11月9日に行われたエディ・ジョブソンのソロ公演1日目に行ってまいりました!
熱狂に包まれたライヴの模様を、オリジナル楽曲動画・過去のライヴ動画を交えつつ、お伝えしてまいります!
クラブチッタに到着すると、入り口前の通りにまで人が列をなすほどの超満員で、100%埋まった座席はもちろん、会場後方には座席を囲むように立ち見客がズラリ。
開演予定時間の17時を過ぎてもロビーは人で埋め尽くされており、それに配慮してか30分程度遅れての開演となりました。
これまで幾度かクラブチッタでのライヴを見てきましたが、これほどまでの人の多さは経験したことがありません。この時点で、数々のバンドで名演を残すエディ・ジョブソンというミュージシャンの人気の高さを早くも実感します。
会場が暗転すると、正面スクリーンにエディがこれまでに在籍したバンドのライヴ映像/PVで構成されたヒストリー映像が流されます。カーヴド・エア、ロキシー・ミュージック、キング・クリムゾン、ザッパ・バンド、U.K.、ジェスロ・タル、イエス、ソロ作品~その他の参加プロジェクトと、40年間のキャリアが凝縮された内容に期待が高まります。最後にヴァイオリン・ソロの映像がフィーチャーされ、それに重なるようにヴァイオリンを弾きながらエディ・ジョブソン本人がステージに登場!自身のバンドUKZのメンバーとともに、一気にダイナミズム溢れる演奏へと突入します。オープニングナンバーは、ジョブソンがカーヴド・エア在籍時に唯一参加した73年作『AIR CUT』からの「ARMIN」です。
腹の底に響くようなハードロックばりの迫力満点の演奏に、ジョブソンのエレクトリック・ヴァイオリンが流麗に舞います。彼のヴァイオリンはどれだけ音数の多い激しいプレイにも英国のミュージシャンらしい気品をまとっているように感じられるのが素晴らしいところで、ライヴならではのエネルギッシュさとトラッドのエッセンスを含んだ楽曲本来の端正な魅力が絶妙にバランスしたアンサンブルに、会場中早くも興奮を抑えられません!
続く「IT HAPPEND TODAY」で、カーヴド・エアの女性ヴォーカリスト、ソーニャ・クリスティーナが登場します!その歌声は往年と変わらぬパワフルかつ妖艶な魅力を放つもので、彼女のヴォーカルが加わって会場は一気にカーヴド・エア独自の世界へと引き込まれます。ハードロッキンなギターリフが痛快な「U.H.F.」では、アグレッシヴに切り込むエレキヴァイオリン、シンセと流麗なタッチのピアノを自在に操るジョブソンのマルチプレイヤーぶりが見事!
次曲「ELFIN BOY」は、ソーニャによる妖艶かつ陰影に富んだ弾き語りに、どこか物悲しいベースとジョブソンによるブリッティッシュ・ロック然とした哀愁が滲むシンセが加わっていく演奏は、会場を一瞬にして英国の深い森へといざないます。これぞ英プログレの魅力!堪能いたしました~。
続く「METAMORPHOSIS」は、ジョブソンのクラシカルなピアノプレイから白熱のバンドアンサンブルが展開される構築性に富んだ大曲。冒頭のクラシカルで凛としたプレイからホンキートンク調の軽やかなプレイまで自在なピアノ、アンサンブルをブリティッシュな陰影で包むオルガン風のシンセなど、彼の卓越したキーボードプレイに終始脱帽です。カーヴド・エア・ナンバーが終了し、割れんばかりの拍手を背にソーニャがステージを後にします。
続いては、UKZのヴォーカルAaron Lippertが加わり、ロキシー・ミュージックの「OUT OF BLUE」をプレイ。この時期のロキシーに近いパワフルでソリッドかつどこかコミカルな演奏に加えAaronもブライアン・フェリー独特の唱法を再現しており、ロキシー度の高いパフォーマンスとなっていました。そしてドライヴ感いっぱいのジョブソンのヴァイオリンがやはり絶品!オリジナル・ヴァージョンより40年を経たとは思えない、往年に迫る躍動感いっぱいに弾む演奏が素晴らしかったです。
そして、分厚いシンセが会場を覆ったかと思うと、いよいよU.K.ナンバーが登場!超絶変拍子シンセソロが炸裂する「PRESTO VIVACE」です。ここでのジョブソンによるシンセプレイのスピード感とキレの良さは、まさに往年そのものと言うべきもの。会場もその圧倒的な超絶技巧に熱気に包まれます。そしてそこから雪崩れ込むように1stのオープニングを飾る「IN THE DEAD OF NIGHT」へ。ここでついにジョン・ウェットンその人がステージに姿を現します。ジョブソンの登場時に迫る大喝采で迎えられ、フロントのポジションに向かうウェットン。
ウェットンの男性的で通りのいいヴォーカルが会場に響き渡ります。現在もエイジアやソロで精力的な活動を続けている彼ですが、その歌声も70年代当初に引けを取らない活力に満ちた素晴らしいもの。これには思わず感動です。気迫みなぎるMarco Minnemannのドラミング、ジョブソンの硬質なトーンのシンセ、ギタリストのAlex Machacekによるホールズワースを完璧に再現したギターソロも相まって、オリジナルU.K.を見ているかのような感覚を味わえました。こ、これは痺れます~!!そこから「BY THE LIGHT OF DAY」~「PRESTO VIVACE/REPRISE」までをプレイ。いや~この流れはもう鳥肌ものです・・・。
ギタリストが退場し、ジョブソンとウェットン、ドラムのミンネマンの3ピース編成に。ここからは2nd『DANGER MONEY』の楽曲が披露されます。
