2017年12月26日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
再発レーベル特集第三弾!
PAISLEY PRESS、AMPHONOTONESに続き今回ご紹介するのは、ドイツ・ベルリンの新興レーベルO-MUSIC。
名再発レーベルGREEN TREEのサブレーベルであり、プログレ(特に辺境ユーロモノ)からアメリカン・ハードまで、ニッチながらもクオリティの高い名作を次々とリイシューしてくれています。
今回はそんなO-MUSICの豊富なラインナップの中から、ユーロファン要注目のプログレ作品を一挙ピックアップしてお届け!
ピアノ/オルガン奏者、フルート奏者を含む6人組のアメリカのプログレ・グループ、72年作。
ほとんど無名のグループですが、剥き出しのナチュラルな音色でテクニカルに絡み合う楽器陣のカッコ良いこと!
BS&Tやジェフ・ベック・グループばりにアーシーかつテンションみなぎるアンサンブルにひたすら痺れます。
マグマのバーナード・パガノッティが在籍していたプログレ黎明期のフレンチ・ロック・バンドをご存知?70年の唯一作。
フロイド、コロシアム、トラフィックをゴッタ煮にしたようなアート・プログレで、ジャケの通り秘宝臭ぷんぷん…。
女性コーラスを取り入れたどこか不穏かつ荘厳なサウンドには、ほんの少しマグマの面影も漂います。
フランス印象派サイケ・ポップ!? ドイツとスイスとの国境近く、フランス東部にある町モンベリアルにて結成されたグループの72年唯一作。
アシッド・サイケのように気だるくも、霞がかって響くオルガンの気品と優美さは只者じゃない。
初期ピンク・フロイドからの影響とともに、ドビュッシーやバッハなどクラシックの素養を練り込んだ愛すべきフレンチ・ロックの逸品です。
ギリシャ出身で主にフランスで活動したグループ、71年のデビュー作。
ゾンビーズ『オデッセイ&オラクル』にフォルムラ・トレのアルベルト・ラディウスが乱入したらって感じ!?
ブリティッシュ・ロックからの影響の中に漂う地中海の香りや、ギリシャらしい美意識が実に魅力的な一枚。
こちらは同じくAXISの73年の2nd。デビュー作からギタリストが抜け、一気に強靭なキーボード・プログレへと接近しています。
クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品、『太陽と戦慄』ばりのテンションみなぎる変拍子、ヘンリー・カウばりの狂気の室内楽的アンサンブル…。
極めつけは全面に出て主旋律を奏でるメロトロン!ずばりギリシャのみならずユーロ屈指と言ってよい傑作です!
このバンド、ジャケはB級ハードかと思ってしまいますが、中身はマハヴィシュヌやブランドXに対抗できる超絶ジャズ・ロック/フュージョン!
スウェーデン産ジャズ・ロック・バンドの74年作2nd。
テクニカルに洗練されつつ、メロディアスな親しみやすさも残したサウンドがたいへん魅力的。スペインICEBERGあたりのファンも要チェック!
辺境ユーロ・ファンの皆様、お待たせいたしました!東欧ルーマニアのプログレ・グループ、74年作2nd。
母国のフォークロアを取り入れた作風で、土着的かつ牧歌的なサウンドがなんとも暖かい一枚。
全体的に辺境臭ぷんぷんですが、それもまた魅力です!
次はなんと東欧アルメニア出身のプログレ・バンド、79年唯一作!
西にトルコ、東にカスピ海、南にイランと接する国アルメニア。
一体どんなサウンドなのかと思えば、まさにイメージ通りの神秘性たっぷり。そしてクオリティは予想以上!
最後はこちら。ザッパばりの諧謔精神たっぷりの虎ジャケからは想像もつかない、流麗なグルーヴィー・ジャズ/フュージョン・ロック、しかも75年オーストラリア産!
スピード感溢れるファンク・ロックをベースとしつつ、暖かみのあるエレピはカンタベリー風味。
トライバルなファンク・テイストと都会的なフュージョン・サウンドが混ざり合ったサウンドが新鮮で、これは間違いなく隠れた名品!
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ギリシャ出身で主にフランスで活動したグループ。ピアノ/オルガン/メロトロンを操る鍵盤奏者が中心で、デビュー作からギタリストが抜け、ギターレスのキーボード・プログレ4人組となって制作された73年の2nd。ベーシストも代わり、一気にプログレ/アヴァンギャルド色が増しました。キング・クリムゾン『リザード』に通じる静謐な気品を漂わせるパート、鋭利に尖ったトーンのキーボードのミニマルな反復に『太陽と戦慄』ばりに狂気の変拍子が炸裂するパート、ヘンリー・カウばりのフリー・ジャズ/チャンバー・ロックなパートなど、一瞬たりとも気の抜けないテンションみなぎるアンサンブルが続きます。特筆なのがメロトロンで、持続音で荘厳にたなびく感じの使い方が一般的ですが、このグループは、全面に出てまるでピアノばりに主旋律を奏でます。アヴァンギャルドかつクラシカルな気品に満ちたギリシャ屈指・・・なのは言わずもがな、ユーロ・ロック屈指と言っても過言ではない傑作アルバム。必聴です!
