2018年3月11日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
KAKERECO DISC GUIDE、今回取り上げるのは、イギリス出身の新鋭マルチ・ミュージシャン/コンポーザーPete Jonesによるソロ・プロジェクトTIGER MOTH TALESによる17年作3rd『DEPTH OF WINTER』です。
まずは、そのサウンドをお聴きいただきましょう。
いかがでしょうか。まるで80年代頃のシリアスさもあるCAMELと現英国プログレの雄BIG BIG TRAINが出会ったような、モダンでロマンティックで雄大なシンフォニーが眼前に広がるこの感じ、何というイマジネーション…。
そんなTIGER MOTH TALESは、ノッティングガムを拠点に活動する英国人ミュージシャンPete Jonesによるソロ・プロジェクト。ヴォーカル、キーボード、ギター、ドラム(プログラミング)、サックス、クラリネット、リコーダーなど多彩な楽器を弾きこなす才能溢れるマルチ・インストゥルメンタリストです。
ただ、そのサウンドを聴く限りでは全く気づきませんが、実は彼、全盲のミュージシャンなのです。
80年に生まれたピートは、1歳のときに病気によって視力を完全に失ってしまいます。以来、主に聴覚を頼りにして生活を送っていたというピートは、幼いころより自然と音楽に親しみ、4歳のときにはピアノを弾き始めていたといいます。
学生時代には、学校での演劇行事や学園祭、コンサートなどで音楽活動を行い少しずつその才能を伸ばしていきます。
88年に開催されたBBC主催によるクリスマス・ソング・コンテストのジュニア部門で優勝したことが、本格的に音楽を志すきっかけになりました。
進学した音楽学校ではピアノとリコーダーを専攻、いくつかのバンドにキーボード/ヴォーカリストとして参加。
それからは、フィル・コリンズ、ポール・マッカートニー、ジョージ・マイケル、クイーン、ジェネシス、ビートルズ、カーペンターズなどのアーティスト/バンドから多大な影響を受けながら、自身のサウンドの追求を進めていきました。
そして学校卒業後の19歳の時に、友人の女性ヴォーカリストEmma Paineとともにデュオ・バンド「2 TO GO」を結成。
BBCのスター発掘番組で数度にわたりファイナリストまで残るなど実績を重ね、以後10年間にわたって英国のクラブやイベントでのステージで最も成功を収めているデュオとして人気を不動のものにしました。動画はそのスター発掘番組でのパフォーマンスの模様。
2010年頃より、2 TO GOでの活動と並行して本格的なソロ活動も開始。同年に初のソロ・アルバム『Look At Me Now』を発表します。
本作が一定の成功を収めたことでソロ・ミュージシャンとしても注目を集めることになったピートですが、彼の活動を特定の音楽ジャンルへと絞ろうとするプロデューサーらと対立、ジャンルにとらわれない自由な音楽活動を行いたかった彼はレーベルから独立します。
2013年に、ソロ・プロジェクトTIGER MOTH TALESを発足。プロジェクト名は彼の憧れのミュージシャンであるスティーヴ・ハケットの楽曲「Tiger Moth」にちなんだものです。
「ファンタジー」そのものと言っても過言ではない、幻想美に包まれたリリカルなメロディが躍動するサウンドは、シンフォ・ファンのハートを鷲掴みにするのに十分な魅力を放っていました。
続く15年リリースの2nd『STORY TELLERS: PART ONE』は、前作を上回るファンタスティックでドラマチックなサウンドメイクが全編を覆う傑作。2作目にして一部の隙もない完成されたシンフォニック・ロックを作り上げてしまいました。
そして2年を経た2017年に届けられた待望の3rdアルバムがこの『DEPTH OF WINTER』です。
前作で聴かせたコンポーザー&プレイヤーとしての実力はもはや揺るぎないものでしたが、今作も期待を裏切らないどころか大きく上回ってくる圧倒的な完成度。2曲を聴いてみましょう。
Hygge
キャメルのロマンティックな叙情美とBIG BIG TRAIN的な洗練されたメロディアス・プログレが出会いを果たしたような、ただただ極上のシンフォニック・ロック。ソロ・ミュージシャンらしいハンドメイドな手触りもちゃんと残っているのがまたいいんですよねぇ。
Migration
こちらはトラッド風の荘厳なテーマが印象深いややポップながら重厚感もあるナンバー。得意とするリコーダーが冴え渡っていますね。80年代前後のジェネシスも彷彿させるリズミカルなサウンドからは、フィル・コリンズの影響が感じられます。
こちらはアルバム収録曲ではありませんが、ジェネシスの名曲「Musical Box」のカバー。
そんなPete Jonesですが、2016年にはなんとCAMELのツアーメンバーに抜擢されます。TIGER MOTH TALESのアルバムを聴けば、これ以上は望めない人選であるのは間違いないですよね。
TIGER MOTH TALESとしての今後の活動も勿論楽しみですが、CAMELの一員としてどのようなサウンドをもたらしてくれるのかにも注目したいところです!
