2013年11月14日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
タグ: プログレ
一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。
本日は、フレンチ・プログレの名バンドCARPE DIEMによる75年のデビュー作『En Regardant Passer Le Temps(時間牢の物語)』をピックアップいたしましょう。
CARPE DIEMは、地中海沿岸でイタリアの左隣、フランス南東部ニース出身で、1970年に結成されました。
キング・クリムゾンのカヴァーを中心にアマチュアとしての活動を続けた後、本格的にオリジナル曲をやるようになり、Angeのマネージャーが設立したARCANEレーベル(後のCRYPTO)と契約し、75年に本作でデビューしました。
フルート/サックス奏者が在籍していて、クリムゾンのカヴァーをやっていた、というと硬質でアグレッシヴなジャズ・ロック/プログレをイメージしますが、このグループの持ち味は独特の幻想性と浮遊感をもった耽美的なアンサンブルにあります。
地中海沿岸の出身なのに、イタリアン・ロックのようなたおやかさはなく、終始、うつむきかげんで繊細なのは、ニースという土地柄なのでしょうか。同郷のグループにはSHYLOCKがいますが、彼らにも同じような質感があります。
そこでニースを調べてみると、紀元前にギリシャ人によって立てられた後、多くの戦争とともに支配者が代わる中で、ケルト人、ローマ人と民族も変わっていき、中世以降は、スペイン領、イタリア(サルディーニャ王国)領、フランス領と変遷し、今もフランスとイタリアの間でこぜりあいもある、という歴史があるようです。
そうした不安定な歴史が、このバンド独特のもの悲しさを生んでいるのかもしれません。そう考えると、同じく民族的に不安定な歴史を持つバスク地方のプログレ・バンドITOIZにも通じるものを感じます。
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では早速、音を聴いていきましょう。
まずはアルバム旧A面から、2曲目の「Reincarnation」。
時に冷たいトーン、時にチェンバロのようなクラシカルなトーンで楽曲を縁取るキーボード、流麗に紡がれるサックスやフルート、スティーヴ・ハケットのフレーズをロバート・フリップが弾いているようなリリカルかつフリーキーなギター、90年代のシューゲーザー(マイブラなど)を彷彿させるような繊細で内省的なヴォーカル。
朝もやにたゆたうような幻想性と宇宙空間の漆黒のようなクールさとが同居した独特の耽美的世界が印象的ですね。
旧B面は、ヘヴィさを増し、めくるめくアグレッシヴなキメの応酬を繰り広げますが、どこか浮遊感があるのがこのバンドならでは。
ラストの「Publiphobie」をピックアップいたします。このバンドはリズム隊も良いんですが、この曲でもドラムとベースが活躍しています。
ドラムは、シャープで音数が多くドラマティックながら、どこかもたつく感じがあって、終始危うさがあるのが特徴。これが、バンドの持ち味の耽美的サウンドにピタリとはまっています。
ミニマルなリフを中心に、ここぞで動きまくってアンサンブルにダイナミズムをもたらすベースも特筆。
いかがでしたか?
同じフランスでもパリのマグマなどとは全く違う世界観ですよね。
同郷出身のSHYLOCKもクリムゾンからの影響を元に、独特の幻想性を持つグループ。あわせてお楽しみください。
メロトロンによる幻想美はKING CRIMSONの静的な部分を想起させ、ロングトーンで静謐に広がるギターとキーボードが時に狂ったように暴れ出す展開は、PINK FLOYDのような麻薬的魅力を放出。
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