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【SSW名盤】キャロル・キング70年作『ライター』~職業作曲家から「シンガー・ソングライター」へ~

こんにちは。スタッフみなとです。

シンガー・ソングライターが活躍し始めた1970年代の名盤を、ピックアップしております。

今回はキャロル・キング。

キャロル・キングというと1971年の『つづれおり』のイメージが強いですが、その前年にリリースされた『ライター』を聴いていこうと思います。

透き通った美声だったり抜群の歌唱力を誇るわけではないのに、なぜか惹き込まれるボーカル、そしてプロの作曲家として培った抜群のメロディ・センスが光るまたとない名盤です。

ではまずキャロル・キングの少女時代から見てまいります。

10代でソングライターとして活躍

キャロル・キングは1942年2月9日、ニューヨークのブルックリンにて、教師の母親と消防士の父親のもとに生まれました。

4歳の頃から母親にピアノの手ほどきを受け、早くからその音楽的才能を開花し始めます。

成績も優秀で、何と学年を2年飛び級するほどでした。10代になるとロックンロールに夢中になってバンドを組み、ボーイ・フレンドとなったニール・セダカの影響もあって曲作りを始めます。

1958年16歳の時には、歌手としてABCパラマウント・レコードからデビューしましたが、鳴かず飛ばずでした。

♪The Right Girl

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デモ・テープ作りには、ポール・サイモンも協力していたようです。

そしてキャロルは、2年早く入学したクイーンズ・カレッジにてジェリー・ゴフィンと運命的な出会いを果たします。

作曲が出来たキャロルと、作詞が出来たジェリーは出会ってすぐ意気投合しソングライター・コンビを組み、いつしか公私ともにパートナーとなっていきました。

1959年、キャロルが17歳の時に2人は結婚して子をもうけ、大学を辞めて昼間の仕事に就きながら職業作曲家として沢山の楽曲を書きます。

やがて2人は音楽出版会社のアルドン・ミュージックの専属ライターとして雇われることとなり、ゴフィン&キングとして「Will You Love Me Tomorrow」「Locomotion」など数々の名作を生み出しました。

♪Locomotion

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しかしゴフィン&キング黄金期も長くは続かず、1964年に米国に上陸したビートルズが一世を風靡するとその人気に翳りが出ました。

プロのソングライターが用意した歌をアイドルが歌う時代から、アーティスト自ら楽曲を作り演奏する時代へと変わっていったのです。

2人は1968年に別れることとなり、キャロルは生まれ育った東海岸を離れてカリフォルニアへと移り住みます。

ソングライターからシンガー・ソングライターへ

1968年、キャロル・キングは以前に立ち上げたレーベルで知り合っていたベーシスト、チャールズ・ラーキーとダニー・コーチマーと3人で、バンド「シティ」を結成し、唯一のアルバム『夢語り』を発表しました。

キャロルがソングライターからシンガー・ソングライターへと変わる過渡期のアルバムで、プロとして培ってきた作曲センスと瑞々しい歌唱が味わえる名作です。

キャロルがステージ恐怖症でプロモーションが十分に出来なかったため、売れ行きは良くありませんでした。

1970年『ライター』

『夢語り』がヒットせず、キャロルはグループではなくソロとして本腰を入れて作品を制作します。

元夫のジェリー・ゴフィンとは私生活では別れたものの、仕事上ではお互いを尊敬しつつパートナー関係を続けており、今作では12曲中10曲が2人の共作です。

<演奏>
Carole King (piano/vocals/arrangements)
Danny Kortchmar (acoustic guitar/electric guitar/conga)
Charles Larkey (Fender bass)
Joel O’Brien (drums/percussion/vibes)
James Taylor (acoustic guitar/backing vocals)
Ralph Schuckett (organ)
John Fischbach (Moog synthesizer)
Abigale Haness and Delores Hall (backing vocals)

それでは、アルバムを聴いてまいりましょう。

Spaceship Races

キャロル・キングのイメージからすると、少しハードでエッジの立ったサウンド。

ダニー・コーチマーのファンキーなギターとジョエル・オブライエンのしっかりしたドラムが、力強くキャロルのボーカルを支えています。

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Goin’ Back

ダスティ・スプリングフィールドやザ・バーズなど多くのアーティストが歌った、ゴフィン&キングによる66年の楽曲。

アコースティック・ギターとバック・ボーカルにジェイムス・テイラーが参加しており、その繊細なアコースティック・ギターの音の重なりとボーカルが楽曲に優しい温もりを加えています。

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To Love

カントリー・タッチのギターとちょっとチープなシンセサイザーの音、そしてキャロルの柔らかく素朴なボーカル。

可愛らしくポップな楽曲です。

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What Have You Got To Lose

フュージョンを取り入れた洗練されたポップスです。ダニー・コーチマーのギターのカッティングが効いていて格好良いです!

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Eventually

B面最初は、しっとりした弾き語りで始まります。

ピアノとボーカルのシンプルなサウンドにジェイムス・テイラーの繊細かつ表情豊かなアコギとストリングスが被さり、情感たっぷりに響きます。

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Raspberry Jam

ダニー・コーチマーのギターが大活躍の、ジャズ/フュージョン寄りの楽曲です。

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Up On The Roof

ドリフターズが歌った楽曲のセルフ・カバーです。

辛くなったら屋根の上に来るといいよ、と優しく歌うキャロルの歌唱に胸が熱くなります。

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『ライター』は日本では『つづれおり』の後に発表されたこともあり、『つづれおり』の陰に隠れがちな作品なのですが、ジャズやフュージョン、カントリーなどが心地よく混ざり合って、深い味わいです。

そして何より、キャロルの「巧」くはないのですが味わいがあって素朴なボーカルが大変魅力的で、泥臭く温かな彼女の人間性が心に触れてきます。

「シンガー・ソングライター」として立っていく気概が詰まっている作品です。


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