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ユニヴェル・ゼロ『Ceux Du Dehors(邦題:祝祭の時)』 – ユーロロック周遊日記

ベルギーが世界に誇るチェンバー・ロックの名グループ、ユニヴェル・ゼロの代表作、81年リリースの3rd『Ceux Du Dehors(邦題:祝祭の時)』をピックアップいたしましょう。

ユニヴェル・ゼロのリーダーは、ドラマーのダニエル・デニ。

ダニエル・デニは、ジミ・ヘンドリックスによってロックに目覚め、69年にソフト・マシーンを見たことが決定打となってバンド活動に打ち込みます。

70年代初期にはジャズ・ロック・バンドを結成。マグマのサポートをした際には、クリスチャン・ヴァンデからマグマに誘われるなど、当時からドラマーとして卓越していたようです。

クリスチャン・ヴァンデからの誘いに後ろ髪を引かれつつ、自身の表現を極めるために、73年、ユニヴェル・ゼロの前身となるグループを結成。独学で作曲を学び、74年にユニヴェル・ゼロと改名し、同年、『1313』でデビューします。

ジャズ・シーンではエレクトリック・ジャズ~フュージョンの流れ、ロック・シーンではパンク/ニューウェイヴの台頭という70年代半ば~末の2つの大きな潮流を背景に、独自のロックを構築する上でダニエル・デニが選んだ素材が近現代クラシック音楽とその根底にある非西洋的なバーバリズム。特に、ロシアのストラヴィンスキー、ハンガリーのバルトークによる<原始主義>に影響を受けます。

原始主義は、バロックの時代から19世紀までの長きにわたって西洋音楽の原則として貫かれていた調性(長調・短調)を放棄する20世紀はじめの潮流の一つで、非ヨーロッパ的(=非キリスト教文化的)なバーバリズムの視点に立ち、アングロ・サクソンによる文明社会への批判も込めながら、調性から解放された変拍子、不協和音が渦巻くエネルギッシュなサウンドを展開しました。

その代表曲が、ストラヴィンスキーの三大バレエ曲の一つ「春の祭典」。

ユニヴェル・ゼロの源流として、ちょっと聴いてみましょう。

4分20秒から5分までの強迫的なサウンドは、まるでチェンバー・ロック。

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パンク/ニューウェイヴが初期衝動に立ち戻ることで「ロック」を取り戻そうとした一方で、ヨーロッパの歴史を紐解き、西洋音楽や各地の民族音楽を素材として組み込みながら「ロック」を進歩させようとしたのが、ユニヴェル・ゼロも所属するヘンリー・カウ主催の音楽団体「R.I.O.~Rock In Opposition~」のバンド達と言えるでしょう。

81年にリリースした通算3枚目『Ceux Du Dehors(邦題:祝祭の時)』は、デビューからの暗黒チェンバー・ロックを極めた代表作であり、R.I.O.屈指の一枚と言える傑作。

前作の後にギタリストのロジェ・トリゴーがPRESENT結成のために脱退。本作よりKey奏者アンディ・カークが加入し、ベース、ドラムに、管楽器(オーボエ/バスーン)、弦楽器(ヴァイオリン)、キーボード(ピアノ/オルガン/ハルモニウム/メロトロン)を加えた5人編成で録音されます。

オーボエ/バスーン奏者は、オリジナル・メンバーで初期のサウンドの要と言えるミシェル・ベルクマン。本作を最後にバンドを抜けた後は、JULVERNE、AKSAK MABOUL、VON ZAMLAなどチェンバー/アヴァン・ロック・シーンの重鎮として渡り歩きます。

前作以上に運動性能を増したシャープかつスリリングなロック的ダイナミズムと、近現代クラシックに根ざした非西洋的暗黒ゴシック趣味が渦巻くサウンドは、テンションはちきれんばかり。

オープニングから、彼らの代表曲であり、チェンバー・ロック屈指の名曲と言える「Dense(濃厚)」で聴き手を一気に飲み込ます。

複雑極まりなくとめどない変拍子を繰り返しつつも、パンク勢にも負けない初期衝動的なダイナミズムも持ち合わせた凄まじすぎるドラムをバックに、バスーンとヴァイオリンが時に低域でウネリながら暗黒世界を描き、時に一気呵成に強迫的に畳みかけ、時に爆発寸前の静寂した密教的空気をたちこめる。新規加入したアンディ・カークが、ハーモニウム、オルガン、ピアノ、メロトロンを駆使しながら、強迫と静寂の間を行き交うバンドの表現を一際際立たせているのも特筆です。

この破壊的なテンションと緻密な構築美は、キング・クリムゾン「太陽と戦慄 パート1・2」と並び称されるべきワールドワイドな名曲とも言えますね。

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