2022年6月12日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは。
今回お送りするのはANDWELLA’S DREAM~ANDWELLAを率いた英国のミュージシャンDave Lewis特集です。
サイケ・ポップ、ルーツ・ロック、AORとアプローチは違えど、そのフックに富んだソングライティング能力を発揮し英国ロック・ファンを魅了。独特の味わい深い歌声も魅力ですよね。ANDWELLA’S DREAMからのキャリアを辿りつつその魅力をご紹介してまいります!
1951年、北アイルランドはベルファストに生まれたデイヴ・ルイス。
テノール・シンガーだったという父とピアノの演奏に長けた兄の影響で幼少より演奏や曲作りに打ち込み、『JOHN MAYALL & THE BLUESBREAKERS WITH ERIC CLAPTON』を聴いたのをきっかけとして、当時隆盛を誇っていたブルース・ロックにのめり込みます。
67年には地元ベルファストのR&BバンドTHE METHODにギタリストとして加入し、本格的な音楽活動を開始。
なおこのTHE METHOD在籍中、彼が事故でアゴを骨折して演奏活動を休止していた際代役を務めたのが同郷の友人だったゲイリー・ムーア。ここでのステージが評価を受け、ムーアのプロ・デビュー・バンドとなるSKID ROWから声がかかったと云われています。
カバー・バンドとして活動していたTHE METHODでしたが、やがてデイヴによる自作曲を演奏することを目的にバンドはメンバーを再編。翌68年には拠点をロンドンに移し、ANDWELLA’S DREAMとして活動を開始します。
デイヴ・ルイスの名を聞いて多くの英ロック・ファンが最初に思い浮かべるのが、このANDWELLA’S DREAM(~ANDWELLA)のリーダーとしてではないでしょうか。
英サイケの傑作として当時高い評価を受けた69年発表のデビュー作『LOVE & POETRY』は、サイケデリックな熱気と英ロックらしいメロディアスな気品高さが融合した、70年代を目前にした狭間の時期を象徴するようなサウンドを聴かせる一枚です。
翌70年にはバンド名をANDWELLAに改名し、2ndアルバム『WORLD’S END』をリリース。本作より、ソロ時代でも持ち味となるアメリカ憧憬のルーツ・ロック/スワンプ・ロック色が顔を見せ始めます。英国的なリリカルな叙情性と骨太でアーシーな米ロック要素を程よく混合したスタイルが見事な名作です。
バンドは、ブリティッシュ・スワンプの名盤としてコアな英ロック・ファンからも人気の高い71年ラスト作『PEOPLE’S PEOPLE』を残し、72年に解散します。
ここでちょっと関連作をご紹介。
グレン・キャンベルのバックでバンジョー奏者として活躍した米SSW/ギタリストラリー・マクニーリが、英国に渡って制作した71年作には、アンドウェラからデイヴ・ルイスとデヴィッド・マクドゥーガル(p/organ)が参加。なんと『PEOPLE’S PEOPLE』から3曲をカヴァーしています。
オリジナルよりカラっとした雰囲気ですが、バックに流れる陰りあるオルガンが英国情緒を醸し出し、英米ルーツ・ロックが良い塩梅で溶け合った名作です。
ルイスはANDWELLA在籍中の70年に、1stソロ『SONG OF DAVE LEWIS』をリリースしていますが、この作品は当時500枚のみがプロモーション用にプレスされたのみに終わっています。(一説には50枚とも。03年に正式リリース。)
そして6年越しのソロ・アルバムとなったのが『FROM TIME TO TIME』です。本作で彼が共同プロデュースに迎えたのがクリス・レインボウ。
プログレ・ファンやAORファンならこの名前にピンと来るのではないでしょうか。ALAN PARSONS PROJECTやCAMELの作品にヴォーカリストとして参加したことで知られ、ソロ・ミュージシャンとしても高品質な英国ポップ/AOR作品をリリースした知る人ぞ知る名ミュージシャン/アレンジャーです。
そんなクリス・レインボウが手掛けたことで付与された洗練されたAOR風ポップ・エッセンスが、ルイス本来のスワンピーで渋みあるサウンドと絶妙に絡み合っているのが本作の最大の特徴。
各曲を聴いてまいりましょう!
