2016年12月16日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは、スタッフ佐藤です。
今回は佐藤も大好きなカンタベリー・ロック・シーンより、キーボード奏者のデイヴ・スチュワートにフォーカスしたいと思います。
ケント州カンタベリー出身ミュージシャンを中心に発展し、ジャズ・ロックをベースとした独特の味わい深さを持つサウンドでファンを魅了するカンタベリー・ロック。
さて、そんなカンタベリー・シーンで活躍するキーボード奏者に注目してみると、マイク・ラトリッジ、デイヴ・シンクレア、アラン・ゴーウェンなどいずれも名手揃いですが、今回フィーチャーしたいのがEGGやHF&N、NATIONAL HEALTHなどでのプレイで知られるデイヴ・スチュワート。数々のバンドを渡り歩く中で名演を残してきたその華麗なキャリアを追ってみたいと思います。
出生名David Lloyd Stewart。1950年ロンドンはウォータールー生まれ。
ハイスクール在学中にローカル・カバー・バンドSOUTHSIDERSに加入して音楽活動を始めます。
彼の本格的な音楽キャリアの出発点となったのが68年、彼が17歳の時にご存知スティーヴ・ヒレッジらと結成したURIELです。
スチュワートがスティーヴ・ヒレッジらと68年に結成したURIELですが、このバンドの活動歴は実に複雑。同年にヒレッジが学業に専念するため早々にバンドを脱退、残った3人はバンド名をEGGとしキーボード・トリオとして活動を開始します。その後、Zackariya Enterprisesという小さなレーベルからの「サイケデリック・アルバム制作」の要請を受け、離脱したヒレッジを再度迎えURIELを再結成。EGGが在籍していたDECCAとの契約の関係でメンバーは変名、バンド名もARZACHELと改め、69年に制作された唯一作が『ARZACHEL』です。
その唯一作では、60年代末期という時代を反映したアート・ロック調のサイケデリック・ロックを展開。荒削りではあるものの、ギターとオルガンが混沌の渦を成すような音像からは只者ではない感がひしひしと伝わってきます。カンタベリーの源流と言えばソフツとキャラヴァンの母体となったワイルドフラワーズですが、2人の才能あふれるミュージシャンを輩出したこのバンドもまた、カンタベリー・ロック形成になくてはならなかったもう一つの源流と言っていいでしょう。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「Metempsychosis」(『ARZACHEL / ARZACHEL』)
EGG結成の経緯は上記の通り。後のHF&Nなどで聴かれるメロディアスで気品あるプレイと比べると、よりアグレッシブなオルガン・サウンドを中心としていて、プレイのカッコよさという点ではこのEGG時代が一番と言えるかもしれません。ただ後により顕著となる理知的でクールなプレイも同時に聴かせており、その才能の片鱗を見せています。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「Symphony No.2 – First Movement」(『EGG / EGG』)
URIEL(ARZACHEL)を経たスチュワートとヒレッジという2つの才能が再び見えた、カンタベリー・ファンにも高く評価される名盤がこのKHANによる唯一作。後のゴングでも大活躍するスペイシーな広がりを持つヒレッジのギター、クラシカルな気品とブリティッシュ然とした淡い叙情を漂わせるスチュワートのオルガンワーク、揺るぎなく確立された個性みなぎるプレイスタイルが共存する、ARZACHELの頃から大きく進化したサウンドを楽しませてくれます。カンタベリーロック、スペースロックの両面から見て重要な作品です。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「Driving To Amsterdam」(『KHAN / SPACE SHANTY』)
カンタベリー・ロック界のスーパーグループと言われるこのバンドに堂々と名を連ねるのが我らがデイヴ・スチュワート。フュージョン的な流麗さ華やかさと淡くセンシティヴに広がる英国叙情、そしてややアヴァンギャルドな展開も織り交ぜたサウンドメイクは、これぞカンタベリー・ロックの最高峰。スチュワートはオルガン、ピアノ、エレピを使い分けカンタベリーらしい芳醇にして瀟洒なプレイを披露します。さらにトーン・ジェネレーターを巧みに使いこなしたエキセントリックなプレイも聴きモノ!