80年、英国はノッティンガムシャー生まれで、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザー、Peter Jonesによるプロジェクト。4歳の時にピアノをはじめて以来、8歳の時にBBCのジュニア作曲コンテストで優勝するなど、作曲を本格的に学び、ポップ・デュオとしての活動を経て、子どもの頃から好きだったジェネシスやクイーンをはじめ、BIG BIG TRAINやFROSTなどプログレ新鋭にも強く影響を受け、プログレッシヴ・ロックを指向して生まれたプロジェクトがTIGER MOTH TALESです。2014年末にリリースされたデビュー作から半年ほどで早くも届けられた2015年作の2nd。ブライアン・メイが乗り移ったようなエモーショナルなリードから、カイパなど北欧プログレにも通ずるリリシズム溢れるリードまで、歌心に溢れたエレキ・ギターを中心に、キーボードがコロコロと愛らしいフレーズから勇壮なフレーズまで幻想的に彩り、さらに管弦楽器が透明感溢れるトーンで瑞々しく鳴り、全体としてファンタジー小説に心躍るような音世界が次々と紡がれていきます。ピーター・ガブリエルを彷彿させるヴォーカル、叙情極まる美メロもまた感動的。初期ジェネシス、キャメル、クイーン、アラン・パーソンズ・プロジェクト、カイパなどのDNAを継ぐ、ファンタスティック・ロックの正統派。アンサンブルも歌もどこまでも美しく、童心に返ったように無垢な気持ちが溢れてきます。何という才能。これはプログレ・ファン必聴、というかメロディを愛する全音楽ファン必聴と言える大傑作!
80年英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーで、現在はあのキャメルの鍵盤奏者としても活躍するPeter Jonesによるソロ・プロジェクト。充実の20年EP『Stiil Alive』も記憶に新しい中でリリースされた2020年フル・アルバム!全楽器を自身で操りGENESISやCAMELを受け継ぐファンタジー度120%のシンフォ・サウンドを紡いできた彼ですが、今作ではグランドピアノとヴォーカルに専念、ピアノ弾き語りスタイルを最大限に生かす弦楽クインテットと共にレコーディングされています。クリアかつ重厚に響くグランドピアノとPeteの伸びやかでよく通る美声ヴォーカルを、ヴァイオリン/ヴィオラ/チェロが芳醇な音色を重ね合う溜息が出るように美しい重奏が包み込むスタイルは、しっとりとした聴き心地ながらどこまでもドラマチック。物悲しさと温もりが入り混じる美麗なメロディがとにかく際限なく溢れ出してきて、ずっと落涙寸前です。驚かされるのは、本格的なクラシックの素養に溢れた弦楽と完璧に調和するPeteのピアノ演奏。歌の伴奏にとどまらない息をのむように繊細な表現力に、改めてプレイヤーとしての素晴らしい才能を感じさせます。従来からは異色と言えるサウンドですが、Pete Jonesの歌声とメロディセンスを純粋に味わえる一枚です。名作。
ペーパーケース仕様、CD+DVDの2枚組、DVDはNTSC方式・リージョンフリー、DVDにはスタジオ・ライヴ映像/プロモ映像/インタビューを収録
レーベル管理上、ペーパーケースに小さい角つぶれがある場合がございます。ご了承ください。
1980年英ノッティンガムシャー出身、生まれて間もなく病気で視力を失ったマルチ・ミュージシャン&コンポーザーで、現在はあのキャメルの鍵盤奏者としても活躍するPeter Jonesによるソロ・プロジェクト。タイトルのとおり「春」をコンセプトにした22年作!前作は弦楽クインテットとの共演によるバラード系アルバムでしたが、今作は元来のTMTらしさが抜群に発揮された、GENESIS&CAMELを受け継ぐどこまでも瑞々しくファンタジックなメロディアス・シンフォニック・ロックを展開します。シンセが柔らかに美旋律を描き、アコースティック・ギターが煌めき、フルートやサックスが色彩を加えるGENESIS譲りの英国的気品たっぷりのサウンドを土台に、エレキギターのプレイに象徴されるCAMELのメロウな叙情表現を合わせたような珠玉の音世界は、相変わらず感動的なまでにファンタスティック。そして何と言っても、MOON SAFARIばりに清涼感いっぱいでフックに富んだメロディを歌い上げる、Peter Gabrielを彷彿させつつどこまでもクリアな美声ヴォーカルがいつもながら絶品です。1曲目「Spring Fever」はそんなTMTの音楽性を凝縮したナンバーで、緑が豊かに芽吹いていくようなテーマ通りのイメージを喚起させる名曲。『Trick Of The Tail』に入ってそうな「Mad March Hare」やビリー・ジョエルばりのピアノ弾き語り「The Goddess And The Green Man」なんかも素晴らしい。そして15分に及ぶ最終曲ではバンドメイトである御大Andy Latimerが参加、天上に響くような極上ソロを提供していて聴きものです。改めて、GENESIS&CAMELファンにとっては奇跡のような逸材であることを見せつける傑作!
