2022年6月9日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ロック・ファンの皆様を魅惑の音楽探求へとご案内する月間企画、6月のテーマは【素晴らしき英国ポップの世界】!
第1回目はホリーズの代表作『BUTTERFLY』から出発し、「ヴォーカル・ハーモニー」をキーワードに、ニッチな英国ポップをご紹介いたします。
ホリーズの魅力と言えば、何と言ってもグラハム・ナッシュ、アラン・クラーク、トニー・ヒックスによる三声ハーモニー!
完璧な調和を保ちつつも荘厳な感じはなくハートフルな聴き心地を持つ珠玉のハーモニーは、思わず聴き惚れてしまうほどの魅力がありますよね。
その美しくも優しいハーモニーのルーツを、彼らの生い立ちから探ってみましょう。
ホリーズはグレーター・マンチェスター州サルフォードで結成されたグループですが、メンバーの出身はいずれもランカシャー州の各都市。ランカシャー州はイングランドの中でカトリック教徒が最も多く住むエリアであり、幼少時より教会における聖歌隊音楽が身近にあった生活環境が想像されます。
きっとホリーズの一糸乱れぬ美しいハーモニーの素地には、子供時代から慣れ親しんだであろう聖歌隊音楽の存在が影響しているのではないでしょうか。
そしてホリーズの原点とも言える、グラハム・ナッシュとアラン・クラークが小学生時代に結成したコーラス・デュオ「Ricky and Dane Young」の手本となったのが、アメリカのエヴァリー・ブラザーズ。
彼らが得意としたカントリーで最も用いられるコーラス「クロース・ハーモニー」は、同じ歌詞を音程だけ変えて同時に歌うというもので、まさにホリーズがメインで聴かせるハーモニーの手法です。彼らの曲を聴けば、ホリーズのハーモニーおける軽やかで柔和なトーンもまた、彼らから受け継いだものであるのが分かります。
こうしてメンバーのルーツを見ていくと、「幼少より沁み込んだ音」と「アメリカ音楽への憧れ」が一体となり、あのホリーズのハーモニーが形作られたのではないかと思えてきます。
今回は、そんなホリーズによる最高のハーモニーが堪能できる彼らの代表作『BUTTERFLY』をご紹介いたしましょう♪
鍵盤、弦楽器、管楽器に加え、シタールや様々なSEなどがふんだんに取り入れられ、彩度を増したサウンドが持ち味でもある美しい三声ハーモニーと交わることにより、まるでお伽噺の中へ誘われるようなトリップ感を醸し出しています。
前作『EVOLUTION』に続き、本作もバンドの舵を強く握ったのはグラハム・ナッシュ。
本作を最後にバンドを去る彼の豊かな表現力の根源とも言えるような、英サイケ・ポップを代表する名盤です。
1曲目の「Dear Eloise」、冒頭の1フレーズで深い森の奥へと誘われます。
ハーモニウムによる優しさと怪しさが同居する不思議と温かなメロディー、少し距離のある位置から聞こえるカウントを合図に跳ねるようなギター、ベース、ドラムが登場し、アラン・クラークの伸びやかな歌声が響きます。
そこに絡むグラハム・ナッシュの美麗なハイトーン。
奥行きを持たせるトニー・ヒックスのコーラス。
寓話に迷い込んだかの様なサイケなトリップ感と、美しいヴォーカル&コーラスとのハーモニーもお楽しみいただける1曲です。
続いてご紹介するのは「Would You Believe」。
2本のアコギの奥から優雅に登場するヴァイオリン、どこか心ここにあらずな鈴の音。
美しいヴォーカル・ハーモニーはもちろん、前述したヴァイオリンに加え管楽器も混ざり、5本のメロディーが絡み合う極上のハーモニーをお楽しみいただけます。
その他の収録曲も素晴らしい楽曲ばかり。
フルートが奏でる小気味良いテンポ、シタールが醸し出すオリエンタルな空気、環境音SEなどなど、様々なアイディアが詰め込まれた、ホリーズの代表作としてあげられる名作です。
ホリーズのハーモニーを堪能したところで、他にも素晴らしい多声ハーモニーが彩る英ポップ作品が聴きたくなったかと思います。それでは、カケレコらしくちょっぴりニッチなところからご紹介してまいりましょう♪