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「Share It」(『HF&N / ROTTERS’ CLUB』)
John Greaves – ベース/ヴォーカル
リチャード・シンクレアを除くHF&Nのメンバーが新たに結成した、実質的にHF&Nの後身バンドにあたるのがこのNATIONAL HEALTH。スチュワートの知的でセンス溢れるプレイには更なる磨きがかけられていて、芳醇でメロディアスなフレーズを次々と紡ぎ出していきます。個人的にはこのNHでの彼のプレイが一番好きだったりします。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「COLLAPSO」(『NATIONAL HEALTH / OF QUEUES AND CURES』)
John Clark – ギター
YESとKING CRIMSONという英国プログレのトップバンドを渡り歩いた名ドラマー、ビル・ブルーフォードが結成したリーダーバンドに参加。フュージョン色の強いジャズ・ロックと言える作風で、ホールズワースの超絶ギターに対し、雄大な情景美を映し出すようなキーボードサウンドを中心に、作品の世界観を豊かに描き出します。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「Fainting In Coils」(『BRUFORD / ONE OF A KIND』)
80年代に入り、ニューウェーブの全盛期が到来すると、カンタベリー・シーンのミュージシャンとしてはいち早くその流れに乗る形で、シンセポップ・ユニットSTEWART & GASKINとして活動、大きな成功を収めます。シンガーを務めるのは、スパイロ・ジャイラで知られた女性シンガーでバックコーラスなどでEGGやHF&N作品にも参加していたバーバラ・ガスキン。プログレ時代のようなプレイスタイルは聴かれないものの、持ち前の音作りのセンスはジャンルが変わっても見事に発揮されていますね。
☆デイヴ・スチュワートのプレイが光る一曲! – 「I’m in a Different World」(SINGLE)
この他にも、音楽理論・作曲方法についての著書を数冊発表していたり、米音楽誌上で13年間にわたってコラムを担当していたりと、演奏活動に留まらないマルチな才能を発揮しています。
才人がひしめくカンタベリー・シーンにあっても、屈指の名ミュージシャンと言って間違いないでしょう!
【関連記事】
Steve Hillageも在籍していたバンドURIELを母体として発足、名キーボーディストDave Stewartが率いたイギリスのプログレバンドの70年デビュー作。その内容はキーボードトリオ編成による、Dave Stewartのプレイが大きくフューチャーされた個性的なオルガンロックを基本に、サイケデリックな質感を併せ持つアートロック作品となっています。実験的要素も強く出ていますが、複雑に練り上げられた楽曲群はやりすぎなほどの変拍子の嵐であり、音楽的なポテンシャルの高さはかなりのものです。後のNATINAL HEALTHやHATFIELD AND THE NORTHなどに通じるサウンドメイクも見られ、また、それらのバンドにはないDave Stewartのアグレッシブなプレイが堪能できる作品。4楽章からなる20分超えの大曲も収録したオルガンロックの傑作です。
Steve Hillageも在籍していたバンドURIELを母体として発足、名キーボーディストDave Stewartが率いたイギリスのプログレバンドの70年2nd。バンドは前作同様キーボートリオ編成ですが、ゲストにジャズフィールドのサックス奏者やトランペット奏者が参加し素晴らしい演奏を聴かせており、前作の路線を守りつつもより整合の取れた傑作となっています。Dave Stewartというとジェントリーなプレイに定評がありますが、本作ではAARDVARKのような歪んだハモンドオルガンの引き倒しも見せるなど、かなりアグレッシブなプレイを披露。ギターレスのハンデを全く感じさせません。そして一方ではHATFIELD AND THE NORTHに通じる華やかさも絶妙にブレンドされ、やはりセンスの良さを感じさせます。複雑な変拍子の応酬などプログレッシブなアプローチも素晴らしく、前作と併せて全プログレファン必携の名盤です。
Dave StewartがHATFIELD & THE NORTH在籍中に、一時的に再結成され録音された3rdアルバム。74年作。HATFIELDに通じる緻密なジャズ・ロック・アンサンブルとアヴァンギャルドな感覚が合わさったサウンドは圧倒的なテンション。前2作で聴けた破壊的なオルガン・ロック・サウンドも健在で、演奏のダイナミズムは過去最高。傑作。
「HATWISE CHOICE」に続く第二弾。内訳は、デモ音源1曲(「Big Jobs」)、73年〜74年のBBC音源7曲、73年〜75年のライヴ音源13曲。とにかく音質の素晴らしさにびっくり。特にBBC音源は、スタジオ盤以上と言っても過言ではありません。HATFIELDファンは必携!
