2022年9月14日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
今日の探求のスタート地点は、英国ジャズ・ロックの人気グループSOFT MACHINEでいきたいと思います。
サイケデリック・ジャズ・ポップと呼ぶべき1st~2nd期、フリー・ジャズや実験音楽の要素を反映し英国流儀のジャズ・ロックを確立した3rd~5th期、シンセやエレピを積極的に導入しフュージョンに呼応した6th~7th期、ギタリストを擁しテクニカル・ハード・フュージョンを繰り広げた8th(Bundles)~9th(Softs)期と、その変遷はまさに英国ジャズ・ロックの歴史そのものと言って良いでしょう。
今回は、おそらくもっとも人気があるだろう『Third』~『Fifth』期ソフト・マシーンがお好きな方に特にオススメしたい、ジャズ・ロック作品を見ていきたいと思います。
それではソフト・マシーンの歴史的名盤からスタート!
英国ジャズ・ロックの代表作にして、「カンタベリー・ロック」というジャンルを確立させたと言っても過言ではない歴史的傑作!
1st~2ndの頃の遊び心に富んだサイケデリックな手触りと、フリー・ジャズのミステリアスで深遠な質感が絶妙にミックスされていて、「硬派だけど聴きにくくない」奇跡的な一枚!
イタリアからは21年にリイシューされたこの一押し作品をご紹介!
『Third』あたりのソフツに仄かな民族テイストを纏わせたような、渋くも躍動感あるジャズ・ロックが実にカッコ良し。
英ジャズ・ロック譲りの職人気質とラテン・ジャズみたいな奔放さが合わさったこのサウンド、他じゃなかなか聴けません。
カケレコ・ロングセラーとなっているこちらの伊ジャズ・ロックもいいですよ~
ソフト・マシーン『4th』収録の悶絶オープニング・ナンバー「Teeth」が好き?
でしたら、このマイナーなイタリアン・ジャズ・ロック・グループ、気に入ってくれると思います☆
中期SOFT MACHINEやBRAND Xなどのジャズ・ロックをベースに、地中海のヌケの良さを加えたサウンドは、相当のレベル!
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フランスには猛者たちが英国ジャズ・ロックを志向したこの名盤がありました!
ヨシコ・セファー率いるバンドなのでマグマ~ザオ直系かと思いますよね?
ところが彼の朗々と歌うようなサックスはかなりE.ディーン風だし、ギターの奔放に音数を詰め込む速弾きはかなりJ.グッドソールだし、ベースもP.ジョーンズばりにうねっていて、これは中期ソフツやブランドXファンに直撃。
エイジャズ・ロック・ファンには是非聴いて欲しい!
北欧からはあの巨匠ギタリスト率いるグループのニッチ盤をどうぞ!
若きテリエ・リピダルが率いたマイナー・グループ。
これがズバリ『4th』あたりのソフツやマハヴィシュヌへの挑戦状とも言える、北欧フリー・ジャズ/ジャズ・ロックの悶絶盤!
ダークで緊張感みなぎるリズム隊、そしてシャープかつアグレッシヴに切り込むテリエのギターが鳥肌モノ!
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ベルギーからは、エルトン・ディーンと共演も果たすこの新鋭がおすすめ!
まるで「Third」期ソフツを「太陽と戦慄」期クリムゾンばりのヘヴィネスで再解釈したみたい!?
ダブル・サックス編成のベルギー新鋭による迫力満点のヘヴィ・ジャズ・ロック19年作!
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一気に南米アルゼンチンへ移動!
アルゼンチン屈指のバンドネオン奏者による77年ライヴを収録!
『Fourth』~『Fifth』の深遠なフリー・ジャズ・ソフツにロマンティックなバンドネオンを絡ませたようなパフォーマンスは、情熱と優雅さを兼ね備えていて素晴らしいです。
ESPIRITUのオリジナルメンバーGustavo Fedelによるピアノも要注目!
最後は我が国日本からとっておきの一枚を!
ジョン・ゾーンに学んだ女性サックス奏者が率いる日本のアヴァン・ジャズ・クインテット!?
ソフツ『3rd』に入ってそうなしなやかなテーマを持つジャズ・ロックに挑戦的なノイズ・サックスが乗っかる5曲目はきっとジャズ・ロック好きは堪らないはず。
前衛的ではありながらも突き放すような孤高さはなく、ヒューマンな表情に富む演奏が秀逸な一枚!
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音楽ライター後藤秀樹氏による連載コラム「COLUMN THE REFLECTION」。今回は少し趣向を変えて、北海道発のジャズ/アヴァン・ロック系レーベル、nonoyaレコーズの作品に注目してまいります!
