2018年12月11日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
60年代後半、米国のブラッド・スェット&ティアーズやシカゴから花開いたブラス・ロック・ムーヴメント。
その流行は当時ブルース・ロック・シーンが盛り上がりを見せていた英国にも伝搬し、ブルース・ロックの次のステップとしてホーン・セクションを導入するバンドが次々に現れ人気を博しました。
もちろんその影響下にあったのは英国だけではなく、同時期のフランス、ドイツなど各国ユーロからもジャジーな管楽器を取り入れたグループが続々と出現。
今回はちょっぴりニッチながらも英米に劣らぬクオリティを誇る、ユーロ産ブラス・ロック・バンドをご紹介してまいります☆
まずはドイツからこちらの71年作。
ジャケはショッキングですが、内容はサックスやフルートをフィーチャーした疾走感&哀愁溢れるアンサンブルが格好良すぎる逸品。
COLLOSEUMなどブリティッシュ・ジャズ・ロック好きなら間違いなしのジャーマン・ブラス・ロック!
もいっちょドイツから71年作!
COLOSSEUM『ヴァレンタイン組曲』みたいな英ジャズ・ロック meets CHASEなどの米ブラス・ロックって感じ!?
エネルギッシュでグルーヴィーかつ哀愁たっぷりで、こちらもかなりオススメです。
次はフランスから登場したブラス・ロック70年作。
ドタバタとしたドラム、パーカッション、グルーヴィなオルガン、フリーキーなヴァイオリン、豪快なサックス、ブルージーなギター。
英国のIFを彷彿とさせるクールなインプロヴィゼーションが炸裂!
フランスでブラス・ロックと言えば、この作品も!
なんとマグマ人脈による別プロジェクトで、その狙いは、人気だったブラス・ロックを導入して、ロック・ファンに向けて企画された暗黒マグマの入門編!
前半、ブラス・ロックを装いながら、後半に向けて、マグマ・サウンド全開となる、恐ろしいアルバム。
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クリスチャン・ヴァンデをはじめとする初期マグマ人脈のサイド・プロジェクト、UNIVERIA ZEKT『Unnamables』をピックアップ!
デンマーク出身、72年作2nd。
BLOOD SWEAT & TEARSを彷彿とさせるブラス・ロックに、ジャジーなオルガンの淡い色調が特徴的。
米ブラス・ロックの芳醇さや洗練と英ジャズ・ロックの叙情とが絶妙にバランスしたサウンドは、センス抜群!
ロジャー・ディーンによるちょっと不気味なジャケも素敵。
スペインはバルセロナは多くのジャズ・ロックの名バンドを輩出していたカケレコ一押しなのですが、その礎を築いたと言える黎明期を代表するグループがMAQUINA!
後にスペイン・ジャズ・ロック・シーンで活躍する名手がずらり揃っていて、さすがと言える素晴らしいブラス・ロックを聴かせています。
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スパニッシュ・プログレ黎明期を代表するグループであり、イギリスのニュークリアスやパトゥに比肩すると言って過言ではないもっともっと再評価されるべきグループ、MAQUINA!を特集!
ちなみに他の主要メンバーは、バルセロナ出身ミュージシャンによるビートルズ・カヴァー作(名盤!)をリードしたSAX奏者のPeter Roar
そうそう、MAQUINA!と言えば、メンバーのSAX奏者Peter Roarが素晴らしすぎるビートルズ・カヴァー・アルバムを残しています。
ブラス・ロックではありませんが、とにかくオススメですので、一聴是非!
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後にスペインはバルセロナのジャズ・ロック・シーンで名を残す重鎮たちが70年代初期に産み落とした最高にカッコ良いビートルズ・カバー作『WE ARE DIGGING THE BEATLES』をピックアップ!
まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような感じ!?
このベルギー発の75年作、ずばりユーロ・ロック名作。
最後はノルウェーから、極北の地とは思えぬファンキーで熱気ムンムンのテクニカル・ブラス・ジャズ・ロックをご紹介!