まずは「RANDEBVOUZ 6:02」。ジョブソンのなめらかなピアノの旋律に、英国的な憂いを帯びたウェットンのヴォーカルが映えます。やはりウェットンの歌声は叙情的なナンバーでも映えますね~。数々の作品でそのヴォーカルの素晴らしさには触れてきましたが、こうして生で聴いて改めて英プログレ界の誇る名ヴォーカリストだと実感。
同じく2nd収録の大作「CARRYING NO CROSS」もプレイ。ウェットンの切々とした歌唱から始まり緊張感みなぎるインストパートへと突入していく名曲ですが、中盤で突如中断。どうやらキーボードのプログラミングがうまく機能しなかったようで、調整のため一旦ジョブソンがステージを後にします。
すると、残ったリズム隊の2人が即興でピンク・パンサーのテーマを演奏、ウェットンのあの決まり文句「キミタチサイコダヨ!」も飛び出し、会場を大いに沸かせます。そこからMinnemannの超絶的なドラムソロへと発展。圧倒的な手数を誇りながらも一音一音が重くタイトに響くプレイは、U.K.の2代目ドラマーテリー・ボジオを彷彿させるすさまじいもの。その間談笑するような素振りを見せ会場の笑いを誘うジョブソンとウェットン。突発的なアクシデントもこうして観客を楽しませるパフォーマンスへと転化させてしまうところに、彼らの高いミュージシャンシップを感じさせます。
「CARRYING NO CROSS」の後半を演奏し、ジョン・ウェットンがステージを降ります。U.K.の「ALASKA」~ソロ作品「GREEN ALBUM」「THEME OF SECRET」収録のナンバーへ。ここではジョブソンがヴォーカルを取り、シンセポップ調の楽曲によくマッチするハイトーンを聴かせます。クラシックそのものな端正なピアノソロ曲やヴァイオリンが奏でる美旋律が素晴らしすぎるナンバー「NOSTALGIA」など、彼のマルチ・ミュージシャンとしての力量が余すことなく発揮されたプレイの数々に圧倒されます。
その後は、Aaron Lippertが再び加わって、ジョブソンがクリムゾンのスティック奏者トレイ・ガンと結成したUKZのナンバーを数曲プレイ。自分たちの楽曲ということで、躍動感あふれる活き活きとしたプレイを聴かせるバンド。轟音を響かせながらへヴィに畳みかけるプレイは、さすがトレイ・ガンが関わったバンドというだけあって、90年代以降のクリムゾンに通じる硬質ながらも肉感的な重厚さに満ちています。ディストーションギターかと思うようなジョブソンの歪んだヴァイオリンプレイも強烈でした~!
さらに素晴らしかったのがアンコール!まずはソーニャ・クリスティーナを再度迎えての「YOUNG MOTHER」。ヴァイオリンとソーニャのヴォーカルとのコンビネーションが絶品の一曲。続いてジョン・ウェットンが再登場し、2ndの「CAESAR’S PALACE BLUES」をプレイ。ここではウェットンの男性的な声質を生かした力強く張りのあるヴォーカルを披露してくれました。テクニカルに切り込んでくるヴァイオリンにも耳を奪われます。エレクトリック・ヴァイオリンの奏でる美旋律が胸に迫る「FOREVER UNTIL SUNDAY」(BRUFORD)も特筆ものの素晴らしさでした~。
これで終わりかと思いきや、観客の再度のアンコールを望む声に応え再びステージに登場したジョブソンとウェットン。U.K.の「NOTHING TO LOSE」と本日2度目の「RANDEBVOUZ 6:02」を演奏してくれました!最高潮に盛り上がってガシャーンと終わるのがライヴの定番ですが、ジョブソンによる清らかなピアノとウェットンの叙情的な歌声が織りなす「RANDEBVOUZ 6:02」のしっとりとした余韻たっぷりの終わり方が、今回とても素敵でした。
ライヴ終了が20時半ごろ。計3時間に及ぶエディ・ジョブソンソロ公演一日目は、客席総立ちでの大歓声のうちに幕を閉じました。いやはや、全編にわたり素晴らしい演奏を披露してくれた大満足のステージでした!
印象的だったのが、曲と曲の間や機材調整の間も、ジョブソンは頻繁にジョークを交えたトークを披露し、度々会場を笑いに包んでいたこと。そのアーティスティックな作風や多くのバンドを渡り歩いた経緯から、芸術家肌の気難しい人物像を想像していたのですが、非常に気さくでユーモアに富んだ彼の本来の姿が垣間見れたのが、何とも嬉しいところでした。そう言えば、今年4月にイタリアン・ロック・フェスティヴァルで来日したマウロ・パガーニにも同様の印象を抱いたのを思い出します。
ジョブソンの気品高く舞うヴァイオリンや変幻自在のキーボードさばきを始め各プレイヤーのテクニック/表現力は折り紙付きですが、そこに英プログレらしい陰影に富んだ叙情性が息づいているのが何より感動的だったし、ソーニャ・クリスティーナ&ジョン・ウェットンという2人のゲスト・ミュージシャンの衰えを感じさせないヴォーカルにも感激しっぱなしでした。ジョブソンは現在58歳、ウェットンは64歳ですが、ミュージシャンとして非常に良い状態を保っていることが、今回のパフォーマンスからは伝わってきました。
感動のパフォーマンスをありがとう、エディ!これからもその豊かな才能をもって、魅力あふれるサウンドを届けてくれることを期待しています!
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