味のあるサックスをフィーチャーした、洗練されたアーバンな曲調のおしゃれサウンドで新境地を見せる一曲。
本作中、最もクリス・レインボウのカラーが反映されているのがこの曲。彼が得意とした抜けの良いハーモニー・ポップなサウンドが大胆に取り入れられています。ハスキーなヴォーカルと弾むようにポップなサウンドの組み合わせは、ちょっぴりコリン・ブランストーンあたりを想起させませんか?
ANDWELLA時代そのままと言えそうな、このリリカルなバラード・ナンバーも出色。こりゃ泣けます。
こちらもグループ時代を思わせる英国的端正さが滲む珠玉の一曲。ANDWELLA時から時おり聴かせていたボブ・ディランを意識したようなヴォーカル・スタイルがハマっています。
前作から2年後の78年、3枚目のソロ・アルバム『A COLLECTION OF SHORT DREAMS』をリリース。
サウンド的には前作のスタイルを押し進めた、洗練されたアーバンなAOR調と土の匂いが香るスワンピーなフォーク・ロックを絶妙に同居させた作風で、そこに英国的な陰影を伴ったリリカルな表情も加わった、非常に多面的な魅力を持った一枚に仕上がっています。
それらの要素をすべて含んだ1~3曲目の流れも最高に素晴らしいのですが、個人的にグッと来たのが5曲目の「Whole Lotta Something」。
英国らしい影のあるメロディ、持ち前のハスキーヴォイスで切々と歌うヴォーカル、そして練り上げられた劇的な構成で聴かせる極上メロウ・スワンプに仕上がっているんです。
もちろん他の曲も味わいある名曲揃い。動画が上がっている他の2曲も聴いてみましょう。
AOR寄りの少し南国の香りがするナンバーですね。とは言え派手には展開せず最小限の音を用いたアンサンブルがうっすらと色付けするようなアレンジがとても素敵です。控えめな演奏とハスキーヴォイスがとてもマッチしています。
最終曲らしいスロウテンポで落ち着いたAORバラード。ゆったりリラックスした導入から熱っぽく歌いこむサビへの流れがドラマチック。名曲です。
本作リリースの後、78年に3rdソロ『A Collection Of Short Dreams』(未CD化)をリリースしたのが最後のアルバムリリースになりますが、その後は自身のバンドを率いてのライヴ活動や、ソングライターとしての才能を活かした他アーティストへの楽曲提供を行うなどして活躍。
特に知られているのが、ギリシャの名バンドAPHRODITE’S CHILDのメンバーとして活躍したシンガー、デミス・ルソスとの仕事で、「Happy To Be On An Island In The Sun」は全英5位を記録するヒットを記録しています。
04年には来日公演を成功させるなどソロ活動も平行しており、現在もロンドンを拠点にコンポーザー&パフォーマーとして活動を続けています。
しかしこれほどの輝かしい才能に恵まれたミュージシャン、新しいアルバムが手に出来たら嬉しいですね。
いぶし銀のSSW、Dave Lewis率いるグループ。ANDWELLA’S DREAMから短くANDWELLAと改名し、70年にリリースした2nd(ANDWELLA名義では1st)。レイト60sの名作だった前作からサイケ色が無くなり、その分、アーシーな哀愁がグッとましました。ジャズ、ブルース、フォークのエッセンスを取り入れた旨味いっぱいのサウンドとDave Lewisの英国叙情に溢れたメロディー&エモーショナルな歌声が聴き手の胸に迫ります。THE BANDからの影響を英国的な陰影で包み込んだ、英スワンプ・ロックの名作。これぞいぶし銀のスルメ盤!