キャメル、イット・バイツで活躍する英国出身のマルチ・プレイヤー、ピーター・ジョーンズのメインバンド、タイガー・モス・テイルズの「春の歌」制作時の別ヴァージョン集(インスト、アコースティック等)に最新ライヴ等を加えた限定スペシャル作品!ジョーンズが多大なる影響を受けた初期スティ−ヴ・ハケットの幽玄な世界に肉薄するようなテイクは。アルバム本編とは独立した本作ならではの独自の魅力を発揮したジョーンズの才能の深さを感じる出来!(レーベルインフォより)
80年、英国はノッティンガムシャー生まれで、子どもの頃から好きだったジェネシスやクイーンをはじめ、BIG BIG TRAINやFROSTなどプログレ新鋭にも強く影響を受けて音楽制作をはじめたマルチ・ミュージシャン&コンポーザーPeter Jonesによるプロジェクト。2014年のデビュー作。霧が晴れ陽光が降り注ぐ瞬間のような幻想性とともに晴れ晴れしさのあるヴィンテージなキーボードとスティーヴ・ハケットゆずりのリリカルなエレキギターで幕開け。北欧のムーン・サファリにも通じるファンタジックなアンサンブルから一転、ズンズンとヘヴィに突き進むギターリフが入るとともに、ドラムも力強さを増し、モダンなタッチの重厚なシンフォへと展開。その暗闇を抜けると、再び光りが差したようにメロディアスなリードが溢れ、ジェネシスばりのキメとともにフィナーレへ。オープニング・ナンバーから渾身の展開に引き込まれます。演劇的なヴォーカル・ワーク、クイーンばりのコーラス・ワーク、そして、古き良きジャズ・フィーリングが後半に壮大なシンフォニック・ロックへと帰結していく8曲目など、英国的な諧謔センスも織り交ぜるアレンジセンスも見事。イタリアのファビオ・ズッファンティや近年大活躍のオランダのクリスに続く才能と言っても過言ではない注目の新鋭。これは力作です。
ペーパーケース仕様、リリース10周年を記念してラストに新曲「Return To Chiswick」を追加収録した2024年盤!
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーPeter Jonesによるプロジェクト、待望の3rdアルバムとなる17年作!16年よりCAMELのメンバーとしてツアーにも参加する彼。前2作で聴かせたコンポーザー&プレイヤーとしてのレベルの高さはもはや揺るぎないものでしたが、いやはや今作も凄い完成度です。まるで80年代以降のシリアスなテーマ性を持ったキャメルを、ゴージャスなサウンドプロダクションで再現したかのような、モダンかつロマンティックで雄大なシンフォニック・ロックが眼前に広がるこの感じ…何というイマジネーション。BIG BIG TRAINあたりに通じるモダンでスタイリッシュな音像も活きていて、往年のプログレと現代のバンドらしいモダンなセンスがこれほど不可分に結びついたサウンドはそうそうないでしょう。これでもかとファンタジックなフレーズを紡ぎ出すキーボード、アンディ・ラティマーばりにドラマチックに泣くギター、芳醇に響くクラリネット&リコーダー、そして端正に歌い上げる美声のヴォーカル。彼一人で各楽器をこれだけ自在に操る才能にはただただ脱帽。各パートが次々と展開していく、映画を観ているような情報量の多い音像は前作からの持ち味ですが、それを複雑に感じさせない淀みなく流れるような緻密な構築性にも舌を巻きます。改めてとんでもない才能を見せつけられる思いのシンフォ傑作です。
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーで、現在はキャメルのキーボーディストとしても活躍するPeter Jonesによるプロジェクト。15年リリースの2ndアルバム『STORY TELLERS: PART ONE』の続編となる18年作4thがついにリリース。オルガンとアコースティックギター、彼の伸びやかな美声をメインに紡がれる比較的落ち着いた爽やかな演奏でスタートし、やや作風変わったかな?と思いきや、シームレスに突入していく2曲目から来た来た来ました…!音の粒子を繊細に散りばめたサウンドメイクの中、彼方から幻想的なギターとシンセが立ち上がってくるこの感じ。やはり並ではない才能を感じさせます。トニー・バンクスかと思うファンタジックで華やかなシンセ&オルガンとピーガブ風のユーモラスなシアトリカル・ヴォーカルが素晴らしすぎる『FOXTROT』に入っていてもおかしくない完成度の3曲目で、もうワクワクしっぱなし!そうかと思うと、アンディ・ラティマーばりの堂々たる泣きっぷりの哀愁ギターが大炸裂するナンバーも聴かせ、さすがキャメルの一員たる存在感も発揮しています。これを全て自身で作曲&演奏していることに、改めて驚きを禁じえません。さらに特筆は、TMT以前に彼が在籍した2 TO GOでデュオを組んでいた美声女性ヴォーカリストEmma Paineのゲスト参加。2曲で、2 TO GO時代を彷彿させる美しいデュエットも聴くことができ大変感動的です。ギターがこれでもかと叙情的に歌うシンフォニックで劇的なエンディングも見事だし、今回もTMTでしか味わえないファンタスティック&マジカルな音世界が堪能できる傑作に仕上がっています。初期ジェネシスやキャメルのファンには問答無用でおすすめ!
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