2018年7月3日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
KAKERECO DISC GUIDE、今回はフランスのアヴァン・ジャズ・ロック・グループALCO FRISBASSが2018年にリリースした話題の2ndアルバム『LE BATELEUR』をピックアップ!
いきなりですが、まずは彼らのサウンドを聴いてみていただきましょう☆
お聴きいただいた通り、非常にプログレらしい緻密で入り組んだアンサンブルが展開される本作ですが、その実体は2人のマルチ・ミュージシャンを中心とするプログレ・ユニットです。
グループ名の由来は、映画の発展に多大な貢献を果たしたフランスの映画製作者/発明家ジョルジュ・メリエス。マジシャンでもあった彼のステージネームこそがALCO FRISBASSだったのだそう。
元々は共にマルチ・ミュージシャンであるFrederic ChaputとPatrick Dufourによって結成されたALCO FRISBASS。前デビュー作『ALCO FRISBASS』ではメンバー2人に加えゲスト・ミュージシャンを招いて制作が進められましたが、本作ではもう一人のマルチ・ミュージシャンFabrice Chouetteがメンバーとして名を連ねているのが注目ポイント。
メンバーはこの3人になりました。
あれだけ緻密でクリエイティビティに満ちた音世界をほぼ3人だけで作り上げているという点にきっと驚くと思いますが、真の驚嘆ポイントはそこにあらず。
クレジットをよく見ると、こんな記載がされています。
ん?パリ、レンヌ、モントローと言えば、数百キロ離れた場所にある街です。
そう、なんと彼らはスタジオでのセッション・レコーディングではなく、それぞれの自宅で各楽器を録音、その音源をネットワーク上でやり取りしながらオーバーダビングすることで、この緻密に入り組んだサウンドを作り上げていたのです!まさに21世紀ならではのレコーディング手法ですよね!
少なくともプレイヤー/コンポーザーとして非常に高い技量がなければ成し得ない離れ業であることは、彼らのサウンドを聴けば明らかでしょう。
さて、それでは改めてそのサウンドに耳を傾けてみましょう。
まるでクリムゾンの凶暴性や緊張感とナショナルヘルスの知性を融合させたような、スリリングにして芳醇な深みを持ったサウンドを特徴とする本作。
緩急自在のシャープで俊敏なリズム・セクションを土台に、ナショナル・ヘルスにおけるデイヴ・スチュワートを思わせるメロディアスで理知的な音運びのオルガンと大胆に主旋律を奏でるメロトロンを中心とするキーボード、そしてナイフのような鋭いトーンで空間を切り開くフリップ直系のギターが、緻密にフレーズを重ね合い織り上げていくサウンドは、複雑にしてどこまでもスリリング。
緊張感あるギターとオルガンの掛け合いの中でメロトロンが不穏に浮き沈みする切迫感あるパートから、ピアノとコルネットが妖しく舞い踊るパート、そしてメロトロンが堰を切ったように溢れ出すパートへ。
次々と場面が移り変わっていく、フランスらしい先の読めないアーティスティックな展開の連続に、とにかく聴いていてワクワクが止まりません。
何というアイデアの豊富さでしょうか。
カンタベリー・ロックやRIOなどのアヴァン・ジャズ・ロックのファン、メロトロン・プログレのファン、どちらにとっても非常に満足度の高いサウンドを楽しませてくれる、稀有なグループであることはまず間違いありません。
ALCO FRISBASSのサウンドが気に入った!という方には、こんなグループもおすすめしたいところ。
イタリアはシチリア島出身のプログレ・グループがリリースした18年作。カンタベリー・ミュージックとチェンバー・ロックをお洒落でモダンに昇華して、さらに地中海の風を吹かせたような感じ!?緻密な変拍子を駆使しつつもポップに駆け抜けるアンサンブルが心地良すぎます。
ALCO FRISBASSの音楽性のベースともなっているカンタベリーなタッチに惹かれたなら、アルゼンチンのこのジャズ・ロック・バンドはオススメ。アルゼンチンらしい甘美な陰影を持ったメロディを印象的に聴かせる、芳醇なジャズ・ロックには前2作を経てさらに磨きがかかっている印象。カンタベリー・ファンもこの得も言われぬ奥ゆかしさはたまらないでしょう!
ALCO FRISBASSにそこはかとなく漂うZEUHL系の匂いを嗅ぎ取った方には、ZEUHL系に連なるこちらのアメリカの新鋭バンドもご紹介。英語ではなく、まるでコバイアのような異言語で歌っていますし、00年代アメリカにこんなバンドが出てくるとは驚きましたね~。マグマや吉田達也のファン、COSなどベルギーのジャズ・ロックのファンは必聴と言える完成度!
2014年デビュー、アルゼンチンはブエノスアイレス出身、ピアノを中心にエレピ、オルガン、シンセを操るキーボーディストとギタリストを擁する4人組ジャズ・ロック/フュージョン・グループによる17年作3rd。南米らしい甘美な陰影を持った美しいメロディを印象的に聴かせる、ロマンチックな表情のジャズ・ロックには前2作を経てさらに磨きがかかっている印象。ピアノやギターは流麗なタッチでソロを応酬させるジャズ本来のクールな佇まいを見せるのに対して、可憐な音色が耳を引くエレピが浮遊感あるファンタジックで柔らかな聴き心地をもたらしていて、少しフィル・ミラーを思わせるギターも相まってハットフィールドやナショナル・ヘルスなどのカンタベリー・ロック・バンドに通じる得も言われぬ芳醇さを生み出しているのが素晴らしい。お約束と言えるバンドネオンの哀愁の音色も必殺です。近年のジャズ・ロック・バンドには珍しく比較的ロック寄りのノリとダイナミズムを持つドラムも特筆で、アンサンブルを力強い躍動感で牽引します。ジャズとロックを最高のバランス感覚で組み合わせた、これぞジャズ・ロック!と呼びたい快作。これは激カケレコメンド!
2015年のデビュー作で、完成度の高いアヴァン・プログレを披露した注目のフランス新鋭による、待望の18年作2nd!まるでナショナル・ヘルスとキング・クリムゾンを融合させたような、エレガントかつテンションみなぎるアヴァン・プログレは本作でも健在!緩急自在のシャープで俊敏なリズム・セクションを土台に、ナショナル・ヘルスにおけるデイヴ・スチュワートを思わせるメロディアスで理知的な音運びのオルガンと大胆に主旋律を奏でるメロトロンを中心とするキーボード、そしてナイフのような鋭いトーンで空間を切り開くフリップ直系のギターが、緻密にフレーズを重ね合い織り上げていくサウンドは、芳醇にしてどこまでもスリリング。緊張感あるギターとオルガンの掛け合いの中でメロトロンが不穏に浮き沈みする切迫感あるパートから、ピアノとコルネットが妖しく舞い踊るパート、そしてメロトロンが堰を切ったように溢れ出すパートへ。次々と場面が移り変わっていく、フランスらしい先の読めないアーティスティックな展開の連続に、とにかく聴いていてワクワクが止まりません。何というアイデアの豊富さ。これはクリムゾン・ファン、カンタベリー・ロック・ファンなら是非ともお試しいただきたいサウンド。カケレコメンド!
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