いかがだったでしょうか。
気になる作品が見つかりましたら幸いです☆
CARAVANと同じWILD FLOWERSを母体にRobert Wyattらによって結成されたグループであり、サイケデリック・ロックからその音楽性を変化させカンタベリー・ジャズ・ロックの代表的存在へと飛躍していったバンドによる70年3rd。Elton Deanに加えて、Nick Evans、Lyn Dobson、Rad Spail、Jimmy Hastingsという管弦奏者を充実させた8人体勢で録音された本作は、20分に迫る大曲4曲で聴かせる意欲作であり、初期のサイケデリック・ロックの音楽性を下地にしながらも、構築されたジャズ・ロック・アンサンブルと適度なアヴァンギャルド志向が融合した傑作です。
2枚組、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲
盤質:傷あり
状態:良好
側面部に色褪せあり、小さいケースツメ跡あり
イタリアのグループ、81年作。手数多くシャープなドラム、時にリードも取るアグレッシヴなベース、軽快かつ流麗なインタープレイからグルーヴ感溢れるバッキングまで印象的なエレピ&ピアノ、グイグイと引っ張る力強いサックスによるジャズ/フュージョン・ロック。変拍子のキレの良さなど、テクニック抜群。4thあたりのSOFT MACHINEやBRAND Xなどの英ジャズ・ロックをベースに、地中海のヌケの良さを加えたサウンドは、かなりレベル高いです。クロスオーバー寄りのジャズ・ロックが好みの方は必聴のグループ。おすすめです。
MAGMA〜ZAOのサックス奏者ヨシコ・セファーが同じくZAOのベーシストJoel DugrenotやキーボーディストJean-Louis Bucchiらと結成したプロジェクト、74年作1st。本作はMAGMA影響下のサウンドを聴かせる所謂ズール系ジャズ・ロックとはやや毛色が異なり、フリージャズ色はあるものの中期SOFT MACHINEやBRAND Xなど英国ジャズ・ロックに接近したサウンドを聴かせるのが特徴です。セファーのサックスもエルトン・ディーンを思わせる朗々とした歌うようなプレイが印象的だし、ギターの奔放なフレージングセンスや音数を詰め込むような速弾きはかなりジョン・グッドソール的だし、ベースは曲によってはもろパーシー・ジョーンズだったりと、アンサンブルの端々に英国ジャズ・ロック的な流儀が感じ取れるのが本作の面白み。しかしフレンチ・ジャズ・ロック・シーンの猛者たちだけあって隙のないサウンドに仕上がっているのはやはり流石と言うべきでしょう。フレンチ・ジャズ・ロックとしては異色ながら、英国ジャズ・ロックの名盤たちと同列に聴かれるべきクオリティを持った好盤です。
イタリアはローマ出身、サックス/フルート奏者を含む5人組ジャズ・ロック・バンドが74年に残した唯一の作品。『Third』〜『Fifth』あたりのSOFT MACHINEに、パーカッションによる民族音楽テイストを纏わせたような、渋くも躍動感あるジャズ・ロックが個性的です。サックスとピアノによる即興風の緊張感ある掛け合いが、不意にパーカスを伴って陽気に舞い上がる展開が面白く、英ジャズ・ロック譲りの職人気質とラテン・ジャズのような奔放さが代わるがわる現れるスタイルは他ではなかなか聴けません。華麗でメロディアスなテーマが印象的なM1、スピーディなアンサンブルに乗ってヴァイオリンがスリリングに弾きまくるパートを持つM4などは、ARTI E MESTIERIも彷彿。『Third』期SOFT MACHINE好きの方には是非聴いてみて欲しいです!
巨匠ジョン・ゾーンにも学んだ女性サックス奏者で、鬼才ドラマー吉田達也との活動でも知られる、吉田野乃子が率いるエレクトリック・ノイズ・ジャズ・ロック・バンド、18年作。師匠譲りと言えるノイズ・サックスの存在感に圧倒されるアヴァンギャルドで強靭なジャズ・ロックを展開。爆発的な手数で疾走するドラムと地を這うように唸るベース、硬質かつどこか陰影を帯びたタッチのギター、芳醇かつミステリアスな響きのエレピ。そしてサックスは、肉声による絶叫にさえ聴こえてくる生々しいプレイが不意にエルトン・ディーンのような軽やかでメロディアスなプレイへと自在に姿を変える、その切り替わりが実に見事です。ソフツ『3rd』に入ってそうなしなやかなテーマを持つジャズ・ロックに挑戦的なノイズ・サックスが乗っかる5曲目はきっとジャズ・ロック好きは堪らないし、スリリングかつちょっぴりユーモラスな即興演奏も随所で飛び出してきて聴き所満載。前衛的ではありながらも突き放すような感じはなく、人間的な表情に富む演奏が秀逸な一枚です。
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