2018年8月30日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ増田です。
アヴァン・プログレ。70年代後半に登場したHENRY COW、そして彼らを主導とする音楽ムーブメントRIO(Rock in Opposition)参加のSAMLA MAMAS MANNAやUNIVERS ZERO、複雑で前衛的な音楽性を持ったグループの呼び名です。
彼らはロックの商業主義化に逆らい、ロック本来の「反抗心」を復興させることを目的に、複雑怪奇な変拍子を駆使したり、またギターやヴォーカルではなく室内楽的な管弦楽器をサウンドの中心に据えたチェンバー・ロックを確立させたりと、大衆におもねらない硬派で先鋭的な表現方法を実践していきました。
そして現代。ジャズ・ロックやチェンバー・ロック界隈、そしてHENRY COWのChris Cutlerが創立した「Recommended Records」周辺アーティストの遺伝子を受け継ぐ「レコメン系」など、さらに強靭に、さらにスリリングに進化したアヴァンギャルドなプログレが世界各地で続々と生まれています。
しかしながら、「やっぱり『アヴァン・プログレ』ってなんだか暗くて難解なイメージ。特に現代の新鋭なんて、尖ってて怖そう・・・」そんなイメージを抱く方も少なくないのでは?(スタッフ増田もそうでした)
ご安心ください。今回はアヴァンギャルドさの中にコミカルさやポップさ、ドラマチックさやエレガントな要素を取り入れた、「聴きやすい」新鋭アヴァン・プログレの作品をセレクトいたしました。
まずは現代のアヴァン・プログレを語るにおいて欠かせないこちらのグループから!
かのフランク・ザッパも賛辞を送った、スウェーデン出身バカテク・ミュージシャン2人組による奇想天外アヴァン・プログレ・ユニット、96年デビュー作。
とはいえ難解過ぎず、時に柔らかさやおどけたようなコミカルさも覗かせるアンサンブルが実にグッド。カンタベリー・ファンにもおすすめです。
次はクリムゾン・ファンにはたまらない18年リリースの新作を2作品ご紹介☆
R・フリップ彷彿の強靭なギターにチェンバー風味の管楽器、天を舞うようなヴァイオリン、そしてラフマニノフなど近現代クラシックの素養を感じさせる端正なピアノ・・・。
世界各国から選りすぐりの10名の実力派ミュージシャンによる、スタイリッシュでドラマチックなアヴァン/ジャズ・ロック傑作!
まるでナショナルヘルスとクリムゾンを融合させたような、エレガントかつテンションみなぎるアヴァンプログレ!
フランスらしい先の読めないアーティスティックな展開の連続に、とにかく聴いていてワクワクが止まりません。何というアイデアの豊富さ!
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スラップ・ハッピーが好き?なら、こちらの女性ヴォーカル擁する米国アヴァン・ジャズ・ロックがオススメです。
ゴングばりの強度と緩急自在さで聴かせるジャズロックをベースに、カンタベリー風の芳醇なホーンセクションとスラップハッピーあたりが浮かぶ浮遊感あるメロディをミステリアスに歌う女性ヴォーカル。
カリフォルニア発ジャズ・ロック・バンドによる快作2nd!
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次は南米から、カンタベリーやサムラのファンにはたまらないレコメン系ジャズ・ロックを!
アルゼンチンのサックス奏者、エレピ奏者、ギターとリズム隊の5人組による2012年作。
変拍子を次々に繰り出しつつ、どこか可愛らしいカンタベリー色、サムラばりの屈折感があってコミカル。南米らしい爽やかさもいいなあ。
最後はUNIVERS ZEROを生んだチェンバー/アヴァン・プログレの宝庫、東欧よりセレクト!
ベラルーシのグループによる2013年作。
ダークでテンションみなぎる演奏も披露しつつ、全体的に映像喚起的な艶やかさに包まれた音世界が美しいです。
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ベルギーのレコメン系グループの2012年作。
アカデミックさと奇天烈さとヨーロピアンな洗練とがゴッタ煮されてて、テクニカルなのに温かくしなやかだし、ザッパやゴングのファンはヤられるはず!
そんなHUMBLE GRUMBLEのリーダーによるサイドプロジェクトのこちらもオススメ!
民族音楽的な伝統性にユーモラスな諧謔風味、踊りたくなるようなグルーヴ感をごった煮にした、ベルギーらしい実に屈折感たっぷりなアヴァン・フォーク!