HUDSON-FORDは、ストローブスのリズム隊であったジョン・フォード(Vo/B)とリチャード・ハドソン(Vo/G)が中心となり73年に結成。
ストローブスでドラムを叩いていたリチャード・ハドソンがギターを持ち、ジョン・フォードと共にフロントに立つこととなりました。
そんなソングライティング・コンビから生まれるポップ・サウンドは、「まさにプログレ・ポップ!」と呼ぶべき表情豊かな楽曲の宝庫。
そんな彼らが中心となり、73年にリリースしたデビュー作が『NICKELODEON』です。
ストローブス時代に培ったトラディショナルな哀愁も引継ぎながら、ポップにハードにと縦横無尽に駆けまわるキャッチーなメロディで溢れかえっています。
まずお聴きいただきたいのがこちら、冒頭からハードなリフが走り出す「Crying Blues」。
グルーヴィーなベース・ラインも相まって疾走感も抜群。
ジョン・フォードとリチャード・ハドソンの晴れやかな歌声が爽快に突き抜け、爽やかなハーモニーが加わります。
続いてはこちら、まるでストローブス?な「Solitude」。
儚げで美しいアコースティック・ギター・アルペジオに調和する、しっとりと優しいヴォーカルとコーラス。
もの悲しくも流麗なメロディーが耳から心に染みわたります。
更に奥へと進んでみましょう~。
メンバー全員が歌えるという、厚みのあるコーラス・ワークが魅力のキャパビリティ・ブラウンを前身とし、その中心メンバーが集まり結成したKRAZY KATが、76年にリリースした1stが「CHINA SEAS」です。
前身バンドの流れを引き継いだ豪華で複雑なコーラス・ワークに加え、ファンクやハードなど様々な要素を取り入れ、更には随所でキラリと光る捻りの効いた編曲と、ニッチと呼ぶにはあまりに豪華な間違いなしの傑作です。
また、本作のプロデュースはプロコル・ハルムやロキシー・ミュージック、セックス・ピストルズなどにも関わるクリス・トーマス。
彼が手掛けた一体感のあるサウンド・メイクも、本作の魅力のひとつとなっています。
それでは、ファンキーでグルーヴィーでソウルフルな「No Smoke Without Fire」をどうぞ。
メロディアスでファンキーなギター、踊りだしたくなるようなベースライン、小刻みにステップを踏むドラム、力強く伸びのあるヴォーカル&コーラスと、息をするのも忘れるほどの音の質量に圧倒されます。
特にご注目いただきたいのは、掛け合うように紡がれるヴォーカルとコーラス。
何人で歌っているのかわからないほど複雑で技巧的なコーラス・ワークが溶け合う、情報量の多い複雑で美しいハーモニーをご堪能ください。
畳みかけるような美メロのリフレインと、肉厚ヴォーカル・ハーモニーに落涙必須な「How They Crossed The Pole」も聴きものです。
優しく温かみのあるギター、ゆったりと歩くように柔らかなベース、包み込まれるようなヴォーカルに目を細めていると、空気を一変させるスネアが一発。
そこからは歌声の洪水、讃美歌やゴスペルにも近しい荘厳なコーラスに心が洗われます。
最後にご紹介するのは謎多きバンドの編集盤です。
音域の広い美声ヴォーカル、激しい展開の連続、厚みのあるギター・サウンドと、クイーンばりの豪華なサウンド・メイク。
活動当時、LPをリリースしなかったと言うのが信じられないほどの完成度。
後にUFOやステイタス・クォーに参加するメンバーも在籍していながら、当時の詳細はあまり語られていない幻のバンドなんです。
説明はとにかく、まずお聴きいただきたいのがこちら「BABY J」。
オーケストレーションされているかの様な分厚いギターに一音で心を掴まれます。
キレッキレのヴォーカルに複雑なコーラスが絡み、贅沢な歌声が束になって向かってくる感覚は圧巻の一言です。
まるでビーチ・ボーイズな「FOLLOW THAT CAR」もぜひ。
爽やかさに心地よい哀愁が折り重なるように調和するコーラス・ワーク&キャッチーなヴォーカル・メロディーが快走する、極上のポップ・サウンドを奏でます。
いかがだったでしょうか?
