なしの大傑作!
【関連記事】
欧米各国の「ど」がつくマイナープログレを発掘リリースしている注目の新興レーベルPAISLEY PRESS。リリース作品を一挙ご紹介!
スウェーデン出身、トランペット奏者、リズムギター兼フルート奏者を擁する5人組プログレ・グループの72年唯一作。この一筋縄ではいかないジャジー&ブルージー&ファンキーなプログレはかなり個性的。重いギターリフを主体とする反復にキレのあるトランペットが絡みつくサウンドが妙にカッコいい1曲目から他に例えようのない印象。続く2曲目は、北欧プログレ作品の多くに1曲は入っている民謡的ないなたさをベースにした民族色溢れるナンバー。1曲目の続きのようなヴォーカル入りの3曲目を経ると、4曲目はギターがドライヴ感満点に弾きまくる痺れるハード・ロック。この影響元が容易にはつかめない作風はとにかく孤高。随所に現れる硬質なトランペットと軽やかなフルートがユニゾンするパートは独特で面白いし、英語で歌うヴォーカルは英ロックに通じる哀愁を孕んだジェントルな歌声が堪りません。曲者感ぷんぷんのジャケット通りの内容と言えそうな北欧プログレの超ニッチ盤!
水谷公生(g)、柳田ヒロ(key)、布施明(vo)、市原宏祐(sax/flute)などによるグループ。71年作。頭に浮かんだのが、KING CRIMSON「太陽と戦慄」 meets CAN「EGE BAMYASI」。剥き出しの攻撃性、破壊的なエネルギー、硬質なグルーヴ、ぶっ壊れているようで整合性が感じられる熱くクールな音質。暴力性と理性が絶妙にバランスした圧倒的に緊張感溢れるサウンドを聴かせています。しかも驚くべきは、クリムゾンよりもカンよりも先にリリースされていること。日本のジャズ・ロック/プログレの歴史的傑作。これはぶっ飛びます。
ブラジルのジャズ・ロック・グループMONTAUK PROJECTに在籍するキーボーディスト/コンポーザー/プロデューサーAlexandre Maraslisによるプロジェクト、21年デビュー作。浮遊感たっぷりのファンタジックなシンセとヴィンテージ・トーンでアグレッシヴに疾走するオルガンを軸に、メロディアスで泣きも織り交ぜたギターや何となくJon Andersonに似る厳かな女性ヴォーカルもフィーチャーしてスケール大きく展開するテクニカル・シンフォは素晴らしい完成度。ジャズの素養を感じさせるタイトでスリリングなリズム隊のプレイも聴き所です。ELPファンやYESファンにオススメしたい1枚!
初期FLEETWOOD MACで活躍したギタリスト/SSWが、バンド脱退から2年後の75年にリリースした1stソロ作。ロック/フォーク/トラッド/カントリー/ウェストコースト風など多彩な曲調を配した中にも、一貫して英国的な気品が香り立つサウンドが堪らない一枚です。特に冒頭3曲の流れは素晴らしく、軽快なフィドルがリードする賑々しいカントリー・タッチに胸躍るM1、ピアノや管楽器が楽しげに踊るリリカルなフォーキー・ポップのM2、そしてストリングスが彩る甘くロマンティックな曲調とハートフルな歌声&ギターソロにグッとくる名曲のM3と、実直でどこまでも優しい音世界に惹きこまれます。管弦が活躍しますが全然大仰にはならず、ハンドメイド感いっぱいのサウンドがかえって良い味わいを出してます。ギタリストの作品ながらあくまでアンサンブルの一員に留まる控えめな立ち位置にも何だか人柄が現れているようです。これほど「愛すべき」という言葉を付けたくなるブリティッシュ・ロック作品はありません。名作!