いぶし銀のSSW、Dave Lewis率いるグループ。ANDWELLA’S DREAMから短くANDWELLAと改名し、71年にリリースした3rd(ANDWELLA名義では2nd)。アメリカ南部指向を強め、The Bandにも通じるようなルーツ・ロックを展開。それでいて英国ならではの叙情美や陰影は失われておらず、その融合感が単なるブリティッシュ・スワンプにとどまることなく、聴き手の心をとらえてきた傑作。
廃盤、紙ジャケット仕様、06年24bitデジタル・リマスター、定価2039+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
紙ジャケに小さい角潰れあり
69年発表の唯一のアルバム。69年といえば、サイケデリック・ムーヴメントが終焉を迎え、新たにプログレッシヴ・ロックへと向かっていく過度期。このアルバムはその時代の空気を見事に音像化した名盤です。サイケ・ポップの文脈で語られることが多い彼らですが、そういったカテゴライズでは収まりきれないポテンシャルを持った本格派。サイケデリック時代の名残を見せる美しく流麗なコーラス・ワークに加え、へヴィかつメロディアスなギターと重厚かつプログレッシヴなハモンドが、他の凡百サイケ・バンドとは一線を画すオリジナリティを主張しています。全編通して佳曲揃いですが、特に9曲目の「Andwella」は、60年代最後を飾る名曲。テープ逆回転の混沌としたイントロから、メロディアスなアルペジオが立ち昇る瞬間は鳥肌ものです。
ANDWELLA’S DREAM〜ANDWELLAのリーダー、デイヴ・ルイスの幻のファースト・アルバム。オリジナルは、プライヴェート・プレスの50枚のみという激レア作品。ANDWELLAの1stと2ndの間に制作されたということで、基本的にはバンドで聴けたアメリカン・スワンプの泥臭さと英国叙情が溶け合ったサウンド。ただ、ほとんどがピアノ、ギターによる弾き語りというシンプルな構成になっているため、メロディーとソウルフルなヴォーカルの素晴らしさがバンド以上に堪能できる作品になっています。「イギリスのアメリカ」サウンドが好みの方は必聴の名作!
英サイケ・フォーク・ロックの至宝ANDWELLAS DREAM〜ANDWELLAを率いたSSWが、CAMELやALAN PARSONS PROJECT作品への参加で知られるポップ職人クリス・レインボウを共同プロデュースに迎え制作した76年の2ndアルバム。ANDWELLA時代からの持ち味だったスワンプ・ロックやルーツ・ミュージックをベースとするコクのある米憧憬フォーク・ロックと、まさにクリス・レインボーの作風を思わせるAOR風の洗練されたポップ・エッセンスが違和感なく同居した、極上のサウンドを聴かせてくれます。力強くかき鳴らすアコースティックギター、存在感ある太いトーンでメロディアスに鳴らされるエレキギター、むせぶような渋いサックスなどが絡み合うアンサンブルはもちろん絶品ですが、スワンピーなサウンドによくハマるハスキーなヴォーカルは、弾むように軽快なリズムとキラキラしたメロディを持つポップなサウンドにもマッチしていて驚き。コリン・ブランストーンにも通じるような味わい深さを醸し出していて印象的です。さらにリリカルなピアノとストリングスを伴った格調高いバラードも素晴らしくて、ここでは英国SSWらしくナイーヴに歌い上げるヴォーカルにグッと来ます。英米ロックの要素が程よくブレンドされたサウンドを多彩なスタイルで歌いこなす、彼のヴォーカリストとしての才能を堪能できる名作。英国ポップ/SSWファンからスワンピーな米SSWファンにもおすすめできる愛すべき一枚です!
英サイケ・フォーク・ロックの至宝ANDWELLAS DREAM〜ANDWELLAを率いたSSWによる、78年リリースの3rdソロにして最終作。ソウルフルな女声コーラスやメロディアスに躍動するスライドギターをフィーチャーした軽快なAORナンバーの1曲目に始まり、持ち味のハスキーな憂いあるヴォーカルにグッとくるドラマチックなバラードの2曲目、そしてハモンドの音色もたまらないANDWELLA時代を彷彿させるスワンプ・チューンの3曲目!前作『FROM TIME TO TIME』でも聴かせた、洗練されたAORタッチの中に、土の香りがするスワンプ/フォーク・ロックを絶妙にブレンドしたサウンドを、本作でもたっぷりと楽しませてくれます。そんな中でも、5曲目「Whole Lotta Something」は特筆で、英国らしい影のあるメロディと切々としたヴォーカル、そして劇的な構成で聴かせる極上メロウ・スワンプに思わず涙が出そうになります。本作リリース後はライヴ活動やソングライターとしての活動にシフトしていく彼ですが、最終作というのが惜しまれる紛れもない大名盤。スワンプファンにもAORファンにも、これは自信を持ってオススメしたい逸品!
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