2018年2月10日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
今回は、注目レーベルAltrOck発のサンフランシスコ出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドINNER EAR BRIGADEが5年ぶりにリリースした17年作2nd『DROMOLOGY』の魅力に迫ってまいりたいと思います。
まずはイタリアに本拠を置く注目レーベル、AltrOck Productionsについて軽くご紹介いたしましょう。
現代の実験的なロック・ミュージックによるフェスを開催する目的で設立されたのが2005年。翌06年には、同国の新鋭チェンバー・ロック・バンドYUGENのデビュー・アルバムをリリースし、レーベルとしても活動を開始します。
以降は、70年代後半にヘンリー・カウの主導で世界中を巻き込んだ反商業主義ロックの連帯組織運動「R.I.O.」の意志を継ぐアヴァンギャルドな音楽性を持つグループの作品を次々とリリース。アメリカ、スペイン、スウェーデン、ベラルーシ、イスラエル、アルゼンチンなど国籍を問わず先鋭的なサウンドを持つアーティストを手がけています。
現代のチェンバー・ロック/アヴァン・ロック・シーンを牽引するレーベルとして存在感を発揮しているレーベルなんです。
そんなAltrOck所属バンドの中でも抜群のポップさを誇るのがこのINNER EAR BRIGADE。ギタリストのBill Wolterを中心にサンフランシスコで結成、05年に自主制作EP『Belly Brain』をリリースしデビューを果たします。
7年を経た2012年にはAltrOckより1stフルレンス・アルバム『RAINBRO』を発表。
ハットフィールド&ザ・ノースやナショナル・ヘルスといったカンタベリー・ロック・バンドからの影響を、ポスト・ロック調のコンテンポラリーなサウンドへと絶妙に落とし込んだ、屈折感たっぷりのアヴァン・ポップが魅力的な一枚に仕上がっていました。
その1st『RAINBRO』からさらに5年が過ぎ、満を持して届けられた17年作がこの2nd『DROMOLOGY』です。その音楽性を一言で表すなら「GONG + SLAPP HAPPY」。
屈折感ある音使いやメロディセンスこそ前作の延長線上にありますが、ブラスが重厚さを持つようになりロック的ダイナミズムを増したアンサンブルは、ポスト・ロック色の強かった1stから肉感的なジャズ・ロックへと変化を遂げており、全盛期GONGも彷彿させる迫力を放ちます。
そこに囁くように歌う浮遊感たっぷりのフィメール・ヴォーカルが乗ると、まるでGONGにダグマー・クラウゼが加入したかのようなアヴァンギャルドかつ芳醇でマジカルなサウンドが誕生!この捻れたポップ感覚がどうにもクセになるんですよね。
この遊び心と知性が絶妙に配された、摩訶不思議だけど魅惑的なサウンド、ぜひ一度体験してみませんか?
INNER EAR BRIGADE
カリフォルニアの新鋭ジャズ・ロック/プログレ・グループ、2012年作。オープニング・ナンバーの気持ちよさときたら!たゆたうようなカンタベリー・フレイヴァーな女性ヴォーカル、そのバックで軽快にリズムを刻むエレクトリック・ギター、ダンサンブルと言えるようなリズム隊。そんな気持ち良いサウンドにサックスが強烈なブローをお見舞いし、ゴングばりの変態ジャズ・ロックへと突入。カンタベリーやレコメンを軸に、ポスト・ロックの浮遊感やヌケの良さを加えたサウンドは実に痛快!小山田圭吾がギターで参加した最近のYMOに、70年代当時のハットフィールドのメンバーが飛び入り参加!と言えば、この素晴らしさが伝わるでしょうか。これは、名作!
世界のチェンバー/アヴァン系の先鋭的なバンドを多く輩出しているAltrOckレーベルよりデビューした、カリフォルニア出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドによる待望の17年作2nd。前作『RAINBRO』では女性ヴォーカルを擁しカンタベリー・エッセンスをたっぷり含んだポップな音作りがたまらない個性派ジャズ・ロックを聴かせた彼らですが、本作でもその唯一無二のサウンドは健在です。全盛期ゴングばりの強度と緩急自在のしなやかさで聴かせるジャズ・ロックをベースに、カンタベリー風の芳醇かつ流麗なホーン・セクションとスラップ・ハッピーあたりを彷彿させる浮遊感あるメロディをちょっぴりミステリアスに歌う女性ヴォーカル。演奏自体は角の立った硬派なジャズ・ロック・テイストがあるのですが、一貫して軽やかなポップ・エッセンスが効いており、無骨な印象は一切与えないハイセンスなサウンドメイクが相変わらず素晴らしすぎます。前作を気に入った方は勿論、カンタベリー・ロック・ファン、ゴング・ファン、スラップ・ハッピーのファンも「これはっ!」となること間違い無しの一枚に仕上がっています。
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