ギリシャ出身で主にフランスで活動したグループ。71年のデビュー作。ピアノ/オルガン奏者が中心で、ゾンビーズやグレイシャスやスプリングなど気品あるブリティッシュ・ロックからの影響を感じますが、やはりギリシャ出身ならではの美意識が溢れているのが特筆。地中海つながりでイタリアン・ロックを思わせ、特に突っかかるようなファズ・ギターやパーカッシヴなアコギなど、ギタリストはフォルムラ・トレのアルベルト・ラディウスを彷彿させます。ゾンビーズ『オデッセイ・オラクル』にアルベルト・ラディウスが乱入して混沌とさせつつも気品が損なわれていない楽曲など、このグループならではの魅力いっぱい。フルートやストリングスがリリカルに流れる曲も美しいし、トレの『夢のまた夢』もびっくりな荘厳なオルガンをフィーチャーしたラスト曲「Bad Trip」もすごいテンションだし、英語の歌メロはどれも流麗で絶品だし、英ロックのファンもユーロ・ロックのファンも必聴のずばり名作!
フランス出身、後にマグマで活躍するベーシスト、バーナード・パガノッティ在籍のアート・ロック/プログレ・グループ、70年の唯一作。霧のように低く立ちこめるドラム、くすんだトーンのオルガン、浮遊感のあるヴァイヴ、女性を含む荘厳なコーラス、アーティスティックなヴォーカルなど、ピンク・フロイドを彷彿させる幻想性に溢れたサウンドが聴き所。歪んだギターが炸裂するキメのパートでは、パガノッティのベースも高速にうねりを上げて痺れます。トラフィックとコロシアムの中間に位置するようなジャジーなロック・ナンバーも魅力的で、ジャジーで格調高いピアノを挿入したり、かなりのセンスを感じさせます。秘宝臭ぷんぷんのジャケに「おおっ」となったユーロ・ロック/プログレのファンは聴いて損はありません。
マハヴィシュヌ・オーケストラからの影響色濃いスウェーデンのジャズ・ロック/フュージョン・グループ、74年作。手数多くシャープに疾走するドラム(元NOVEMBERのBjorn Inge!)、エッジの立ったトーンでスリリングなフレーズを応酬するギター&ベース、そこに鋭角に切れ込むエレピとオルガン。ジャケはマイナーなハード・ロックみたいですが、サウンドは、エネルギッシュかつ洗練された超絶フュージョン。ちょっとジョン・アンダーソンを彷彿させるハイ・トーンのヴォーカルが透明感あるメロディを歌うヴォーカル・パートも魅力的です。テクニック、アンサンブルの安定感ともに抜群。スペインのICEBERGあたりのファンも要チェック(それもそのはず、Key奏者のAlvaro Isは、ICEBERGのギタリストMax Sunyerの78年作ソロ『BABEL』に参加!)。オススメです。
ドイツとスイスとの国境近くにあるフランス東部にある町モンベリアルにて1970年に結成されたグループ。72年の唯一作。ビートルズなど英ビート・ポップのほか、米西海岸のサイケデリック・ロック・ムーヴメントや、バッハ/ベートーヴェン/ドビュッシーなどクラシックの影響の元でサウンドが練られたようで、なるほど、シド・バレット期のピンク・フロイドをアンニュイにして、バロック調のオルガンを入れ、英アンダーグラウンド・サイケのジュライのようなローファイ感もまぶしたような、そんな印象派サイケ・ポップと言えるような、もやに包まれたサウンドが印象的です。ファルセットを中心としたナイーヴなフランス語によるヴォーカルと幻想性たっぷりな多声コーラスも素晴らしい。ベースがゴリゴリと走るハードな曲は、英クレシダやグレイシャスあたりも頭に浮かびます。フランスの片田舎らしい、神聖ローマ帝国の伯領時代の面影が残るような、気品と優美さに包まれた愛らしい名品です。
アルメニア出身のプログレ・バンド、79年唯一作。アルメニアというと、西にトルコ、東にカスピ海、南にイランと接する東欧の国。ペルシア地方伝統の民族楽器であるKEMATCHA(弦楽器)とSANTOUR(打楽器)の他、フォルクローレ調の管楽器をフィーチャーしたエスニック色濃厚なサウンドが印象的。ファンキーとはまた違うノリながらよく動きまわるベース、スペーシーというか何ともほの暗いトーンのエレキ・ギターは、フランスのバンドに通じる味わい。辺境プログレの逸品です。
サンタナに影響を受けたオーストラリアのジャズ/フュージョン・ロック・グループ。75年唯一作。元ヘロンのG.T.ムーアによるレゲエ・バンドのような木漏れ日感あるゆる〜いグルーヴのヴォーカルがはじまり、フュージョンタッチの流麗なエレピが入り、ベースが疾走しだすと、バンドがスピーディーに走り出します。高速で乱れ打たれるパーカッション、軽快なカッティング・ギターもクール!パブ・ロック感のある親しみやすいヴォーカルも良いし、ハードかつ滑らかなトーンで早弾きを繰り出すギターもカッコよし。オシビサなどアフロ・ロックとともに、英ココモのようなご機嫌なフレイヴァーもあって、カンタベリーに通じるようなジャズ・ロッキンなキメも挿入するし、さらに素っ頓狂なジャケの通りにザッパに通じるようなセンスもあって、これは良いバンド!
ルーマニアのプログレ・グループ、74年作2nd。60年にはビート・グループとして活動しながら、評価を得ず、ルーマニアのフォークロアを取り入れてオリジナリティを確立し、71年にデビューしました。本2ndも民族色濃厚で、オープニングから、祭り囃子のような土着的パーカッションに、こぶしを効かせたようなうねるギターが躍動します。ルーマニア語の翳りあるヴォーカルと独特の哀感のあるメロディもまた辺境臭ぷんぷん。ルーマニアでしか生まれ得ない個性豊かなロック・ミュージック。
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