HATCOCD737502(HATFIELD AND THE NORTH)
デジパック仕様
盤質:傷あり
状態:良好
ケース不良、トレーにヒビあり、軽微なスレ・若干角潰れあり
元CARAVANのRichard SinclairとSteve Miller、元MATCHING MOLEのPhil Miller、後にNATIONAL HEALTHで活躍するPip Pyleにより結成され、Steve Millerが脱退、KHANを経たDave Stewartが参加したカンタベリー・ジャズ・ロックバンドの代表格の75年2nd。カンタベリー・ジャズ・ロックの代表作である本作は、20分の大作「Mumps」を含め、 前作より全体的に整理、洗練された世界観をすっきりと聴かせる作風となっており、クロスオーバー・ジャズ・ロック色を強めた音楽性へと変化しながらも、彼ららしいポピュラリティーを持ったサウンドと、胸を打つメロディーが素晴らしい傑作です。
カンタベリー・シーンの重要グループであるHATFIELD AND THE NORTHとGILGAMESHの中心メンバーが結成したジャズ・ロックバンドの78年作。Dave Stewart、Phil Miller、Neil Murray、Pip Pyleというキャリアのあるメンバーに加えてGILGAMESHのAlan Gowen、CARAVANやSOFT MACHINEとつながるJimmy Hastings、そしてGILGAMESHにも参加しているAmanda Parsonsなどゲスト人も強力。その内容はDave Stewartの存在感を感じさせる、HATFIELD AND THE NORTHの音楽性をよりジャジーにしたような作風であり、4曲の大作から成るカンタベリー・ジャズ・ロックの集大成といえる圧巻の傑作です。
Alan GowenとNeil Murrayが脱退し、元HENRY COWの奇才John Greaves(b)が参加した78年作2nd。Dave Stewart、Phil Miller、Pip Pyleとの4人編成になってまとまりが増したせいか、アンサンブルの強度はグッと増した印象。めまぐるしく切り替わるダイナミックな展開の中、一糸乱れぬ正確さで一気に駆け抜け、聴き手を置き去りにします。呆気にとられるほどのスピードとエネルギー。圧倒的なテンション!ジャズ・ロックのファンもアヴァン・ロックのファンも、またまたクリムゾンのファンも、知的でエネルギッシュなサウンドを好む方は大必聴の傑作。
ビル・ブラッフォード在籍時の貴重な音源など、驚きの音源が沢山つまった好編集盤。
Allan HoldsworthからJohn Clarkへとギタリストが変わった後の79年に行われたニューヨークでの公演を収録したライヴ盤。Allan Holdsworthにも引けを取らないテクニカルな早弾きを聴かせるギター、ギターに負けじとスリリングなフレーズを応酬するJeff BerlinのベースとDave Stewartのキーボード、安定感抜群に疾走するBill Brufordのドラム。終始スリリングなフレーズで圧倒するテクニカル・ジャズ・ロックの名作。
ヴォーカル・ナンバーやカンタベリー色の強い10分を超えるナンバーの収録と多彩な楽曲を味わえる、バンド”ブラッフォード”最終作。80年作。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!