2015年4月11日 | カテゴリー:ライヴ・レポート
タグ:
4月10日、六本木のビルボードライブ東京にて行われたスティック・メンのライヴへと行ってまいりました。白熱したステージの模様を、本公演のライヴ写真と他国でのライヴ動画などを交えてお伝えしてまいります!
まずはスティック・メンについて。
70年代にはNYを拠点とするセッション・ミュージシャンとしてジョン・レノン&オノ・ヨーコやピーター・ガブリエルの作品などに参加、
そして80年代以降はキング・クリムゾン及びその派生プロジェクトのメンバーとして活躍を続けるベーシスト、
トニー・レヴィンを中心に07年に結成されたトリオ・バンド。現在までにライヴアルバムを含む5作品を発表しています。
メンバーは、結成メンバーであり94年以降クリムゾンを支えてきたドラマー、パット・マステロット。
そしてクリムゾン・プロジェクトのメンバーでもありスティックメンには2010年に加入、ドイツ出身72年生まれのスティック/タッチ・ギター奏者マーカス・ロイター。
スティック奏者2人+ドラマー(ドラム・スティック)という、スティックを演奏に用いる楽器編成がバンド名の由来となっています。
さらに今回はスペシャルゲストとして、クリムゾンの『太陽と戦慄』『暗黒の世界』『レッド』の3作品で緊張感みなぎるプレイを披露したヴァイオリンの名手、デヴィッド・クロスが参加。彼を交えて往年のクリムゾン・ナンバーも演奏されるとあっては、いやが上にも期待が高まります。
この日、東京周辺は生憎の雨となりましたが、会場は開演前からそれを全く感じさせない賑わいと熱気に包まれていました。
開演45分ほど前に会場に入ったのですが、空いていたのは数席程度ですでに満員に近い状態。フィッシュ&チップスとビールを堪能しつつ開演の時を待ちます。
トニー・レヴィンのスティック演奏は、一昨年に行われたクリムゾン・プロジェクト来日公演でのスティックメン・パートで一度見ているのですが、
今回はステージまでの距離がほんの十数メートル程度ということもあり、その指さばきをしっかりと見られるであろうことも大いに楽しみにしていました。
【関連記事】
3月15日にクラブ・チッタで行われた「クリムゾン・プロジェクト&アングラガルド」来日公演1日目に行ってまいりました。
その模様を他国でのライヴ動画を交えてお伝えしてまいります!
定刻に会場の照明がゆっくりと落ち、六本木の夜景が暗幕で覆われます。ステージが照らされると、そこにはマーカス・ロイターの姿が!
プログラミングのシンセフレーズをバックにして、彼の代名詞と言える8弦のタッチ・ギターが見事なサウンドスケープを描いていきます。
タッチ・ギターはスティックと同じくタッピング演奏に特化したギターで、弦をピックで弾く際のアタック感が出ない分より繊細で滑らかな演奏を可能にします。
サウンドやその演奏する姿からロバート・フリップを想像した人も多かったはず。
次に登場したのがデヴィッド・クロス。照明を反射して輝く白のエレクトリック・ヴァイオリンをセットし、演奏に加わります。
一聴して、格調高くも緊張感をたっぷりと孕んだヴァイオリン・プレイはまさしく彼特有のもの!
エフェクターをいくつも切り替え様々に音色を変化させる中でも、一音一音のニュアンスや音運びからはクロスにしか出し得ない風格が漂っています。
歴代クリムゾン・メンバー唯一のヴァイオリン奏者としての貫録溢れるプレイが感動を呼びます。
そして、いよいよトニー・レヴィンが登場!ゆっくりとスティックを抱え演奏を始めます。
印象的だったのがスティックの幅の広い指板を完全に覆ってしまうほど長く大きな指。さらに指板上でその大きな指がバラバラに、かつ驚異的な俊敏さで動く様子は見ていてもう圧巻の一言でしたね~!さすがはスティック演奏のパイオニア、その実力の程を開始早々見せつけます。こうしてスティックの滑らかな運指を間近でじっくり見ていると、弦楽器というよりはむしろ鍵盤楽器のようなある種の華麗さを感じさせてくれます。10本の指すべてを使って「はじく」ではなく「押す」プレイスタイルが、鍵盤上の指の動きに通じているんですよね。
そんなことを思っていると、ステージ後方からのそりと熊のような体躯のドラマーが現れます(失礼!) パット・マステロットのドラミングが加わると、即興的だった演奏が一気に締りのあるロック・テイストに。以前見た際にも思いましたが、マステロットのパワフルに振り下ろすようなドラミングはやはりライヴに映えますね~!テクニック、リズムセンス、ダイナミズムがバランスしたプレイには、クリムゾンで長く重用されるのも納得の実力の高さが感じられます。
最初の演奏が終了すると、その圧倒的なパフォーマンスに惜しみない拍手が送られます。のっけから各プレイヤーの持ち味満載で楽しませてくれました!
