2015年12月2日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: ジャズ・ロック
今日はハットフィールド&ザ・ノースのファンにオススメの作品を特集してまいりましょう。
淡く叙情的なハモンド・オルガン。時に繊細にたゆたい、時にキレ味鋭いフレーズでテンションを増幅させるギター。そして、流れるように美しくアイロニーやユーモアもたっぷりな愛すべきメロディとヴォーカル。
そんな知的でいて親しみやすいサウンドを持つニッチな作品を世界中からセレクトしました。
思いもしなかった作品と出会ったり、新たな国の作品へと興味が広がったり、みなさまのロック探求のワクワクに少しでも貢献できれば幸いです。
まず一枚目は、なんとイスラエルのグループ!このグループは本当に素晴らしいですよ~。
イスラエルのハットフィールド&ザ・ノースと異名を取るグループによる77年の唯一作。
イスラエルには、ジャズ・ロックの緻密さと地中海音楽のたおやかさとがブレンドしたカンタベリーのファン必聴と言えるまばゆい作品が多くありますが、その中でも最高峰と言えるのが本作。
ハットフィールドの1st/2ndに匹敵する、と言っても過言ではない名作でしょう。
SHESHETはこちらのページで詳しく特集していますので、チェック是非。
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カンタベリーのファンにとって、イスラエルは名盤の宝庫ですよ~。
イスラエル・ロック潮流図を片手に、SHESHETのメンバーの関連作から聴き進めてみてください。
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SHESHETやKTZAT ACHERET(NO NAMES)をはじめ、ジャズをベースにした洗練された演奏と巧みなポップ・センスがブレンドしたまばゆい音楽の宝庫、イスラエルを大特集!
イスラエルと並んで、カケレコがハットフィールドのファンにオススメする国がスペイン。
スペインというとフラメンコのイメージが強いですが、それは中世時代にイスラムの支配下にあった南部の音楽で、北部の地中海沿岸のバルセロナには、カンタベリーのファンにはたまらない流麗かつ野心的なジャズ・ロック作品が多いんです。
その中でもオススメの2作品をピックアップいたしましょう。
後にスペインを代表する音楽家となるJoan Albert Amargosが若い日に結成したジャズ・ロック/アヴァン・ロック・グループ。
英米ロックから解放されたスパニッシュ・ロックの確立を目指していたようで、地中海音楽やアンダルシア音楽をはじめ、スペインのオペラであるサルスエラ(Zarzuela)も取り込んだサウンドが特徴。
緻密かつ地中海の香り漂う芳醇なサウンドは、HATFIELD & THE NORTHのファンをはじめ、イスラエルのSHESHETやイタリアのAREAやPICCHIO DAL POZZOのファンにはたまらないはず!
女性ヴォーカルのスキャット、淡く流麗なエレピが良いですねぇ。
フィル・ミラー的な滑らかに緊張感あるフレーズからゴリゴリとアグレッシヴに弾き倒すフレーズまで縦横無尽なエレキもまた特筆。
演奏の芳醇さは、ハットフィールドにも比肩していますよね!
スペインを代表するKey奏者と言えるJordi Sabatesはこちらの記事で関連作など詳しく特集!
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スペインはバルセロナのロック「ライエターナ・ミュージック」は力を入れて特集しておりますので、チェック是非!
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アルゼンチンには、ヨーロッパ的な陰影や叙情に溢れたプログレ作品が多数ありますが、ジャズ・ロックにも優れた作品が誕生しています。
アルゼンチン音楽シーンの大御所Luis Alberto Spinettaが77年にリリースした1st。
丁寧に紡がれる洗練されたギターと流麗なエレピによるアンサンブルをバックに、センチメンタルなヴォーカルが南米らしい詩情溢れるメロディーを繊細に歌い上げる。
メロディアスなパートでの叙情豊かなアンサンブルはもとより、クロスオーヴァー色溢れるキレ味鋭いスリリングなアンサンブルも特筆。
これは、ずばりアルゼンチンからの「リターン・トゥ・フォーエヴァー、ハットフィールド&ザ・ノースへの回答」ですね!
もしもハットフィールドがタンゴをやったとしたら?
アルゼンチンのバンドネオン(タンゴで用いられるアコーディオンのような蛇腹楽器)奏者による77年作。
バンドネオンのサウンドは哀愁いっぱいですが、ドラムやギターが入ると一気にフュージョン色を増してテンションいっぱいに。
ビシバシとしたアンサンブルに圧倒されていると、バンドネオンが哀愁のフレーズを奏で、ギターがリリシズム溢れる泣きのフレーズを奏で、一気に南米色を増していき、聴き手の胸に迫ります。これは名作でしょう。
カンタベリーからはドーバー海峡を挟んで向かいあうオランダ。この地にも優れたジャズ・ロック・バンドが生まれていますよ~。
オランダのカンタベリー・タッチのグループと言えば、このSUPERSISTERが文句なしの最高峰!