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ここ最近の新譜を見ていると、チェンバー・ロック/アヴァン系ジャズ・ロックの充実ぶりが凄い!最近リリースされた注目の作品をピックアップいたしましょう。
仏在住のアメリカ人作曲家/ピアニスト、Tim Rootを中心とするアヴァン/ジャズ・ロック・プロジェクト18年作。ADRIAN BELEW POWER TRIOやクリムゾン・プロジェクトへの参加で知られる気鋭の女性ベーシストJulie Slickをはじめ、米国・イタリア・アルゼンチンなど各国から選りすぐりの実力派ミュージシャン10名により制作された作品とのことですが、なるほどこれは驚愕の完成度!R・フリップを思わせる切れ味鋭くヘヴィなギター、シャープ&タイトなリズム隊、チェンバー風味のクラリネットにこれでもかとむせぶサックス…『太陽と戦慄』や『RED』期クリムゾンからの影響を感じさせる、スリリングで強靭なアンサンブル。そこへリーダーのTimによるキメ細かく端正なピアノがクラシカルな色合いを加え、はち切れんばかりにハイテンションながらもどこか洗練された気品の漂うスタイリッシュなサウンドを聴かせています。ラフマニノフなど近現代クラシックを思わせるアヴァンギャルドなパートも披露しつつ、そこから天に抜けるように華麗なヴァイオリンがメロディアスな旋律を奏でるパートへと移り変わっていったりなど、ドラマチックな曲展開も特筆。精緻かつダイナミズムに富んだ演奏で聴き手を惹き込ませる、ハイレベルな傑作です。これは激・カケレコメンド!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに角つぶれ・圧痕がある場合がございます。予めご了承ください。
2015年のデビュー作で、完成度の高いアヴァン・プログレを披露した注目のフランス新鋭による、待望の18年作2nd!まるでナショナル・ヘルスとキング・クリムゾンを融合させたような、エレガントかつテンションみなぎるアヴァン・プログレは本作でも健在!緩急自在のシャープで俊敏なリズム・セクションを土台に、ナショナル・ヘルスにおけるデイヴ・スチュワートを思わせるメロディアスで理知的な音運びのオルガンと大胆に主旋律を奏でるメロトロンを中心とするキーボード、そしてナイフのような鋭いトーンで空間を切り開くフリップ直系のギターが、緻密にフレーズを重ね合い織り上げていくサウンドは、芳醇にしてどこまでもスリリング。緊張感あるギターとオルガンの掛け合いの中でメロトロンが不穏に浮き沈みする切迫感あるパートから、ピアノとコルネットが妖しく舞い踊るパート、そしてメロトロンが堰を切ったように溢れ出すパートへ。次々と場面が移り変わっていく、フランスらしい先の読めないアーティスティックな展開の連続に、とにかく聴いていてワクワクが止まりません。何というアイデアの豊富さ。これはクリムゾン・ファン、カンタベリー・ロック・ファンなら是非ともお試しいただきたいサウンド。カケレコメンド!
世界のチェンバー/アヴァン系の先鋭的なバンドを多く輩出しているAltrOckレーベルよりデビューした、カリフォルニア出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドによる待望の17年作2nd。前作『RAINBRO』では女性ヴォーカルを擁しカンタベリー・エッセンスをたっぷり含んだポップな音作りがたまらない個性派ジャズ・ロックを聴かせた彼らですが、本作でもその唯一無二のサウンドは健在です。全盛期ゴングばりの強度と緩急自在のしなやかさで聴かせるジャズ・ロックをベースに、カンタベリー風の芳醇かつ流麗なホーン・セクションとスラップ・ハッピーあたりを彷彿させる浮遊感あるメロディをちょっぴりミステリアスに歌う女性ヴォーカル。演奏自体は角の立った硬派なジャズ・ロック・テイストがあるのですが、一貫して軽やかなポップ・エッセンスが効いており、無骨な印象は一切与えないハイセンスなサウンドメイクが相変わらず素晴らしすぎます。前作を気に入った方は勿論、カンタベリー・ロック・ファン、ゴング・ファン、スラップ・ハッピーのファンも「これはっ!」となること間違い無しの一枚に仕上がっています。
アルゼンチンの新鋭レコメン系グループ、2012年作。サックス奏者、エレピ奏者、ギターとリズム隊による5人組。ナショナル・ヘルスあたりのカンタベリー色、サムラを彷彿させるユーモラスな屈折感を混ぜ込んだサウンドは、硬質かつしなやか。テクニック、アンサンブルの構築ともにハイ・レベル。これは素晴らしいグループです。70年代のグループと言っても分からないサウンド・プロダクションも魅力的。カンタベリー/レコメンのファンは必聴です!
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