クリムゾン周辺で鳴らしたミュージシャンたちだけあって、インプロヴィゼーション・ナンバーは聴きごたえ抜群で素晴らしかったですよ~!
それぞれが思い思いに鳴らしているような音が次第に有機的に反応し合い、やがてスリリングなフレーズの応酬へと発展していくという、即興演奏の醍醐味をたっぷりと堪能させてくれました。演奏が白熱してくると仁王立ちになってさらにアグレッシヴなプレイを繰り出すレヴィン、激しい演奏を事も無げにポーカーフェイスでこなすロイターなど、各ミュージシャンの個性が垣間見れるライヴならでは楽しさにじっくりと浸ることができました。
さあ注目だったのが何と言ってもステージ後半。クロスが参加した70’s中期クリムゾンからのナンバーでしょう!
クロスが、先日リリースされたフリップとのコラボによるアンビエント・アルバム『スターレス・スターライト』を紹介するとともに次のナンバー「スターレス」の曲名を口にすると、客席から一際大きな歓声が沸き起こります。
ジャジーな静謐感漂うリズムにタッチ・ギターのうっすらとしたサウンドスケープが重なると、あの哀愁溢れるテーマをヴァイオリンが奏で始めます。オリジナルではフリップがギターで演奏していましたが、このヴァイオリンの悲哀を含んだ音色もまたこのテーマには抜群に合うんですよね~!どうやら上記のアルバムに収録されたアンビエント・アレンジ・バージョンだったようで、徐々に情感を高めつつ主題を繰り返すヴァイオリンがただただ涙を誘います。ここに来て、紛れもなく今目の前で素晴らしい演奏を聴かせてくれているのが、あのクリムゾンの名盤群でプレイしたヴァイオリン奏者なのだと実感を強くします。40年以上を経てオリジナルバージョンに参加したメンバーの演奏を生で聴くことができるって本当に貴重なことですよね。
もうこの時点で個人的な満足度はほぼMAXでしたが、まだまだ畳みかけてきます!続いては『太陽と戦慄』収録の「トーキング・ドラム」がスタート。スティックによる反復ベースフレーズが印象的なトライバルなリズムに乗って、ヴァイオリンがスリリングに舞う展開は、まさに原曲通りの素晴らしさ!加えてここでもエフェクターを多彩に切り替えて様々な音色を出すクロスのクリエティヴなプレイに圧倒されます。マステロットのドラムが徐々に存在感を増してきて、終盤はオリジナルをも凌駕する迫力で突き進む凄い展開に。最後はオリジナルの通りヴァイオリンが金切り声を上げます。ここまで来たらあの曲をやるのか!?どうなの?と思うと、一瞬間を空けて・・・来ましたっ!タッチ・ギターがザクザクと「あの」リフを刻み、名曲「太陽と戦慄パート2」へと突入していきます~!ここはもう鳥肌が立つほどにスリリング!
前曲で高まったテンションがすべて注ぎ込まれた破壊力抜群の轟音アンサンブルに、ヴァイオリンの激しいプレイがさらなる緊張感を加えていきます。レヴィンもここに来てテクニカルなスティックさばきを連発!STICK MEN自体はそれほどテクニック重視のサウンドではない分、クリムゾン・ナンバーでは各人持ち前の演奏技術を存分に発揮していたように思います。この曲が本来持つへヴィネスが余すことなく引き出された名演でした!終了後は文句なしの会場中スタンディング・オベーションによる拍手喝采。演奏中は終始表情を変えなかったロイターも最後は他のメンバーとともにニッコリと笑顔を見せてくれていました。
いや~、素晴らしかった!特にステージ中央で全編にわたりリード楽器の役割を果たしたデヴィッド・クロスのヴァイオリン・プレイが冴えわたっていました。あたかも元からバンドの一員であるかのようにSTICK MENのサウンドと見事一体となっていたのが印象的でしたね!そしてやはりレヴィンが操るスティック。まるでギターのような音が出たかと思ったら、次の瞬間にはベースラインを普通に弾いてて、時折ズゥゥゥンというファジーな低音が鳴ったりと、本当にいろんな音が出せるんですよね。スティックという楽器の魅力も堪能させてくれる演奏となっていました。
STICK MENの15年ワールドツアーの最初の公演として開催された今回の来日ライヴ。彼らは5月~6月には南米、9月~10月はヨーロッパ各国を回ることになっています。ぜひ、世界中のロックファンにこの素晴らしいライヴ・パフォーマンスを体験してほしいものですね!
all photos by Masanori Naruse
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!