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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第四十五回 TRIPSICHORD『TRIPSICHORD』(アメリカ)

えー、毎度ばかばかしいお笑を一席。なんだか新型コロナウイルス感染症がエライことになってますなぁ。毎日感染者数や死亡者数の記録更新て、オリンピックやないんやから、こういう記録更新は嬉しくないもんです。それにしても、お上のやることは冴えてまんなぁ。経済を回しながら、感染症も蔓延させない、そのために考えた最善の政策が、「感染症にかからないよう、国民にお願いする」だっせ? ほんまに、大したもんやおまへんか。

例えばやね、ある弱小野球チームの監督が、相手に勝つ秘策として、「よし、相手チームに負けない方法考えたぞ、相手チームに負けるなって選手にお願いしよう!」なんて言うたら笑われまっせ。例えが悪い? それやったらこんなんどうです。社員の多くが遅刻するんで困ってた社長がいてて、仕事は頑張ってもらいたいけど遅刻はよろしくない。そこで社長の考えた策が、「遅刻しないでと、社員にお願いする」やとしたら……これは大喜利としても笑えませんわ。
 そういえば、ある知事が言うた「ウイズ・コロナ」というスローガンを批判している人もおりましたわ。死に至るウイルスとの共存と共生って、そんなもんありえるかいな、と。そら、そうですわな。WHOがやね、「ウイズ・ペスト」とか「ウイズ・エボラ」なんてスローガン出したら、何考えとんねん?ってなりますわな。

それに比べれば、「Go Toキャンペーン」というのは、スローガンとしては魅力的で人を惹きつける言葉らしいですわ。まあ「Go To キャンペーン」にも色々あるそうで、「Go To トラベル」に「Go To イート」とかね。でも今イチバン国民に利用されてるのは、「Go To コロナ」やそうでっせ。いやいや、アホなことばかり申しました。おあとがよろしいようで。

と、高座を降りたところで目がさめた、と夢オチにしたいところだけど、これが現実だったりする。これを書いている12月8日の時点で、僕が住んでいる大阪は、大阪モデルの「赤信号」が点灯。通天閣も太陽の塔も真っ赤になっている。それでも、今日も明日も満員電車に揺られて仕事へ行かなくてはいけない人もいるし、休日にはレジャーしたい人もいるし、クリスマスはもうすぐだしと、「国民へのお願い」は効果があるのでしょうか? さて、年末にはどうなっていることやら。

こんな時には、見ていてホッと安らかな気持ちになる、そしてクリスマスにぴったりのジャケットがいいかと思いまして、アメリカのTRIPSICHORD『TRIPSICHORD』を紹介させていただきます。

ジャケットの背景には教会や大聖堂のような建物の内部が描かれている。ジャケット右には、王冠をかぶり金色の衣装に身を包んだ女神(?)がいて、赤い頭巾をかぶった小さな少女のあごに手を添えている。ジャケット周囲の金色の縁取り部分には、クリムト風タッチの人物や模様が描かれている。金色が鮮やかかつ荘厳な雰囲気を醸し出し、見ているだけで厳かな気持ちにさせてくれるジャケットだ。

このTRIPSICHORD『TRIPSICHORD』は、1971年にJanusレコーズから発売されているが、実は1970年にSan Francisco Soundから、白地にステッカーを貼っただけの装丁のアルバムが制作されている。ところが発売元がJanusレコーズに変更となり、このキラキラしたジャケットになった。

時は流れて2001年、同作はボーナス・トラックを収録した2P仕様でイタリアのAkarmaから再発されることに。この時にゲートフォールド仕様になるが、内ジャケに新たなイラストが追加されていた。王冠をかぶった女神が、普段着に近い衣装を着て、ドラゴンの側の岩に座っている。その横に赤ずきんの少女が立っている。よく見ると、この少女はJanus盤『TRIPSICHORD』から切り取ってコラージュしたようだ。おそらく、岩に座る女性の王冠部分も同じコラージュだろう。それにしても物語性を感じさせる、何か絵本の挿絵のような美しいイラスト。これはAkarmaからの再発CDにも採用されている。しかし、Janusのオリジナル盤といい、アカルマ再発盤といい、そこで使われているイラストを誰が手掛けたのか、何か元になる絵本や物語があるのかなど詳細は不明。僕が知らないだけで、有名な物語の挿絵なのかもしれないけれど。