SUPERSISTERの70年デビュー作が本作。
ハットフィールドはまだデビューしていないし、ソフト・マシーンに通じるサウンドのグループですが、まぁ、固いことはぬきにまいりましょう^^。
アンサンブルの精緻さ、ジャンルのるつぼ的な雑食性、ユーモアなど、カンタベリーの名グループに完璧に比肩してるし、このグループを取り上げないわけにはいきません。
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カンタベリー・スタイルのバンドとしてユーロ・ロックのファンに人気のグループですが、ほぼ同時期に活動していることから、カンタベリーのグループのフォロワーというよりは、R&B~サイケデリック・ロックを出発点に、オルガンやフルートをフィーチャーしながらジャズ・ロック化する中で同じようなサウンドにたどり着いたバンドと言えるかもしれません。
SUPERSISTERに乗じて、もう一枚、ハットフィールドのデビュー前の作品だけどピックアップしてしまえ!
SUPERSISTERと比べると知名度は劣りますが、クオリティでは負けてない、カンタベリー・ファン悶絶必至のオランダの名ジャズ・ロック・バンド!
ベルギーを代表するジャズ・ロック・グループによる74年作1st。
ハットフィールドを彷彿させるしなやかさとヘンリー・カウばりの緊張感。そして、スキャットの女性ヴォーカル。
ベルギーが誇るユーロ・ジャズ・ロックの名グループ。
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英VIRGINから世界デビューも果たしたフィンランドを代表するグループ。
オルガン、ピアノ、管楽器による緻密でいて淡く叙情的なアンサンブル、シリアスさとともにユーモア・センスもあるポップなヴォーカル&メロディ。
まるで、ジョン・レノンとリチャード・シンクレアとマイク・オールドフィールドとアル・クーパーがセッションしたら、って感じ?
WIGWAMのベーシスト、ペッカ・ポーヨラが77年に英VIRGINからリリースしたソロ。
マイク・オールドフィールドの参加が特筆で、フィンランドとイギリスが誇る知性派であり音の魔術師と言える2人の名手とが出会い生まれた、一級の工芸品のような切れ味を感じることができる名品。
ハットフィールドの他、キャメルなど英プログレや、クラウト・ロックにも影響を受けたというアメリカのグループ。
79年に自主制作された作品で、原盤は激レアのようです。
変拍子を多用してるけど、スリリングということはなくってあくまで静謐で、ミュイ~ンとムーグが鳴らされますが、スペーシーということはなくってあくまで叙情的で、これはハットフィールドをはじめ広くプログレを聴いているリスナーなら掘り出し物な一枚!
70年代のアメリカ、それも西海岸のサンフランシスコに、これほど硬質でしなやかなジャズ・ロック・グループが居たとは!
浮遊感とリリシズムに溢れたマリンバが良いなぁ。
ハットフィールドやベルギーのCOSのファンは悶絶必至!
いかがでしたか?
みなさまにとってぴったりの一枚が見つかれば幸いです。
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsa/Zelesteレーベルより75年にリリースされた2ndソロ。ピアノとエレピを基本にした前作とは異なり、バンド編成で録音。OMで一緒だった名ギタリストToti SolerとベースのManolo Eliasをはじめ、元JARCAのギタリスト、後にORQUESTRA MIRASOLで活躍するドラマーなどがサポート。女性ヴォーカルのスキャットもフィーチャーし、「RETURN TO FOREVERへのスペインからの回答」と言えるたおやかなアンサンブルから、ベルギーのCOSあたりに通じる暗黒カンタベリー的アンサンブルまで、とにかく演奏が芳醇なこと!ピアノやエレピはもちろんのこと、フィル・ミラー的な滑らかに緊張感あるフレーズからゴリゴリとアグレッシヴに弾き倒すフレーズまで縦横無尽なエレキも特筆。パーカッシヴなフラメンコ・ギターとの対比も見事です。15分を越えるオープニングの組曲はユーロ・ジャズ・ロック屈指と言える名曲。
サンフランシスコ出身のジャズ・ロック・バンド、74年に録音されつつお蔵入りとなっていた幻の作品。ヨーロッパ的なアンニュイな女性ヴォーカルと、エレピの代わりにマリンバ奏者が在籍しているのが特筆。かなりスピーディーに牙をむくリズム隊、フュージョン・タッチの流麗でテクニカルなギター、そしてカンタベリーを彷彿とさせる洗練されていて浮遊感とリリシズムに溢れたマリンバの響き。国名を聴かなければアメリカとは思わないでしょう。ベルギーのCOSあたりが好みであれば、かなり気に入るはずです。デジパック仕様。
スペインはバルセロナ出身、チェンバー/ジャズ・ロックの名グループ。76年にZELESTEレーベルよりリリースされた1st。後にクラシックから映画/演劇音楽でも名を残し現代スペインを代表する音楽家となるJoan Albert Amargosを中心に、60年代末から活躍するブラス・ロック・バンドMAQUINA!のメンバー、BARCELONA TRACTIONのKey奏者により結成。英米ロックから解放されたスパニッシュ・ロックの確立を目指していたようで、地中海音楽やアンダルシア音楽をはじめ、スペインのオペラであるサルスエラ(Zarzuela)も取り込んだチェンバー・ロックが特徴です。緻密かつ地中海の香り漂う芳醇なサウンドは、HATFIELD & THE NORTHのファンをはじめ、イスラエルのSHESHETやイタリアのAREAやPICCHIO DAL POZZOのファンにはたまらないはず。若きJoan Albert Amargosの才気ほとばしるイマジネーション豊かな名品です。
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