「MEET THE SONGS」 第27回 CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND『SAFE AS MILK』

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今日の「MEET THE SONGS」は、キャプテン・ビーフハートの67年デビュー作『SAFE AS MILK』をピックアップいたします。

キャプテン・ビーフハートは、本名ドン・ヴァン・ヴリートで、1941年カリフォルニア生まれ。
高校時代にフランク・ザッパと出会い、デルタ・ブルースなど音楽や映画を2人で探求しながら、芸術の道を志していただようです。

64年の時、ザッパからつけられたのが、「キャプテン・ビーフハート」。

65年にマジック・バンドに加入して、66年にA&Mと契約し、2枚のシングルをリリース。1stシングルのBo Diddleyのカヴァー「Diddy Wah Diddy」がカリフォルニアでローカルヒットします。

アルバム用のデモを制作するものの、A&Mは「ネガティブすぎる」としてリリースを拒否。ブッダ・レコードへと移籍します。

そうして制作されたのが、この『SAFE AS MILK』。

プロデュースは、後にリンゴ・スター『リンゴ』やニルソン『ニルソン・シュミルソン』（「Without You」収録）などで売れっ子になるリチャード・ペリー。彼のプロデューサーとしての初仕事になります。

メンバーには、正式ではないものの若きライ・クーダーがギター＆アレンジで参加しているのが特筆。

キャプテン・ビーフハートと言うと難解なイメージがありますが、本作で聴けるのは、ガレージ感たっぷりの奔放かつエネルギッシュなブルース・ロック！

ブルースというには奔放すぎるキャプテンの荒々しいダミ声ヴォーカル、そして、ライ・クーダーによるジェフ・ベックもびっくりなキレキレなギター。ソウルやジャズが入って深みを増したり、同年リリースのドアーズ「ブレイク・オン・スルー」ばりのエッジと熱気で畳みかけたり、管弦楽を入れてマジカルなソフト・ポップも聴かせたり、もうやりたい放題。

カンのダモ鈴木やソフト・マシーンのケヴィン・エアーズにも共通する社会性無視の猥雑感もたっぷりで、サウンドに圧倒的な熱量を与えています。

これぞ元祖オルタナティヴ＆アヴァンギャルド。

黒人ブルースに憧れ、真正面から相対し、同じサウンドを鳴らすことを目指した英ブルース・ロック勢とは違い、ブルースはあくまで素材に、好き放題に料理しちゃうブルース解釈は、本国アメリカならではと言えるでしょう。

早速、音を聴いていきましょう。

まずはオープニングの「Sure ‘Nuff ‘N Yes I Do」から！ガレージ・ブルース・ロック！

3曲目「Call On Me」。

こんなにも強烈なダミ声だけど、さりげなく管弦楽が入って、すごくポップ。

6曲目「Electricity」。シタールにテルミンに狂気のダミ声。ライ・クーダーのリズム・ギター、サザン・ソウル直系のしなるようにグルーヴィーなドラム。猛烈アシッド・ロック！

いかがでしたか？

この後、モンタレー・ポップ・フェスに出演しますが、キャプテンが奇行によりステージを去ってしまって、ライ・クーダーが激怒し、キャプテンとはもう一切演奏しないことを決意。キャプテンとライとの奇跡的なコンビはここまでとなってしまいます。2人がぶつかりあつ化学反応が強烈だっただけに残念！

この時期のライ・クーダーの作品もついでにピックアップ。ライ・クーダーはその後のソロも素晴らしいですし、知名度でははるかに劣りますが、英3大ギタリストにも負けない名ギタリストでありコンポーザーですね。

RISING SONS FEATURING TAJ MAHAL & RY COODER

本作と同時期に録音されたRISING SONS時代の幻のデビュー作。

TAJ MAHAL『TAJ MAHAL』

RISING SONS解散後のTAJ MAHALの68年ソロ・デビュー作。ライ・クーダーの他、ジェシ・エド・デイヴィスも参加していて、最高にゴキゲンで旨味溢れるブルース・ロックが堪能できる傑作。

「MEET THE SONSG」は、月曜日から金曜日まで毎日、定番からニッチ盤まで僕らのロック・ミュージックを紹介しています。
また来週、お会いいたしましょう。