TRIPSICHORDの歴史は、1963年に結成されたTHE BANというガレージ・バンドにさかのぼる。THE BANは、カリフォルニア州のロンポクという町で、トニー・マクガイア(g,vo)、フランク・ストレート(b)、ランディ・ゴードン(ガズマン)(ds)、オリヴァー・マッキニー(kbd)によって結成された。1965年にBrentレコーズから「Now That I’m Hoping / Bye Bye」をリリース。軍に入隊するためトニー・マクガイアが脱退し、デヴィッド・ザンドナッティが加入。彼がベースを担当し、フランク・ストレートがギターを担当するようになる。

新しい編成になりロサンゼルスへ進出し、Embassyレコーズと契約を獲得。THE BANからTHE NOWへと改名し、1967年に「I Want / Like A Flying Bird」をリリースする。さらにサンフランシスコへ拠点を移したところでビル・カー(g)が加入。JEFFERSON AIRPLANEやMOBY GRAPEを担当していたマシュー・カッツのマネジメントを受けることになった。これを機にTRIPSICHORD MUSIC BOXと改名している。

まずは、1968年にマシュー・カッツがらみのバンド4組によるオムニバス・アルバム『FIFTH PIPE DREAM』に3曲を提供。1969年にはデビュー・アルバムのレコーディングを行なう。1970年にマシュー・カッツのレーベルSan Francisco Soundから、TRIPSICHORD MUSIC BOXとして、デビュー・シングル「Times And Seasons / Sunday The Third」を発表。続けて制作されたアルバム『TRIPSICHORD MUSIC BOX』は、白地にステッカーを貼ったシンプルなデザインで、プレスされたのも極小数といわれている。果たして販売されていたのか、プロモ・デモ版だったのかなども詳細は不明という激レア盤。これをJanusレコーズが権利を買い取って、1971年にリリースとなった。この段階で新たにジャケットを付けることになったのは先にも書いたが、レーベル面にSan Francisco Soundと入っているものと、JANUSレコーズだけのものとが混在している。しかも1969年のオリジナルSan Francisco Sound盤とは曲名が異なっていたり、曲の長さも微妙に違うらしい。ちなみに1970年には、San Francisco Soundから、TRIPSICHORD名義のシングル「Fly Baby / She Has Passed Away」がリリースされている(B面はJanus盤では「We Have Passed Away」というタイトルになっている)。

彼らのマネジメントを担当したマシュー・カッツは、彼が抱えていたMOBY GRAPEやIT’S A BEAUTIFUL DAYともトラブルを起こしていた人物。TRIPSICHORDの扱いも難ありだったようで、TRIPSICHORDやBLACK SWANのメンバーにMOBY GRAPEを名乗らせて出演させるというFAKE GRAPE事件なども起こしていたようだ。

TRIPSICHORDは、新たにロン・マクニーリーというシンガーを加えるも解散してしまう。そのロン・マクニーリー、フランク・ストレート、デヴィッド・ザンドナッティはユタ州に移り、新たにFREE SPIRITなるバンドを結成。すぐに解散して、ロン・マクニーリーとデヴィッド・ザンドナッティはSONS OF MOSIAHを結成している。フランク・ストレートはランディ・ゴードンらとNATTY BUMPPOなるバンドを結成したという。

色々と謎が多いTRIPSICHORDだが、この美しいジャケットの魅力もあって、サイケデリック・ロック・ファンには有名な存在となっている。そう、音楽的にはサイケデリック・ロック。このジャケットから荘厳&壮麗なシンフォ系プログレを期待すると肩透かしを食らう。僕がそうだった。何の知識もなく、それを期待してAKARMAからの再発CDをジャケを購入。聴いてみたらガレージ・ロックあがりのサイケ・ロック・バンドという形容がふさわしい音で驚いた。しかし、かの時代のUSアンダーグラウンド・サイケ・シーンの魅力は濃厚に伝わってくる内容で、人気が高いのも納得の一枚だ。ここでは『TRIPSICHORD』のなかで最も派手な展開をみせる「Family Song」を聴いていただきましょう。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

Family Song

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