ノルウェー最初のプログレ・バンドJUNIPHER GREENEのメンバーが結成したグループで、グルーヴィーなリズム隊とエネルギッシュなブラスとソウルフルなヴォーカル&コーラスが炸裂するハイレベルな逸品!
そして!そんなSALUKIが2018年に約40年ぶりとなる新作をリリースいたしましたのでご紹介!
相変わらずファンキー&グルーヴィーなジャズ・ロックを展開しつつ、さらに円熟味の増した流麗なサウンドが楽しめるファン注目の逸品です☆
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後にBARCELONA TRACTION〜MUSICA URBANAとスパニッシュ・ジャズ・ロックを代表するグループで活躍する名Key奏者Lucky Guriと70年代初期のスパニッシュ・ジャズ・ロック・シーンを代表するグループMAQUINA!のサックス奏者Peter Roarを中心に、言わずとしれたICEBERGの名ギタリストMax Sunyerや、MAQUINA!のリズム隊が参加したスーパー・グループ。72年作の全曲ビートルズ・カバー・アルバム。もう、このレビュー書きながら、興奮しています!2曲目の「Strawberry Fields Forever」で泣きそうです。イージーリスニングな感じは微塵もなく、サイケ・ポップのカラフル感を残しつつ、ロック的シャープさとオシャレな洗練とが同居した最高にカッコ良くワクワク感溢れるサウンドを聴かせています。シャープでタイトな音色と手数多いフレージングがカッコ良すぎるドラムを中心に、ピアノとサックスが時にどっしりと時に軽やかに躍動し、NUCLEUS時代のChris Speddingを彷彿とさせるセンス溢れるMax Sunyerが脇を固めます。このキラメキが伝わるでしょうか。カケレコが自信を持ってオススメする大傑作!ビートルズ・ファンもサイケ・ポップ・ファンもニッチ・ポップ・ファンもジャズ・ロック・ファンもカンタベリー・ファンも全員必聴!
ベルギー出身、ツイン・ギターに加え、ブラス&フルート奏者、キーボード奏者を含む7人組グループ、EMIより75年にリリースされた唯一作。ブラス・ロックを彷彿させる逞しくもシャープなリズム・セクション、クラシックな気品もあるドラマティックに盛り上がるツイン・リード・ギター、英VERTIGOの作品群を彷彿させる流麗なフルートや淡いオルガン、そして、多声コーラスを交えて荘厳に盛り上がっていくヴォーカル&ハーモニー。まるで初期シカゴとウィッシュボーン・アッシュとクレシダが合体したような何とも魅惑的なサウンドが全編で繰り広げられていてビックリ。演奏は安定感抜群だし、変拍子のキメを織り交ぜながら忙しなく畳み掛ける展開もプログレッシヴだし、メロディもフックたっぷりだし、これは素晴らしい作品。ユーロ・ロック名作!