6月の特集の第2弾、BADFINGER『STRAIGHT UP』から「哀愁」をテーマにスタートする【素晴らしき英国ポップの世界】は6/16(木)にアップ予定、引き続きをお楽しみください!
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ホリーズの64年作「これがホリーズ・スタイル。」から始まって、キャッチーなメロディに美しいハーモニーがのるホリーズ・スタイルの作品をピックアップいたします!
廃盤希少、紙ジャケット仕様、SHM-CD、デジタル・リマスター、本編のステレオverを含むボーナス・トラック18曲、定価2592
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
廃盤希少、紙ジャケット仕様、SHM-CD、13年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック16曲、定価2400+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
6枚組、ブックレット付仕様
盤質:無傷/小傷
状態:良好
4枚は無傷〜傷少なめ・2枚は傷あり、ブックレットにケースツメ跡あり、若干黄ばみあり、ケースにスレあり
VELVET OPERA〜STRAWBSで活躍したRichard Hudson(G/Vo)、John Ford(G、B、Vo)の2人によるデュオ。73年作の1st。ポール・マッカートニー直系のメロディ・センスと英国的な哀愁がにじみ出たヴォーカル&メロディがとにかく絶品。Gerry Raffertyあたりに通ずる雰囲気を感じます。中域がまろやかなメロウなギターを中心に、ピアノ、ストリングス、キーボード、バンジョーなどが、メロディを優しく包み込みます。スウィートで憂いのあるハーモニーと哀愁のバンジョーが胸に染みる「Angels」、必殺のメロディと格調高くリリカルなピアノ&ストリングスが素晴らしすぎる「I Wanted You」、ポール・マッカートニーが作るアコースティックな小曲に通ずる「Let Her Cry」、鮮やかな展開が見事なビートリッシュな「Revedations」など、とにかくキャッチーなメロディ・センスと奥行きのあるアレンジが素晴らしすぎます。メロディアスな曲だけでなく、1曲目「Crying Blues」など、粘っこくファンキーなリズムがキャッチーなメロディに絡みつくハード・ポップも魅力的。ブリティッシュ・ポップのファンは絶対に買いの一枚。おすすめです。
VELVET OPERA〜STRAWBSで活躍したRichard Hudson(G/Vo)、John Ford(G、B、Vo)の2人によるデュオ。75年作3rd。1曲目「Did Worlds Collide ?」からポップ・ファンの心を鷲づかみELO風のシンセのイントロから始まり、ハードなギターが視界を一気に広げ、そこにスウィートでヌケの良いメロディ&ハーモニーが現れる!サビのキャッチー過ぎるメロディに思わずニンマリ。ちょっと変拍子入ったギター・ソロも勢いがあって、さらにニンマリ!この曲を聴いて心躍らないポップ・ファンは居ないでしょう!その他の曲もキャッチーなメロディの金太郎飴。2ndよりもグッと洗練され、メロディの魅力も一層増しています。ELOやPILOTあたりと比べても何ら遜色は無いブリティッシュ・ポップの名作!このデュオの作品にはずれ無し。
ヴォーカルやギターなどCAPABILITY BROWNの主力メンバーにより結成されたグループ。76年作1stと77年作2ndとをカップリングした2in1CD。美しいツイン・リード・ギターとドラマティックなコーラス・ワークによるポップ・プログレ、ヌケの良いギター・リフとキャッチーなメロディ&ハーモニーによるハード・ポップ、粘っこいファンキー・ロック、英国らしい憂いのあるメロディと流れるようなアンサンブルが胸にしみるフォーク・ロックなど、どの曲も印象的なメロディと味わい深いアンサンブルが絶妙な佳曲ぞろい。CAPABILITY BROWNのファンはもちろん、PILOTや10ccやBADFINGERやQUEENなどブリティッシュ・ポップのファン、ニッチ・ポップのファンはかなりグッとくるグループです。おすすめ
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