2020年10月9日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ増田です。
ジャズ・ロックといえばインストものも多く、「歌」より楽器陣のスリリングなインタープレイに注目が集まりがちですよね。
しかしながら歌ものジャズ・ロック、特に女性ヴォーカルの涼やかな歌唱や妖艶なスキャットをフィーチャーしたジャズ・ロックも大変魅力的。
今回はコケティッシュな女性ヴォーカルのスキャットが楽しめるジャズ・ロック作品をカケレコ棚よりピックアップいたしましたよ~。
まずはこちらの英国カンタベリー・ロックを代表する75年の名盤から。フュージョン的流麗さ華やかさとセンシティヴに広がる英国叙情との完璧な融合。バーバラ・ガスキンを含む3人の女性によるコーラスも淡い幻想性を増幅させていますね。
ゲイリー・ボイルが率いたISOTOPEのキーボード奏者とベーシストを中心に結成されたジャズ・ロック/フュージョン・バンド。流麗なピアノ&キーボード、敏捷なベース、滑らかなサックス、そして美声女性ヴォーカルが加わったシャープかつスリリングなジャズ・ロックは、RETURN TO FOREVERを想起させるレベルの高さを誇ります。さすがの職人的アンサンブルが冴える1st&2nd!
こちらはRIO系グループとも交流があることで知られるべルギー産の名ジャズ・ロック・バンド。カンタベリー・フィーリング豊かなジャズ・ロック・アンサンブルにフィーチャーされる、スキャット風の女性ヴォーカルが実に個性的!
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スパニッシュ・ジャズ・ロックOMのピアニストによる75年作。女性ヴォーカルのスキャットもフィーチャーし、「RETURN TO FOREVERへのスペインからの回答」と言えるたおやかなアンサンブルから、ベルギーのCOSあたりに通じる暗黒カンタベリー的アンサンブルまで、とにかく演奏が芳醇なこと!ユーロ・ジャズ・ロック屈指の名作。
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スペインはバルセロナの名Key奏者/コンポーザーのJordi Sabatesが75年にリリースした2nd『OCELLS DEL MES ENLLA』をピックアップ!
ドイツのジャズ・ロック・バンドによる78年自主制作盤。緊張感漂うフリオ・キリコばりの高速ドラムとテクニカルなベースを軸に、美麗な女性ヴォーカル、気品あふれるヴァイオリン、たおやかなダブル・キーボードが優雅に旋律を奏でていく極上のジャズ・ロック。これが自主制作とは、恐るべし…。
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ジャーマン・ジャズ・ロックの「なんでもあり」な魅力をお伝えすべく、様々なタイプの作品を集めました!
70年代後期~80年代初頭にかけて活動しながらもアルバム未発表に終わったアルゼンチンのプログレ・バンド、81年の発掘ライヴ作。パブロ、ミアなどに通じる南米的リリシズムいっぱいの哀愁シンフォを聴かせたかと思えば、突如アルティばりの超絶ジャズ・ロックに雪崩れ込む演奏に愕然!途中から入ってくる女性ヴォーカルもカルメン・マキみたいにエネルギッシュ。これほどのグループが埋もれていたとは・・・
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70年代後期~80年代初頭に活動しながらも、アルバム未発表に終わったアルゼンチン産プログレ・バンドALTABLANCAの、81年発掘ライヴ作『EN VIVO MENDOZA 81』がリリースされました。
ここからは新鋭もご紹介。「太陽と戦慄」期のクリムゾンやHENRY COWあたりの攻撃性に、HATFIELDS & THE NORTHに通ずる繊細さと緻密さ、フランス的な芸術性や演劇性を融合させたサウンドが圧巻!レビュアーも絶賛の仏ジャズ・ロック・グループ、クリムゾンやカンタベリーのファンは必聴と言える09年デビュー作!
こちらはイタリアのジャズ・ロック新鋭14年作。カンタベリーに通じる柔らかで優美なジャズ・ロック・フィーリングを軸に、浮遊感や緻密さを加えるポスト・ロック&アヴァン・ロック・フィーリング。愛らしさを残した美声女性ヴォーカルにもうっとり。
ゴングばりの強度と緩急自在さで聴かせるジャズロックをベースに、カンタベリー風の芳醇なホーンセクションとスラップハッピーあたりが浮かぶ浮遊感あるメロディをミステリアスに歌う女性ヴォーカル。カリフォルニア発ジャズ・ロック・バンド、2ndもさすがの快作です!
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注目レーベルAltrOck発のサンフランシスコ出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドINNER EAR BRIGADEが5年ぶりにリリースした17年作2nd『DROMOLOGY』の魅力に迫ってまいりたいと思います。
最後はフランスから登場したこの新鋭。メンバーに2人の女性スキャット・シンガーを含み、妖艶なスキャットとジャジーなトロンボーンが絡み合う洒脱でダークなアンサンブルを展開します。かと思えば後半にはMAGMAばりの暗黒パートが飛び出して鳥肌・・・。これは一筋縄ではいかない怪作!
いかがでしたか?こちらも是非ご覧下さい!
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時に繊細にたゆたい、時にキレ味鋭いフレーズでテンションを増幅させるギター。淡く叙情的なハモンド・オルガン。そして、流れるように美しくアイロニーやユーモアもたっぷりな愛すべきメロディとヴォーカル。そんなハットフィールドに通じる作品を世界中からピックアップ!