06年に結成されたフランスの新鋭シンフォ・グループによる22年作。ファンタジックに駆けるシンセとザクザクしたヘヴィなギターのコンビネーションが織りなす、シンフォニック・メタル調のスケール大きなアンサンブルがまず魅力です。そこに歌を乗せるフランス語の女性ヴォーカルは、姉御タイプの力強い歌唱でダイナミックな演奏と渡り合っていて見事。仏語voでは珍しいパワフルな歌唱も相まってどちらかと言うとスペイン語のように聴こえるのが印象的で、そのためチリあたりの南米女性voシンフォのような野性味ある聴き心地を感じさせるのが面白い所です。でも抑えた叙情的なパートでは、さすがフランス語の耽美な響きを生かしたロマンティックな表情が生きていて、この硬軟の対比の巧みさは特筆すべきでしょう。とにかく女性ヴォーカルも巻き込み圧倒的なスケールと質量感で押し寄せるサウンドが素晴らしい一枚!
【関連記事】
フレンチ・プログレの傑作CARPE DIEMの2ndから、幻想のフレンチ・プログレ名盤を探求します!
グレン・キャンベルのバックでバンジョー奏者として活躍した米SSW/ギタリストが、英国に渡って制作した71年作2nd。バックを務めるのは英国のミュージシャンで、アンドウェラのデイヴ・ルイス(g)と、デヴィッド・マクドゥーガル(p/organ)が参加しています。注目は後半のアンドウェラ『PEOPLE’S PEOPLE』からのカヴァー3曲。軽やかなアコギのイントロで始まる「Mississippi Water」はオリジナルよりカラっとした雰囲気になっていますが、バックに流れる陰りあるオルガンが英国情緒を醸し出しています。途中では挟まれるラリー・マクニーリのギター・ソロも聴きどころ。滑らかで流麗なフレーズが、デイヴ・ルイス作の叙情的なメロディーをより際立たせていてグッときます。疾走感あるカントリー・ロックやメランコリックでなフォーク・ロックなど前半のオリジナルも良いし、これは英米ルーツ・ロックが良い塩梅で溶け合った名作!
ジミ・ヘンドリックス『エレクトリック・レディランド』への参加や、デイヴ・メイスン、CS&Nのサポートなどで知られる名キーボード奏者でありSSWマイク・フィニガンが、ギタリストのジェリー・ウッドと制作した72年唯一作。マイク・フィニガンは76年にメロウなスワンプ・ロック作をリリースしていますが、本作はファンキーなスワンプ・ロック作です。ホーンや女性バックコーラスが随所で盛り上げていて軽快なピアノはもちろんごきげんなスワンプ・ロックを聴かせます。メロウなマイク・フィニガンとは対照的なしゃがれたジェリー・ウッドのヴォーカルも良い味出しています。
イタリア、ヴィンテージなサイケ・ハード・バンドWICKED MINDでも活動するオルガン奏者Paolo “Apollo” Negriを擁する新鋭バンドによる22年デビュー作。冒頭から70年代初頭の香りがプンプンするオルガン独奏に期待が高まります。そのオルガンが不意に歪んだと思うと、リズムが食らいつき、ゴリゴリと疾走するDEEP PURPLE直系オルガン・ハードが飛び出して思わずガッツポーズ。パンクを歌っても様になりそうな、エネルギッシュだけどどこかやさぐれた英語ヴォーカルも堪りません。とにかくオルガンの良い音を聴かせてやる!と言わんばかりにオルガン・オリエンティッドな演奏が魅力で、シンセやメロトロンが鳴るパートもありますが、リフもソロもほぼヴィンテージ・トーンのオルガンによる独壇場。それに伴いギターはオルガンのサポートとしてほとんど終始バッキングに回っているのも面白い特徴でしょう。さながらジョン・ロードが暴君のごとく君臨するDEEP PURPLEと言ったところでしょうか。とりあえず、オルガン好きの方には絶対に聴いて欲しい作品です。
「カケレコ、先週コレ売れてます」は毎週ほぼ月曜日の夕方更新、今週の注目作は来週の月曜日にご紹介させていただきます!
それではまた来週~!
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!