フランス出身グループ、70年作2nd。鍵盤、サックスを加えた7人編成で、ジャジー且つダイナミックなLAURA NYROのカヴァー「LUCKIE」を始め、ブラス・ジャズ・ロックを全編で展開。ブイブイと唸るベース、手数多くドタバタとしたドラム、プリミティヴなパーカッション、グルーヴィなオルガン、リリカルなピアノ、フリーキーなヴァイオリン、豪快なサックス、ブルージーなギター。豊富な楽器群による熱気をはらんだインプロヴィゼーションの応酬が堪能できる一方で各曲は3分台とコンパクトに纏められており、熱狂しつつも冷静な計算高さを感じさせるアンサンブル。その佇まいはIFなど英ブラス・ロック・バンドを彷彿とさせます。楽曲にダイナミズムを加えている、声量豊かでパワフルなヴォーカルも素晴らしい。無名ながら英ブラス・ロック勢にも引けを取らない完成度の高い一枚。
1st、2ndリリース後に、クリスチャン・ヴァンデやヨシコ・セファーをはじめとする当時のマグマ全員に、ヴォーカルやギターなど元マグマのメンバーが加わったプロジェクト。その狙いは、なんとマグマ入門編の制作!1st、2ndと意欲的な傑作を生み出したもののフランスのリスナーになかなか受け入れられずアンダーグラウンドに甘んじていたマグマの状況をみて、フランス・ロックの未来を憂いていた元マグマのメンバーであり、1stをプロデュースしたローラン・チボーが、より分かりやすい作品を作るべく、クリスチャン・ヴァンデに企画を持ちかけ、実現したのがこのプロジェクトUNIVERIA ZEKTです。アルバムの前半では、マグマ1st、2ndにもあったブラス・ロック的エッセンスを強め、ブラッド・スウェット&ティアーズやシカゴに対するフランスからの回答、と言えるような明快なサウンドが鳴らされ、ヴァンデ作曲の後半では、密教的な叫びにより暗黒世界があらわれるなど、徐々にマグマ的世界へと引きずり込まれる展開となっています。対英米ロック的/密教的なマグマ・サウンドから離れ、英米ロック的イディオムで展開した奇才達による豪快なサウンドを鳴らす本作は、プログレ・ファンだけでなく、ジャズやブラス・ロックやスワンプ・ロックあたりのファンにも是非聴いてもらいたい逸品!
ノルウェー最初期のプログレ・バンドとして知られるJUNIPHER GREENEのメンバーを中心に結成されたバンドによる77年作。時に熱くブロウし、時に雄弁にメロディを紡ぐ管楽器の活躍が素晴らしい洗練されたブラス・ジャズ・ロックを鳴らします。ファンキーな粘りのあるグルーヴを刻むテクニカルなベース&ドラム、ワウの効いた熱量の高いギター、そしてクールなエレピも絶品。男女シンガーの歌声がソウルフルに絡み合うヴォーカル・パートも大変カッコいいです。そうかと思うと、英国ロックに通じる叙情的な表情も見せたりと、この懐の深さは並ではありません。終始隙の無い完成度で聴かせる、北欧ロック屈指の名盤です。
68年にバルセロナで結成された、スパニッシュ・プログレ黎明期を代表するグループ。70年に1stリリース後、メンバーが徴兵制度で次々に脱退、代わりのメンバーを加えたりやりくりしていたもののついにオリジナル・メンバーが居ないこととなり活動停止に。71年に徴兵から戻ってきたオリジナル・メンバーのKey奏者、Enric Herrera中心にメンバーが一新され、BS&Tやシカゴなどブラス・ロック・ムーヴメントに呼応し、ブラス・セクションを加えて再始動しました。オリジナル・メンバーのJordi Batisteは正式復帰はしなかったものの、全面的にヴォーカルとしてゲスト参加し、72年にライヴ録音されたのが本作2nd。シャープかつふくよかなリズム隊、キレのあるカッティングからジャジーで流麗なソロまできらめくギター、そしてグルーヴィーかつ陰影に富んだオルガン&ブラス!後にスペイン・ジャズ・ロック・シーンで活躍する名手がずらり揃っていて、さすがと言える素晴らしいブラス・ロックを聴かせています。ちなみに他の主要メンバーは、バルセロナ出身ミュージシャンによるビートルズ・カヴァー作(名盤!)をリードしたSAX奏者のPeter Roar、MUSICA URBANAで活躍しマイルス・デイヴィスやチック・コリアとも活動するベースのCarles Benavent、同じくMUSICA URBANAに参加するドラマーのSalvador Fontなど。歌詞は英語です。
70年代前半に活動し、4作品を残したドイツ出身のジャズ・ロック・バンドによる71年デビュー作。安定感ある職人的なリズム・セクションに乗って、熱気ある派手なプレイスタイルのオルガンと、重層的な響きを持つブラスが交錯する、グルーヴィーかつ重厚感溢れるブラス・ジャズ・ロック。これは猛烈にかっこいいです…!ヴォーカルは英語。
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