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ソフト・マシーンやハットフィールドなどカンタベリー・ミュージックのDNAを継ぐ新鋭ジャズ・ロック・バンドを世界中からピックアップいたしましょう。
元CARAVANのRichard SinclairとSteve Miller、元MATCHING MOLEのPhil Miller、後にNATIONAL HEALTHで活躍するPip Pyleにより結成され、Steve Millerが脱退、KHANを経たDave Stewartが参加したカンタベリー・ジャズ・ロックバンドの代表格の75年2nd。カンタベリー・ジャズ・ロックの代表作である本作は、20分の大作「Mumps」を含め、 前作より全体的に整理、洗練された世界観をすっきりと聴かせる作風となっており、クロスオーバー・ジャズ・ロック色を強めた音楽性へと変化しながらも、彼ららしいポピュラリティーを持ったサウンドと、胸を打つメロディーが素晴らしい傑作です。
女性ヴォーカル、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたフランスの新鋭プログレ・グループ。09年デビュー作。クリムゾンやカンタベリー・ミュージックを中心に70年代プログレやジャズ・ロックからの影響を強く感じますが、懐古趣味的な印象はまったくありません。往年の名グループの遺伝子を受け継いだ、文字通りに「プログレッシヴ」なサウンドがここにあります。「太陽と戦慄」期のクリムゾンやHENRY COWあたりの攻撃性を軸に、HATFIELDS & THE NORTHに通ずる繊細さと緻密さ、フランス的な芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、かなりの完成度!時にミニマルなフレーズを奏で、時にささくれだったリズムギターで牙をむくギター、シャープ&タイトな強靱なリズム隊、フリーキーに暴れ回るヴァイオリン&サックス、時に荘厳なメロトロン、時にアヴァンギャルドなシンセで楽曲を飛躍させるキーボード、フランス語で歌う存在感抜群のシアトリカルな女性ヴォーカル。各パートの演奏力、アンサンブルの強度ともに抜群です。14分を越える「ODS」など、構成も文句無し。これは強力なグループが登場しました!圧巻の名作。かなりおすすめです!
スペインはバルセロナ出身、60年代にPIC-NICというポップ・バンドで活躍し、70年代にはギタリストのToti Solerとともにスペインのジャズ・ロック・シーンの祖を築いたとも言われる名グループOMを結成したことで知られるピアニスト。Edigsa/Zelesteレーベルより75年にリリースされた2ndソロ。ピアノとエレピを基本にした前作とは異なり、バンド編成で録音。OMで一緒だった名ギタリストToti SolerとベースのManolo Eliasをはじめ、元JARCAのギタリスト、後にORQUESTRA MIRASOLで活躍するドラマーなどがサポート。女性ヴォーカルのスキャットもフィーチャーし、「RETURN TO FOREVERへのスペインからの回答」と言えるたおやかなアンサンブルから、ベルギーのCOSあたりに通じる暗黒カンタベリー的アンサンブルまで、とにかく演奏が芳醇なこと!ピアノやエレピはもちろんのこと、フィル・ミラー的な滑らかに緊張感あるフレーズからゴリゴリとアグレッシヴに弾き倒すフレーズまで縦横無尽なエレキも特筆。パーカッシヴなフラメンコ・ギターとの対比も見事です。15分を越えるオープニングの組曲はユーロ・ジャズ・ロック屈指と言える名曲。
世界のチェンバー/アヴァン系の先鋭的なバンドを多く輩出しているAltrOckレーベルよりデビューした、カリフォルニア出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドによる待望の17年作2nd。前作『RAINBRO』では女性ヴォーカルを擁しカンタベリー・エッセンスをたっぷり含んだポップな音作りがたまらない個性派ジャズ・ロックを聴かせた彼らですが、本作でもその唯一無二のサウンドは健在です。全盛期ゴングばりの強度と緩急自在のしなやかさで聴かせるジャズ・ロックをベースに、カンタベリー風の芳醇かつ流麗なホーン・セクションとスラップ・ハッピーあたりを彷彿させる浮遊感あるメロディをちょっぴりミステリアスに歌う女性ヴォーカル。演奏自体は角の立った硬派なジャズ・ロック・テイストがあるのですが、一貫して軽やかなポップ・エッセンスが効いており、無骨な印象は一切与えないハイセンスなサウンドメイクが相変わらず素晴らしすぎます。前作を気に入った方は勿論、カンタベリー・ロック・ファン、ゴング・ファン、スラップ・ハッピーのファンも「これはっ!」となること間違い無しの一枚に仕上がっています。
78年に自主制作された作品。女性Vo兼ヴァイオリン、ダブル・キーボード、ドラム、ベースという変則編成のグループ。フリオ・キリコばりの高速ジャズ・ロック・ドラムを土台に、シンセ、ピアノ、ヴァイオリンが緊張感溢れる演奏を繰り広げる個性的なジャーマン・プログレッシヴ・ロック。美しいハイ・トーンを持つ女性ヴォーカルも印象的。テクニカルなパートだけでなく、流れるようなフルートが印象的なメロディアスなパートも魅力的。自主制作とは思えない驚異のテクニックと完成度。おすすめです。
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